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'''セカイ系'''は、[[アニメ]]・[[漫画]]等におけるストーリー類型の一つである。'''世界系'''とも呼ぶ。 | '''セカイ系'''は、[[アニメ]]・[[漫画]]等におけるストーリー類型の一つである。'''世界系'''とも呼ぶ。 |
2007年7月14日 (土) 11:55時点における最新版
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セカイ系は、アニメ・漫画等におけるストーリー類型の一つである。世界系とも呼ぶ。
セカイ系の定義は、個人により大きく違い、またかなりあいまいな範囲を指すが、社会学、マンガ表現論、サブカルチャーの分野で分析、定義が模索されている。
概要[編集]
セカイ系の「セカイ」という言葉は、世界を意味する。セカイ系の特徴は、主人公もしくは主人公を含む仲間達の少数の行動が、途方もない数の人達が住む全世界の命運を本来その任にあたるべき国家や国際機構のようなシステムに代わって大きく左右してしまう、という点である。その規模は、地球全体、異世界であるならば主人公のいる国をも超えた全世界、作品によっては全宇宙や、パラレルワールドさえ含む時空間全てと言うように非常にスケールが大きい。これらの主人公らの人間関係・内面的葛藤・行動等が社会を経ずに世界に直接影響する一連の作品群が「セカイ系」と呼ばれるようになった。
セカイ系の作品では、主人公が非常に強いもしくは特殊な能力を持った10代の少年少女であることが多い。そしてその力は世界の命運を左右するほどの力である。作中ではなんらかの事情により全世界規模の危機的状況にあり世界の運命は主人公に握られている。これは国家や国際機構のような本来世界的危機に対処するシステムが様々な理由から危機解決を行わなかったり、あるいは危機を助長もしくは発生させているような状況[1]によるものである。ゆえに、世界的危機への対処の中心が国際的軍事組織や研究機関にあって主人公はその命令に従って行動するような、それまでの“ヒーローもの”にみられた物語類型に対するアンチテーゼとしての側面を持つ。このため、主人公の責任は増大し、得られる援助の希少さから危機の困難さも増して、よりヒロイックな演出が可能となった。また主人公の行動する正当性が上位の機関から証明されないため、広くは人類救済から狭くは恋人や自分自身を救うことまで何を持って正当性の根拠とするかが主人公にとってしばしば重大な心理的問題となる[2]。これは社会的・哲学的テーマを導入することを容易にする一方で、後述する個人の内面世界がクローズアップされてくる一因となる。その一方で、主人公やその直接的観察者による視点で状況説明のみならず多くを語り尽くせるほどの狭い「セカイ」で往々にして物語そのものは完結している側面もある。
精神世界や感情と世界とが直結している設定を特徴とするため、登場人物のトラウマが強く全面に押し出される事が多い。個人がそのトラウマを克服出来るかどうかがそのまま世界を救えるかどうかに繋がることも多い。
発生と過程[編集]
セカイ系という単語の初出は2002年10月下旬からで、発言者は「ぷるにえブックマーク」のぷるにえであると言われている。
かつてのヒーロー物であれば、主人公は絶対的正義であり敵は絶対的悪であるのが前提であった。主人公は世界を悪の手から救う正義の味方として敵を容赦なく殺しまくった。
しかし、時代が移るにつれて勧善懲悪型のアニメから、優れているが故に日常生活で一般人と軋轢を生んだり、自分自身の存在意義について悩むヒーローが登場するようになった。ここで描かれる主題は、強いヒーローではなく、現実の中のヒーローである。
その後、「正義」や「世界を守る」とは何か、と言うことを視聴者に問いかけるような作品を経て、『新世紀エヴァンゲリオン』によってこのジャンルの爆発的増加に繋がる。
「セカイ系」における主人公の悩み(弱さ)は、それまでの漫画やアニメ等に登場する、自分の存在・行動に迷いのない強い主人公への反動とされている。
さらには、子供向け娯楽・勧善懲悪の啓蒙としてのアニメが、大人の鑑賞に耐えるメディア・正義の多義性や人生を語りうるアニメとなる上での必然として論ずる者などもいる。その時代の変遷の象徴は『マジンガーZ』や『鉄腕アトム』から『機動戦士ガンダム』を経て『新世紀エヴァンゲリオン』へ至るというものとなる。
1990年代の時代背景の中、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のブームとともにジャンルとして形成される。そのため、ポストエヴァンゲリオン症候群やエヴァ系と呼ばれることもある。また、小説における『ブギーポップシリーズ』で提示された世界の危機という概念もこの潮流の確立に貢献している。これに『最終兵器彼女』を加えた三作品をセカイ系というジャンルを確立した原点とみなすこともある。
セカイ系、またその手法を用いたと言われる作品[編集]
アニメ[編集]
- 異種知性体であるヒロインを、主人公が受け入れるか受け入れないかによって2つの種族の戦争か、または平和になるのかが決まる。
- 主人公たちの敗北が人類の滅亡に直結している。最終的に主人公は神にも等しい存在となり、他者のいない世界を望む。その結果として人類は個としての存在を失い、一つの生命体へと昇華される。しかし、主人公はその世界を拒否し、結局人類の消滅は回避される。
- 主人公は世界を自分の思う通りに書き換える権利を有する。
漫画[編集]
- 人類を巻き込んだ戦争と環境激変によって地球の限界がくる前に、ヒロインである女性生体改造型最終兵器が地球を完全破壊。
- 『ZERO』冬目景
- 『大日本天狗党絵詞』黒田硫黄
- 『ディスコミュニケーション』植芝理一
- 『デーモン聖典』樹なつみ
- 『なるたる』鬼頭莫宏(地球生命体の抹消と再生)
- 『ぼくらの』鬼頭莫宏(増殖しすぎたパラレルワールドの淘汰)
- 『八雲立つ』樹なつみ
- 『夢使い』植芝理一
小説[編集]
- 『イリヤの空、UFOの夏』秋山瑞人
- 敵性異性人に唯一対抗できる兵器を扱えるヒロインが、自分が大切に思える存在(第三者によって作為的に引き合わされた主人公)のいる地球の存続を望むかどうかによって(主人公を好きだと思えるかどうかによって)、地球の命運が決まる。
- 『殺×愛 -きるらぶ-』風見周
- 人類に対する敵性存在・天使を絶滅できる唯一の方法が、人類に対して敵意を持たない天使であるヒロインを、主人公が「心の底から『愛』したうえで『殺』す」というセカイ系そのものの方法。
- 『ブギーポップシリーズ』上遠野浩平
- 人類は進化の過程で、特殊な力を発現させる者が出始めた。また世界そのものと言ってもいいくらいに巨大な組織は、人間を改造した特殊能力を持つ者たちを手足として活動していた。前者2つの内、「世界全体の可能性を閉塞させかねない」能力を持つもの、または世界にとって存在そのものが許容できない者を自動的に殺す存在が、ブギーポップ。
- 『戯言シリーズ』西尾維新
- 『涼宮ハルヒシリーズ』谷川流
- ヒロインは世界を改変し、自らの願望を無意識の内に実現させるという超常的な能力を有している。しかし、それはヒロインの精神が不安定になると世界のバランスが崩れかねないという危険性を内包している。故に、その事実を知る周囲の人間はヒロインの精神を安定させることに努めざるを得なくなる。
- 『絶望系 閉じられた世界』谷川流
- 『レジンキャストミルク』藤原祐
- 『インベーダー・サマー』菊地秀行
- 地球の歴史を書き換えることで浸透するインベーダーが主人公の住む町に出現。しかし主人公だけは、その力に影響を受けなかった。
思想[編集]
ゲーム[編集]
- 『レイディアントシルバーガン』トレジャー
- 『高機動幻想ガンパレード・マーチ』『絢爛舞踏祭』アルファ・システム
- 『CROSS†CHANNEL』FlyingShine
- 『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』エルフ
- 『沙耶の唄』Nitro+
- 『終ノ空』ケロQ
- 『ジサツのための101の方法』公爵
- 『Forest』ライアーソフト
- 『マブラヴ』âge
- 『終末少女幻想アリスマチック』キャラメルBOX
- 『アルシャードガイア』ファミ通文庫 井上純弌+菊池たけし/F.E.A.R. ISBN 4-7577-2898-0
- 『エンゼルギア 天使大戦TRPG』ログインテーブルトークRPGシリーズ 井上純弌/F.E.A.R. ISBN 4-7577-1469-6
- 『Apocripha/0』スタックソフトウェア
- 『花帰葬』Hacca works
特撮[編集]
参考文献[編集]
あくまでセカイ系をめぐる議論と影響関係にあると思われるベーシックな批評など、および議論の参考となる文献のみ。
- 『網状言論F改』東浩紀編著 青土社 2003年
- 『美少女ゲームの臨界点』東浩紀編著 波状言論 2004年
- 『リアルの変容と境界の空無化』笠井潔 『空の境界』(奈須きのこ)下巻解説として所収 2004年 講談社
- 『総特集 西尾維新』 ユリイカ9月臨時増刊号 青土社 2004年
- 『「人間嫌い」の言い分』 長山靖夫 光文社 2004年
- 『パブリック・エナミー・ナンバーワン』元長柾木 講談社MOOKファウスト第五号所収 講談社 2005年
- 『右翼と左翼』浅羽通明 幻冬舎 2006年
これだけでなく、インターネット上で自身のセカイ系についての考察を公開している人も非常に多い。そのため、「セカイ系」をキーワードに検索しても多くの参考となる文書が出てくるのでそちらも余裕があれば読むことをすすめておきたい。
脚注[編集]
- ↑ 『新世紀エヴァンゲリオン』第25話「Air」でのネルフおよびゼーレの行動、『ブギーポップ・スタッカート――ジンクスショップへようこそ』pp.277-278にて統和機構中枢が述べた自らのシステムの限界、『涼宮ハルヒの溜息』pp.230-231に述べられた情報統合思念体の世界改変に対する基本姿勢等を参照
- ↑ 『新世紀エヴァンゲリオン』第拾九話「男の戰い」におけるシンジと加持の対話、『交響詩篇エウレカセブン』コミックス第2巻pp.158-159のレントンの告白他
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