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パレスチナ自治政府(パレスチナじちせいふ、السلطة الوطنية الفلسطينية, Palestinian Authority, "PA")は、ヨルダン川西岸地区およびガザ地区を管理するパレスチナ人による自治機関である。

国名[編集]

国名は地域名のパレスチナから由来する。

日本では略名パレスチナまたはパレスチナ自治区(Palestinian Territories)として知られている[1]。一般的には領域を「自治区」、政府を「自治政府」と使い分ける。
一方、2013年に政党の一つファタハは国連オブザーバー名をパレスチナ国()に変更しており、また国家承認をしている国家でもパレスチナの独立宣言に基づいてパレスチナ国と呼ばれている。

歴史[編集]

パレスチナ も参照

パレスチナ自治政府はパレスチナ解放機構イスラエルによるオスロ合意により、1994年に設立された。自治政府パレスチナが安全保障と文民統制を管轄する都市区域(エリアA)、文民統制のみおこなう辺境区域(エリアB)がある。 残りの地域のイスラエル人入植地、ヨルダン谷、及びパレスチナ地区を結ぶバイパス道路はイスラエル管轄区域(エリアC)である[2]。なお、オスロ合意はパレスチナ自治政府の将来について明示しなかったが、ただこの組織が最終的にはパレスチナ国家の基礎となることがイスラエルとアラブの両陣営から不文律として認識されている。

発足当初はPLOの主流派で、アラファート率いる対イスラエル穏健派ファタハが立法評議会選挙で圧倒的多数の議席を確保して政権を運営していたが、縁故採用汚職が相次いだことで徐々に支持を失い、2006年に実施した2回目の総選挙では強硬派のハマースが第1党となった。

アラファートの死後大統領に就任したファタハ議長のマフムード・アッバースとハマースの内閣はたびたび対立し、2006年にガザ地区でファタハとハマースの武装組織が衝突し、ハマースはガザ地区を武力制圧した。アッバースはハマースのイスマーイール・ハニーヤを首相職から解任したが、ハニーヤは拒否し、ハマース率いるガザ地区とファタハ率いるヨルダン川西岸地区が分裂状態となっていたが、2014年に分裂状態が解消され同年6月2日暫定統一政府が発足した(首相は西岸側のラーミー・ハムダッラーが続投)。イスラエルを含む国際社会の多くの国家は西岸地区の自治政府を正当政府として承認し、ガザ地区の自治政府はイランシリアスーダンといった一部の国家のみが承認していた。

2012年11月29日には国連総会においてパレスチナを「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案が賛成多数で承認され、国連では「国家」の扱いを受けることとなった[3]。1967年に起こった第三次中東戦争以前の状態を、パレスチナとイスラエルの境界にすることを基本とした[4]

政治[編集]

元首は大統領[5]である。大統領は任期4年で、パレスチナ人による直接選挙で選出される。

立法機関はパレスチナ立法評議会である。定数132名で任期は4年、大選挙区制を採用している。

行政機関は、首相率いる内閣が組織する。任免権は大統領にある。

2006年の立法評議会選挙を最後に、2013年に至るまで、次の評議会選挙の目途が立たない状態が続いている。

2014年6月2日、ラミ・ハムダラを首相とする暫定統一内閣が発足[6]ファタハハマース双方が認める内閣が成立したのは、ハマースがガザ地区を制圧した2007年以来となる[6]


主な政党[編集]

など

地方行政区分[編集]

パレスチナの行政区画

パレスチナは大きくガザ地区ヨルダン川西岸地区の2つに分かれる。これは、位置的要因に加えてガザ地区はハマースのガザ政府が実効支配していることがある。

ガザ地区の面積は365km²で全体の6%程度しかない。しかし人口は全体の38%を占め、人口密度は四千人/km²近くある上に周囲には壁で囲まれた、異常なほどな人口過密地域である。一方のヨルダン川西岸地区はパレスチナ自治政府の様々な機関が置かれており、首都もある。なお、ここで忘れてはいけないのがパレスチナ自治政府がヨルダン川西岸地区全域を自治していないことである。西岸地区の総面積は5,660km²だが、パレスチナ自治政府が行政権など全てを握っているA地区のは18%の約1,018km²で、イスラエル軍が警察権を握っているが行政権はまだパレスチナ自治政府にあるB地区は21%の約1,188km²であり、イスラエル軍が行政権など全てを握っているC地区は61%で約3,452km²と半分以上もある。なお、西岸地区のイスラエル軍管轄地域はユダヤ・サマリア地区と言われている。

また、ヨルダン川西岸地区にある東エルサレムはパレスチナ自治政府の首都と主張しているが、イスラエルが実効支配しているためラマッラーに政府などがある。

軍事[編集]

国軍と警察の機能を兼ねた準軍事組織としてパレスチナ国家保安隊(w:Palestinian National Security Forces)が存在する。

経済[編集]

2010年8月31日国際連合貿易開発会議 (UNCTAD) は、パレスチナ支援に関する年次報告書を公表した。同報告書によると、パレスチナ占領地のGDP は2009年に6.8%成長した。しかし、一人当たりのGDPは2000年に比べ30%低下している。また、失業率は前年比1.6ポイント減少しているものの以前30.1%の高水準である。食料安全保障の問題について同報告書は、パレスチナ経済にとって、イスラエルのガザ地区への軍事攻撃(2008年末から2009年初めにかけて)と西岸地区への経済封鎖が大きな足かせとなって、大きな影響を与えていると指摘している。また、民間部門の回復が特に遅れていることも指摘している。その原因がイスラエルの占領地内での移動や越境規制にあることも強調している。

パレスチナの貿易赤字は2008年のGDP比57%から2009年には59%に増加している。この中で対イスラエル貿易赤字が全体の貿易赤字の65%で、比率が大変大きい[7]

住民[編集]

民族はアラブ人パレスチナ人)。宗教はイスラム教が多いが、東方正教会も有力なマイノリティとして存在する。西岸地区に約280万人、ガザ地区に約170万人、イスラエルのパレスチナ人口が約150万人、他の地域に約513万人。またパレスチナ難民がUNRWAの資料(2012年)で520万人いるとされている。

国家承認[編集]

国際連合加盟国(193ヶ国)中、2014年10月30日にスウェーデンが承認し、計135ヶ国が国家承認している。

国家承認をしていない国[編集]

パレスチナの国連での資格を「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げする決議に賛成した国家には(*)を、格上げ決議にも反対した国家には(**)を国名の後ろに記す。なお、チェコは国家承認している国のうち唯一、格上げ決議に反対している[3]

アジア[編集]

アフリカ[編集]

オセアニア[編集]

アメリカ大陸およびカリブ諸国[編集]

ヨーロッパ[編集]

(2014年10月現在)

脚注[編集]

  1. 日本外務省の「パレスチナ概要」ではパレスチナ暫定自治政府(Palestinian Interim Self-Government Authority, PA)とされている。
  2. Wikipedia英語版
  3. 3.0 3.1 国連、パレスチナ「国家」格上げ決議 米など反発
  4. パレスチナ:「国家」格上げ、国連総会採択 138カ国賛成、米など反対 毎日新聞 2012年11月30日
  5. イスラエルはPAをあくまで「暫定自治政府」であり、「独立国家」では無いとの立場から「大統領(President)」の表記ではなく、「議長(Chairman)」と表記している。日本では、外務省は「大統領」の表記だが、マスコミは「議長」を採用している。
  6. 6.0 6.1 パレスチナに統一内閣発足
  7. しんぶん 赤旗 「パレスチナ経済復興 国連報告」2010年9月1日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]