名誉棄損

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名誉毀損めいよきそん)とは、他人の名誉を毀損する行為である。日本では、民事・刑事の二つの対処がある。日本新聞協会の「同音の漢字による書きかえ」で「名誉棄損」と表記することもある。

民事[編集]

民法の予定する不法行為の一類型(民法第710条第723条参照)。

原則として、客観的な社会的評価がこの類型によって保護され、単なる主観的名誉感情の侵害は含まれない。もっとも、名誉感情の侵害も不法行為一般(第709条)の要件を満たす場合には名誉毀損とは別に不法行為になりうる。

民事上の損害の回復は原則として金銭によってなされるが(金銭賠償の原則)、名誉毀損については第723条損害賠償以外に「名誉を回復するのに適当な処分」を命じうるとする。かかる措置が必要とされるのは、名誉毀損が社会的評価を低下させる行為だからである。本条は被害者の復讐感情を満足させるためのものではない。

刑事[編集]

刑法第230条で規定されている罪。詳しくは名誉毀損罪を参照。

成立阻却要件[編集]

注意:ここでいう成立阻却とは、法的責任は成立しないという意味であり、構成要件の成立が阻却されるとか、違反することで生じる弊害を他人に転嫁できるという意味ではない。[1]

民事であろうと刑事であろうと、以下の名誉毀損の成立阻却要件(刑法第230条の2第1項)に準じたものである場合には、その責任は問われない。

  1. 公共の利害に関する事実に係ること(公共性)
  2. その目的が公益を図ることにある(公益性)
  3. 事実の真否を判断し、真実であることの証明がある(真実性)

真実性については必ずしも真実である必要は無く、ある事実を真実と誤認するに相当の理由が認められる場合(確実な証拠や根拠に基づいた場合など)であれば、真実性の欠如を理由としてその責任を問われる事は無い(最大判昭和44年6月25日刑集23巻7号975頁)。

上述の要件はあくまで刑法上の規定であるが、民事においてもこれと同様に判断するものとされており、上述の3要件が揃えば、違法性は無く不法行為には当たらないと解されている(最判昭和41年6月23日民集20巻5号1118頁)。

名誉毀損の成立阻却が認められているのは、日本国憲法第21条で保障されている表現の自由があることによる。民法第709条、710条、723条および刑法第230条のみでは、表現の自由が著しく制限されることになり、例えば犯罪不祥事など社会に対して大きな被害をもたらしかねない不正行為についての報道や内部告発は全て名誉毀損となってしまい、国民の知る権利を害し、国民全体に対して損害を与えることに繋がる。ゆえに、名誉毀損されたとして保護するに値しない要件を備えた事案については、刑法第230条の2に基づきその成立阻却を認めている。

名誉毀損罪#真実性の証明による免責 も参照

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 違法性が阻却されると考えるのが通説である。