「いじめ」の版間の差分
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− | '''いじめ'''(苛め、虐め、{{lang-en-short|Bullying}} | + | '''いじめ'''(苛め、虐め、{{lang-en-short|Bullying}})とは、相手の肉体的・心理的苦しみを快楽的に楽しむことを目的として行われる様々な行為。実効的に遂行された嗜虐的関与という名の犯罪{{Sfn|内藤|2001}}。 |
== 概要 == | == 概要 == | ||
− | いじめとは「肉体的、精神的、立場的に自分より弱いものを、[[暴力]]や[[嫌がらせ|いやがらせ]] | + | いじめとは「肉体的、精神的、立場的に自分より弱いものを、[[暴力]]や[[嫌がらせ|いやがらせ]]などによって一方的に苦しめること」<ref name="大辞泉">大辞泉</ref>であり、暴行罪、傷害罪、侮辱罪、脅迫罪等の犯罪行為である。「特に、{{和暦|1985}}ごろから陰湿化した校内暴力をさすことが多い」<ref name="大辞泉" />。 |
単純な暴力だけでなく、物を隠す(いたずらする)、交換日記で悪口を書くなどといった「心に対するいじめ」もあり、[[しかと|シカト]](無視)などは水面下で行われることから、教師や周囲が気づかないうちに深刻な事態になりうる。 | 単純な暴力だけでなく、物を隠す(いたずらする)、交換日記で悪口を書くなどといった「心に対するいじめ」もあり、[[しかと|シカト]](無視)などは水面下で行われることから、教師や周囲が気づかないうちに深刻な事態になりうる。 | ||
− | {{和暦|1996}}に文部大臣(当時)が緊急アピールしているように、「深刻ないじめは、どの学校にも、どのクラスにも、どの子どもにも起こりうる」 | + | {{和暦|1996}}に文部大臣(当時)が緊急アピールしているように、「深刻ないじめは、どの学校にも、どのクラスにも、どの子どもにも起こりうる」{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}もので、児童生徒1000人あたりの7.1人がいじめを受けている{{Sfn|文科省|2009}}。 |
− | いじめに関する追跡調査では、「小学校4年生から中学校3年生までの6年間の間に、いじめ(仲間はずれ、無視、陰口)と無関係でいられる児童生徒は1割しかいない」 | + | いじめに関する追跡調査では、「小学校4年生から中学校3年生までの6年間の間に、いじめ(仲間はずれ、無視、陰口)と無関係でいられる児童生徒は1割しかいない」{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}ことが指摘されている。 |
大人の社会でも[[職場いじめ]]などいじめに相当する現象は存在し、ネット上のユーザによる[[ネットいじめ]]も存在する。 | 大人の社会でも[[職場いじめ]]などいじめに相当する現象は存在し、ネット上のユーザによる[[ネットいじめ]]も存在する。 | ||
− | 日本に限らず、欧米でもいじめは深刻な問題になっている。英語の表記は、bullying。 | + | 日本に限らず、欧米でもいじめは深刻な問題になっている。英語の表記は、bullying。 |
== 文部科学省の定義 == | == 文部科学省の定義 == | ||
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また、[[教育再生会議]]の第一次報告に関連して、いじめを繰り返す児童・生徒に対する[[出席停止]]措置などの現在の法律で出来ることは[[教育委員会]]に通知するように、[[2007年]][[1月22日]]、[[安倍晋三]]首相が[[伊吹文明]]文部科学相に指示した。 | また、[[教育再生会議]]の第一次報告に関連して、いじめを繰り返す児童・生徒に対する[[出席停止]]措置などの現在の法律で出来ることは[[教育委員会]]に通知するように、[[2007年]][[1月22日]]、[[安倍晋三]]首相が[[伊吹文明]]文部科学相に指示した。 | ||
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+ | == アンケに「いじめと書くな」と指導した女性教諭(2013年7月) == | ||
+ | 栃木県栃木市の市立小学校で、いじめに関するアンケートを実施した際、3年生を担当する30歳代の女性教諭が、いじめの申告件数が多くならないように児童を指導したうえで、回答させていたことが分かった。 | ||
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+ | アンケートは、市がいじめの実態を把握するために市内の全小中学生を対象に無記名で行った。同小では今月4日に実施された。 | ||
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+ | 同小によると、女性教諭は、アンケート記入に先だって、担当のクラス全員に「いじめは一方的なもの。みんながしているからかいなどはケンカ。いじめと書くと多くなるので書かないように」と指導したという。 | ||
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+ | また、女子児童の一人が、今年4月に同級生に鉛筆で腕を刺されたとして、「いじめあり」の欄に丸印をつけていたが、女性教諭はアンケート回収後に女子児童を呼び出し、いじめにあたらないなどと説明。ペンで「いじめではない」に丸印をつけ、本人が納得済みである旨も加筆したという。 | ||
== いじめの統計 == | == いじめの統計 == | ||
− | 文部科学省の統計によると、[[2007年|平成19年]]度に文部省が認知したものでは、84,648件のいじめがあり、児童生徒1000人あたりのいじめ件数は7. | + | 文部科学省の統計によると、[[2007年|平成19年]]度に文部省が認知したものでは、84,648件のいじめがあり、児童生徒1000人あたりのいじめ件数は7.1人で、いじめを認知した学校の件数は40.0%であった{{Sfn|文科省|2009}}。 |
ただし以上の統計はもちろん文部省が認知した件数である為、[[暗数]]を考慮しなければならない。 | ただし以上の統計はもちろん文部省が認知した件数である為、[[暗数]]を考慮しなければならない。 | ||
− | 学年別で見た場合、中学生、なかでも特に中学1年生のいじめの数が多く、中学1年生だけで17,063件のいじめが認知されており、この数字は小学6年生(4,262件)や高校1年生(3,701件)に比べ4倍以上多い。男女比では、54.8%が男子、45.2%が女子である | + | 学年別で見た場合、中学生、なかでも特に中学1年生のいじめの数が多く、中学1年生だけで17,063件のいじめが認知されており、この数字は小学6年生(4,262件)や高校1年生(3,701件)に比べ4倍以上多い。男女比では、54.8%が男子、45.2%が女子である{{Sfn|文科省|2009}}。 |
− | 平成19年度に自殺した136人の児童のうち、いじめが原因であると特定されたものは3件で18年度よりも3件少ない | + | 平成19年度に自殺した136人の児童のうち、いじめが原因であると特定されたものは3件で18年度よりも3件少ない{{Sfn|文科省|2009}}。 |
− | + | 中学1年生の「仲間はずれ、無視、陰口」を例に国立教育政策研究所が2004-2009年度に行った追跡調査({{Harvnb|国立教育政策研究所|2009}}、{{Harvnb|国立教育政策研究所|2010}})によれば、一般的イメージとは異なり、いじめる生徒・いじめられている生徒は短期間で入れ替わっており、「いわゆる「いじめられっ子(いじめられやすい子ども)」や「いじめっ子(いじめやすい子ども)」も存在しない」{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}。 | |
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− | また同調査によれば、同じ学校・同じ年度の生徒であっても学年が進むにつれていじめの数が大きく増減しており、「いじめが起こりやすい学校・年度」のようなものは無かった。従って「いじめが起きやすい学校とそうでない学校、いじめが起きやすい学年とそうでない学年というものが存在しているわけではない」 | + | また同調査によれば、同じ学校・同じ年度の生徒であっても学年が進むにつれていじめの数が大きく増減しており、「いじめが起こりやすい学校・年度」のようなものは無かった。従って「いじめが起きやすい学校とそうでない学校、いじめが起きやすい学年とそうでない学年というものが存在しているわけではない」{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}。 |
− | 以上のことから、「何か特別な問題や背景があるから、いじめが起きる」わけではなく | + | 以上のことから、「何か特別な問題や背景があるから、いじめが起きる」わけではなく{{Sfn|国立教育政策研究所|2009}}{{Sfn|国立教育政策研究所|2009}}「そうした問題の有無とはさほど関係なく、いじめは起きうる」{{Sfn|国立教育政策研究所|2009}}「ちょっとしたきっかけで、いじめは起きてしまう、広がってしまう」{{Sfn|国立教育政策研究所|2009}}のが実態であることが分かる。 |
− | 小学校においても同様の傾向が確かめられている | + | 小学校においても同様の傾向が確かめられている{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}。 |
− | 実際同調査によれば中学1年生の場合、「週に1回以上」いじめを受けている生徒が「毎回50-100名(7-14%)程度存在するにもかかわらず、それが半年後まで続く事例は半分以下」 | + | 実際同調査によれば中学1年生の場合、「週に1回以上」いじめを受けている生徒が「毎回50-100名(7-14%)程度存在するにもかかわらず、それが半年後まで続く事例は半分以下」{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}であった。すなわち「毎回「クラスに3-6名」程度の割合の子どもが被害に遭っている計算であるにもかかわらず、常習的な被害者と考えられるのは1000名につき3名という数」である{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}。 |
− | これは加害者についても同様で、「「週に1回以上」という高頻度の加害経験があると答えた生徒は、毎回35-85名(5-12%)程度いたにもかかわらず、半年後も引き続き経験があると答えた者は半分以下」 | + | これは加害者についても同様で、「「週に1回以上」という高頻度の加害経験があると答えた生徒は、毎回35-85名(5-12%)程度いたにもかかわらず、半年後も引き続き経験があると答えた者は半分以下」{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}であった。 |
− | 小学校・中学校で「仲間はずれ、無視、陰口」が3年間の間に全く無かった児童生徒はそれぞれ22.6%、27.6%で | + | 小学校・中学校で「仲間はずれ、無視、陰口」が3年間の間に全く無かった児童生徒はそれぞれ22.6%、27.6%で{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}、いじめが誰にでも起こりうることを裏付ける。 |
− | 逆に3年間連続でいじめがあった児童生徒は小学校・中学校でそれぞれ0.4%、0.6%であった | + | 逆に3年間連続でいじめがあった児童生徒は小学校・中学校でそれぞれ0.4%、0.6%であった{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}。 |
− | いじめが発見されたきっかけは、学校の教職員が発見したのが50.3%、本人や家族の訴えなど教職員以外がきっかけのものは49.7%であった | + | いじめが発見されたきっかけは、学校の教職員が発見したのが50.3%、本人や家族の訴えなど教職員以外がきっかけのものは49.7%であった{{Sfn|文科省|2009}}。 |
− | 教職員が発見した方法としては「アンケート調査など学校の取組により発見」は(24.4%。きっかけ全体に対する割合。以下同様)、「学級担任が発見」(19.8%)が多く、教職員以外のものでは、「本人からの訴え」(24.6%)、保護者(16.3%)、本人以外の児童生徒(5.1%)の順である | + | 教職員が発見した方法としては「アンケート調査など学校の取組により発見」は(24.4%。きっかけ全体に対する割合。以下同様)、「学級担任が発見」(19.8%)が多く、教職員以外のものでは、「本人からの訴え」(24.6%)、保護者(16.3%)、本人以外の児童生徒(5.1%)の順である{{Sfn|文科省|2009}}。 |
− | 都道府県別で見た場合、1000人あたりの認知件数は多いほうから順に熊本県(32.7件)、大分県(27.3件)、岐阜県(25.2件)が多く、全国平均(7.1件)を3倍以上上回る | + | 都道府県別で見た場合、1000人あたりの認知件数は多いほうから順に熊本県(32.7件)、大分県(27.3件)、岐阜県(25.2件)が多く、全国平均(7.1件)を3倍以上上回る{{Sfn|文科省|2009}}。ただしこれはあくまで認知件数なので、これらの件で実際にいじめが多いのか、それともこれらの県でいじめを認知しやすい体制が整っているのかは不明である。 |
− | なお熊本県や大分県と同じ九州でも、福岡県や佐賀県(いずれも1.1件)は少ない方から2番と3番で、単純に九州でいじめが多いというわけではない | + | なお熊本県や大分県と同じ九州でも、福岡県や佐賀県(いずれも1.1件)は少ない方から2番と3番で、単純に九州でいじめが多いというわけではない{{Sfn|文科省|2009}}。(全国最小は和歌山県の0.8件){{Sfn|文科省|2009}}。 |
文部省の統計では[[1994年|平成6年]]と[[2006年|平成18年]]にいじめの定義を変えているが、統計上は、(認知された)いじめの発生率が激減→いじめの定義を変えると激増を繰り返している。 | 文部省の統計では[[1994年|平成6年]]と[[2006年|平成18年]]にいじめの定義を変えているが、統計上は、(認知された)いじめの発生率が激減→いじめの定義を変えると激増を繰り返している。 | ||
− | 例えば平成6年には31.3%だった発生率が平成17年度には19.4%に減っている | + | 例えば平成6年には31.3%だった発生率が平成17年度には19.4%に減っている{{Sfn|文科省|2009}}。ただし、いじめの定義を変えると発生率が急増していることから、いじめが実際に減ったのか、それともいじめの動向変化により統計上捉えられるいじめ発生率が減り、動向にあわせて定義を修正することでまた見かけ上の発生率が増えているのかは不明である。 |
===学年別動向の統計=== | ===学年別動向の統計=== | ||
学年別に見た場合、次の傾向があることが指摘されている。 | 学年別に見た場合、次の傾向があることが指摘されている。 | ||
− | * 幼稚園・保育園:[[小谷隆真]]によれば、[[小学校]]や[[中学校]]のようないじめはないという。積極的な子供が消極的な子供を従えているようにみえる「子ども同士の力関係」や、「子供のコミュニケーション能力の未発達」による[[玩具]] | + | * 幼稚園・保育園:[[小谷隆真]]によれば、[[小学校]]や[[中学校]]のようないじめはないという。積極的な子供が消極的な子供を従えているようにみえる「子ども同士の力関係」や、「子供のコミュニケーション能力の未発達」による[[玩具]]等の横取り、手を出すことをいじめととらえてしまうという<ref>[http://www.keiai.ac.jp/mamatopapanotameni/omoi/ijimenewspaper.jpg 千里敬愛幼稚園のサイトに掲載されていた『読売新聞』2005年3月7日の記事の画像を参照していたようだが、リンク切れ。]</ref>。 |
− | + | * 小学校:「冷やかし」の割合が多いが、「仲間はずれ」の割合が、他の区分に比べて多い{{Sfn|文科省|2006a}}。 | |
− | * 中学校:統計上、いじめが最も多くなる年代である | + | * 中学校:統計上、いじめが最も多くなる年代である{{Sfn|文科省|2006a}}。重篤な場合は重傷を負わせられる、傷害の結果死に至ることもある。結果、自殺するという例もある。 |
− | * 高等学校:「冷やかし」が多いが、「暴力をふるう」割合が高い | + | * 高等学校:「冷やかし」が多いが、「暴力をふるう」割合が高い{{Sfn|文科省|2006a}}。割合は少ないが、いじめによって[[退学]]する場合もある(人間関係を理由とした中途退学は、2005年度で7.4%{{Sfn|文科省|2006b}})。 |
− | * 大学:[[大学]]に於いても、特に[[体育会系]]のクラブで、先輩からの「しごき」という名のいじめは昔から存在する。これに関連して、継続的な悪質ないじめで、[[訴訟]]沙汰になった例もある<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0706/OSK200707060098.html 「バイクで青森へ」と強要され事故 国立大生が賠償提訴 | + | * 大学:[[大学]]に於いても、特に[[体育会系]]のクラブで、先輩からの「しごき」という名のいじめは昔から存在する。これに関連して、継続的な悪質ないじめで、[[訴訟]]沙汰になった例もある<ref>「[http://www.asahi.com/national/update/0706/OSK200707060098.html 「バイクで青森へ」と強要され事故 国立大生が賠償提訴]」『朝日新聞』2007年7月6日</ref><ref>「[http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070707k0000e040032000c.html いじめ:大学先輩に慰謝料求める…近畿の国立大生が提訴]」『毎日新聞』2007年7月7日</ref><ref>「[http://www.47news.jp/CN/200705/CN2007052401000392.html 「いじめで統合失調症に」 広島市などに賠償命令]」『[[47NEWS]]』2007年5月24日</ref>。 |
{| class="wikitable" style="text-align:right; font-size:95%; margin:10px 0px;" | {| class="wikitable" style="text-align:right; font-size:95%; margin:10px 0px;" | ||
− | |+ いじめの様態別認知件数(文部科学省、平成19年度、複数回答あり) | + | |+ いじめの様態別認知件数(文部科学省、平成19年度、複数回答あり){{Sfn|文科省|2008}} |
|-style="line-height:1.25em; white-space:nowrap;" | |-style="line-height:1.25em; white-space:nowrap;" | ||
! !!colspan="2"|小学校 !!colspan="2"|中学校!!colspan="2"|高等学校!!colspan="2"|特別支援学校!!colspan="2"|合計 | ! !!colspan="2"|小学校 !!colspan="2"|中学校!!colspan="2"|高等学校!!colspan="2"|特別支援学校!!colspan="2"|合計 | ||
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===いじめ原因の統計=== | ===いじめ原因の統計=== | ||
− | いじめ加害の原因となるストレッサー(ストレス原因)で直接的・間接的に大きな要因をアンケートから探ってみた統計 | + | いじめ加害の原因となるストレッサー(ストレス原因)で直接的・間接的に大きな要因をアンケートから探ってみた統計{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}によると、 |
− | 直接的にも間接的にも最も影響力が大きいのは友人から学業・容姿・行動などを馬鹿にされた「友人ストレッサー」(36組中31組で第1位) | + | 直接的にも間接的にも最も影響力が大きいのは友人から学業・容姿・行動などを馬鹿にされた「友人ストレッサー」(36組中31組で第1位){{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}であった。 |
次に影響力が大きかったストレッサーは学業・容姿・長所や短所などに関する「競争的価値観」(36組中2組で第1位、19組で第2位)で、間接的な効果しかないにも関わらず、その効果の大きさが伺える。 | 次に影響力が大きかったストレッサーは学業・容姿・長所や短所などに関する「競争的価値観」(36組中2組で第1位、19組で第2位)で、間接的な効果しかないにも関わらず、その効果の大きさが伺える。 | ||
− | そして、様々なストレッサーが「不機嫌怒りストレス」(36組中3組で第1位、11組で第2位)に影響を与え、いじめを発生させているという構図がある | + | そして、様々なストレッサーが「不機嫌怒りストレス」(36組中3組で第1位、11組で第2位)に影響を与え、いじめを発生させているという構図がある{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}。一方教師・家族・友人らによる支援がこれらのストレスを軽減することも分かっており{{Sfn|国立教育政策研究所|2010}}、周囲の支援がいじめを抑止する効果があることがわかる。 |
また古いデータであるが、1986年の東京都教育委員会調査報告<ref>東京都教育委員会調査報告 江川文成 「いじめから学ぶ」、大日本図書株式会社、1986年、p35。[http://db2.littera.waseda.ac.jp/daigaku/report/20011kiso/f.pdf いじめの現状・原因]からの重引。</ref>によれば、いじめの原因は以下の結果となった。 | また古いデータであるが、1986年の東京都教育委員会調査報告<ref>東京都教育委員会調査報告 江川文成 「いじめから学ぶ」、大日本図書株式会社、1986年、p35。[http://db2.littera.waseda.ac.jp/daigaku/report/20011kiso/f.pdf いじめの現状・原因]からの重引。</ref>によれば、いじめの原因は以下の結果となった。 | ||
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== いじめに関する研究 == | == いじめに関する研究 == | ||
− | [[内藤朝雄]] | + | [[内藤朝雄]]は社会学的・心理学的手法を用いて、2001年に『いじめの社会理論』{{Harv|内藤|2001}}を刊行した<ref>2007年刊の『〈いじめ学〉の時代』(柏書房、ISBN 978-4-7601-3219-5)は、その入門編である</ref>。その中で内藤は、「人間関係が濃厚すぎる集団内において生じる欠如を埋めようとする偽りの全能感」としていじめの理論化を行った。そしてその対策として「学級制度の解体」「警察の介入」を挙げた。 |
− | + | 森口朗は2007年の『いじめの構造』{{Harv|森口|2007}}で、内藤の理論をベースに独自の「[[スクールカースト]]」の概念を導入した。これはクラス内の序列のことで、人気や「空気を読む能力」の多寡により上下し、下位になるほどいじめられやすくなるという。今までの論者が素通りしてきたこの概念を取り入れて、森田は修正藤田モデルという四分類を作った。これによりいじめのモデルはかなり整理され、見通しが良くなった。そして分類毎にいじめの発生するメカニズムを考察し、具体的な対策を提示した。 | |
− | + | ||
[[シカゴ大学]]による脳の[[fMRI]]スキャンを使用した最新の研究によると、人が他人の苦痛を目にすると、自身が苦痛を経験したときと同じ脳内領域が光るが、いじめっ子の場合[[扁桃体]]や腹側線条体(報酬や喜びに関係すると考えられている部位)によってそうでないものに比べ活発に活動することがわかったという。「つまり、いじめっ子は人の苦痛を見るのが好きだと考えられる。この考えが正しい場合、彼らは弱い者いじめをして他人を攻撃するたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進んでいることになる」「自己制御を欠いている点を処置する、あるいは埋め合わせる治療法を開発する必要があるだろう。いじめっ子が自己制御を欠いているのは事実だと考えているし、他人を傷付けるたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進む可能性がある」と同研究チームのレイヒーは話す。<ref>ナショナルジオグラフィック ニュース:[http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=8967503&expand 人の災難を喜ぶいじめっ子の脳]</ref> | [[シカゴ大学]]による脳の[[fMRI]]スキャンを使用した最新の研究によると、人が他人の苦痛を目にすると、自身が苦痛を経験したときと同じ脳内領域が光るが、いじめっ子の場合[[扁桃体]]や腹側線条体(報酬や喜びに関係すると考えられている部位)によってそうでないものに比べ活発に活動することがわかったという。「つまり、いじめっ子は人の苦痛を見るのが好きだと考えられる。この考えが正しい場合、彼らは弱い者いじめをして他人を攻撃するたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進んでいることになる」「自己制御を欠いている点を処置する、あるいは埋め合わせる治療法を開発する必要があるだろう。いじめっ子が自己制御を欠いているのは事実だと考えているし、他人を傷付けるたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進む可能性がある」と同研究チームのレイヒーは話す。<ref>ナショナルジオグラフィック ニュース:[http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=8967503&expand 人の災難を喜ぶいじめっ子の脳]</ref> | ||
==いじめの分類== | ==いじめの分類== | ||
− | 具体的ないじめに相当する行為の種類によって分類した場合、'''暴力系'''のいじめと'''コミュニケーション操作系'''のいじめの2種類がある | + | 具体的ないじめに相当する行為の種類によって分類した場合、'''暴力系'''のいじめと'''コミュニケーション操作系'''のいじめの2種類がある{{Sfn|内藤|荻上|2010|pp=40-43}}。前者は、被害者に対する殴打・拘束や服を脱がせるなど身体へ直接的なダメージを与えるもので、後者は悪口・誹謗中傷や風説の流布などコミュニケーションを介して被害者に不快感・精神的ダメージを与えるものである。男女別では、女子のほうが暴力系ではなくコミュニケーション操作系のいじめを遂行する傾向にあり、その背景には[[ジェンダー]]による抑圧(「女の子は優しく/おとなしくしているべきである」という固定観念)あるいは評価基準の違い(男子はそれが身体的な強靭さに求められるが女子は他者からの受容に依存する)が考えられる<ref>[[小笠原通子]]「女の子って裏攻撃が大得意!?――いじめと「男らしさ/女らしさ」」{{Harv|内藤|荻上|2010|pp=64-65}}</ref>{{Sfn|土井|2009|pp=280-281}}。ただし、男子のいじめについてもだんだんと暴力系よりもコミュニケーション操作系のいじめのほうが多くなる傾向にある{{Sfn|土井|2009|pp=280-281}}。 |
− | いじめの形態に注目すると、'''排除'''のいじめと'''飼育'''のいじめの2種類がある | + | いじめの形態に注目すると、'''排除'''のいじめと'''飼育'''のいじめの2種類がある{{Sfn|内藤|荻上|2010|pp=17-19}}。排除型は被害者を仲間外れにして自分たちのグループから排斥するものであり、飼育型は被害者を自分たちのグループの中に留めておいたままいじめの対象とすることによって楽しむものである。実際のいじめは排除型ではなく飼育型であることが多い。 |
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+ | {{Harvtxt|藤田|1997|pp=211-214}}は、(学校での)いじめを次の4つに分類し、多くのいじめに対する言説がその特性の相違点を考慮していない点を批判している。 | ||
#モラルの低下・混乱によるもの。[[1980年代]]中ごろに頻発したタイプで、被害者が偶発的に決定されるところに特徴がある。一種の[[モラル・パニック]]や[[集団ヒステリー]]といえる。 | #モラルの低下・混乱によるもの。[[1980年代]]中ごろに頻発したタイプで、被害者が偶発的に決定されるところに特徴がある。一種の[[モラル・パニック]]や[[集団ヒステリー]]といえる。 | ||
#社会的偏見・差別による排除的なもの。1のケースと比較するといじめの対象となった理由(特定の社会的属性を持っていたということ)は明瞭であり、差別意識自体を取り除く指導をすることがこの種のいじめの対策となる。 | #社会的偏見・差別による排除的なもの。1のケースと比較するといじめの対象となった理由(特定の社会的属性を持っていたということ)は明瞭であり、差別意識自体を取り除く指導をすることがこの種のいじめの対策となる。 | ||
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#特定の個人への暴行・恐喝を反復するもの。3のケースと違って、加害者と被害者の属するグループは異なる場合が多い。不良が下級生から[[カツアゲ]]するといったものが典型的なもので、認知されやすい。 | #特定の個人への暴行・恐喝を反復するもの。3のケースと違って、加害者と被害者の属するグループは異なる場合が多い。不良が下級生から[[カツアゲ]]するといったものが典型的なもので、認知されやすい。 | ||
− | + | {{Harvtxt|森口|2007|p=100}}は、いじめの考察としては前述の藤田英典の分類を継承して論を進めているが、実際に「いじめ」という言葉で総称されているものは次の4つに分けられるとしている。 | |
#子供たちが共同生活をおくる上で当然発生するであろう軋轢。 | #子供たちが共同生活をおくる上で当然発生するであろう軋轢。 | ||
#従来型コミュニケーション系いじめ。仲間はずれにするなど、犯罪の構成要件は満たさないもの。 | #従来型コミュニケーション系いじめ。仲間はずれにするなど、犯罪の構成要件は満たさないもの。 | ||
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== いじめ事件の例 == | == いじめ事件の例 == | ||
− | * [[上福岡第三中学校いじめ自殺事件]] | + | * [[上福岡第三中学校いじめ自殺事件]](1979年 『ぼく、もう我慢できないよ ―あるいじめられっ子の自殺』としてルポになっている<ref>金賛汀『ぼく、もう我慢できないよ - ある「いじめられっ子」の自殺』一光社、1980年、{{JPNO|80040400}}</ref>) |
* [[大阪産業大学付属高校同級生殺害事件]](1984年、性的いじめ復讐殺人事件) | * [[大阪産業大学付属高校同級生殺害事件]](1984年、性的いじめ復讐殺人事件) | ||
* [[中野富士見中学いじめ自殺事件]](1986年、日本で初めていじめ自殺事件がクローズアップされた事件) | * [[中野富士見中学いじめ自殺事件]](1986年、日本で初めていじめ自殺事件がクローズアップされた事件) | ||
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* [[多摩川高校生水死事件]](2009年、川へ突き飛ばした同級生が溺れる様子を動画撮影していた。) | * [[多摩川高校生水死事件]](2009年、川へ突き飛ばした同級生が溺れる様子を動画撮影していた。) | ||
* [[桐生市小学生いじめ自殺事件]](2010年) | * [[桐生市小学生いじめ自殺事件]](2010年) | ||
+ | * [[大津市中2いじめ自殺事件]](2011年) | ||
=== 事件別例 === | === 事件別例 === | ||
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[[大韓民国|韓国]]では、[[結婚式]]の後で新郎をいじめる風習がある([[韓国の新郎いじめ]])。 | [[大韓民国|韓国]]では、[[結婚式]]の後で新郎をいじめる風習がある([[韓国の新郎いじめ]])。 | ||
− | 韓国では、当初、いじめは[[日本語]]の単語を輸入した「이지메(イジメ)」が主流であったが、現在では「激しい」と「爪弾き」を合成した単語「ワンタ」と呼ぶ<ref>[http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/26895421.html 日韓比較文化:日本のイジメ、韓国のワンタ] | + | 韓国では、当初、いじめは[[日本語]]の単語を輸入した「이지메(イジメ)」が主流であったが、現在では「激しい」と「爪弾き」を合成した単語「ワンタ」と呼ぶ<ref>「[http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/26895421.html 日韓比較文化:日本のイジメ、韓国のワンタ]」ブログ「[[河信基]]の深読み」2007年11月23日</ref>。 |
− | 2005年には、[[便所]]の水を流していない訓練兵らに立腹し、部隊の[[中隊]]長が[[人糞]]を指につけて食べるよう強制した[[韓国陸軍訓練所食糞事件]]が発生した。同年には[[大韓民国陸軍|陸軍]]においていじめを受けていた[[一等兵]]が銃を乱射し、8人を殺害する[[漣川軍部隊銃乱射事件]]が発生した<ref>[http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-07-18/2011071806_01_1.html 韓国海兵隊の同僚射殺事件/いじめ体質 浮き彫り/6年前も銃乱射 「軍の悪習」指摘] | + | 2005年には、[[便所]]の水を流していない訓練兵らに立腹し、部隊の[[中隊]]長が[[人糞]]を指につけて食べるよう強制した[[韓国陸軍訓練所食糞事件]]が発生した。同年には[[大韓民国陸軍|陸軍]]においていじめを受けていた[[一等兵]]が銃を乱射し、8人を殺害する[[漣川軍部隊銃乱射事件]]が発生した<ref>「[http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-07-18/2011071806_01_1.html 韓国海兵隊の同僚射殺事件/いじめ体質 浮き彫り/6年前も銃乱射 「軍の悪習」指摘]」『赤旗』2011年7月8日</ref>。 |
− | また、[[韓国軍]]では2011年7月4日、[[上等兵]]が銃を乱射して兵を4人射殺する事件が発生したが、この動機は部隊内のいじめが原因だとされる<ref>[http://sankei.jp.msn.com/world/news/110706/kor11070610440000-n1.htm 韓国海兵隊の銃乱射 いじめが原因か] | + | また、[[韓国軍]]では2011年7月4日、[[上等兵]]が銃を乱射して兵を4人射殺する事件が発生したが、この動機は部隊内のいじめが原因だとされる<ref>「[http://sankei.jp.msn.com/world/news/110706/kor11070610440000-n1.htm 韓国海兵隊の銃乱射 いじめが原因か]」『産経新聞』2011年7月6日</ref>。この銃乱射事件が起こったのと同じ[[師団]]で、2011年7月3日、兵士が首を吊って自殺している。これもいじめの可能性がなかったか、当局が捜査している<ref>「[http://sankei.jp.msn.com/world/news/110708/kor11070807000000-n1.htm 海兵隊兵士が首つり自殺 乱射事件と同じ師団 韓国軍、いじめの有無調査]」『産経新聞』2011年7月8日</ref>。 |
2011年12月、韓国では3人の中高生が相次いで自殺した。いじめが原因と見られている<ref>{{cite web | 2011年12月、韓国では3人の中高生が相次いで自殺した。いじめが原因と見られている<ref>{{cite web | ||
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| title =韓国で2011年末、いじめを苦に中高生が連続自殺 | | title =韓国で2011年末、いじめを苦に中高生が連続自殺 | ||
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}}</ref>。2012年の新年国政演説において、[[李明博]]大統領は多発するいじめの問題にも触れ、総合対策を準備すると宣言した<ref>{{cite web | }}</ref>。2012年の新年国政演説において、[[李明博]]大統領は多発するいじめの問題にも触れ、総合対策を準備すると宣言した<ref>{{cite web | ||
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| title =李明博大統領の新年国政演説(全文) | | title =李明博大統領の新年国政演説(全文) | ||
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| title =いじめ加害者をどう罰するべきか | | title =いじめ加害者をどう罰するべきか | ||
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− | + | }}</ref>。[[レディー・ガガ]]は、同性愛を理由にいじめを受けて自殺した14歳のファンについて触れ、「いじめは撲滅すべき」と訴えた<ref>「[http://www.mtvjapan.com/news/think/19654 レディー・ガガ 「いじめは法律で禁じるべき]」[[MTV JAPAN]]、2011年9月24日</ref>。ガガ自身、14歳頃にゴミ箱に放り込まれたり、廊下で吊るし上げられるなどの激しいいじめを受けていたことを告白している。 | |
− | }}</ref>。[[レディー・ガガ]]は、同性愛を理由にいじめを受けて自殺した14歳のファンについて触れ、「いじめは撲滅すべき」と訴えた<ref>[http://www.mtvjapan.com/news/think/19654 レディー・ガガ 「いじめは法律で禁じるべき] | + | |
13名の人間が殺害された[[コロンバイン高校銃乱射事件]]では、犯人たちは日常的にいじめが行われており、それが原因で事件を引き起こしたと考えられている。 | 13名の人間が殺害された[[コロンバイン高校銃乱射事件]]では、犯人たちは日常的にいじめが行われており、それが原因で事件を引き起こしたと考えられている。 | ||
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| title =米国で横行するアジア系いじめ、うつや自殺も突出 | | title =米国で横行するアジア系いじめ、うつや自殺も突出 | ||
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| title =自殺した中国系兵士へのいじめで上官ら8人訴追、米陸軍 | | title =自殺した中国系兵士へのいじめで上官ら8人訴追、米陸軍 | ||
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| title =米国も「校内いじめ」が深刻化、被害者女子高生がバスに飛び込み自殺 | | title =米国も「校内いじめ」が深刻化、被害者女子高生がバスに飛び込み自殺 | ||
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| title =ニュージーランドでのいじめ発生率は世界で最悪レベル | | title =ニュージーランドでのいじめ発生率は世界で最悪レベル | ||
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− | ニュージーランドでは、アジア系移民を標的にした人種差別によるいじめも多発している<ref>[http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200304070050321 NZの学校で「いじめ」受けるアジア系生徒] | + | ニュージーランドでは、アジア系移民を標的にした人種差別によるいじめも多発している<ref>「[http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200304070050321 NZの学校で「いじめ」受けるアジア系生徒]」『日刊ベリタ』2003年4月7日</ref>。 |
2009年、[[日系ニュージーランド人]]の14歳の少年が「[[捕鯨問題|クジラ喰い]]」と因縁をつけられ、集団で抱え上げて地面に落とすなどの暴行を加えられ、脳障害を伴う重傷を負った事件が発生した<ref>[http://www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=10582613 Schoolboy avoids death after assault - National -] NZ Herald News 2009年7月5日</ref>。 | 2009年、[[日系ニュージーランド人]]の14歳の少年が「[[捕鯨問題|クジラ喰い]]」と因縁をつけられ、集団で抱え上げて地面に落とすなどの暴行を加えられ、脳障害を伴う重傷を負った事件が発生した<ref>[http://www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=10582613 Schoolboy avoids death after assault - National -] NZ Herald News 2009年7月5日</ref>。 | ||
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[[ロシア]]では、[[ロシア連邦軍]]でのいじめが大きな社会問題となっている。 | [[ロシア]]では、[[ロシア連邦軍]]でのいじめが大きな社会問題となっている。 | ||
− | 隊内で新兵に対するいじめ({{ru|ДеДoвщина}})が激しく、脱走の大きな原因となっている。公式には2002年前半期だけで2,265名の脱走者が出たとされるが、ロシア兵士の母の会ではその10倍としている。2005年の公式な数字ではいじめによる死者は16人とされ、自殺者が276人、事故死者が同じく276人とされた。ロシアではこの数字に疑問の声が出た<ref | + | 隊内で新兵に対するいじめ({{ru|ДеДoвщина}})が激しく、脱走の大きな原因となっている。公式には2002年前半期だけで2,265名の脱走者が出たとされるが、ロシア兵士の母の会ではその10倍としている。2005年の公式な数字ではいじめによる死者は16人とされ、自殺者が276人、事故死者が同じく276人とされた。ロシアではこの数字に疑問の声が出た<ref>木村汎、名越健朗、布施裕之『「新冷戦」の序曲か』北星堂書店、2008年、ISBN 9784590012452</ref>。2004年前半期のロシア兵の死者数は500人以上に達していた<ref>江畑謙介「ロシア軍・国防省改革の現状」ジャパン・ミリタリー・レビュー『軍事研究』2009年1月号</ref>。 |
== いじめについての言葉・ことわざ == | == いじめについての言葉・ことわざ == | ||
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; [[数の暴力|数の暴力(かずのぼうりょく)]] | ; [[数の暴力|数の暴力(かずのぼうりょく)]] | ||
: ある意見や思想などにおける大多数の賛成側が少数の反対側に、理不尽な要求等を強要すること。 | : ある意見や思想などにおける大多数の賛成側が少数の反対側に、理不尽な要求等を強要すること。 | ||
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== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
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* [[性的いじめ]] | * [[性的いじめ]] | ||
* [[茶巾 (性的嗜好)]] | * [[茶巾 (性的嗜好)]] | ||
+ | * [[校内暴力]] | ||
* [[保健室登校]] | * [[保健室登校]] | ||
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* [[ジョック]] - [[アメリカ合衆国]]におけるスクールカーストに類似した問題 | * [[ジョック]] - [[アメリカ合衆国]]におけるスクールカーストに類似した問題 | ||
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* 教育情報ナショナルセンター | * 教育情報ナショナルセンター | ||
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*[http://www.jca.apc.org/praca/takeda/step1.htm もしかして、いじめ?] | *[http://www.jca.apc.org/praca/takeda/step1.htm もしかして、いじめ?] | ||
*[http://www2.nara-edu.ac.jp/CERT/April07/html/chapter1/01.html 第1部:いじめの定義|いじめ問題解決への教育的支援] | *[http://www2.nara-edu.ac.jp/CERT/April07/html/chapter1/01.html 第1部:いじめの定義|いじめ問題解決への教育的支援] | ||
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+ | *[[:wiki:it:Bullismo]] | ||
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+ | *[[:wiki:pl:Znęcanie się]] | ||
+ | *[[:wiki:pt:Bullying]] | ||
+ | *[[:wiki:ru:Задирание]] | ||
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+ | *[[:wiki:tl:Paghahari-harian]] | ||
+ | *[[:wiki:uk:Цькування (психологія)]] | ||
+ | == 脚注 == | ||
+ | {{脚注ヘルプ}} | ||
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+ | === 統計・白書 === | ||
+ | * [[文部科学省]]:[http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/shidou/1267646.htm 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査] | ||
+ | ** {{Aya|文科省|year=2006a}} [http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/09/06091103/002.pdf -(いじめ)]{{リンク切れ}} 2006年9月 | ||
+ | ** {{Aya|文科省|year=2006b}} [http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/09/06091103/005.pdf -(中途退学)]{{リンク切れ}} 2006年9月 | ||
+ | ** {{Aya|文科省|year=2008}} [http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1278479.htm 平成19年度「 - 」について]、[http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2009/06/18/1278479_1_1.pdf 公表資料]{{リンク切れ}} 2009年6月 | ||
+ | ** {{Aya|文科省|year=2009}} [http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/11/1287227.htm 平成20年度「 - 」について]、[http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/11/__icsFiles/afieldfile/2009/11/30/1287227_1_1.pdf 公表資料]{{リンク切れ}} 2009年11月 | ||
+ | * [[法務省]][[人権擁護局]]:[http://www.moj.go.jp/JINKEN/index_shiryo.html 人権に関する資料など](各年度の「「人権侵犯事件」の状況について」にいじめの統計あり)。 | ||
+ | * [[国立教育政策研究所]][[生徒指導研究センター]] | ||
+ | **[http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/3.htm 調査研究報告書等一覧] | ||
+ | **いじめ追跡調査 | ||
+ | ***{{Aya|国立教育政策研究所|year=2009}} [http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/ijime2004_06/ijime2004_06.files/6_tyosa.pdf 2004-2006] 2009年4月 | ||
+ | ***{{Aya|国立教育政策研究所|year=2010}} [http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/shienshiryou2/3.pdf 2007-2009] 2010年6月 | ||
+ | **[http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/ijime-07/ijime-0702top.htm いじめに関する取り組み事例集] | ||
+ | **[http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/shienshiryou2/2.htm 問題事象の未然防止に向けた生徒指導の取り組み方] | ||
+ | **[http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/ijimetool/ijimetool.htm いじめに関する校内研修-ツール] | ||
+ | * 少年犯罪データベース:[http://blog.livedoor.jp/kangaeru2001/archives/50849840.html#1974.11.28 いじめ自殺] | ||
+ | === 書籍 === | ||
+ | *{{Aya|内藤|荻上|year=2010}} [[内藤朝雄]]、荻上チキ、『いじめの直し方』朝日新聞出版、2010年、ISBN 978-4022507082 | ||
+ | *{{Aya|土井|year=2009}} [[土井隆義]]「フラット化するコミュニケーション」『コミュニケーションの社会学』[[有斐閣]]、2009年、ISBN 978-4641123922 | ||
+ | *{{Aya|森口|year=2007}} [[森口朗]] 『いじめの構造』[[新潮社]]、2007年、ISBN 978-4106102196 | ||
+ | *{{Aya|内藤|year=2001}} 内藤朝雄「いじめの社会理論」柏書房、2001年、ISBN 4-7601-2088-2 | ||
+ | *{{Aya|藤田|year=1997}} [[藤田英典]]『教育改革―共生時代の学校づくり』[[岩波書店]]、1997年、ISBN 978-4004305118 | ||
+ | {{大津市中2いじめ自殺事件}} | ||
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2022年6月22日 (水) 03:19時点における最新版
いじめ(苛め、虐め、英:Bullying)とは、相手の肉体的・心理的苦しみを快楽的に楽しむことを目的として行われる様々な行為。実効的に遂行された嗜虐的関与という名の犯罪[1]。
目次
概要[編集]
いじめとは「肉体的、精神的、立場的に自分より弱いものを、暴力やいやがらせなどによって一方的に苦しめること」[2]であり、暴行罪、傷害罪、侮辱罪、脅迫罪等の犯罪行為である。「特に、1985年(和暦??年)ごろから陰湿化した校内暴力をさすことが多い」[2]。
単純な暴力だけでなく、物を隠す(いたずらする)、交換日記で悪口を書くなどといった「心に対するいじめ」もあり、シカト(無視)などは水面下で行われることから、教師や周囲が気づかないうちに深刻な事態になりうる。
1996年(和暦??年)に文部大臣(当時)が緊急アピールしているように、「深刻ないじめは、どの学校にも、どのクラスにも、どの子どもにも起こりうる」[3]もので、児童生徒1000人あたりの7.1人がいじめを受けている[4]。 いじめに関する追跡調査では、「小学校4年生から中学校3年生までの6年間の間に、いじめ(仲間はずれ、無視、陰口)と無関係でいられる児童生徒は1割しかいない」[3]ことが指摘されている。
大人の社会でも職場いじめなどいじめに相当する現象は存在し、ネット上のユーザによるネットいじめも存在する。
日本に限らず、欧米でもいじめは深刻な問題になっている。英語の表記は、bullying。
文部科学省の定義[編集]
文部科学省が児童・生徒の問題に関する調査で用いるいじめの定義は「子どもが一定の人間関係のある者から、心理的・物理的攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」で、「いじめか否かの判断は、いじめられた子どもの立場に立って行うよう徹底させる」としている。
これは2007年(和暦??年)1月19日以降の定義で、従来のいじめの定義では「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」としていた。
同年、具体的ないじめの種類については「パソコン・携帯電話での中傷」「悪口」などが追加された。いじめの件数についても「発生件数」から「認知件数」に変更された。
また、教育再生会議の第一次報告に関連して、いじめを繰り返す児童・生徒に対する出席停止措置などの現在の法律で出来ることは教育委員会に通知するように、2007年1月22日、安倍晋三首相が伊吹文明文部科学相に指示した。
アンケに「いじめと書くな」と指導した女性教諭(2013年7月)[編集]
栃木県栃木市の市立小学校で、いじめに関するアンケートを実施した際、3年生を担当する30歳代の女性教諭が、いじめの申告件数が多くならないように児童を指導したうえで、回答させていたことが分かった。
アンケートは、市がいじめの実態を把握するために市内の全小中学生を対象に無記名で行った。同小では今月4日に実施された。
同小によると、女性教諭は、アンケート記入に先だって、担当のクラス全員に「いじめは一方的なもの。みんながしているからかいなどはケンカ。いじめと書くと多くなるので書かないように」と指導したという。
また、女子児童の一人が、今年4月に同級生に鉛筆で腕を刺されたとして、「いじめあり」の欄に丸印をつけていたが、女性教諭はアンケート回収後に女子児童を呼び出し、いじめにあたらないなどと説明。ペンで「いじめではない」に丸印をつけ、本人が納得済みである旨も加筆したという。
いじめの統計[編集]
文部科学省の統計によると、平成19年度に文部省が認知したものでは、84,648件のいじめがあり、児童生徒1000人あたりのいじめ件数は7.1人で、いじめを認知した学校の件数は40.0%であった[4]。 ただし以上の統計はもちろん文部省が認知した件数である為、暗数を考慮しなければならない。
学年別で見た場合、中学生、なかでも特に中学1年生のいじめの数が多く、中学1年生だけで17,063件のいじめが認知されており、この数字は小学6年生(4,262件)や高校1年生(3,701件)に比べ4倍以上多い。男女比では、54.8%が男子、45.2%が女子である[4]。
平成19年度に自殺した136人の児童のうち、いじめが原因であると特定されたものは3件で18年度よりも3件少ない[4]。
中学1年生の「仲間はずれ、無視、陰口」を例に国立教育政策研究所が2004-2009年度に行った追跡調査(国立教育政策研究所 2009 、国立教育政策研究所 2010 )によれば、一般的イメージとは異なり、いじめる生徒・いじめられている生徒は短期間で入れ替わっており、「いわゆる「いじめられっ子(いじめられやすい子ども)」や「いじめっ子(いじめやすい子ども)」も存在しない」[3]。
また同調査によれば、同じ学校・同じ年度の生徒であっても学年が進むにつれていじめの数が大きく増減しており、「いじめが起こりやすい学校・年度」のようなものは無かった。従って「いじめが起きやすい学校とそうでない学校、いじめが起きやすい学年とそうでない学年というものが存在しているわけではない」[3]。
以上のことから、「何か特別な問題や背景があるから、いじめが起きる」わけではなく[5][5]「そうした問題の有無とはさほど関係なく、いじめは起きうる」[5]「ちょっとしたきっかけで、いじめは起きてしまう、広がってしまう」[5]のが実態であることが分かる。
小学校においても同様の傾向が確かめられている[3]。
実際同調査によれば中学1年生の場合、「週に1回以上」いじめを受けている生徒が「毎回50-100名(7-14%)程度存在するにもかかわらず、それが半年後まで続く事例は半分以下」[3]であった。すなわち「毎回「クラスに3-6名」程度の割合の子どもが被害に遭っている計算であるにもかかわらず、常習的な被害者と考えられるのは1000名につき3名という数」である[3]。
これは加害者についても同様で、「「週に1回以上」という高頻度の加害経験があると答えた生徒は、毎回35-85名(5-12%)程度いたにもかかわらず、半年後も引き続き経験があると答えた者は半分以下」[3]であった。
小学校・中学校で「仲間はずれ、無視、陰口」が3年間の間に全く無かった児童生徒はそれぞれ22.6%、27.6%で[3]、いじめが誰にでも起こりうることを裏付ける。 逆に3年間連続でいじめがあった児童生徒は小学校・中学校でそれぞれ0.4%、0.6%であった[3]。
いじめが発見されたきっかけは、学校の教職員が発見したのが50.3%、本人や家族の訴えなど教職員以外がきっかけのものは49.7%であった[4]。 教職員が発見した方法としては「アンケート調査など学校の取組により発見」は(24.4%。きっかけ全体に対する割合。以下同様)、「学級担任が発見」(19.8%)が多く、教職員以外のものでは、「本人からの訴え」(24.6%)、保護者(16.3%)、本人以外の児童生徒(5.1%)の順である[4]。
都道府県別で見た場合、1000人あたりの認知件数は多いほうから順に熊本県(32.7件)、大分県(27.3件)、岐阜県(25.2件)が多く、全国平均(7.1件)を3倍以上上回る[4]。ただしこれはあくまで認知件数なので、これらの件で実際にいじめが多いのか、それともこれらの県でいじめを認知しやすい体制が整っているのかは不明である。 なお熊本県や大分県と同じ九州でも、福岡県や佐賀県(いずれも1.1件)は少ない方から2番と3番で、単純に九州でいじめが多いというわけではない[4]。(全国最小は和歌山県の0.8件)[4]。
文部省の統計では平成6年と平成18年にいじめの定義を変えているが、統計上は、(認知された)いじめの発生率が激減→いじめの定義を変えると激増を繰り返している。 例えば平成6年には31.3%だった発生率が平成17年度には19.4%に減っている[4]。ただし、いじめの定義を変えると発生率が急増していることから、いじめが実際に減ったのか、それともいじめの動向変化により統計上捉えられるいじめ発生率が減り、動向にあわせて定義を修正することでまた見かけ上の発生率が増えているのかは不明である。
学年別動向の統計[編集]
学年別に見た場合、次の傾向があることが指摘されている。
- 幼稚園・保育園:小谷隆真によれば、小学校や中学校のようないじめはないという。積極的な子供が消極的な子供を従えているようにみえる「子ども同士の力関係」や、「子供のコミュニケーション能力の未発達」による玩具等の横取り、手を出すことをいじめととらえてしまうという[6]。
- 小学校:「冷やかし」の割合が多いが、「仲間はずれ」の割合が、他の区分に比べて多い[7]。
- 中学校:統計上、いじめが最も多くなる年代である[7]。重篤な場合は重傷を負わせられる、傷害の結果死に至ることもある。結果、自殺するという例もある。
- 高等学校:「冷やかし」が多いが、「暴力をふるう」割合が高い[7]。割合は少ないが、いじめによって退学する場合もある(人間関係を理由とした中途退学は、2005年度で7.4%[8])。
- 大学:大学に於いても、特に体育会系のクラブで、先輩からの「しごき」という名のいじめは昔から存在する。これに関連して、継続的な悪質ないじめで、訴訟沙汰になった例もある[9][10][11]。
小学校 | 中学校 | 高等学校 | 特別支援学校 | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 構成比 | 総数 | 構成比 | 総数 | 構成比 | 総数 | 構成比 | 総数 | 構成比 | |
冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる。 | 32,110 | 65.7 | 28,061 | 64.5 | 4,646 | 55.6 | 194 | 56.9 | 65,011 | 64.3 |
仲間はずれ、集団による無視をされる。 | 11,896 | 24.3 | 9,489 | 21.8 | 1,455 | 17.4 | 56 | 16.4 | 22,896 | 22.6 |
軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする。 | 9,980 | 20.4 | 7,120 | 16.4 | 1,712 | 20.5 | 64 | 18.8 | 18,876 | 18.7 |
ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする。 | 2,317 | 4.7 | 2,525 | 5.8 | 737 | 8.8 | 27 | 7.9 | 5,606 | 5.5 |
金品をたかられる。 | 764 | 1.6 | 1,369 | 3.1 | 498 | 6.0 | 12 | 3.5 | 2,643 | 2.6 |
金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする。 | 3,254 | 6.7 | 3,448 | 7.9 | 671 | 8.0 | 32 | 9.4 | 7,405 | 7.3 |
嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする。 | 2,854 | 5.8 | 2,636 | 6.1 | 795 | 9.5 | 30 | 8.8 | 6,315 | 6.2 |
パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる。 | 534 | 1.1 | 3,633 | 8.4 | 1,701 | 20.4 | 25 | 7.3 | 5,893 | 5.8 |
その他 | 1,980 | 4.0 | 1,317 | 3.0 | 388 | 4.6 | 19 | 5.6 | 3,704 | 3.7 |
いじめ原因の統計[編集]
いじめ加害の原因となるストレッサー(ストレス原因)で直接的・間接的に大きな要因をアンケートから探ってみた統計[3]によると、 直接的にも間接的にも最も影響力が大きいのは友人から学業・容姿・行動などを馬鹿にされた「友人ストレッサー」(36組中31組で第1位)[3]であった。 次に影響力が大きかったストレッサーは学業・容姿・長所や短所などに関する「競争的価値観」(36組中2組で第1位、19組で第2位)で、間接的な効果しかないにも関わらず、その効果の大きさが伺える。
そして、様々なストレッサーが「不機嫌怒りストレス」(36組中3組で第1位、11組で第2位)に影響を与え、いじめを発生させているという構図がある[3]。一方教師・家族・友人らによる支援がこれらのストレスを軽減することも分かっており[3]、周囲の支援がいじめを抑止する効果があることがわかる。
また古いデータであるが、1986年の東京都教育委員会調査報告[13]によれば、いじめの原因は以下の結果となった。
- 力の弱いもの、動作の鈍いものを面白半分に 33.6%
- 欲求不満の鬱憤晴らしとして 19.7%
- 生意気なもの、いい子ぶるものに対する反発・反感から 15.7%
- 自分たちと違う、なじめないなどの違和感から 14.8%
- 怒りや悲しみ、嫉妬から 10.7%
- 仲間に引き入れるため 6.7%
- 以前にいじめられたことの仕返しとして 6.3%
その他少数意見として「面白いから」、「ふざけて、冗談で」があった。
いじめに関する研究[編集]
内藤朝雄は社会学的・心理学的手法を用いて、2001年に『いじめの社会理論』(内藤 2001 )を刊行した[14]。その中で内藤は、「人間関係が濃厚すぎる集団内において生じる欠如を埋めようとする偽りの全能感」としていじめの理論化を行った。そしてその対策として「学級制度の解体」「警察の介入」を挙げた。
森口朗は2007年の『いじめの構造』(森口 2007 )で、内藤の理論をベースに独自の「スクールカースト」の概念を導入した。これはクラス内の序列のことで、人気や「空気を読む能力」の多寡により上下し、下位になるほどいじめられやすくなるという。今までの論者が素通りしてきたこの概念を取り入れて、森田は修正藤田モデルという四分類を作った。これによりいじめのモデルはかなり整理され、見通しが良くなった。そして分類毎にいじめの発生するメカニズムを考察し、具体的な対策を提示した。
シカゴ大学による脳のfMRIスキャンを使用した最新の研究によると、人が他人の苦痛を目にすると、自身が苦痛を経験したときと同じ脳内領域が光るが、いじめっ子の場合扁桃体や腹側線条体(報酬や喜びに関係すると考えられている部位)によってそうでないものに比べ活発に活動することがわかったという。「つまり、いじめっ子は人の苦痛を見るのが好きだと考えられる。この考えが正しい場合、彼らは弱い者いじめをして他人を攻撃するたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進んでいることになる」「自己制御を欠いている点を処置する、あるいは埋め合わせる治療法を開発する必要があるだろう。いじめっ子が自己制御を欠いているのは事実だと考えているし、他人を傷付けるたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進む可能性がある」と同研究チームのレイヒーは話す。[15]
いじめの分類[編集]
具体的ないじめに相当する行為の種類によって分類した場合、暴力系のいじめとコミュニケーション操作系のいじめの2種類がある[16]。前者は、被害者に対する殴打・拘束や服を脱がせるなど身体へ直接的なダメージを与えるもので、後者は悪口・誹謗中傷や風説の流布などコミュニケーションを介して被害者に不快感・精神的ダメージを与えるものである。男女別では、女子のほうが暴力系ではなくコミュニケーション操作系のいじめを遂行する傾向にあり、その背景にはジェンダーによる抑圧(「女の子は優しく/おとなしくしているべきである」という固定観念)あるいは評価基準の違い(男子はそれが身体的な強靭さに求められるが女子は他者からの受容に依存する)が考えられる[17][18]。ただし、男子のいじめについてもだんだんと暴力系よりもコミュニケーション操作系のいじめのほうが多くなる傾向にある[18]。
いじめの形態に注目すると、排除のいじめと飼育のいじめの2種類がある[19]。排除型は被害者を仲間外れにして自分たちのグループから排斥するものであり、飼育型は被害者を自分たちのグループの中に留めておいたままいじめの対象とすることによって楽しむものである。実際のいじめは排除型ではなく飼育型であることが多い。
藤田 (1997 211-214)は、(学校での)いじめを次の4つに分類し、多くのいじめに対する言説がその特性の相違点を考慮していない点を批判している。
- モラルの低下・混乱によるもの。1980年代中ごろに頻発したタイプで、被害者が偶発的に決定されるところに特徴がある。一種のモラル・パニックや集団ヒステリーといえる。
- 社会的偏見・差別による排除的なもの。1のケースと比較するといじめの対象となった理由(特定の社会的属性を持っていたということ)は明瞭であり、差別意識自体を取り除く指導をすることがこの種のいじめの対策となる。
- 閉鎖的な集団内で特定の個人に対して発生するもの。教師など外部から実態が把握しにくいぶん、対策は難しくなる。
- 特定の個人への暴行・恐喝を反復するもの。3のケースと違って、加害者と被害者の属するグループは異なる場合が多い。不良が下級生からカツアゲするといったものが典型的なもので、認知されやすい。
森口 (2007 100)は、いじめの考察としては前述の藤田英典の分類を継承して論を進めているが、実際に「いじめ」という言葉で総称されているものは次の4つに分けられるとしている。
- 子供たちが共同生活をおくる上で当然発生するであろう軋轢。
- 従来型コミュニケーション系いじめ。仲間はずれにするなど、犯罪の構成要件は満たさないもの。
- 犯罪型コミュニケーション系いじめ。インターネット上での誹謗中傷のように犯罪とみなしうるもの。
- 暴力・恐喝型いじめ。暴行や窃盗などの犯罪に問われるもの。
そしてそれぞれ求められるべき対処法は異なり、1のタイプの軋轢の解消は可能な限り生徒の自主性に任せ(教師は2の段階に移行しないかを直接介入することなく見守る)、3・4のタイプでは警察へ通報するなど司法の介入によって解決し、2のタイプのみ教師・学校側が積極的に解決すべき問題であるという。
いじめ事件の例[編集]
- 上福岡第三中学校いじめ自殺事件(1979年 『ぼく、もう我慢できないよ ―あるいじめられっ子の自殺』としてルポになっている[20])
- 大阪産業大学付属高校同級生殺害事件(1984年、性的いじめ復讐殺人事件)
- 中野富士見中学いじめ自殺事件(1986年、日本で初めていじめ自殺事件がクローズアップされた事件)
- 山形マット死事件(1993年)
- 愛知県西尾市中学生いじめ自殺事件(1994年)
- 旭川女子中学生集団暴行事件(1996年、強姦事件)
- 名古屋中学生5000万円恐喝事件(2000年)
- 丸子実業高校バレー部いじめ自殺事件(2005年、事実無根として加害者とされた側も遺族に対し慰謝料請求の民事裁判を起こした事件)
- 滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件(2005年)
- 福岡中2いじめ自殺事件(2006年)
- 新潟県神林村男子中学生自殺事件(2006年)
- 尼崎児童暴行事件(2006年、性的暴行事件)
- 滝川高校いじめ自殺事件(2007年、加害者4人逮捕、学校裏サイトの存在がクローズアップされた事件)
- 多摩川高校生水死事件(2009年、川へ突き飛ばした同級生が溺れる様子を動画撮影していた。)
- 桐生市小学生いじめ自殺事件(2010年)
- 大津市中2いじめ自殺事件(2011年)
事件別例[編集]
刑法上の犯罪となる全ての攻撃。なお、2006年の福岡中2いじめ自殺事件のケースでは暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の疑いが適用されたが、このように恐喝や傷害などの行為を伴わずに立件されるのは異例の話であった。ほとんどは組織防衛(教育界)の観点から(“身内の恥を晒すな”と)内密に処理され、自殺など人命に関わる事態に発展しない限り立件がない場合が多い。
- 殺人罪:法律上は傷害致死や自殺教唆であっても、「未必の故意」による殺人罪として立件されることもある。
- 傷害致死罪:(例)集団によるリンチによって、被害者が死亡。
- 自殺教唆罪:自殺を促す(とびおりろ、など)。
- 暴行罪・傷害罪:殴る、蹴る、刺す、縛る、煙草をからだに押し付ける。
- 脅迫罪:脅す、ナイフで刺すふりをする・ナイフを見せる、暴力団などの犯罪集団と共謀する。
- 強要罪:性行為(自慰、売春など)の強要。常々いじめられる者同士を喧嘩させる。
- 恐喝罪:暴行や脅迫による金銭の要求。
- 強姦罪・強制わいせつ罪
- 名誉毀損罪・侮辱罪:盗撮して、インターネットで流す。インターネット上の中傷。中傷ビラの頒布。携帯電話・メールでの嫌がらせ。これらを警察に訴えれば、捜査がなされ、犯人は逮捕される。
- 犯罪の教唆(実行犯と同罪):強姦など性犯罪の要求、万引き(窃盗)など財産犯の強要。
- 偽証罪(法廷などで)・誣告罪:犯罪等を行ってそれをなすりつける、法廷など公的機関での虚偽報告。
その他の人権侵害(犯罪として立件できないにせよ、民事上の不法行為と認定されうる。)
- 無視、陰謀をめぐらすこと、教師や上司に事実ではない不利な虚偽報告をする。
労働問題
- 不当労働行為:上司が部下に対し、職場で陰謀を巡らすこと.「自分が悪い」と誤解させる状況を、故意につくられる。
- 不当解雇:職場で、責任をとって辞めさせるような状況をつくる。
- セクシャルハラスメント
- パワーハラスメント
法律上の保護[編集]
いじめ被害者は、下記の法規定によって保護される。
各法規定は、被害内容を下記の2つに大きく区分する。(一般に「いじめ」は後者をさすことが多いが、前者も該当する)
- 身体的苦痛(殺人・拷問・傷害などの瞬間的な肉体的打撃である暴力、障害)などの実害
- 精神的苦痛(非常に陰湿で、長期間苛められる側(被害者)の精神に大きな打撃を与えるもの)
アフターケア[編集]
悪辣かつ長期化したいじめの場合、被害者の心の傷は深く、性格そのものが変容する場合がある。深刻な心理的・肉体的・性的虐待を受けたあとでは、いじめそのものが解消したあとでも、本人のみではケアが困難となる。その場合には、精神科医やカウンセラーに相談することも重要である。
世界のいじめ[編集]
韓国[編集]
韓国では、結婚式の後で新郎をいじめる風習がある(韓国の新郎いじめ)。
韓国では、当初、いじめは日本語の単語を輸入した「이지메(イジメ)」が主流であったが、現在では「激しい」と「爪弾き」を合成した単語「ワンタ」と呼ぶ[21]。
2005年には、便所の水を流していない訓練兵らに立腹し、部隊の中隊長が人糞を指につけて食べるよう強制した韓国陸軍訓練所食糞事件が発生した。同年には陸軍においていじめを受けていた一等兵が銃を乱射し、8人を殺害する漣川軍部隊銃乱射事件が発生した[22]。
また、韓国軍では2011年7月4日、上等兵が銃を乱射して兵を4人射殺する事件が発生したが、この動機は部隊内のいじめが原因だとされる[23]。この銃乱射事件が起こったのと同じ師団で、2011年7月3日、兵士が首を吊って自殺している。これもいじめの可能性がなかったか、当局が捜査している[24]。
2011年12月、韓国では3人の中高生が相次いで自殺した。いじめが原因と見られている[25]。2012年の新年国政演説において、李明博大統領は多発するいじめの問題にも触れ、総合対策を準備すると宣言した[26]。
韓国の教育現場では、脱北者に対するいじめも頻発している。脱北者の生徒は、罪人のように韓国学生たちの顔色をうかがい、戦々恐々とする日々を送っており、それに耐えかねて不登校に陥る例もある[27]。
アメリカ[編集]
アメリカ合衆国の人種差別 も参照 アメリカ合衆国では、45州でいじめ防止法を導入している。いじめが原因で毎日16万人近くが学校を欠席している。中学生男子へのある追跡調査では、加害者の60%が、24歳までに何らかの犯罪で有罪宣告を受けている[28]。レディー・ガガは、同性愛を理由にいじめを受けて自殺した14歳のファンについて触れ、「いじめは撲滅すべき」と訴えた[29]。ガガ自身、14歳頃にゴミ箱に放り込まれたり、廊下で吊るし上げられるなどの激しいいじめを受けていたことを告白している。
13名の人間が殺害されたコロンバイン高校銃乱射事件では、犯人たちは日常的にいじめが行われており、それが原因で事件を引き起こしたと考えられている。
特にアジア系に対するいじめは酷く、10代のアジア系アメリカ人のうち、半数以上が学校でいじめられた経験があると回答。これに対して黒人やヒスパニック、白人では1/3程度である。フィラデルフィアの学校では2009年にアジア系の生徒に対する集団暴行事件が発生、被害者は1日で26人に上り、うち13人が重傷を負って集中治療室で手当てを受けた。この学校では、アジア系生徒が見の安全が確保されるまで登校を拒否するストライキに発展した。アジア系は、他人種に比較して、うつや自殺の割合が突出してる[30]。
2009年、アメリカの司法省と教育省が10代の学生を調査した統計によると、31%の白人、34%のヒスパニック、38%のアフリカ系が「学校でいじめを受けたことがある」と答えたのに対して、アジア系学生の場合は54%に達するという結果が出た[31]。
2011年10月には、アフガニスタンに派遣された19歳の中国系の米兵が、同僚の白人兵士に執拗ないじめを受けて銃で自殺、アジア系へのいじめの問題が浮き彫りになっている。この事件では、職務怠慢、虚偽報告、虐待や過失致死などの罪名で兵士8名が訴追された[32]。
2011年、CNNがいじめ対策の特別番組で、中途脱落者が1人もおらず99%が大学に進学するロングアイランドの名門校、ウィートリスクールの生徒700人を対象に調査したところ、42%が学校のクラスメートをいじめたことがあり、31%はいじめを経験したと答えた。また、77%は友だちがいじめられていることを知っていながらも防ごうとせず、周りにも知らせず見て見ぬ振りをしたと答えた。2011年時点で、アメリカは47州でいじめ禁止法が成立しており、近年はそれがさらに強化されつつある[33]。
2012年2月27日、オハイオ州で発生した3人の死者を出した高校の銃乱射事件では、検察当局は否定しているものの[34]、容疑者の少年はいじめに遭っているとの情報がある[35]。
イギリス[編集]
イギリスのBBCの調査によると、生徒の7割の人間が何らかのいじめ被害に遭っている[36]。
また、イギリス労働組合会議(TUC)の調査によると、350万人の労働者が職場でいじめを受けていると答え、その割合は労働者全体の14%に達する。また、専門性の高さに比例する傾向が見られた[37]。
ドイツ[編集]
ドイツでは、年間50万人、実に25人に1人の児童・生徒が少なくとも1週間に1回は同級生からのいじめの被害にあっている。1990年代初頭から、いじめが注目されるようになった。当初、身体に対する暴力的な行為に注目していたが、次第に精神的な嫌がらせもいじめの範疇に含めることが多くなった。ドイツでは、主に心理的ないじめを“Mobbing”、物や身体への暴力には“Bullying”という言葉を使って区別する。これは英語からの借用語である[38]。
スウェーデン[編集]
スウェーデンでは、教育法で、学校にいじめ対策の立案が義務化されている。
オーストラリア[編集]
国際教育到達度評価学会で参加40か国から集めたデータをまとめたところ、オーストラリアでは生徒の25%以上がイジメを体験しており、クエート、カタール、台湾、ニュージーランドに次いで、いじめの発生率が高かった[39]。
オランダ[編集]
オランダでは、いじめはペストを語源とする「Pesten(ペステン)」と呼ばれる。オランダでは7歳からいじめが始まるが、特徴としてクラス全員がまとまって、いじめの対象をいじめる事が多く、標的になった子供の99%は転校を余儀なくされる。なお、いじめの種類は「無視」が多い[40]。
ニュージーランド[編集]
ウェリントンで開かれた教育省サミットで提出された学校安全の為の調査レポートによると、ニュージーランドのいじめ発生率は国際的平均率より50%も高く、世界的にみても非常にいじめの発生率が多いことがわかった。特に、ネットいじめの割合が高まっている[41]。
ニュージーランドでは、アジア系移民を標的にした人種差別によるいじめも多発している[42]。
2009年、日系ニュージーランド人の14歳の少年が「クジラ喰い」と因縁をつけられ、集団で抱え上げて地面に落とすなどの暴行を加えられ、脳障害を伴う重傷を負った事件が発生した[43]。
フィンランド[編集]
フィンランドでは、2007年11月、トゥースラのヨケラ中等高等学校で、いじめを受けていた男子生徒(18)が生徒7人と校長を射殺した事件が発生した。
ロシア[編集]
ロシアでは、ロシア連邦軍でのいじめが大きな社会問題となっている。
隊内で新兵に対するいじめ(テンプレート:ru)が激しく、脱走の大きな原因となっている。公式には2002年前半期だけで2,265名の脱走者が出たとされるが、ロシア兵士の母の会ではその10倍としている。2005年の公式な数字ではいじめによる死者は16人とされ、自殺者が276人、事故死者が同じく276人とされた。ロシアではこの数字に疑問の声が出た[44]。2004年前半期のロシア兵の死者数は500人以上に達していた[45]。
いじめについての言葉・ことわざ[編集]
- 弱い者いじめ(よわいものいじめ)
- 近代民主主義社会では、強者は弱者を保護すべき立場にある。いじめとは、強者が弱者に対して迫害行為を行うことであり、卑怯であると、いじめという行為を戒める言葉として用いうる。しかし現実的に考えると強者=卑怯者、弱者=村社会においての無権利者、無支援者としてみるべきであり、言葉上の強弱にとらわれていてはいけない要出典。
- 出る杭は打たれる
- 才能・手腕があってぬきんでている人は、とかく人から憎まれる。
- さし出たことをする者は、人から非難され、制裁を受ける。
- 長いものには巻かれよ
- 個性的な者・有力者や多数派に反発する者・場の空気を読まずに正論を述べる者・異論を述べる者が苛められるさま。権威主義・画一主義を是とする考え(集団主義)が、いじめを助長している場合もしばしばある。
- 坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い
- 誰かを憎むようになると、直接憎むような理由が無くても、関連するもの全てを憎く感じる。
- 数の暴力(かずのぼうりょく)
- ある意見や思想などにおける大多数の賛成側が少数の反対側に、理不尽な要求等を強要すること。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
相談窓口等[編集]
- 教育情報ナショナルセンター
- 文部科学省:いじめの相談窓口
- 厚生労働省:いじめに関する相談窓口
- ばたややつ
いじめの定義[編集]
Wikipedia他言語版[編集]
- wiki:ar:تنمر
- wiki:arz:التنمر
- wiki:cs:Šikana
- wiki:cy:Bwlio
- wiki:de:Schikane
- wiki:el:Νταηλίκι
- wiki:eo:Ĉikanado
- wiki:fa:قلدری
- wiki:fi:Kiusaaminen
- wiki:he:בריונות
- wiki:it:Bullismo
- wiki:ko:집단 따돌림
- wiki:lt:Patyčios
- wiki:ms:Buli
- wiki:pl:Znęcanie się
- wiki:pt:Bullying
- wiki:ru:Задирание
- wiki:simple:Bullying
- wiki:sk:Šikanovanie
- wiki:tl:Paghahari-harian
- wiki:uk:Цькування (психологія)
脚注[編集]
- ↑ 内藤 2001
- ↑ 2.0 2.1 大辞泉
- ↑ 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 国立教育政策研究所 2010
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 4.8 4.9 文科省 2009
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 国立教育政策研究所 2009
- ↑ 千里敬愛幼稚園のサイトに掲載されていた『読売新聞』2005年3月7日の記事の画像を参照していたようだが、リンク切れ。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 文科省 2006a
- ↑ 文科省 2006b
- ↑ 「「バイクで青森へ」と強要され事故 国立大生が賠償提訴」『朝日新聞』2007年7月6日
- ↑ 「いじめ:大学先輩に慰謝料求める…近畿の国立大生が提訴」『毎日新聞』2007年7月7日
- ↑ 「「いじめで統合失調症に」 広島市などに賠償命令」『47NEWS』2007年5月24日
- ↑ 文科省 2008
- ↑ 東京都教育委員会調査報告 江川文成 「いじめから学ぶ」、大日本図書株式会社、1986年、p35。いじめの現状・原因からの重引。
- ↑ 2007年刊の『〈いじめ学〉の時代』(柏書房、ISBN 978-4-7601-3219-5)は、その入門編である
- ↑ ナショナルジオグラフィック ニュース:人の災難を喜ぶいじめっ子の脳
- ↑ 内藤 荻上 2010 40-43
- ↑ 小笠原通子「女の子って裏攻撃が大得意!?――いじめと「男らしさ/女らしさ」」(内藤 荻上 2010 64-65)
- ↑ 18.0 18.1 土井 2009 280-281
- ↑ 内藤 荻上 2010 17-19
- ↑ 金賛汀『ぼく、もう我慢できないよ - ある「いじめられっ子」の自殺』一光社、1980年、JPNO 80040400
- ↑ 「日韓比較文化:日本のイジメ、韓国のワンタ」ブログ「河信基の深読み」2007年11月23日
- ↑ 「韓国海兵隊の同僚射殺事件/いじめ体質 浮き彫り/6年前も銃乱射 「軍の悪習」指摘」『赤旗』2011年7月8日
- ↑ 「韓国海兵隊の銃乱射 いじめが原因か」『産経新聞』2011年7月6日
- ↑ 「海兵隊兵士が首つり自殺 乱射事件と同じ師団 韓国軍、いじめの有無調査」『産経新聞』2011年7月8日
- ↑ () 韓国で2011年末、いじめを苦に中高生が連続自殺 日経ビジネスオンライン [ arch. ] 2012年1月16日
- ↑ () 李明博大統領の新年国政演説(全文) 民団新聞 [ arch. ] 2012年1月18日
- ↑ (2012-3-5) 死線を超えて辿りついた韓国、迎えたのは「蔑視」と「いじめ」 東亜日報 [ arch. ]
- ↑ () いじめ加害者をどう罰するべきか ニューズウィーク日本語版 10月20日号 [ arch. ] 2010年11月16日
- ↑ 「レディー・ガガ 「いじめは法律で禁じるべき」MTV JAPAN、2011年9月24日
- ↑ () 米国で横行するアジア系いじめ、うつや自殺も突出 CNN [ arch. ] 2012年1月18日
- ↑ (2012-2-21) 「台湾の誇り」に差別的表現、人権団体が非難 NBAの新星 産経新聞 [ arch. ]
- ↑ () 自殺した中国系兵士へのいじめで上官ら8人訴追、米陸軍 CNN [ arch. ] 2012年1月16日
- ↑ () 米国も「校内いじめ」が深刻化、被害者女子高生がバスに飛び込み自殺 民団新聞 [ arch. ] 2012年1月5日
- ↑ (2012-2-29) オハイオの高校銃乱射事件、「いじめが原因ではない」 米検察 AFPBB [ arch. ] 2012-3-4
- ↑ (2012-2-28) いじめが原因?オハイオ銃乱射、17歳少年逮捕 読売新聞 [ arch. ] 2012-3-4
- ↑ 'Seven in 10' bullied at school - BBC NEWS 2006年11月6日
- ↑ Three and a half million bullied in job - Trades Union Congress 2008年9月4日
- ↑ ドイツの学校におけるいじめの問題とスクールカウンセラーの取り組み : 比較教育的見地から 伊藤賀永関東学院大学教授
- ↑ 豪小学校のイジメ、世界でも最悪水準 - NICHIGO ONLINE 2008年12月14日
- ↑ () 我が子がいじめられたら…オランダの場合 カオル・フリードリヒス [ arch. ] 2010-10-14
- ↑ () ニュージーランドでのいじめ発生率は世界で最悪レベル ニュージーランド総合情報 [ arch. ] 2009年3月17日
- ↑ 「NZの学校で「いじめ」受けるアジア系生徒」『日刊ベリタ』2003年4月7日
- ↑ Schoolboy avoids death after assault - National - NZ Herald News 2009年7月5日
- ↑ 木村汎、名越健朗、布施裕之『「新冷戦」の序曲か』北星堂書店、2008年、ISBN 9784590012452
- ↑ 江畑謙介「ロシア軍・国防省改革の現状」ジャパン・ミリタリー・レビュー『軍事研究』2009年1月号
参考文献[編集]
統計・白書[編集]
- 文部科学省:児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査
- 文科省 (2006a) -(いじめ)[リンク切れ] 2006年9月
- 文科省 (2006b) -(中途退学)[リンク切れ] 2006年9月
- 文科省 (2008) 平成19年度「 - 」について、公表資料[リンク切れ] 2009年6月
- 文科省 (2009) 平成20年度「 - 」について、公表資料[リンク切れ] 2009年11月
- 法務省人権擁護局:人権に関する資料など(各年度の「「人権侵犯事件」の状況について」にいじめの統計あり)。
- 国立教育政策研究所生徒指導研究センター
- 少年犯罪データベース:いじめ自殺
書籍[編集]
- 内藤 荻上 (2010) 内藤朝雄、荻上チキ、『いじめの直し方』朝日新聞出版、2010年、ISBN 978-4022507082
- 土井 (2009) 土井隆義「フラット化するコミュニケーション」『コミュニケーションの社会学』有斐閣、2009年、ISBN 978-4641123922
- 森口 (2007) 森口朗 『いじめの構造』新潮社、2007年、ISBN 978-4106102196
- 内藤 (2001) 内藤朝雄「いじめの社会理論」柏書房、2001年、ISBN 4-7601-2088-2
- 藤田 (1997) 藤田英典『教育改革―共生時代の学校づくり』岩波書店、1997年、ISBN 978-4004305118
大津市中2いじめ自殺事件 | |
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木村家 | 木村束麻呂(主犯) | 木村真束(父親) | 木村恭子(母親) |
小網家 | 小網健智(主犯) | 小網健市(父親) | 小網美恵(母親) |
関連人物 | 本多広樹(被害者) | 藤本一夫(校長) | 森山進(担任) | 山田晃也(主犯) | 沢村憲次(大津市教育委員会教育長) | 三日月大造 (滋賀県知事) | 伊知地萌子(青山学院中等部少女暴行事件主犯) | 堤翔吾(滝川高校いじめ自殺事件主犯) |
学校 | 大津市立皇子山中学校 | 大津市中2いじめ自殺事件の関連学校 |
関連項目 | 滋賀県 | 大津市 | いじめ | 自殺 | イジメコネクト | 大津市教育委員会 | 青山学院中等部少女暴行事件 | 滝川高校いじめ自殺事件 |青木悠君リンチ殺人事件|滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件|福岡中2いじめ自殺事件|桐生市小学生いじめ自殺事件| カテゴリ |