豊川市主婦殺人事件
豊川市主婦殺人事件(とよかわししゅふさつじんじけん)は2000年(平成12年)5月1日、愛知県豊川市で発生した少年による殺人事件である。
事件の背景
男子高校生(当時17歳、高校3年生)が主婦(当時68歳)の首を40ヶ所も刺して殺したうえに、夫にも重傷を負わせた。 その後、前もって竹藪に隠してあった服に着替えて逃走したが、被害者宅に自分の鞄を置き忘れていった。
犯人の高校生は、動機として「殺人の体験をしてみたかった」「未来のある人は避けたかったので老女を狙った」と供述していたが、学校内ではソフトテニス部に所属し、後輩からの信頼も厚く、しかも極めて成績優秀であると見られていたため、その評判と犯罪行為との乖離が疑問とされた。そのため精神鑑定がなされ、犯行時にはアスペルガー症候群が原因の心神耗弱状態であったと認定し、2000年12月26日に名古屋家庭裁判所は医療少年院送付の保護処分が決定した。
この事件をきっかけにアスペルガー症候群を初めとする高機能自閉症者がクローズアップされ、一部にはアスペルガー症候群=犯罪嗜好といわんばかりのセンセーショナルな取り上げられ方もなされた。
アスペルガー症候群は先天性の発達障害であり、知能と言語能力に問題のない自閉症の一種である。法律などの規則を厳格に守ろうとする性格であることが多く、基本的には犯罪率は健常者との相違はない。一方対人関係の構築に困難があるため、二次的な障害として社会生活に対する不適応がみられることがある。この事件は、文部省(当時)に広い範囲における高機能自閉症児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させ、後に特別支援教育として制度化されることになった。
その他
この事件が発生した2000年には西鉄バスジャック事件などの17歳の少年による凶悪犯罪が続けて報道され、少年法を厳罰化する法改正がなされる一因にもなった。
関連書籍
- 藤井誠二「人を殺してみたかった 愛知県豊川市主婦殺人事件」(双葉社)