絶望男
テンプレート:基礎情報 書籍 『絶望男 46歳、ニート、障がい者の人生』(ぜつぼうおとこ よんじゅうろくさい、ニート、しょうがいしゃのじんせい)は、白井勝美が半生を綴った自伝。ティー・オーエンタテインメントが制作を担当し、サンクチュアリ・パブリッシングより2008年1月31日に発売された。
概要
NPO法人コトバノアトリエが主宰し、ニートやひきこもり・不登校の経験のある人を作家やライターとして輩出することを目的とした「神保町小説アカデミー」出身者による初の書籍である。白井は2006年に同アカデミーへ入学、翌2007年3月に卒業している[1]。
本書はコトバノアトリエが主宰するインターネットラジオ「オールニートニッポン」のウェブサイトで発表された白井の文章を基に構成されており、ほかにも新たに書き起こしたエッセーや神保町小説アカデミー顧問雨宮処凛との対談が収録されている[2]。具体的には、白井がこれまでに経験した家庭内暴力やいじめについて、および不登校・ひきこもり・リストカット・自殺未遂等の経験について記されている。白井は精神障害二級の認定を受けており、本書を著した当時も無職であった[2][1]。出版が決まる以前の取材において、白井は「自分の中にある怒りとか絶望とか孤独感を、世間の人に知ってほしい」「同じようなひきこもりとか無職者とかうつ病の人に勇気を与えられるんじゃないか」と述べている[3]。
2008年2月1日に新宿ロフトプラスワンで開かれた出版記念イベント「プレカリアート文学宣言 絶望と希望の間で生きる若者たち」には、白井と雨宮らのほかに赤木智弘も参加した。このイベントで白井は「自分をよく見せようという気も、考えを押しつける気もない。自分のような人間が本を出せたことで、同じような苦しみを抱えた人に何かを届けられたら、それでいい」と述べており、雨宮は本書について「働けなくなった人間が発言すると、反発を受ける。それでも人間の尊厳について、ちゃんと文字にしている。白井文学といっていい」と評している。またコトバノアトリエ代表理事の山本繁は「苦しい状況にいる人も、白井さんを見て、希望を持てるようになってほしい」と述べている[4][1]。
神保町小説アカデミーにおいて白井を指導していた石井政之は、作家としてデビューするのは難しいと思っていたと述べており、本書については「アフリカの飢餓、人権侵害が横行する独裁政治、虐殺が日常になった戦地というような究極の絶望と比較する必要もない、ひとつの絶望がたしかに書かれている」と評している[5]。
同年3月20日には新潟市総合福祉会館において白井と月乃光司らによるメッセージ講演会が開かれ[6]、同年4月には当時社会民主党の党首であった福島瑞穂による「『みんな生きてていいんだ』と思わせてくれる本」というコメントが本書の帯に掲載された[7]。
しかし白井はその後作家としての成果をあげることができず、2010年頃からは生活保護を受給している。2013年12月には白井が監督・撮影・主演を担当したドキュメンタリー映画『毒吐日記 ある孤立無業者の一人語り』の上映会が新潟市中央区の万代市民会館にて行われた[8]。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 『絶望男』 46歳 ニートで障がい者の作家がデビュー - インターネット・アーカイブ PJニュース 2008年2月4日
- ↑ 2.0 2.1 ニート・中年・心の病 絶望男、作家デビュー - ココミ口コミ 朝日新聞 2007年12月25日
- ↑ 雨宮処凛がゆく! 042 マガジン9 2008年2月6日
- ↑ プレカリアート文学「絶望男」を出版 - ココミ口コミ 朝日新聞 2008年2月12日
- ↑ 『絶望男』白井勝美(サンクチュアリ出版) 書評空間 2008年2月5日
- ↑ 白井さんトークショー@新潟 「絶望男」制作日誌 2008年3月20日
- ↑ 福島みずほさんに帯のコピーを頂きました! 「絶望男」制作日誌 2008年4月4日
- ↑ ドキュメンタリー映画 毒吐日記~ある孤立無業者の一人語り~ 伴走舎
外部リンク
- 好きでニートなわけないじゃない! - 著者のブログ。