指揮の指導者
指揮の指導者
有力な指揮者との師弟関係により、その指揮者の流儀が継続することがしばしばある。マーラーの教えを受けたブルーノ・ワルターやオットー・クレンペラーの例、R・シュトラウスに学んだカール・ベームやジョージ・セルなどが好例といえる。
すべての指揮者が後進の指導に熱心だったわけではないが、クラウデイオ・アバドやズビン・メータ、ジュゼッペ・シノポリらを育てたウイーンのハンス・スワロフスキーやその後継者でハンガリーのフィシャー兄弟、ぺーター・シュナイダー、ヘスス・ロペス・コボス、マリス・ヤンソンスらを出したカール・エスターライヒャー、ビシコフやゲルギエフを世に送ったサンクト・ぺテルブルクのムーシン、そのほかサロネンやラシライネン、セーゲルスタムなどを出したフィンランドのシベリウス音楽院やラットルやノットを出したロンドン王立音楽院などのように名教師として知られた指揮者や音楽大学も多数ある。俗にウイーン・スタイルやサンクト・ぺテルブルク・スタイルなどともいう。
これらの優れた教授法の要因は、ただ単に優秀な先生の存在だけではなくて、その学校の教育システム、例えばウィーンではほぼ午前中はピアノで指揮のレッスンとアナリーゼ、午後は毎日実際に学生オーケストラを振らせるなどや、其の国家の芸術的な法整備、例えばフィンランドやスイス・オーストリアでの芸術家の保護政策:年金や税金、プロモーションやドイツの文化局などの公平な補助金配分の為の役所、音楽大学の無料化、FM放送の多様化、十分な基金や財団の数、音楽プロダクションの数の多さと其の廉価な入場料、音楽図書館の充実などに大きく起因する事が多い.
また、日本のクラシック音楽界において指揮法の指導に多大な功績を残した人物として斎藤秀雄がいる。著書『指揮法教程』は指揮法の教科書として非常に良く知られている。チェロ奏者、教育者としても著名であり、その功績を讚えてサイトウ・キネン・オーケストラが結成され小沢征爾や秋山和義などの国際的指揮者を育てた。