少年兵

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少年兵(しょうねんへい 英:Child soldier)、あるいは少女兵は、18歳未満の子供の兵隊のこと。特に、陣地を守らせたり、プロパガンダを提供するために、軍事活動に強制動員する場合を指す。

時に、子供のいけにえと言われることがあるが、宗教的な子供のいけにえとは同質のものではない。子供兵士の呼称も同様に用いられる。

戦争武力紛争に兵隊として子供たちが使われていることに対し、社会の関心を引き出すために、毎年2月12日に、レッドハンドデー(Red Hand Day)を開催している。レッドハンドデーは、国連総会で採択された武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書(Optional Protocol to the Convention on the Rights of the Child on the involvement of children in armed conflicts)2002年2月12日に発効される日に開始された。

概要[編集]

歴史的には少年十字軍オスマントルコのイエニチェリ、戊辰戦争白虎隊二本松少年隊等の事例、近代では第二次世界大戦におけるヒトラーユーゲントを代表とする各国の少年志願兵(枢軸側のみならず、米国等にも少年志願兵が存在した)が見受けられたが、第二次世界大戦までの少年兵はあくまで正規の軍人としての地位と待遇を受け、国民軍の一員として正規戦争を戦っていた。

現代において国際的問題となっているのは、冷戦崩壊後の第三世界における民族紛争において、主に反政府組織によって子供が意に反して兵士として使われ過酷な待遇を受ける状況である。

反政府組織の例としては、ダイヤモンドの権益を巡るシエラレオネリベリアでの紛争におけるリベリア国民愛国戦線革命統一戦線スリランカタミル・イーラム解放のトラネパール内戦におけるネパール共産党毛沢東主義派が挙げられる。

登場と台頭の理由[編集]

歩兵としての少年兵が多く用いられるようになった理由の一つに、武器の小型化がある。かつて武器の主力であった刀剣弓矢などを使いこなすには熟練が必要であった上に大きく嵩張り、重量もあった。15世紀にが登場してからも、20世紀後半まで主力であった火縄銃マスケット銃ボルトアクション方式小銃は全長が長く重い上に反動も強かったため、子供では大人と同様に使いこなしてすばやく移動することは難しかった。以上のような理由で、戦争当事国がよほど追い詰められている状況でもない限り少年兵は「動員しても(正面戦力としては)役に立たない存在」とされ、陸戦の主役たる歩兵として前線に立たされることを防いでいた。 ただし、歩兵以外では、古くは帆船時代の軍艦では火薬運搬手などとして少年を用いることは多かったし、近代戦でも戦車航空機など個別の技能を要求される兵器では少年時代からの訓練が効果的であるため、志願による少年訓練生の制度は一般的であった。

しかし、第二次世界大戦後半に実用化された突撃銃個人携行対戦車兵器はその状況を一変させた。アサルトライフルは市街戦に代表される接近戦を有利に展開させるために全長が短く、フルオート連射を容易にするために比較的威力が低く反動も少ない小口径・短小薬莢の弾薬を使用するように設計された。このために突撃銃は子供でも携行が容易となり、フルオートで弾をばら撒くように連射するだけなら銃の技量はそれほど高くなくても構わない。また、パンツァーファウストに始まる個人携行対戦車兵器は、極めて低コストかつ容易な取り扱いで、個人が物陰から一撃で戦車を撃破することを可能としたため、子供も歩兵戦力としてある程度使える存在となった。2つ合わせて10kgほどのAK-47RPG-7は、少年を十分な攻撃力を持つ歩兵とするに足りる。

問題[編集]

ユニセフは少年兵の数を約25万人と推定している。その姿は、発展途上国の武力紛争で見られ、実際の戦闘から誘拐スパイ活動、物資の運搬など幅広い活動に従事している。中には地雷避けにと、真っ先に地雷原に突入を強要されるケースも報告されている。少女の場合は、兵士に妻として与えられ、性的虐待にあったり、身の回りの世話などをさせられたりすることが多い。

恐怖から逃れるため、薬物を使用する又は使用されることも多い。特に武器として与えられる小銃の弾丸に使われている火薬には、燃焼力強化のためにトルエンが含まれているが、これら少年兵の恐怖心をなくしたり、あるいは依存症を引き起こさせて脱走を防ぐ意味合いから、このトルエンを含む火薬を服用させて、中毒症状に陥らせるケースも報告されている。

少年兵は、非政府団体のみならず、政府の軍事機関が徴用することもあり、少年兵になる経緯も様々である。誘拐されるケースが非常に多いが、中には、貧困・飢えからの脱出や、殺された家族の復讐などの目的で自発的に兵士となる場合もある。また少年兵は補充が容易であるなどの理由から、最も危険な前線に狩り出され、前方には敵の銃口、後ろには脱走を阻む自陣営の大人の兵士の銃口があり、生き残るために前進のみを強制されていることも多い。

実際の戦闘に参加し、残虐行為を行った者も多いため、誘拐や虐待などの被害者であると同時に、犯罪者であるという複雑な側面を持つ。そのため、家族や地域社会に受け容れてもらえない元少年兵も多く、ストリートチルドレンになったり、ギャング団に入ったりする者もおり、元少年兵の社会復帰は大きな課題となっている。また、少年兵による市民の虐殺や傷害、略奪行為が深刻であったシエラレオネでは、少年兵の刑事責任をめぐって議論が続いている。

彼らの刑事責任については、その他、元少年兵が難民認定を申請する際に問題となる。難民条約は、戦争犯罪又は人道に対する罪を犯したと考えるに足る相当な理由がある場合に、難民の地位を与えないことを規定しているためである。

アフリカ諸国の反政府組織の例では、村々を襲って教育もままならない幼い少年少女を拉致し、洗脳教育的な軍事教練を施し兵員とする。少年兵は使う者にとっては従順な存在であり、特に革命統一戦線の例では、薬物で洗脳し、村人の腕や足を切らせるなどしていたことから世界で批判が沸き起こっている。実際、2005年8月に欧州連合はネパール共産党毛沢東主義派を非難している。

国際法では、18歳未満の子供は強制的徴兵されないとしている。しかし、紛争が頻発している地域では多くの子供たちが強制的に徴兵されている。少年兵は軍隊以外の生活習慣や知識を持たず、家族を理解できない者もいるため、大人になっても平穏な社会生活を送れない、故郷へ戻れないなど負の連鎖を繰り返すこととなる。このため拉致されて傷ついた子供たちの心のケアを、非政府組織などが専門の施設を設けて教育と並行するなどして行っている。

関連国際法[編集]

条約[編集]

  • (1977年採択) ジュネーブ諸条約第一追加議定書:国際的武力紛争における15歳未満の児童の徴募及び敵対行為への参加を控えるよう要請し、15歳以上18歳未満の者を徴募する場合の最年長の優先を規程。(77条)
  • (1977年採択) ジュネーブ諸条約第二追加議定書:非国際的武力紛争における15歳未満の児童の徴募及び敵対行為への参加を禁止。(4条)
  • (1989年採択) 児童の権利に関する条約:15歳未満の児童の軍隊への採用を禁止。(38条)
  • (1990年採択) 子どもの権利および福祉に関するアフリカ憲章:18歳未満の児童の徴募及び敵対行為への参加を禁止。(22条)
  • (1998年採択) 国際刑事裁判所規程:18歳未満の児童の自国軍隊への徴募及び敵対行為への直接的参加のための利用を戦争犯罪として規定。(8条)犯罪実行時に18歳未満であったものに対する管轄権の排除。(26条)
  • (1999年採択)最悪の形態の児童労働に関する条約
  • (2000年採択) 武力紛争における児童の関与に関する児童の権利条約選択議定書:18歳未満の児童の強制的徴集及び敵対行為への参加を禁止。自国の軍隊に志願する者ついては、18歳未満の者の採用を認めているが(3条)、その際低年齢を引き上げ、最低年齢について拘束力のある宣言をする義務がある。(3条)また、国の軍隊とは異なる武装集団は、18歳未満の者の採用及び敵対行為への使用をすべきではないと規定され、締約国は、そのような行為を国内法上の犯罪とする措置をとる義務を有する。(4条)

国連決議[編集]

その他[編集]

  • 国連事務総長特別代表報告A/60/335(2005)
  • 国連事務総長報告S/2005/72:武力紛争と子供について、監視・報告、国際法違反者の名前公開、制裁などのメカニズムの使用について報告。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

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