おかっぱ
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おかっぱ(御河童)は、主に女性の髪形の種類のひとつ。前髪を額に垂らし切り下げ、後髪を襟足辺りで真っ直ぐに切りそろえた髪型のこと。呼称は他におかっぱあたま、かっぱなど。かつての欧米では少年や少女がよくしていた髪型で、日本では少女の髪型として主流だった。現在では大人の女性の髪型としても人気がある。英語ではボブまたはボブカット、マッシュルームカットという。
歴史[編集]
名前は、文字通り河童に似ているということに由来する。日本では、古くは頭頂を剃り上げたうえで周りの長髪を残して垂れ流し、河童のようにした男性の髪型を「断髪」または「御河童頭」と呼んでいた。江戸時代になると、こうした断髪頭は刑罰を負った者や世俗を離れて出家した者の髪型となり、「おかっぱあたま」といえば少女の髪型を指すようになった(少年の場合は「稚児頭」〈ちごあたま〉と言った)。
成人女性のショートヘアが一般に広まったのは、西欧でも第一次世界大戦以後のことである。アメリカでは、「フラッパー」と呼ばれた若い女性たちの間で、この髪型が流行した。折りしも直線的なスタイルのシャネルスーツと相まって、1920年代を特徴づけるアール・デコファッションのスタンダードとなったのである。また、同年代後半には女優ルイーズ・ブルックスが映画『パンドラの箱』でこの髪型の持ち味を活かし、男を破滅させる魔性の女ルルを演じたことでよく知られている。日本でも洋装の普及に伴い、昭和初期にモガのヘアスタイルとして、東京その他の大都市を中心におかっぱが流行した。
成人女性がこの髪型にすると少年のような雰囲気が出るため、従来はモード系の髪型と受け止められていた。しかし、1970年代後半から1980年代にかけてアメリカの成人男性の間でも流行したうえ、同年代終盤からアメリカ版『ヴォーグ』の編集長アナ・ウィンターが「看板」にすると、一般的な髪型の1つとして定着した。特に1992年のアメリカ大統領選挙運動中、ビル・クリントン候補の妻ヒラリー・クリントンがアレンジ版「ソフトボブ」でマスコミに登場するようになると、20代から40代の女性を中心に爆発的なボブブームが起こり、現在ではこれが50代以上の女性にも波及している。
バリエーション[編集]
- おかっぱは、一般的に前髪や両側を切り揃えても、髪が襟首より長くなるとおかっぱとしては扱われなくなる場合が多い。また、後髪が襟首辺りで切られている場合でも、均等に切り揃えられていなければ、おかっぱとは見なされない場合もある。
- なお、サイドの前髪部分の髪を両頬に当たる位に伸ばして切り揃えただけで、後ろ髪は長い場合の髪型は、一般に「姫カット」、または「プリンセスカット」と呼ばれる。
- 長い黒髪が女性の美徳とされた平安時代の宮廷女性は、出家すると剃髪ではなく、肩に僅かに掛かる程度に髪を切り揃えていたが、このおかっぱのような髪型を尼削ぎという。
- 平安時代以後、「尼削ぎ」は「禿」(かむろ、かぶろ)等と呼ばれ大人の尼の髪型と区分されるようになる。おかっぱは禿になる前の幼女の髪型、禿はおかっぱを過ぎた少女の髪型として認識された。江戸時代頃になると「禿」は単に少女を指す言葉としても使われるようになり、遊女見習いの少女(実際は禿だけではなく、弁髪も多かった)の事も禿(かむろ)と呼ぶようになった。
- ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の主人公アリスのモデルとして知られているアリス・プレザンス・リデルの幼少時の髪型もボブだった。
- 漫画家の永野のりこは、おかっぱ少女をヒロインとした作品を多数描いている。
- いわゆる「都市伝説」や「学校の怪談」によく語られる『トイレの花子さん』は、おかっぱが典型的なヘアスタイルとなっている。
- おかっぱは、古代エジプトの女性の髪型としても知られる。ただし、実際には古代エジプト人は男女問わず頭髪を剃るか短く刈りこんでいる。古代エジプト女性のおかっぱは、カツラによるものである。