熊谷6人殺害事件

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小学女児2人を含む6人を殺したナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン
小学女児2人を含む6人を殺したナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン

熊谷6人殺害事件とは、2015年9月、埼玉県熊谷市で発生した、日系ペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン(当時30歳)による連続殺人事件である。

殺された被害者

  • 田崎 稔さん(55)
  • 田崎 美佐枝さん(53)
  • 加藤 美和子さん(41)
  • 加藤 美咲ちゃん(10)
  • 加藤 春花ちゃん(7)
  • 白石 和代さん(84)

事件経緯

自宅で50代男女死亡。上半身に複数の傷、殺害か

2015年9月14日午後6時5分ごろ、埼玉県熊谷市見晴町、職業不詳、田崎稔さん(55)方で、田崎さんと妻の美佐枝さん(53)が2階で血を流して倒れているのを訪ねてきた友人のパートの女性(55)が見つけ、110番通報した。2人は同市内の病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。

2人の上半身に複数の傷があり、凶器が見つかっていないことから、県警は殺人事件とみて、熊谷署に捜査本部を設置する方針。県警によると、夫妻は2人暮らしとみられる。友人は同日午後5時ごろに田崎さんに電話をかけたが、出なかったのを不審に思い、美佐枝さんの父らとともに自宅を訪ねたという。

近隣住民らによると、美佐枝さんは9月13日午後に外出しているのが確認されている。稔さんは自宅で自転車組み立てを請け負っていたという。現場は秩父鉄道上熊谷駅の西側にある住宅街。

埼玉・熊谷で複数人殺傷か「多人数がけが」と119番通報。現場付近で男を確保

9月16日午後5時35分ごろ、埼玉県熊谷市石原で警察官から「多人数がけがをしている」と119番通報があった。地元消防によると、男性1人を病院に搬送した。埼玉県警などによると、現場付近で84歳の女性が死亡、県警は殺害されたとみて捜査していたが、現場付近の民家で男を確保したという。

このほか、母子3人がけがをしているという情報もあり、県警が詳しい状況を調べている。同市内では14日夕、50代の夫婦が自宅で何者かに刃物で刺されて殺害される事件が発生している。

「ウォー」住宅街、緊迫の怒号

埼玉県熊谷市の閑静な住宅街で9月16日、4人が殺害された可能性のある事件が起きた。14日夕に約1キロ離れた民家で夫婦殺害事件が起きたばかり。確保されたペルー人の男は13日に県警熊谷署で事情を聴かれた後、姿を消していた。事件は防げなかったのか。突然の悲報に近所の住民は唇をかんだ。

16日、現場周辺で14日の事件について、それぞれ取材していた。現場はJR高崎線秩父鉄道に挟まれた住宅街。田畑や公園などの間に住宅が建ち並ぶ。午後4時半ごろ、県警熊谷署から続々と捜査員らが駆け出すのを目撃した。捜査員らが向かったのは同市石原の無職、白石和代さん(84)方。しばらく白石さん方に出入りしていたが、午後5時半ごろ、捜査員5、6人が屋内から飛び出してきた。

「屋根にいるぞ!」

その視線の先には100メートルも離れていない加藤美和子さん(41)宅。加藤さん方を捜査員が囲む。「子ども2人!」「刃物を捨てろ!」。連絡を取り合う捜査員の怒号の合間に「ウォー」という、男とみられる声が響く。捜査員が「危ないから下がって」と周囲にいた住民や記者らを制止する。混乱する現場で別の捜査員は「119番してください」と呼びかけた。記者が近くの人に住所を聞きながら119番した。近くに住む30代主婦は「子どもがいるので怖い」と顔をひきつらせる。暴れる男を取り押さえるため「さすまた」を持った捜査員もやってきた。その後、白石さん、加藤さん、娘の美咲さん(10)、春花さん(7)とみられる4人が相次いで死亡した。近隣住民によると、付近では捜査員が「不審な人物を見かけなかったか」と聞き込み捜査をしていた。群馬県から来たペルー人を捜しているとの話も広がっていたという。

死亡した加藤美咲さん(10)と春花さん(7)は、熊谷市立石原小学校に通う仲の良い姉妹だった。美咲さんは面倒見が良く、近くの女性は「近所の公園で低学年の子供を世話しながら遊んでいるのをよく見た」と話す。

美咲さんの同級生の父親によると、美咲さんは「みいちゃん」、春花さんは「はるちゃん」と呼ばれていた。「妹は運動神経が良かった。2人ともブランコが好きだった。本当に残念」と語った。春花さんと同じクラスという女児は「一緒に運動会の準備をしたばかりなのに」と言葉少なだった。

姉妹が通う石原小の飯田明彦校長は16日夜、事件を聞いて学校に駆けつけ「美咲さんは誰とでも分け隔てなく接することができる子。思いやりがあった。春花さんは活発で友達がたくさんいた。掃除に熱心に取り組む姿が印象的だった」と話し、顔を曇らせた。

一方、白石和代さん(84)を知る近所の女性によると、白石さんは夫を亡くして現在は1人暮らし。自宅裏の畑で野菜作りをするのが趣味で、時々、義理の娘や孫らが訪れていたという。「外で会えば明るくあいさつする人。最近は高齢で外出することも少なくなっていた。なぜ事件に巻き込まれてしまったのか。信じられない」と話した。

60代男性が近くで営む商店には、白石さんがよく買い物に来ていたという。男性は「温和な方だった。最近はあまり姿を見なかったので元気かなと思っていた。こんなことになるとは」と言葉を失った。別の女性は「気丈な方だった。午後5時過ぎに帰宅したら騒ぎになっていたが、こんなことになっているとは……」と話した。

姉妹の遺体、発見時点で死後4時間経過。犯行後に潜伏か

埼玉県熊谷市の住宅街で9月16日、住民ら4人が殺害された事件で、死亡した無職、加藤 美和子さん(41)の娘2人の遺体が発見時、死後4時間程度経過していたとみられることが9月17日、捜査関係者への取材で分かった。県警熊谷署捜査本部は、加藤さん方2階から転落するなどして重体となったペルー人の男(30)が、16日昼過ぎに加藤さんら3人を殺害後、屋内に潜伏していた疑いがあるとみて捜査している。

県警は17日、ペルー人の男の身元を、別の住居侵入事件で逮捕状が出ていたペルー国籍の住居不詳、ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン容疑者と確認。殺害された4人の身元についても白石 和代さん(84)▽加藤 美和子さん▽美和子さんの長女で小学生、美咲さん(10)▽次女で同、春花さん(7)-と確認した。

捜査本部によると、9月16日午後4時25分ごろに通報を受けた熊谷署員が、白石さん方の浴室で白石さんの遺体を発見。約1時間後、近所の加藤さん方で同容疑者を発見して確保した際、加藤さんら母子3人が遺体で見つかった。

捜査関係者によると、美咲さん、春花さんは発見された際、死後硬直が始まっており、死後4時間程度経過していたとみられる。同容疑者は同日昼過ぎに加藤さん方に侵入して3人を殺害した上、同方に潜伏した疑いがある。

同容疑者は加藤さん方で手を自ら切りつけ、2階から転落して頭の骨を折り、意識不明の重体となった。9月13日午後、熊谷署へ同行されたが、同署から姿を消して行方不明になっており、捜査本部は足取りの解明などを急いでいる。

「信じられない」被害者姉妹の通学先に広がる悲しみ。涙ぐむ児童も

「会えないことが信じられない」。

埼玉県熊谷市の住宅街で住民ら4人が殺害された事件が発覚してから一夜明けた9月17日、雨が降りしきる現場周辺では、悲しみと憤りが広がった。同日朝は、遺体で発見された加藤美咲さん(10)と春花さん(7)姉妹が通っていた熊谷市立石原小学校には、児童らが保護者に付き添われながら登校。涙を流す姿も見られた。

同校周辺では、早朝から埼玉県警パトカーがパトロールを実施。児童らは、午前7時半ごろから、保護者や教諭らに付き添われて順次登校した。同校は全校集会で経緯を説明。事件で亡くなった2人に黙祷をささげた。学校関係者によると、不安を訴え複数の児童が欠席し、集会では涙ぐむ児童もいた。

娘が美咲さん、春花さん姉妹と友人だったという女性(39)も登校に付き添い「こんなひどいことになるなんて。娘たちはもう2人と会えないことをなかなか受け入れられないでいる」と唇をふるわせた。

同校では2015年9月26日、運動会を行う予定で、美咲さんと春花さんは、体操やダンスの練習に励んでいたという。飯田明彦校長は報道陣に「頑張っていた様子を間近で見ていただけに、なんの罪もない2人の命が奪われたことを思うと言葉にならない」と語った。

4人が殺害された住宅街でも住民の動揺が続く。近所の女性(79)は「色々なことが一気に起きた。もし自分が被害に遭っていたらと思うと、本当に怖い」と話した。県警は事件が発覚した9月16日夜以降、戸別訪問を行うなどして、安否確認を急いでいる。

6人殺害容疑、民家など現場検証

埼玉県熊谷市の2軒の民家で9月16日、小学生の女児2人を含む4人が殺害された事件で、県警は現場に残された足跡などから、14日に同市内で起きた夫婦殺害事件も同一人物による犯行との見方を強め、9月17日、6人に対する殺人容疑で民家などでの現場検証を始めた。

県警は、民家の2階から飛び降り、意識不明の重体となった日系ペルー人の住所・職業不詳ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン(30)の身柄を確保しており、回復を待って事情を聞く。

16日の事件では、熊谷市石原、白石 和代さん(84)と、約100メートル離れた民家に住む加藤 美和子さん(41)と娘で小学5年の美咲さん(10)、同2年の春花さん(7)の計4人が死亡。約1キロ離れた同市見晴町では14日、田崎 稔さん(55)と妻のパート従業員美佐枝さん(53)の2人が刺殺される事件も起きた。

「重い結果生じた」警察庁長官

埼玉県熊谷市で計6人が殺害された事件をめぐり、警察庁金高雅仁長官は9月17日の記者会見で、県警が身柄を確保したペルー人の男(30)を事件前に任意で話を聴きながら立ち去られ、事件が発生したことに「重い結果が生じた。これを教訓として同種事案を防ぐことができないか、よく見ていきたい」との認識を示した。

ただ当日、事情を聴いた熊谷署の対応に関しては「(当時)犯罪に関与していたとは認められず、意思に反して警察署にとどめる根拠はなかった」と述べた。

9月15日に住居侵入容疑で男の逮捕状を取りながら地域住民への周知が徹底されなかった点も問われ、金高氏は「教訓とすべきことがあったかよく見ていきたい」と重ねて応じた。

関連項目