性格
性格(せいかく)は、その者の性質を表す。人だけとは限らない。
性格という用語はcharacterの訳語として心理学で用いられるようになった。ゴードン・オールポートが述べているように、characterという単語には価値的な意味合いが含まれている。一方で性格という用語には価値的な意味合いが薄いということもあり、日本語の「性格」と「人格」という用語は混乱しやすいので注意が必要である。
感情面の個性は気質 (temperament) という先天的傾向に基づくといい、気質から作られる行動や意欲の傾向が性格とよばれる。性格とよく似た言葉に人格があるが、人格には社会的もしくは論理的な内容が含まれており、性格より範囲が広い。なおこの気質はヒッポクラテスの医学における四体液説に由来する。
目次
類型論[編集]
類型論とは、人をある基準によって分類することによって性格を捉える考え方のことである。分類された人々の中の典型的な性格を類型的性格という。性質を分類するための分類として代表的なものにはクレッチマーとユングの気質論がある。以下の分類以外にも「シェルドンの分類(クレッチマーと同じ分類)」、「ツルゲネフの分類(ユングと似た分類)」などがある。類型論は人を分類するという点で理解しやすい性格の捉え方であるが、中間のタイプが無視されやすい、一度ある類型に分類されると別の類型への移行が生じにくい、典型的な人物像に完全に合致する人が存在する可能性が低いなどの問題点もある。これらの問題点を解消するためには、特性論的な見方も併用することが望ましい。
気質類型論[編集]
クレッチマーの気質分類[編集]
- 循環型気質:社交的なときと静かなときが交互に出る
- 分裂型気質:非社交的、気づかないところと気づくところ両方が出る
- 粘着型気質:几帳面、やることは凝る
ユングの分類[編集]
カール・ユングの考案した分類。 人の心的エネルギーが向かう方向として2つ、心理機能として4つの機能を挙げこれらの組み合わせで合計8つの性格類型を考える。
- 外向 外界の事物に関心が向く。環境適応が早い。周りの意見にあわせる(流される)。
- 内向 内界の主観的要因に関心が向く。思慮深い。周りの意見に左右されない。
- 思考 知性によって物事を一貫的に捉える機能
- 感情 好き嫌いで物事を捉える機能
- 直観 物事の背後の可能性を知覚する機能
- 感覚 生理的刺激による知覚機能
ルドルフ・シュタイナーの分類[編集]
シュタイナーは古代ギリシアにおける粘液の分類を取り入れ、子供を分類して指導法を変えている。
ディルタイの分類[編集]
- 英雄型
- 官能型
- 瞑想型
シュプランガーの分類[編集]
- 理論人
- 経済人
- 審美人
- 権力人
- 宗教人
- 社会人
エーリヒ・フロムの分類[編集]
世界に対する関係のありかたとして5つを挙げる。
- 受容的
- 搾取的
- 貯蔵的
- 市場的
- 生産的
カレン・ホーナイの分類[編集]
対人関係における不安に対する防衛様式として3つを挙げ、この様式が性格を規定するという。
- 依存的
- 攻撃的
- 隔離的
エニアグラムの分類[編集]
- 批評家:剛直。完全主義者。鑑識力が高い。曲がった事が大嫌い。
- 援助者:人当たりが良い。八方美人。天気屋。
- 遂行者:柔軟。行動的。価値や目標に拘る。
- 芸術家:我道を行く。孤高の志士。センスや芸術性が高い。
- 観察者:默考・分析・調査が得意。内向的。皮肉屋。有益性を重んじる。
- 忠実家:安定性を望む。寄らば大樹主義者。趨勢に流されやすい。
- 情熱家:冒険的で楽天的。好奇心が強い。ピーターパン。
- 挑戦者:独裁者根性。武闘派。破壊主義者。他人に操られるのを嫌う。
- 調停者:葛藤を嫌う。平和主義者。
野口晴哉の体癖分類[編集]
- 整体指導者野口晴哉は、感受性傾向および、身体運動習性にもとづいて、1種から12種までの体癖に分類する。体癖は2-3つが混ざっていることが珍しくないとする。
- 上下型(1種、2種)、毀誉褒貶に敏感な頭脳型。
- 左右型(3種、4種)、好き嫌いの感情に敏感な消化器型。
- 前後型(5種、6種)、利害得失に敏感な呼吸器型。
- 捻れ型(7種、8種)、勝ち負けに敏感な泌尿器型。
- 開閉型(9種、10種)、愛憎の情に敏感な生殖器型(骨盤型)。
- 遅速型(11種、12種)、体が過敏または鈍感なタイプ。
- 各体癖の詳細については体癖の項に譲る。
岡田斗司夫の分類[編集]
- 王様タイプ:人に注目され認められることを喜びとし、無視されることを嫌う。目立ちたがり。
- 軍人タイプ:勝ち負けに拘る。勝つことを喜びとする負けず嫌い。
- 学者タイプ:ものごとのしくみや法則を理解・発見することに喜びを感じる。
- 職人タイプ:自分の思い通りに物事をやりとげることを重視する。人から見てどうかより、自分の理想に近づくことを喜びとする。
特性論[編集]
いくつかの特性を単位として性格が構成されているという考え方であり、心理学者ゴードン・オールポートが代表的な論者である。1つ1つの性格の構成単位を特性という。特性は次元的に表現されるため、類型論と比べ、ステレオタイプになりにくいという利点があるが、類型論に比べて一般にはなじみが薄い。しかし現代の心理学においては、統計的に詳細な検討が可能であるという点で、性格を特性として量的に測定する研究手法を採用することが圧倒的に多い。量的に測定しておけば、ある得点で調査対象者を分類すれば類型的に捉えることも可能になるという点で利点も多い。
5因子モデル[編集]
ゴードン・オールポートが辞書中の性格用語を抽出したことに端を発し、その後多くの研究者が人の性格特性がいくつの要素で成り立っているのかを検討してきた。現在のところ、5つの特性によって人間の性格をおおまかに記述することが可能であるという説が最も有力であるとされる。この5つはあくまでもおおまかな記述であり、5因子モデルの性格検査の1つであるNEO-PI-Rでは、5つの特性の中にさらに細かい特性が設定されている。
5つの特性は以下の通りであるが、日本語訳が定まっていないものもある[1]。
- Neuroticism(神経症傾向、情緒不安定性)
- Extraversion(外向性)
- Openness to Experience(開放性、知性)
- Agreeableness(調和性)
- Conscentiousness(勤勉性)
ロン・マギー博士、デイビッド・エイラー博士、ジョー・バッカホルト博士により、5因子モデルを基本とした新しい心理テストがアメリカで出版された。テストの対象年齢は9歳から19歳で、テスト名はFive Factor Personality Inventory - Children (FFPI-C) 。Pro Ed社から2007年に出版されている。現在出版されているテストは英語のみ。
性格検査[編集]
- 質問紙法
- 投影法
- ロールシャッハ検査
- 作業法
- クレペリン検査
- 描画法
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- 大村政男 『図解雑学 心理学』
外部リンク[編集]
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