キシメジ科
キシメジ科(Tricholomataceae)はハラタケ目のキノコの分類名。多くの属を含んでおり、マツタケ、ブナシメジ等、日本人になじみのあるキノコも含まれている。形は様々で、特に共通の特徴はない。
分類史[編集]
過去には“分類の墓場” (wastebasket taxon) とされており、すでに分類されていたテングタケ科、ハラタケ科、ヌメリガサ科、ウラベニガサ科、イッポンシメジ科に分類されておらず胞子の色が白色、黄色、桃色などのハラタケ目のキノコの属を含んでいた。
学名の"Tricholomataceae"はギリシャ語で毛を意味するtrichos (τριχος) と縁や境界を意味するloma (λωμα) からきているが、構成する種が全てこの特徴を持つわけではない。
Arnolds (1986) とBas (1990) はヌメリガサ科の属をこの科に置いたが、この分類は菌類分類学者の主流には採用されなかった。(Young, 2003)
分子系統学の登場はキシメジ科に属する単系統群の分類を大きく助けた。分子系統学からの証拠があってキシメジ科からの分離が提案された例がいくつかあったものの、これまではリンネの分類群というより分岐学で定義されていたが、2006年にキシメジ科からヒドナンギウム科 (Hydnangiaceae) 、シメジ科 (Lyophyllaceae) 、ホウライタケ科 (Marasmiaceae) 、クヌギタケ科 (Mycenaceae) 、ツキヨタケ科 (Omphalotaceae) 、タマバリタケ科 (Physalacriaceae) 、ヒラタケ科 (Pleurotaceae) などを分離することが正式に公表された。
キシメジ科("Tricholomataceae")の名前は、将来下位分類が減らされ、キシメジ属 (Tricholoma) とそれにごく近い属のみを含む単系統的な科に変わっていくとしても、キシメジ属とそれに近い関係を持つものを扱う際の名前として妥当性があると見られ維持されている。競合する名前からキシメジ科の名前を保持するために国際植物学会議は1988年と2006年の2度投票している。(Redhead 2003, McNeill, et al. 2006) この決定はキシメジ科からの新たな科の分離を無効にしてはおらず、単純にキシメジ科の名前を維持することを確認したものである。(Young, 2002)
属[編集]
おもな属にはカヤタケ属 (Clitocybe) 、ムラサキシメジ属 (Lepista) 、ザラミノシメジ属 (Melanoleuca) 、ヒダサカズキタケ属(Omphalina)、キシメジ属 (Tricholoma)などが存在する。これらも含め78属1020種が存在している。
種類[編集]
- ウラムラサキシメジ属 Tricholosporum Guzmán
- エノキタケ属 Flammulina P.Karst.
- オオイチョウタケ属 Leucopaxillus Bourisier
- カヤタケ属 Clitocybe Kummer
- キシメジ属 Tricholoma (Fr.) Quél.
- キツネタケ属 Laccaria Berk. & Br.
- クヌギタケ属 Mycena (Pers.:Fr.) Gray
- クリイロムクエタケ属 Macrocystidia Joss.
- クロサカズキシメジ属 Pseudoclitocybe (Sing.) Sing.
- サマツモドキ属 Tricholomopsis Sing.
- ザラミノシメジ属 Melanoleuca Pat.
- シイタケ属 Lentinula Pegler
- シジミタケ属 Resupinatus (Nees) Gray
- シメジ属 Lyophyllum P.Karst.
- シロタモギタケ属 Hypsizigus Sing.
- シロホウライタケ属 Marasmiellus Murrill
- スギヒラタケ属 Pleurocybella Sing.
- ダイダイガサ属 Cyptotrama Sing.
- ツエタケ属 Oudemansiella Speg.
- ツキヨタケ属 Omphalotus Kirchm. & O.K.Miller
- ナラタケ属 Armillaria Kummer
- ニセアシナガタケ属 Hydropus Kühner ex Sing.
- ニセホウライタケ属 Crinipellis Pat.
- ニセマツカサシメジ属 Baeospora Sing.
- ヒダサカズキタケ属 Omphalina Quél.
- ヒナノヒガサ属 Gerronema Sing.
- ヒメカバイロタケ属 Xeromphalina Kühner & Maire
- ヒメキシメジ属 Callistosporium Sing.
- ヒメムキタケ属 Hohenbuehelia Schulz.
- ホウライタケ属 Marasmius Fr.
- マツカサキノコ属 Strobilurus Sing.
- ムラサキシメジ属 Lepista (Fr.) W.G.Smist
- モミタケ属 Catathelasma Lovej.
- モリノカレバタケ属 Collybia Kummer
- ヤグラタケ属 Asterophora Ditm.:Fr.
- ユキワリ属 Calocybe Kühner ex Donk
- ラッシタケ属 Favolaschia (Pat.) P.Henn.
- ワサビタケ属 Panellus P.arst.
参考文献[編集]
- 池田良幸『北陸のきのこ図鑑』ISBN 4893790927