御用学者
御用学者(ごようがくしゃ)とは、もと江戸幕府に雇われて歴史の編纂など学術研究をおこなっていた者のこと。お上お抱えの学者。
転じて現在では「権力者におもねる学者」といった意味で使われる。
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歴史[編集]
江戸時代に徳川家による政権の安定化が重要課題となり、武断主義から文治主義に切り替え、朱子学を重んじ、上下関係を明確にしようとした。
しかし、そもそも徳川政権の開祖である徳川家康自体が豊臣家から武力で強引に政権を簒奪する人物だったため、これを正当化するために幕府の御用学者である林羅山などは「秀吉公は、秀頼めに天下を治める器量が無ければ、家康に取って代わるように遺言した」という逸話を創作した。
現代における用法[編集]
現代における用法を定義することは難しいが、学術的な調査を改竄ないしは解釈し、権力者や統治者、ないし依頼者に都合の良い結果を導き出す者がこう呼ばれる。しかしながら、御用学者は一面から見たものであり、いわゆるレッテル貼りに近いものがある。そのため使用には注意が必要である。
古くは水俣病での例が挙げられる。1956年、熊本大学医学部の研究チームにより、有機水銀原因説が有力視されたのだが、同年11月12日には厚生省食品衛生調査会常任委員会が同様に答申を出したところ、厚生省は翌13日に常任委員会を解散、代わりにアミン原因説を唱える清浦雷作・東京工業大学教授などを委員とし有機水銀説を否定する「水俣病研究連絡協議会」を設置した。政府が有機水銀を含むチッソ廃液説を認めたのは実に12年後の1968年の事であり、チッソ附属病院での実験における全く同一の結果さえ伏せられていたのである。
日本たばこ産業に研究費を支援してもらうかわりに、タバコを擁護する発言を行うなど、消費者の健康よりも特定企業の利益を優先するような行為をしている学者を指して使われた事例があると言う主張が渡邊昌によってなされていたり[1]、メーカーから多額の研究費を受け取っていたために、タバコと乳幼児突然死症候群との関係があるという論文が、根拠が乏しいというように書き換えられてしまったという主張が岡田正彦によって存在する[2]。
今日の現実の社会の中では、例えば有力な学者が政府の公共事業などの施策に対して、自己の信念に基づく意見、思想を審議会などの場で反映させる為に、そうした機関に呼ばれる立場を確保するべく、ある種の手練手管として、権力へのおもねりと自己の真の主張を両天秤にかけながら駆け引きをする場合がある[3]。そのため御用学者か否かの線引きは困難な側面を有する。駆け引きに失敗して結果として権力へのおもねりの手練手管を権力に利用されるだけの結果となったときには、結果として御用学者呼ばわりされてやむを得ない側面がある一方、駆け引きに成功して自己の信念を政策に反映させることに成功した場合には、反骨の策士と評価される場合もありうる。
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脚注[編集]
- ↑ 渡邊昌『食事でがんは防げる』 光文社、2004年4月23日。ISBN 978-4334974411。77頁。
- ↑ 岡田正彦『がんは8割防げる』 祥伝社《祥伝社新書》、2007年6月。ISBN 9784396110727。
- ↑ マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。