「特種用途自動車」の版間の差分
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特種用途自動車(とくしゅようとじどうしゃ)とは、道路運送車両法およびそれに付随する通達により定められた法令上の自動車の区分の一種で、定められた特種な用途に応じた設備を有する自動車のことをいう。車両に対して付与されるナンバープレート[1]の「車種を表す数字(分類番号という)」が8で始まることから、一般に「8ナンバー車」とも呼称される。
使用目的や車体の形状が特種で、特別な用途に使われる。日本では下記の分類がなされる。特殊自動車と区分する必要があるときは、「特種=とくだねじどうしゃ」、「特殊=とくことじどうしゃ」などと呼び分けられることがある。
例えば、クレーン用台車にクレーンが載っている車は特種用途自動車3-3なので8ナンバーとなり大型免許等で運転が可能であるが、ホイールクレーンは特殊自動車の例示「一イ」に該当するので9ナンバーとなり、運転には大型特殊免許(1種または2種)が必要となる。(注 : 作業についての免許は別途必要である。)
目次
使用目的[編集]
国土交通省の「自動車の用途等の区分について(依命通達)」(1960年自動車交通局長通達)の一部改正(2001年4月6日付け、自動車交通局長通達)による区分。
1 緊急自動車[編集]
専ら緊急の用に供するための自動車(緊急自動車の指定・届出をされ、かつ、適合する設備を持つもの。13車体形状)
- 救急車
- 消防車
- 警察車(パトロールカーなど)
- 臓器移植用緊急輸送車
- 保線作業車(鉄道会社が持っている。赤文字で「緊急車」の表記がある)
- 検察庁車
- 緊急警備車(刑務所が逃走者の再収容や被収容者の警備に使用する)
- 防衛省車
- 電波監視車
- 公共応急作業車(電力会社、都市ガス会社、水道会社、NTTの応急作業車)
- 護送車(逮捕・勾留されている犯罪者を他の警察署や刑務所などへ送致する)
- 血液輸送車
- 交通事故調査用緊急車
- 医師派遣用自動車(ドクターカー)
2 法令特定事業[編集]
法令等で特定した事業を遂行するための自動車(13車体形状)必ず準拠法令がある。
- 給水車
- 医療防疫車
- 採血車
- 軌陸車(道路ではタイヤ、軌道上では鉄輪で走る。主に保線用などに鉄道会社や保守作業を下請ける会社が持っている)
- 図書館車(トラックやバスなどに蔵書本を積み込んで、市内を移動する「移動図書館」)
- 郵便車
- 移動電話車(電話、交換機、窓口がある事が条件。災害対応移動交換局や回線中継車ではない)
- 路上試験車(=教習車)
- 教習車
- 霊柩車
- 広報車
- 放送中継車
- 理容・美容車(移動美容室・理容室)
使用目的3 その他[編集]
特種な目的に専ら使用するための上記以外の自動車
3-1 運搬[編集]
特種な物品を運搬するための特種な物品積載設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車(15車体形状)
- 粉粒体運搬車(ホッパー車。セメントや粉など)
- タンク車(タンクローリー。ガソリンや牛乳などの液体やガス(気体)を運ぶ。給水車もこの一種)
- 現金輸送車
- アスファルト運搬車
- レディミクストコンクリート運搬車(トラックアジテーター、一般にミキサー車と呼ばれる)
- 冷蔵冷凍車
- 活魚運搬車
- 保温車
- 移動販売車
- 散水車(外観はタンクローリーに似ており、後部から散水を行う)
- 塵芥車(ゴミの収集車、パッカー車(プレス式と回転式がある))
- 糞尿車(いわゆるバキュームカー)
- ボートトレーラ(被牽引車)
- オートバイトレーラ(被牽引車)
- スノーモービルトレーラ(被牽引車)
3-2 患者等移送[編集]
患者、車いす利用者等を輸送するための特種な乗車設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車(2車体形状)
- 患者輸送の寝台車
- 車いす移動車(リフトバス、リフトワゴン)
3-3 特殊作業[編集]
特種な作業を行うための特種な設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車(32車体形状)
- 消毒車
- 寝具乾燥車
- 入浴車(寝たきり老人や障害者などの入浴)
- ボイラー車
- 検査測定車
- 穴掘建柱車(電柱を建てる穴を掘るオーガースクリュー―長いドリル―を備えた車)
- ウインチ車
- クレーン車(ホイールクレーンは、特殊自動車:9ナンバー)
- くい打車
- コンクリート作業車(ミキサー車と組んで、建築現場での生コン圧送に使う)
- コンベア車
- 道路作業車(建設機械は0ナンバー)
- 梯子車
- ポンプ車
- コンプレッサー車
- 農業作業車
- クレーン用台車(大型のトラッククレーンで、クレーンを架装しない状態で車検を取得したもの。クレーンはトレーラー等で別途運搬し、現場で組み立てる)
- 空港作業車
- 構内作業車
- 工作車
- 工業作業車
- レッカー車
- 写真撮影車(レントゲン車)
- 事務室車(移動教室、金融機関の移動窓口(移動銀行窓口車)。この車が増えたので、国が注目している)
- 加工車
- 食堂車(車内に机やイスを備えているもの)
- 清掃車(ゴミの収集車ではなく、清掃用ブラシを路肩に押し付けて、落ち葉など路上のゴミを収集する「ロードスイーパー」。国道事務所などが保有。9ナンバーもある)
- 電気作業車
- 電源車
- 照明車
- 架線修理車
- 高所作業車
3-4 その他[編集]
キャンプ又は宣伝活動を行うための特種な設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車(3車体形状)
- キャンピング車(2001年より構造要件を厳格化)
- 放送宣伝車(右翼団体などの街宣車)
- キャンピングトレーラー(被牽引車)
違法8ナンバーと規制強化[編集]
1995年に改造自動車の届け出が緩和されたことを受けて、1990年代後半から特種用途自動車の保険料や自動車税が安いことを狙い、キャンピングカーや放送宣伝車、事務室車として8ナンバー登録をした後、設備を外して走行する違法な行為が多発した。一部では堂々と改造代行を行うカーショップまで出現し、中にはどう考えても改造に適さないスポーツカータイプの乗用車を放送宣伝車や事務室車に改造して8ナンバーを取得するという事態が発生した。それを裏付けるように、この3車種の登録台数を見ると、1991年から2000年の間に
- キャンピングカー : 3万台弱→33万台(11倍)
- 放送宣伝車 : 4000台強→6万5000台(14倍)
- 事務室車 : 184台→2万台以上(111倍)
と激増し、特に事務室車が100倍以上の伸びを示しているのが目につく。
こうした行為を防ぐため、国土交通省は2001年から特種用途自動車の規制強化を実施、構造要件を厳格化した。なおキャンピングカーについては2003年から新しい規制を適用した。
キャンピングカー[編集]
ワンボックス車やオフロード四輪駆動車、SUVでは乗用車登録の3・5ナンバーだけでなく、毎年車検を受けなければならない貨物自動車(バン)登録の1・4ナンバー車が車検期間を2年に延長できるメリットを理由に多数実施していた事等から、キャンピングカーへの改造が目立っていたが、新規制では構造要件が厳しくなったことによりキャンピングカーへの改造登録が安易に出来なくなった。特に、調理設備前のフロアには160cm以上の高さの空間が求められるようになった事により、以前は対応可能であったステーションワゴンではかなりの対応改造が必要となる。これにより、現在市販されている新車のキャンピングカーは、トラックベースかバスベースのものが多い。なお登録変更しない場合は旧基準対応のキャンピングキットを装着しても問題はない。
放送宣伝車[編集]
登録後や継続検査を受けた後、日常の使用時にスピーカーや放送機材をはずす車が多かったため、車体の外にスピーカーを露出させること、演説用の舞台(固定型演壇)を備えること、車内から放送する空間(放送室)が規定された。
事務室車[編集]
乗用車やスポーツ車による違法8ナンバー化の温床となっていたので、出入り口・通路・事務室または教室用の空間に関する規定を設け、乗車用の座席を事務用スペースとして流用できないように定義した。
登録と運転免許[編集]
特種用途自動車(8ナンバー)の運転には乗車定員数、車輌総重量、最大積載量に応じ、普通免許・中型免許・大型免許のいずれかが必要である。クレーンなどの特殊な設備などの運転や操作に別の資格が必要なものもある。
- なお、特殊自動車として登録されるもの(9ナンバー、0ナンバー)は、大型特殊免許が必要となる。