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厚生労働省が2007年6月~7月にかけてネットカフェなどの24時間営業の店舗で就寝・夜明かしをしている人の実態調査を初めて行い、全国で推定約5,400人がいることがわかった。 | 厚生労働省が2007年6月~7月にかけてネットカフェなどの24時間営業の店舗で就寝・夜明かしをしている人の実態調査を初めて行い、全国で推定約5,400人がいることがわかった。 | ||
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+ | === 「若年層ホームレス」という新現象 === | ||
+ | 雑誌販売をホームレスに任せて自立を支援する「ビッグイシュー日本」(大阪市北区)が新たな問題に直面している。 | ||
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+ | [[平成15年]]に創刊した当初は中高年がほとんどだったホームレスの様相が変容し、[[平成20年]]の[[リーマンショック]]前後から、30代以下の若者が増えているのだ。こうした若者たちは毎日立ち続ける雑誌販売の仕事を続けられないことが多く、若者を支援する他の市民グループとの連携が不可欠となっている。 | ||
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+ | 奈良県出身の入島輝夫さん(51)は、30代で親元を離れ、建築関係の仕事に就いていたが、そこでの人間関係に疲れてホームレスに。2年ほど[[神戸市]]内で段ボールや空き缶を集める仕事をしていたが、将来に不安を感じて[[平成22年]]11月からビッグイシューの販売員になった。 | ||
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+ | 毎日午前10時から午後9時までJR[[高槻駅]]近くで販売を続けるが、食費や販売場所までの交通費、雑誌の仕入れなどを除くと、たまに[[ネットカフェ]]に宿泊するのがやっと。住居を構えるようになるのは容易ではないが、いつか悩める大人が集う「大人の駄菓子店」を開きたいとの夢を描く。 | ||
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+ | 阪急[[塚口駅]]南口で販売する[[大阪府]]出身の[[吉田茂]]さん(53)は以前、仕事で右手に大けがをして[[生活保護]]を受給していた。保護を自ら絶ってホームレスになり、2014年4月からビッグイシュー販売員に。現在は販売員仲間2~3人と野外で寝泊まりする。 | ||
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+ | 販売員の多くは中高年だが、比較的若い人もいる。そのうちの1人、40代前半の男性は勤務していた会社の合併に伴う人員整理で解雇され、家を失った。2013年秋から販売の仕事を始めて約1年、最近アパートを借りることができたという。 | ||
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+ | 「天気が悪いと仕事ができないのが悩み。今はとにかく、ビッグイシューの販売者として頑張りたい」 | ||
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+ | 雑誌「ビッグイシュー日本版」は[[平成15年]]9月に大阪で創刊。毎月1日と15日に発売し、販売をホームレスに独占させて仕事を提供する。最初の10冊は販売員に無料で提供、この売上金をもとに1冊170円で仕入れてもらう。定価350円で、1冊売れるごとに180円が収入となり、アパートを借りて自立を目指すための資金にできる。 | ||
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+ | ビッグイシュー日本の佐野章二代表(72)が異変に気づいたのは、リーマンショック前年の[[平成19年]]3月。仕事を求めて事務所を訪れた13人のうち、7人が30代以下だった。それまでに関わった人たちの大半はかつて建設などの現場で働いていた中高年だったが、その類型に当てはまらない人ばかりだった。 | ||
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+ | 「びっくりした。きちんと調べなければと2年半がかりで、若者50人からヒアリング調査をしました」。 | ||
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+ | ビッグイシュー日本が30代以下のホームレス50人に聞き取り調査した結果によると、路上のみで過ごす人は24%。大半の人が終夜営業店舗と路上を行き来していた。貧困家庭に育った人が多く、7割を超える人が家族と連絡が取れない。抑鬱傾向にある人が42%、アルコールや[[ギャンブル]]などへの依存傾向がある人も36%にのぼった。 | ||
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+ | これまで多かった中高年のホームレスの多くは製造や建設、土木の元現場作業員。自分のしてきた仕事に誇りを持ち、路上に毎日立ち続ける雑誌販売の仕事にも耐えられる人が多いという。対して若者は労働経験自体が少なく、ビッグイシューの販売を続けられる人は少数だ。虐待を受けた経験や障害、依存症などさまざまな問題を複合的に抱えた若者も多く、ひとくくりにできない。 | ||
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+ | 「だからといって見過ごすわけにはいかない。他の支援策を考えなければ」。 | ||
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+ | 他の民間団体との連携を深め、今年3月に「若者応援プログラム集」を作成。雑誌販売の仕事だけでは自立に向かえない若者たちに、個別の事情に合わせた支援の場を紹介している。 | ||
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+ | 佐野さんは「失業して収入をなくし、家賃を払えなくなり住居をなくすだけでは人はホームレスにはならない。友人や家族などの身近な絆を失い、独りぼっちになり希望をなくしてホームレスになる」と訴える。社会的に孤立する人を減らし、「ホームレス予備軍」を路上に出させないために何ができるか、次の支援策も模索しているという。 | ||
=== 地理的分布 === | === 地理的分布 === |
2015年3月23日 (月) 20:34時点における版
ホームレスは、狭義には様々な理由により定まった住居を持たず、公園・路上を生活の場とする人々(路上生活者)、公共施設・河原・橋の下などを起居の場所とし日常生活を営んでいる野宿者や車上生活者のこと。広義には、一時施設居住や家賃滞納、再開発による立ち退き、ドメスティックバイオレンスのため自宅を離れなければならない人など住宅を失った人のこと。
概要
日本のホームレスの自立の支援等に関する特別措置法などの定義は非常に狭義で野宿者・路上生活者のみをホームレスと称している。さらに広義のホームレスの定義には、野宿者・路上生活者と住宅を失う危機にある人に加え、適切でない住居に居住する人(危険だったり修理不能、大修理を要する住居、最低居住水準未満世帯)も含める。
テント生活をしていても中東のベドウィンやモンゴルの遊牧民、ロマのような不定住民をホームレスとは呼ばない。また戦争や政治的迫害で元居住地から逃げてきて定住する住居がない人(=難民)や、自然災害や事故で定住する住居を失った人(=被災者)はホームレスとは見なされない。
金銭的事情等で住居を持てないものだけではなく、米国の実業家ハワード・ヒューズのように、自らの意思でホームレスを選択する場合もある。ベトナム戦争期のアメリカでは、志願してホームレスになる若者が現れた。住所不定になれば、召集令状の送付先がなくなるからである。
かつては乞食・ルンペンなどと呼ばれており、特に日本では浮浪者という名称が定着していたが、差別用語との指摘を受けて放送禁止用語となったことにより、海外での同様な状況を指す英語の the homeless に由来する「ホームレス」という呼称がマスメディアを中心に外来語として定着した。
実態と調査
ホームレスに至る原因
ホームレスに至るまでの経緯は人により様々であるが、一般的には下記のパターンのいずれかである。
- 破産、失業、病気、障害、などが原因で、住宅購入のための借金を返済できなくなり、住居を退去しなければならなくなり、代わりの住居を確保できない状況である。
- 収入が減少した、収入が予想や期待に反して増加しなかった、などが原因で、住宅購入のための借金を返済できなくなり、住居を退去しなければならなくなり、代わりの住居を確保できない状況である。
- 雇用主から提供されている住居である官舎・社宅・寮に居住していたが、失業により住居を退去しなければならなくなり、代わりの住居を確保できない状況である。
- 失業、無職、病気、障害、などが原因で、住居の賃貸料金を支払えなくなり、住居を退去しなければならなくなり、代わりの住居を確保できない状況である。
- 銀行、事業者金融、消費者金融、ヤミ金融などからの借金を返済できなくなり、取り立てから逃げるために住居を退去し、代わりの住居を確保できない状況である。
- 離婚や離婚を求めての別居により、住居を退去しなければならなくなり、代わりの住居を確保できない状況である。
- ドメスティック・バイオレンス、復縁を求める元配偶者のストーカー行為から逃げるため、住居を退去しなければならなくなり、代わりの住居を確保できない状況である。
- 親権者に養育されていた児童が、常習的な児童虐待に耐えられなくなった児童が家出し、代わりの住居を確保できない状況である。
- 警察から犯罪の被疑者として公開手配され、逃亡するために住居を退去しなければならなくなり、代わりの住居を確保できない状況である。
日本の行政・企業・社会は、失業した人間を受け入れる体制を十分には整えていないため、リストラ(=整理解雇)に伴う生活破綻に備えての消費行動の自発的自粛や日本経済の悪循環を引き起こしている。日本経済を好循環にのせるためにも、政策の見直し、または、行政による失業者の再チャレンジ支援の充実が切望されている。
定住型と移動型
ホームレスは、幾つかのタイプに分類することが可能で、例えば定住型と移動型に分類されるが、これは厚生労働省が実態調査の際におこなった分類である。
- 定住型は、公園・駅舎などの公共の場を一定期間占拠し、段ボールハウスなどを設置して生活している。しばしば公共の場の不法占拠かどうかを巡り行政と対立する。
- 移動型は、昼間は仕事をしていたり、公共施設などを転々として時間を過ごしていたりするが、夜間になると雨風を凌げる場所を探して睡眠をとっている。都市間を移動する漂泊型のホームレス(行旅人の一種)も存在する。
- 冬季は、凍死を避けるために夜間は起きて過ごし、日中、公共施設や駅構内などで睡眠をとる場合もある。
近年の日本における傾向
日本でも、段ボールやブルーシート等を資材としてテント・小屋掛けをしたりする者が増加し、新たな社会問題となっている。
景気の状況によりホームレス人口の増減があり、バブル崩壊後の不況下でその数は増し、2003年1月~2月の厚生労働省調査では全国で25,296人に達していた。しかし、2007年1月の厚生労働省調査では景気が回復傾向にあるため、全国で18,564人と減少している。
中高年男性が95%を占めており、平均年齢は57.5歳である。まれに子供を伴ったホームレスも確認されているが、開発途上国に見られるような子供単独のホームレス(ストリートチルドレン)は日本では顕在化していない(しかし、2007年に発刊されベストセラーとなった、お笑いコンビ「麒麟」の田村裕による著書『ホームレス中学生』において、一時公園で生活をしていたこと等を明かした事例もある)。
厚生労働省が2007年6月~7月にかけてネットカフェなどの24時間営業の店舗で就寝・夜明かしをしている人の実態調査を初めて行い、全国で推定約5,400人がいることがわかった。
「若年層ホームレス」という新現象
雑誌販売をホームレスに任せて自立を支援する「ビッグイシュー日本」(大阪市北区)が新たな問題に直面している。
平成15年に創刊した当初は中高年がほとんどだったホームレスの様相が変容し、平成20年のリーマンショック前後から、30代以下の若者が増えているのだ。こうした若者たちは毎日立ち続ける雑誌販売の仕事を続けられないことが多く、若者を支援する他の市民グループとの連携が不可欠となっている。
「ビッグイシューが好きで続けている。若い人が買ってくれるとうれしい」
奈良県出身の入島輝夫さん(51)は、30代で親元を離れ、建築関係の仕事に就いていたが、そこでの人間関係に疲れてホームレスに。2年ほど神戸市内で段ボールや空き缶を集める仕事をしていたが、将来に不安を感じて平成22年11月からビッグイシューの販売員になった。
毎日午前10時から午後9時までJR高槻駅近くで販売を続けるが、食費や販売場所までの交通費、雑誌の仕入れなどを除くと、たまにネットカフェに宿泊するのがやっと。住居を構えるようになるのは容易ではないが、いつか悩める大人が集う「大人の駄菓子店」を開きたいとの夢を描く。
阪急塚口駅南口で販売する大阪府出身の吉田茂さん(53)は以前、仕事で右手に大けがをして生活保護を受給していた。保護を自ら絶ってホームレスになり、2014年4月からビッグイシュー販売員に。現在は販売員仲間2~3人と野外で寝泊まりする。
「これで良かったと思う。屋根のある家に住みたいとは思うが、今は仲間もいるから楽しい」と日焼けした顔をほころばせた。
販売員の多くは中高年だが、比較的若い人もいる。そのうちの1人、40代前半の男性は勤務していた会社の合併に伴う人員整理で解雇され、家を失った。2013年秋から販売の仕事を始めて約1年、最近アパートを借りることができたという。
「天気が悪いと仕事ができないのが悩み。今はとにかく、ビッグイシューの販売者として頑張りたい」
雑誌「ビッグイシュー日本版」は平成15年9月に大阪で創刊。毎月1日と15日に発売し、販売をホームレスに独占させて仕事を提供する。最初の10冊は販売員に無料で提供、この売上金をもとに1冊170円で仕入れてもらう。定価350円で、1冊売れるごとに180円が収入となり、アパートを借りて自立を目指すための資金にできる。
2014年4月末までの販売登録者はのべ1,543人、170人が自立して“卒業”した。仕事の提供以外にも支援を広げようとNPO法人「ビッグイシュー基金」を設立し、路上生活をしている人たちが活用できるサービスを紹介する「路上脱出ガイド」の配布も続けている。
ビッグイシュー日本の佐野章二代表(72)が異変に気づいたのは、リーマンショック前年の平成19年3月。仕事を求めて事務所を訪れた13人のうち、7人が30代以下だった。それまでに関わった人たちの大半はかつて建設などの現場で働いていた中高年だったが、その類型に当てはまらない人ばかりだった。
「びっくりした。きちんと調べなければと2年半がかりで、若者50人からヒアリング調査をしました」。
そして浮かび上がったのが、路上で寝るのを避け、24時間営業のファストフード店やコンビニをはしごしながら夜を明かす若者たちの姿だった。
ビッグイシュー日本が30代以下のホームレス50人に聞き取り調査した結果によると、路上のみで過ごす人は24%。大半の人が終夜営業店舗と路上を行き来していた。貧困家庭に育った人が多く、7割を超える人が家族と連絡が取れない。抑鬱傾向にある人が42%、アルコールやギャンブルなどへの依存傾向がある人も36%にのぼった。
これまで多かった中高年のホームレスの多くは製造や建設、土木の元現場作業員。自分のしてきた仕事に誇りを持ち、路上に毎日立ち続ける雑誌販売の仕事にも耐えられる人が多いという。対して若者は労働経験自体が少なく、ビッグイシューの販売を続けられる人は少数だ。虐待を受けた経験や障害、依存症などさまざまな問題を複合的に抱えた若者も多く、ひとくくりにできない。
「だからといって見過ごすわけにはいかない。他の支援策を考えなければ」。
他の民間団体との連携を深め、今年3月に「若者応援プログラム集」を作成。雑誌販売の仕事だけでは自立に向かえない若者たちに、個別の事情に合わせた支援の場を紹介している。
佐野さんは「失業して収入をなくし、家賃を払えなくなり住居をなくすだけでは人はホームレスにはならない。友人や家族などの身近な絆を失い、独りぼっちになり希望をなくしてホームレスになる」と訴える。社会的に孤立する人を減らし、「ホームレス予備軍」を路上に出させないために何ができるか、次の支援策も模索しているという。
地理的分布
ホームレスは、廃屋や山小屋等に無断で住み着いていたり、無人島のようなところでテント生活をしている者も含むので、都市のみに限定して分布しているわけではないが、実数としては大都市に多い。
国によって「ホームレス」の定義は異なるが、日本においては比較的冬が寒い東日本に9,225人(富山県、岐阜県、愛知県以西を西日本とした場合)、比較的冬が暖かい西日本に9,339人とほぼ同数で、気候条件と分布の相関はそれほどでもない。都道府県別では東京都が最も多く2,672人、次いで大阪府2,500人、神奈川県1,814人の順。市区別では東京23区が最も多く2,396人、次いで大阪市2,171人、横浜市691人の順となっている。
海外においてはカナダで気候が温暖なバンクーバーにホームレスが多く集まっているという事例がある。アメリカ合衆国では、2006年の保健福祉省の調査によると、60万人のホームレスが存在するという。
フランスでは約8万6500人のホームレスがいるとされる。
ロシアのホームレスの数は、2011年時点で、内務省発表で35万、専門家の間では150~420万人に上るとみられている。ロシアの零下30度まで下がる気候の中でも、行政の支援はほとんど無いとされる。
ホームレスに対する支援
西日本、特に大阪では、主にキリスト教系の宗教団体やボランティア組織が多く、それらが炊き出しや援助を行うことがある。 横浜市でも炊き出しや援助が行われている。
2002年8月ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法が施行され、国による本格的な支援が始まり、2003年2月には厚生労働省による初の全国調査が行われた。2007年4月にも全国での実態調査が行われている。
- 当面の生活のための収入や貯蓄や財産がない人は生活保護を受けられれる。
- ドメスティック・バイオレンスや、復縁を求める元配偶者から逃げてきた女性に対しては、婦人保護施設や民間の駆け込み寺や女性のためのシェルターが受け入れている。
- 児童の場合は児童福祉施設など受け入れ施設がある。
行政の自立支援施策(大都市の事例)
- 東京都による報道発表によれば、「自立支援システム」の第一ステップとして「緊急一時保護センター」があり、第二ステップとして「路上生活者自立支援センター」を設けている。
- 第一ステップ(緊急一時保護センター)は、「路上生活からの早期の社会復帰を促進するため、ホームレスの一時的な保護や心身の健康回復を図るとともに、自立支援センターへの入所など以後の処遇方針を明らかにする」。
- 第二ステップ(路上生活者自立支援センター)では、「緊急一時保護センター入所者のうち、就労意欲があり、心身の状態も就労に問題がないと認められた人を対象に、原則2か月間の入所期間で、食事の提供、職業、住宅等についての相談を行い、ホームレスの就労による自立を促進」する。
- しかし、自立支援センターを経て定職に就いた者が再び一時保護センターから自立支援センターを再び利用するという繰り返しも見られる。
- これらの施設建設に対する周辺住民の反対運動などもあるが、東京都の場合現状では5年毎の都内の他区への移設という手法によって対処しているようである。
- こうした「自立支援」策にもかかわらずホームレスがなくならないのは、行政の側では、結局本人に自立への意思がなく、路上生活という生き方を選択しているからである、という見方もある。
- そもそも「自立支援」とは「法外援護」(生活保護の外での応急援護)をまとめたものだが、これは国籍要件と(他に活用する資産・能力のない)生活困窮だけを要件として適用すべき生活保護法の趣旨に反して、ホームレスなどを同法の保護から不当に排除するものだという批判もある。
- また一方、たとえばアルコール依存症の人――病的に飲酒が止められない人――が、一度の飲酒が見つかり施設から放逐されたという事例もあるように、粘り強く親身な取り組みが欠けている、または福祉担当職員数や資金の不足によりそれを余儀なくされている現状がある。
- 東京都は他にも、野宿者の自立を促すため、2004年度から野宿者に対し2年間住宅を安い家賃で貸す「ホームレス地域生活移行支援事業」を行っているが、自立に成功するのは1割ほどしかいない。
民間における支援活動
緊急支援
アメリカなどでは教会を中軸とした市民レベルの支援活動が行われている。
- 日本においても各宗教寺社・教会や民間の支援団体・ボランティア等による炊き出しなどがあり、篤志家・市民から寄せられた衣類等の寄付物品が配られている。
- 北は北海道から南は沖縄県まで炊き出しや医療支援、居住地確保などの自立支援に取り組む支援団体が確認されており、2007年6月9日には全国のホームレス支援団体の連合組織である「ホームレス支援全国ネットワーク[1]」が設立された。
- 炊き出しは行倒れを防ぐための最低限の活動であり、元野宿者が仲間のために行う場合もある。
- ホームレスの生活保護受給に関して、保護適用が適正に行われるよう支援している団体もある。
- 各地の弁護士会がホームレス・野宿者向けのQ&A(一問一答)を公開している例もある。→「弁護士に聞いてみたい 「野宿者からの質問と回答~困ったときのこの一冊 ~京都弁護士会[2]」
- 2008年末~2009年頃。いわゆる派遣切りなどで職を失ったりした人たちのために、年越し派遣村が都内の公園に設けられた。
自立支援の例
- ホームレスの人々を販売者とする雑誌を発行することで、現金収入を得る機会を提供し自立を支援する事業が始まっている。
- イギリスのThe Big ISSUEを発祥とし、日本独自の記事を中心としたストリート新聞「ビッグイシュー日本版」が発行されている。
- 東京や大阪などの大都市などでホームレスの人たちが街頭に立ち、道行く人達に直接販売している姿が見られる。
- ロザンヌ・ハガティのコモン・グラウンド・コミュニティー。
問題点
生活上の問題点
治安
ホームレス襲撃事件が後を絶たず、少年等を加害者とするホームレス殺害・傷害事件が発生している。横浜浮浪者襲撃殺人事件などをはじめ、各地で頻発している。加害少年たちは「ケラチョ(虫けらっちょ)狩り」「街の掃除」と嘯いており、罪悪感を持たない。東京・北区赤羽では、たまたま公園でごろ寝していたネットカフェ難民の男性が、ホームレスだと思い込んだ少年達にライターオイルをかけられ火を点けられる事件が起きた (男性は火傷で重傷)。また、冬季の凍死など毎年数百人もの路上での死者(官報では行旅死亡人)が出ている。この他に、ホームレス同士による事件(相手を殺害するケースもあり)も発生している。理由は金欲しさ、また住むところがなく困っていることなどからの理由により。
アメリカでもホームレスの襲撃事件は常態化しており、全米ホームレス連合の2009年8月7日発表の調査によると、2008年に発生したホームレス襲撃事件は106件で、うち27件では被害者の路上生活者が死亡しており、発覚してない事件も多いと考えられている。
市民権
住所不定となるため、住民票が削除されたり(職権消除)、それにともない選挙権が行使できなくなったりすることがある。長年行方不明であったために親族から役所へ失踪の届けがなされ、戸籍が抹消されている例も見られる。住民票を消されると、選挙権・被選挙権を失う他、生活保護や運転免許取得など、行政の手続きが必要な行為のほとんどが実質的に受けられなくなる。
あいりん地区をめぐる問題
大阪市では、あいりん地区(釜ヶ崎)の釜ヶ崎解放会館などに便宜上の住所登録を行うことが黙認されていた。市職員が登録を勧めた事例もあるという(また、横浜市でも寿町会館に便宜上の住所登録が黙認されているという)。しかし、2006年12月に、解放会館の住民票を不正利用した男が逮捕された事件により、大阪市の事例が明らかになった。この事件はホームレスは単なる被害者であったが、これをきっかけにマスコミ、特に読売新聞は12月16日、市民権行使による参政を「違法投票」と報じるなど、ホームレスへの非難報道を行った。2007年2月27日、關淳一市長は「居住実態のない」ホームレスの住民票削除を発表。建設労働者の男性が大阪高等裁判所に削除差し止めの仮処分申請を行い、3月1日に認められたことなどから、大阪市は3週間の延期を発表。市選挙管理委員会は3月26日、早急に住民登録の適正化を図るよう求める依頼書を関市長に提出。選管はホームレスなど側との交渉の席上「野宿者は選挙権を行使できない」と主張したとされる。統一地方選挙による大阪市議選告示前日の3月29日、「選挙が無効となる恐れがある(ホームレスの選挙権行使を理由に、選挙無効で訴えられる恐れがある)」として、大阪市はホームレスら約2,000人の公民権を剥奪した。
公民権を剥奪された者が、政府を相手取って国家賠償訴訟を起こしたが、2009年10月23日、大阪地裁(高橋文清裁判長)は原告の請求を棄却し、大阪市と市選挙管理委員会の応対を全面的に認めた。
日常の困難
ホームレスになる直前の職業は、日雇い労働を代表とするもともと不安定な就労形態であった者が多く、建設不況などにより日雇い労働市場が縮小した現在、高齢化の問題も手伝って、仕事に就くのに困難な状況が伴っており、職業訓練や新たな雇用の創出などの対策が求められる。また、アルコール依存症などによる心身面の問題を抱える者については、一旦、生活を立て直した後で、また再び野宿に戻る場合があるなどの問題を抱えている。
行政の対応
法制度的な問題としては、生活保護法によれば、生活に困窮し資産能力を活用し他に手段がない場合には保護の適用を受けて最低限度の生活を営むことが出来るはずである。
- しかしホームレス本人の稼働能力の不活用などの理由で保護の要件に欠けるとされる場合があり、セーフティネットとしての生活保護法が充分機能していないとする意見が一部である。
- 特に、男性の野宿生活者に対しては一律に門前払いしている場合も多い。
- 女性の野宿生活者は性的犯罪の被害者となる危険性が高いので行政側も男性より最優先に対応をしている。
- 働くことを希望しているホームレスが多く、就労による自立が最優先課題であるが、住居・住民票のないことが就職に不利となり、また、アパートなどを借りる際の保証人がいないことが住居を得るうえで障害となっている。住民登録が抹消されている場合は印鑑登録ができず、このため賃貸住宅の契約時に求められる実印の提出ができないことなども障害となる[1]。住み込み労働などについても保証人や現住所が必要な場合が多く、ホームレス脱却の手段とはなり得ない。
非合法勢力との関係
ホームレスの中には、暴力団など非合法組織に関係し親族・家族に絶縁され家出をし、ホームレスとなり、死亡後に遺体となって家族のもとに帰る者もいる。また近年、ホームレスが中国から覚せい剤の密輸を行う運び屋として逮捕される事件が発生している。また、雇用助成金を騙し取る目的で設立されたペーパーカンパニーの社長に、ホームレスが仕立て上げられた事件も発生している。
ホームレスの裁判
生活保護の申請に際して、住所不定者の「稼働能力」を争点とした裁判が起こされている。
経緯
1993年7月、住所不定であった男性(当時55歳)が、名古屋市中村区社会福祉事務所へ医療扶助、生活扶助、住宅扶助といった生活保護の申請をした。
- しかし同事務所は、「就労可能」との医師判断をもとに男性への保護決定を医療扶助のみとしたため、1994年5月、男性はこれを不服とし、同決定の取り消しと慰謝料百万円の支払いを求めて、同福祉事務所と名古屋市を相手取り名古屋地方裁判所へ提訴した。
第一審
裁判において男性側は「不況で仕事が少なく、能力を活用しても、最低限度の生活は維持できなかった」「稼働能力があっても、生活が困窮している場合は、生活保護が受けられる」と主張。
- これに対し名古屋市側は「稼働能力があり、能力の活用が不十分で、保護の要件を満たさない」「就労の機会を得ることは可能で、申請当日に、職が得られなくても、急迫していたとは認められない」として、処分の妥当性を主張した。
- 1996年10月、名古屋地裁は原告側(男性)の主張を認め、上記決定を取り消す判決を下したが、名古屋市側は控訴した。
控訴審
1997年8月、名古屋高等裁判所は、1審判決を覆し男性敗訴の控訴審判決を言い渡した。
上告審
男性は最高裁に上告したが、2001年2月、最高裁判所第三小法廷は男性の上告を棄却した。
ホームレスと文化
廃品回収と、その周辺事情
彼らの僅かな収入源の一つに、回収業者が廃品の買取をする方法や直接販売可能な廃品の買取がある。前者が段ボールやアルミ缶、後者は週刊誌などの雑誌である。段ボール集めの場合、古紙回収業者がホームレスにリヤカーを提供し、安い料金で街中の段ボールを無断で集めさせる。
しかし最近では、段ボールも無料での引取りがなくなり、放火の危険性からも街中では見られなくなりつつある。缶に至っては、“資源ゴミは自治体が所有権を留保する有価物”であり、集積所からの持ち出しは窃盗罪に問われる。
段ボール・ハウス絵画
バブル経済崩壊後の企業倒産激増等により、インテリや芸術家もホームレスとなり、JR新宿駅西口地下街では、ピーク時で300名のホームレスが段ボール・ハウスで寝泊りしていた。1995年からは、若手芸術家(武盾一郎ほか)やホームレスとなった芸術家が、段ボール・ハウスに絵画を描き始め、1998年までに800軒の絵画が描かれた。 2005年には、その10周年を記念して「新宿区ダンボール絵画研究会」が結成され、武盾一郎が会長、深瀬鋭一郎が事務局長、深瀬記念視覚芸術保存基金が事務局となり、美術評論家の中原佑介、毛利嘉孝なども参加して、研究叢書として「新宿ダンボール絵画研究」が発刊された。
まちづくり
日雇い労働市場(寄せ場)には多数の簡易宿所(いわゆる「ドヤ」)が集まった街があり、日雇い労働者がひしめく独特の雰囲気がある。
ホームレスを題材にした作品
詳細はCategory:ホームレスを題材にした作品を参照。
脚注
- ↑ 賃貸住宅の借入ができないから住民登録ができない、住民登録が無いので印鑑登録ができず賃貸借契約ができない、というジレンマ。
関連項目
- 乞食、ホーボー、野宿、車上生活者、スコッター、ホームレス・ワールドカップ
- ドヤ街、山谷 (東京都) - きぼうのいえ、寿町 (横浜市)、あいりん地区
- ホームレス自立支援施設、ホームレス緊急一時宿泊施設、無料低額宿泊所、簡易宿泊所、救貧院
- 施設管理権、浮浪罪
- ボランティア、フィランソロピー、チャリティー
- 横浜浮浪者襲撃殺人事件
- 河原町のジュリー
参考文献
- 青木秀男 編著『場所をあけろ! 寄せ場/ホームレスの社会学』松籟社 1999年1月 ISBN 4879841986
- ありむら潜『カマやんの野塾 漫画ホームレス問題入門』かもがわ出版、2003年12月、ISBN 4876997829
- ネルス・アンダーソン 広田康生 訳『ホーボー ホームレスの人たちの社会学』ハーベスト社 上:1999年5月 ISBN 4938551411、下:2000年11月 ISBN 4938551519
- 原著: Nels Anderson, The hobo
- 岩田正美『ホームレス/現代社会/福祉国家「生きていく場所」をめぐって』明石書店 2000年3月 ISBN 4750312665
- 梅沢嘉一郎『ホームレスの現状とその住宅政策の課題 三大簡易宿所密集地域を中心にして』第一法規出版 1995年6月 ISBN 4474004922
- 笠井和明『新宿ホームレス奮戦記 立ち退けど消え去らず』現代企画室 1999年7月 ISBN 4773899077
- 風樹茂『ホームレス入門 人間ドキュメント 上野の森の紳士録』山と溪谷社 2001年6月 ISBN 4635330346/改題『ホームレス入門 上野の森の紳士録』角川文庫 2005年1月 ISBN 4043778015
- 風樹茂『ホームレス人生講座』中公新書ラクレ 中央公論新社 2002年11月 ISBN 4121500709
- 金子雅臣『ホームレスになった 大都会を漂う』築地書館 1994年2月 ISBN 4806756237 ちくま文庫 2001年11月 ISBN 448003675X
- 北村年子『大阪・道頓堀川「ホームレス」襲撃事件 “弱者いじめ”の連鎖を断つ』太郎次郎社、1997年10月、ISBN 4811806417、[3]
- 櫛田佳代『ビッグイシューと陽気なホームレスの復活戦』ビーケイシー 2004年12月 ISBN 4939051323
- 小玉徹ほか『欧米のホームレス問題 下』法律文化社 2003年2月 ISBN 4589026198
- 小玉徹『ホームレス問題何が問われているのか』岩波ブックレット 岩波書店 2003年3月 ISBN 400009291X
- クリストファー・ジェンクス 大和弘毅 訳 『ホームレス』図書出版社 1995年2月 ISBN 4809901955
- 原著: Christopher Jencks, The homeless
- 社会政策学会 編『日雇労働者・ホームレスと現代日本』御茶の水書房 1999年7月 ISBN 427501765X
- 曽木幹太『Asakusa style 浅草ホームレスたちの不思議な居住空間』文藝春秋 2003年5月 ISBN 4163650105
- 長嶋千聡『ダンボールハウス』ポプラ社 2005年9月 ISBN 4591088308
- 中村健吾 ほか『欧米のホームレス問題 下』法律文化社 2004年3月 ISBN 4589027143
- 中村智志『段ボールハウスで見る夢 新宿ホームレス物語』草思社 1998年3月 ISBN 4794208073/増訂改題『路上の夢 新宿ホームレス物語』講談社文庫 2002年1月 ISBN 4062733501
- 福沢安夫『ホームレス日記「人生すっとんとん」』小学館文庫 2000年12月 ISBN 4094050213
- 藤井克彦、田巻松雄 共著『偏見から共生へ 名古屋発・ホームレス問題を考える』風媒社、2003年4月、ISBN 4833110598
- ふるさとの会 編著『高齢路上生活者 山谷・浅草・上野・隅田川周辺その実態と支援の報告』東峰書房 1997年11月 ISBN 488592040X
- 松繁逸夫 安江鈴子 共著『知っていますか?ホームレスの人権一問一答』解放出版社 2003年6月 ISBN 4759282467
- 松島トモ子『ホームレスさんこんにちは』めるくまーる 2004年2月 ISBN 4839701156
- ジェームズ・D・ライト『ホームレス アメリカの影』三一書房 1993年3月 ISBN 4380932028
- 原著: James D. Wright, Address unknown
- E・リーボウ 著 吉川徹 轟里香 訳『ホームレスウーマン 知ってますか、わたしたちのこと』東信堂 1999年4月 ISBN 4887133251
- 原著: Elliot Liebow, Tell them who I am
- 山崎 克明、奥田 知志 ほか『ホームレス自立支援―NPO・市民・行政協働による「ホームの回復」』明石書店 、2006年9月 ISBN 4750324094
- いちむらみさこ著『Dearキクチさん、ブルーテント村とチョコレート』キョートット出版 2006年10月 ISBN 4990263715
- 田村裕著『ホームレス中学生』 ワニブックス 2007年 ISBN 4847017374
- 迫川尚子著『新宿ダンボール村』 DU BOOKS 2013年4月 ISBN 9784925064767