党人派
党人派(とうじんは)とは、政治家の分類における俗称のひとつ。歴史上では、中国・後漢末期に発生した、党錮の禁で弾圧された集団の称として使われた。
概要
官僚、軍人、皇族等の出身ではなく、生粋の政党員である政治家を指すカテゴリー。日本では、主に保守政党(現在では自民党)で、官僚出身者である官僚派と並ぶ二大勢力として扱われることが多い。
明治政府が成立した初期は、薩長の藩閥出身者が、政権の大半を占めていた。その後、藩閥の影響下にある官僚出身者と、自由民権運動に端を発する政党出身者が政権に加わるようになり、前者を官僚派、後者を党人派とする用語が生まれた。軍部が台頭すると、軍人政権が多数を占めたが、第二次世界大戦に敗北すると、軍そのものが解体され、さらに公職追放によりその他の人材も大量に追放された。吉田茂は、代わりの人材としてみずからの出身母体である官僚から大量に登用し、後に公職追放から復帰した鳩山一郎などの党人派と対置されるようになった。
ただし、自民党では「党人派」と言っても、主に地方議会からの叩き上げといった意味で使われる。これらは議員に当選してから自民党に入党、あるいは党員であっても選挙では無所属として立候補し、当選後に追加公認を受けるケースも多いため、語義としてはやや矛盾もある。純粋な意味で党人と言える、党専従職員として自民党に採用され、その後に政治家となった者は極めて稀である。
最近では、世襲議員、秘書等からの転身議員、タレント議員等、既存の地盤を利用することが可能な立場にある者や、他の業界において知名度の高い者らが増加している。そのため、比例代表制を活用しない限り、全く無名の新人がこのカテゴリーに属するのはかなり困難な状況となっている。
野党ではあまり使われない用語だが、かつての日本社会党や民社党などでは、地方議員出身者や、党職員出身者などを労働組合出身者と区別する意味で党人派と呼んだことがある(両党には、官僚出身者も少数存在した)。また、日本共産党は、党職員から議員になる比率が高いが、彼らを指して党人派と呼ぶことはない。