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2009年11月16日 (月) 09:40時点における最新版

ムエタイのハイキック

ムエタイ英語: Muay Thai,Thai boxing、タイ語: มวยไทย)は格闘技の一種でタイの国技。 発音的にはムワイタイが正しいが、日本ではムエタイの語で定着している。 直訳するとムワイはクメール語で1を起源とし、1対1の格闘のことであるため(たとえばプラーン(レスリング)のことをムワイプーランという)「タイ式の戦い」となる。元々は他国の侵攻に対抗するための古式ムエタイだった。ヨーロッパに知られタイボクシング(Thai boxing、タイ式ボクシングの意)と呼ばれることが多い。日本ではタイ式キックボクシングともいわれるケースがあるが、正しくはタイ式ボクシングである。(タイでは、キックボクシングとは絶対言わない。理由は野口ジム襲撃事件を参照。)キックボクシングはムエタイを元に日本風にアレンジしたものであり、厳密には違う競技である。(理由は後述)。両手、両肘、両脚、両膝の八箇所を用いて相手と戦う。

タイにおけるムエタイ[編集]

タイの地方では一般的なスポーツで、日本人の子供が剣道柔道空手に通うのと同じ感覚で地元の講師の元に通う。また祭りなどの際に、人集めの催し物として行われることが多い。年齢、体格が似たもの同士が相手として選ばれる傾向がある。

試合に対する賭けが頻繁に行われ、八百長試合も多いとされる。反面、利害関係の発生により八百長が少ないのではとの意見もある。実際に八百長を疑われる試合では観客からのブーイングにより試合が成立しないこともある。村の試合では、ときに日本の相撲の花相撲に演出が加えられた試合が行われることもある。

ムエタイのタイ国内での社会的ステータスは必ずしも高くない。これは競技が賭博の対象とされており、貧困層のスポーツと見なされているためである。実際にバンコクの二大殿堂では、スポーツとしてではなく賭けの対象として観戦している観衆が大半を占める。そのため富裕層は、日本の親が礼儀を学ばせるために子弟に武道を学ばせるようには、ムエタイを学ぶことは滅多にない。しかし富裕層が海外留学した際、タイ出身と自己紹介するとたいていムエタイ経験を問われ、タイの文化として海外では高く評価されている事実に驚き、帰国した際にムエタイを学ぶ学生も多い。講師も日本の武術と同じく、服従の対象である要出典。男性中心の競技で女性のプロ選手はまれだが、地方の人集めの試合なら女子児童・生徒の参加も比較的認められる。村対抗、学校対抗の試合は頻繁に行われ、賭けが少ない為、八百長が比較的少ない。さらに、国境の町などでも他国との親善試合がよく行われる。

ムエタイの文化[編集]

ムエタイ選手は試合開始前にワイクルーと呼ばれる踊りを踊る。この踊りには自分のトレーナーに感謝を捧げ、神に勝利を願う意味があり、試合前の闘争心を高める効果があるとされる。

ムエタイの魅力[編集]

ムエタイは立ち技世界最強と名高い。しかし、ボクシングのような打ち合いはあまり期待できない。ムエタイの試合は5ラウンドあるが1、2ラウンドは様子見に終始する。これは賭ける客がその様子を見て選手の調子を判断しどちらに賭けるか決めるという意味合いもある。そしてそれ以降のラウンドは延々と首相撲の攻防が繰り返される試合がほとんどであるから、派手な殴り合いを期待をして観戦すると、首相撲が頻繁に行われる馴れ合いの試合に見えることがある。

しかし首相撲の攻防にはとても技術的な駆け引きが行われており、レベルが高くなればなるほど、まずまともに攻撃を食らうことはない。その上タイ人は基本的に小柄であるため、ボクシングの重量級などで見られるような試合でのKOはほとんどなく(というよりKOが頻発すると八百長が疑われてしまう。)、判定にもつれこむ。判定試合がほとんどであるにも拘らず、会場に熱気があるのは、興行が賭けによって成り立ち、またクリンチに見間違える首相撲が、実は高い技術のぶつかり合いだからある。

歴史[編集]

古代[編集]

詳細は 古式ムエタイ を参照

近代ムエタイの完成[編集]

1921年に、第一次世界大戦への参戦のために武器を大量に購入することが必要となってきたため再開。その資金捻出のために国王ラーマ6世がムエタイのトーナメントを開催した。この大会の試合はボクシングのリング上で行われ、時間も測り、レフェリーも置かれた。これがスポーツとしてのムエタイの始まりといってよいだろう。1929年には、拳の保護のためにそれまで使われていた木綿のひもがグローブに改められ、現在の形に近くなった。また、この年にルンピニースタジアムが建設された。

1936年、国名がシャムからタイへ。以降ムエタイの名称ができる。

1945年12月23日に、ラジャダムナンスタジアムが建設された。初めは野外競技場だったが屋根は後に増築された。

1955年、競技ルール(投げ技関節技を禁止、体重制、ラウンド制)ができる。

ムエタイの国際的普及[編集]

1990年代末には、これまでリングに上がることを許されなかった女性にムエタイを行うことが認められ、少しずつ女子ムエタイが行われるようになっている。また、ボクシングに対するアマチュアボクシングに当たる存在としてアマチュアムエタイも行われるようになった。これらはムエタイのオリンピック種目化を目指すタイの国策だといわれている。

またムエタイの国際化の影響として、近年には本場タイで修行し活躍する外国人選手も目立ってきた(ジャン・スカボロスキーなど)。また、過去には日本人3人、中東系フランス人1人が本場タイの王座を獲得した。

の4人である。特に、タイ人選手層の厚いライト級等では外国人選手が入り込む余地がないと言われる程壁が高く、外国人として王座を奪取した功績は大きい(タイ人は比較的小柄・軽量の選手が多く、そのためムエタイの階級はミドル級までしかない<数年前まではウェルター級までしかなかった>。最も選手層が厚いのはバンタム級からフェザー級にかけてであり、ライト級は必ずしもタイ人選手層が厚いとは言えない。ただし、諸外国の選手を含めると中量級に分類されるので、世界的に層が厚いとは言える)。

最近は日本のK-1キックボクシング興行に参戦するタイ人選手(ブアカーオ・ポー.プラムックガオグライ・ゲーンノラシンガオラン・カウイチットサゲッダーオ・ギャットプートンサムゴー・ギャットモンテープ等)が多い。

日本でも2004年4月に世界ムエタイ連盟(W.M.F / The World Muay thai Federation)認定WMFジャパンが正式に発足。元来、アマチュアムエタイには二つの団体、国際アマチュアムエタイ連盟(I.F.M.A.)と国際ムエタイ連盟(I.M.T.F.)が存在していたが、その為参加国90数カ国という大組織にも関わらず様々な混乱が生まれていた。ムエタイのオリンピックの種目化を目指し統合され世界ムエタイ連盟(W.M.F.)が発足した。

試合形式[編集]

アマチュア[編集]

世界ムエタイ連盟の定める所によれば、試合は2分3ラウンド制である。勝敗はKOまたはポイント加点形式で争われる。選手の攻撃をジャッジが有効と判断した場合、コンピューター処理のボタンを押し、ジャッジ5名のうち3名がボタンを押せば、1ポイントが加算される。タイで普段行われるプロのムエタイ同様、パンチよりもミドルキック・ハイキック・膝蹴り・肘打ちの方が重視される。

プロ[編集]

試合形式はラウンド制。1ラウンドを3分間とし、ラウンド間に2分間のインターバルをおく。通常5ラウンド行う。

選手の服装[編集]

アマチュア[編集]

アマチュアムエタイの選手は試合時にキックボクシング用のパンツをはき、ヘッドギア、肘サポーター、ボクシンググローブ、脛サポーター(レガース)そしてプロテクターボディーを身に付けなくてはならない。

プロ[編集]

選手はムエタイ用のトランクスを履きグローブを付けて試合を行う。女子選手は上着を着る。基本的に派手なものが多い。あるいは、企業のコマーシャルの入ったものもある(レッドブルなど)。また、負傷防止のためマウスピースとファウルカップを着用する。ボクシングシューズは履かず、裸足かサポーターをつけ、頭にモンコンと呼ばれる闘いのお守りであるヘッドリングを付ける(試合時は頭のモンコンは外す)。リングに上がる前に会長かトレーナーに被せて貰い、ワイクーが終わって試合直前に会長もしくはトレーナーに外してもらう(ムスリムの場合はモンコンの下に大きな布を被って入場する)。モンコンの色は選手のレベルによって変わり、初心者は白、最高位はピンク色である。モンコンはグローブを着用している選手自身ははずせないため、助手によってはずすことになるが、その際神聖とされる頭部にふれるため頭部に向かって合掌を行う。腕に付けている縄のようなものはお守りでパープラチアットと呼ばれ通常はお寺で僧侶に編んでもらう。

階級[編集]

基本的にはボクシングに準ずる。ルンピニーやラジャダムナンではミドル級まで(重い選手がいない為)。ただし、世界タイトルには団体によってプロボクシングにはない階級スーパーヘビー級が存在することもある。

アマチュア
プロ
世界ムエタイ連盟の定める基準は以下の通り。全21階級。
階級名称 体重
コットン級 38-40kg
ペーパー級 40-42kg
ピン級 42-45kg
ミニフライ級 45-48kg
ライトフライ級 48-49kg
フライ級 49-51kg
スーパーフライ級 51-52kg
バンタム級 52-54kg
スーパーバンタム級 54-55kg
フェザー級 55-57kg
スーパーフェザー級 57-59kg
ライトウェルター級 61-64kg
ウェルター級 64-67kg
スーパーウェルター級 67-70kg
ミドル級 70-72kg
スーパーミドル級 72-76kg
ライトヘビー級 76-79kg
クルーザー級 79-86kg
ヘビー級 86-91kg
スーパーヘビー級 91kg以上
世界ムエタイ評議会の定める基準は以下の通り。全18階級。
階級名称 キログラム/kg ポンド / lbs
ミニフライ級 47.727kg 105lbs
ジュニアフライ級 48.988kg 108lbs
フライ級 50.802kg 112lbs
ジュニアバンタム級 52.163kg 115lbs
バンタム級 53.524kg 118lbs
ジュニアフェザー級 55.338kg 122lbs
フェザー級 57.153kg 126lbs
ジュニアライト級 58.967kg 130lbs
ライト級 61.235kg 135lbs
ジュニアウェルター級 63.503kg 140lbs
ウェルター級 66.638kg 147lbs
ジュニアミドル級 69.853kg 154lbs
ミドル級 71.575kg 160lbs
スーパーミドル級 76.363kg 168lbs
ライトヘビー級 79.379kg 175lbs
クルーザー級 86.183kg 190lbs
ヘビー級 86.183kg 190lbs
スーパーヘビー級 95kg以上 209lbs以上


勝敗[編集]

アマチュア[編集]

世界ムエタイ連盟の定める勝敗の決し方は以下の通り。

  • 試合終了後の総ポイント数の優劣。
  • 20ポイント差が出た時点で、TKO(テクニカルノックアウト)が成立。(ダメージポイントやダウンポイントは特になく、すべて1ポイント扱いである)。
  • ダウンによる10カウントKO勝ち。

プロ[編集]

プロの勝敗の決し方は、以下の通り。

  • KO
  • TKO
  • レフェリーストップ
  • ギブアップ
  • 失格
  • 判定
  • 追放:明確な理由なく実績に不相応な試合をしている選手は、レフェリーによって追放されることがある。これは八百長防止措置で、選手はスタジアムから最高1年の出場停止を言い渡される。

採点方法[編集]

アマチュア[編集]

基本的にプロと同じルールで、加点方式である。各ラウンドの総トータル取得ポイントで判定する(ジャッジが効果的と思われる打撃が入った場合を1ポイントとしてのそのポイントの3ラウンドトータル数で勝敗を決める)。

プロ[編集]

ジャッジの採点においてキックボクシングと大きく異なるのはヒザ蹴りや蹴りの評価が高いことである。逆にパンチやヒジはほとんど評価されない。もっとも評価が高いのは首相撲からのヒザ蹴りである(後述)。

相手の蹴り足を自分の脛を上げて防御し、その足でそのまま相手を蹴るような攻撃や、ハイキックなど見た目も美しく相手に当てることが困難な攻撃は評価が高くなる。同様の理由で相手の脚を狙うローキックは容易な攻撃であるとみなされているので評価が低い。

キックは相手の腕に防御されても評価の対象となる。これはキックを腕で受けた場合はガードしたとみなされず、「腕を蹴られた」とみなされるからである。実際にパンチが得意な選手を封じる為に腕を狙って蹴るということは戦略の初歩として行われており、稀にではあるが腕の骨を蹴り折られて勝敗が決することもある。

ムエタイで高く評価される攻撃方法に「首相撲」がある。これは相手の首を両手で捕まえて胴体にひざ蹴りを叩き込んだり、投げ捨ててしまうような攻撃で、「相手を完全にコントロールしている」「相手に何もさせないでいる」という意味から高く評価される。ただし、注意してもらいたいのがムエタイにおいても「投げ」は禁止であること。具体的には足をからめての投げ(柔道の内掛けや外掛けにあたる動作)は当然禁止である。腕の力と体重移動とタイミングのみで投げを打つというのは言葉で言うほどたやすい所作ではない。それが故に玄人は首相撲を見る事を好み、タイのスタジアムでは試合中に最も盛り上がる瞬間でもある。

あまり知られてないが、攻撃をされたら攻撃をし返すという暗黙の了解がある(反則ではない)。仮に攻撃されても攻撃を返さないということを続けると大差の判定で敗れることになる。

タイトルについて[編集]

タイでは試合の行われるスタジアムごとにランキングやタイトルが存在し、特にラジャダムナンルンピニーの両スタジアムのタイトルが最も権威がある(世界チャンピオンより2大スタジアムのチャンピオンのほうが格上である)。

また、タイ国プロムエタイ協会というものもある。その他、WMC(World Muay-Thai Council、世界ムエタイ評議会。旧WMTC)やWPMF (World Professional Muay-Thai Federation、世界プロムエタイ連盟)はタイに本部があり、ムエタイの世界タイトルとしては権威があるとされるが、どちらもまだ歴史が浅い。また、キックボクシングの団体でありながらムエタイの王座を設けているところもある。

近年のムエタイ[編集]

前述したように、ムエタイは賭けの対象となるので八百長は厳禁である。だが最近では八百長が発覚され選手が追放されるケースがある。もっとも八百長自体は以前からあったとは思われるが、生活費を賭け、目の肥えた観客は「疑わしき試合、選手は罰せよ」の方針で厳しく追及してくる。裏を返せばムエタイに限らず賭けの対象になる競技で八百長をすると莫大な利益が生まれるという見本でもある。

ボクシング(ムエタイと比較して、国際式と表記される)王者を大勢輩出しているタイ国だが、国際式の前にムエタイを経験しているケースが以前はほとんどであった。だが近年は最初から国際式のみのキャリアの選手も増えている。

タイの田舎の貧困から抜け出すには、男はムエタイ、女は娼婦になるしかないというのが昔のタイの姿であった。だが近代化が進み、日本よりも大卒の価値が高いタイでは、特に男子を無理してでも大卒にして高給取りを狙うケースが増えており、ムエタイに良い人材が流れない傾向がある。またムエタイで学費を稼ぐガオラン・カウイチットK-1MAX準優勝)の様なケースもある。

ムエタイの選手は、賭けの対象となるため、選手というよりは競走馬の様な扱いに近く、憧れや尊敬の対象にはなりづらい。K-1MAX優勝者ブアカーオ・ポー.プラムックが「日本で若い女性に声をかけられて驚いた。タイでは考えられないことだ」と発言していたのは、タイでのムエタイ選手の扱いが低いことを裏付けている。

アマチュア団体[編集]

世界タイトル[編集]

ムエタイを扱った作品[編集]

書籍[編集]

  • 「闘う女。そんな私のこんな生きかた」 下関崇子著 徳間書店 ISBN 4198920753 (2004年6月)
  • 「天使がくれた戦う心(チャイ)」 会津泰成著 情報センター出版局 ISBN 4795840628 (2003年8月)
  • 「5RKO! 青春は痛い」 林英司著 産心社 ISBN 4-87920-334-3c0095 (2005年7月)

映画[編集]

対戦型格闘ゲーム[編集]

()内はムエタイを格闘スタイルとするキャラクター。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

International Associations and Federations[編集]

World Muay Thai Council (WMC) http://www.wmcmuaythai.org/
World Boxing Council Muay Thai (WBC Muay Thai) http://www.wbcmuaythai.com/
International Federation of Muay Thai Amateurs (IFMA) http://www.ifmamuaythai.org/
World amateur sport Kickboxing organization (W.A.S.K.O.) http://www.dovuscu.com/
World Kickboxing Association (WKA) http://www.kickboxing-wka.co.uk/
International Sport Karate Association (ISKA) http://www.iska.com/
International Kickboxing Federation (IKF) http://www.ikfkickboxing.com/
International Kickboxing Association (IKAS) http://www.ikaskickboxing.com/index.php