海津雅英
海津 雅英(かいづ まさひで、1983年2月22日 - )とは、朝から12時間酒を飲んで携帯電話を操作しながら車を運転し、4人をひき逃げ3人を死亡させ、事故後は応急手当や通報せず煙草を購入する、北海道札幌市の飲食店従業員である。
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事件概要
2014年7月13日午後4時半ごろ、海津は北海道小樽市の海水浴場「おたるドリームビーチ」に近い市道でRVを飲酒運転、4人をはねて死傷させ逃走した。4人は昼ごろからビーチで遊んだ後、帰るため駅に向かって幅約5メートルの道の端を歩いていた際に後ろからはねられた。海津は朝からビーチで酒を飲み「携帯電話を操作しながら運転していた」と供述した。
死亡した3人は札幌市の医療機関事務員、石崎 里枝さん(29)、北海道岩見沢市の店員、瓦 裕子さん(30)、同市の会社員、原野 沙耶佳さん(29)と発表。頸椎骨折などの重傷を負ったのは札幌市の会社員、中村 奈津子さん(30)で、4人は岩見沢市の岩見沢農業高等学校時代の同級生だった。
道警は7月14日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)で、飲食店従業員、海津 雅英(31)=札幌市西区発寒11条=を逮捕した。「酒を飲んで人をはねた」と容疑を認めた。
海津は事件の後、4人の手当てや通報をせず、そのまま近くの店までたばこを買いに行っていた。海津は、現場近くの海岸で酒を飲んだ後、RVを運転して買い物に行き、13日午後4時半ごろに事件を起こした。たばこを買った後、友人に電話し友人から警察に連絡するように言われ、同4時45分ごろに「人をはねた」と110番。現場から700メートル離れた路上で海津を警察官が見つけ、取り押さえた。
被害女性4人は高校の同級生。卒業12年の友情が暗転
水着が散乱していた事件現場には献花台が設けられ、3人の早すぎる死を悼む人々が手を合わせた。
「遊びに行ってくるね」。
最後に聞いた最愛の娘の声は元気だった。原野さんの父・和則さん(61)が14日、岩見沢市の自宅前で胸中を語った。沙耶佳さんが出発したのは13日午前9時ごろ。その後、夕方のニュースが事件の発生を報じていたが「4人以上で出掛けるとは聞いていたが、たぶん違うだろう」と思っていた。しかし、夜になっても沙耶佳さんは帰宅しなかった。不安な気持ちが募り、小樽署に電話した。警察官に告げられたのは、あまりにもつらい言葉だった。
「あなたの娘さんです」。
耳を疑った。「何かの冗談だ」沙耶佳さんは測量会社で経理を担当。和則さんは毎朝、会社に送っていった。沙耶佳さんは帰宅すると、一日にあった出来事をよく話してくれた。
「生きる屍になったようです」。
肩を落とした。石崎さんの兄(36)は「いまだに妹が死んだという実感がない」。里枝さんは長期休暇を取ると実家に帰り、アスパラの収穫など、家業の農業を手伝う家族思い。両親が見せる涙に胸が締め付けられる兄は「もう戻って来ることはないけれど、妹を返してほしい」と怒りを口にした。
瓦さんの兄も「優しい妹だった。まだ気持ちの整理がつかない」と声を落とした。北海道岩見沢農業高校によると、事件に巻き込まれた4人は生活科学科の同級生。3年間同じクラスで園芸、被服、調理などをともに学んだ。卒業から12年が経過した今も、友情を育み続けた親友同士だった。
犠牲の2人通夜。友人ら飲酒運転に怒り
北海道小樽市で女性4人が死傷したひき逃げ事件で、亡くなった札幌市南区の医療事務員、石崎 里枝さん(29)と岩見沢市のスーパー店員、瓦 裕子さん(30)の通夜が17日、実家のある美唄市などの斎場で営まれた。親族や友人らは突然の悲報と理不尽な死に怒りをあらわにしていた。
石崎さんの知人で北広島市の会社員、岡田 洋樹さん(27)は「いつも笑顔で優しい人だった。事故は腹立たしくて許せない。飲酒運転をすること自体考えられない」と涙ながらに話した。
石崎さんの親族で美唄市の会社員、渡辺 由美子さん(50)は「里枝さんは優しくて穏やかな女性だった。容疑者の男を本当に許せない」と語気を強めた。友人で同市の介護士、米内 郁美さん(29)は「一緒にカラオケに行ったり、誕生日を祝ったりしてくれた。いつでも会えると思っていたけれど……」と言葉を詰まらせた。
岩見沢市であった瓦さんの通夜に参列した女性は、「祭壇の写真は笑顔でした。本当に可哀そう」と話すのがやっとで、ハンカチで目頭を押さえながら足早に会場を後にした。
「危険運転致死の適用を」遺族らが最高検に上申書(2014年9月)
北海道小樽市で3人が死亡するなどした飲酒ひき逃げ事件で、遺族らでつくる「7・13小樽飲酒ひき逃げ事件被害者等連絡会」は24日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)などの罪で起訴された札幌市の男について、同法違反(危険運転致死傷)罪への訴因変更を求める上申書を最高検に提出した。
起訴状などによると、男は7月13日午後、酒を飲んで車を運転、女性4人をはね、救護することなく逃げたとされる。札幌地検は8月、「事故後に近くのコンビニまで正常に運転しており、アルコールの影響で事故を起こしたとの認定は困難」とし、危険運転致死傷罪の適用を見送っていた。
同会の前田敏章・北海道交通事故被害者の会代表(65)は「札幌地検の判断では、飲酒事故を起こしても『正常な運転ができた』と示すための逃走を助長してしまう。刑事司法への不信を招く」と訴えた。
同会は既に札幌地検に訴因変更を求める要望書を提出。25日には計約6万人分の要望署名を同地検に提出する。
小樽飲酒ひき逃げ事件、危険運転致死傷に訴因変更(2014年11月)
小樽市銭函で海水浴帰りの女性4人が死傷した飲酒ひき逃げ事件で、札幌地検は24日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)などの罪で起訴した海津雅英(かいづまさひで)被告(31)について、より罰則の重い同法の危険運転致死傷罪に訴因変更することを決めて、被害者家族に伝えた。
札幌地検は、事故原因は運転中にスマートフォンを操作するなどした脇見運転だとして過失致死傷罪で起訴したが、被害者連絡会は「脇見運転自体が飲酒で判断力などが低下していたため」と主張。「危険運転」の適用を求める署名活動を行うとともに、最高検に上申書を提出していた。
同様に訴因変更したケースは、兵庫県加西市で2011年12月、小学生の兄弟が飲酒運転の軽トラックにはねられ死亡した事故がある。
署名7万、訴え実る。小樽事件で訴因変更請求
2カ月で7万4332人分の署名を集めた遺族の思いが実った。
小樽市の市道で7月、女性3人が死亡、1人が重傷を負った飲酒ひき逃げ事件で、札幌地検は24日、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)罪などで起訴した海津雅英被告(31)について、危険運転致死傷罪への訴因変更を請求し、遺族らに伝えた。会見した遺族らは「娘に良い報告ができる」「関わってくれたみなさまに感謝したい」と口々に語った。
8月4日に海津被告が起訴された後、遺族らは危険運転致死傷罪への変更を求め、街頭やインターネットで署名を呼びかけた。訴因変更を請求した24日の朝まで署名活動は続いた。
亡くなった原野沙耶佳さん(当時29)の母悦子さん(58)は「街頭でかけてくれた言葉や送られた手紙のおかげで、心が折れずにここまで来られた。ありがとうございます」。父和則さん(62)は「検察は真摯に受け止めてくれた」と話した。