医薬品医療機器総合機構
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(いやくひんいりょうききそうごうきこう、英語:Pharmaceutical and Medical Devices Agency)は、厚生労働省所管の独立行政法人である。 機構(きこう)、医薬品機構(いやくひんきこう)、または英語名称の頭文字をとり、PMDA(ぴーえむでぃーえー)と呼称される場合が多い。また、パンダの愛称でも知られており、医薬品医療機器総合機構のプレゼンテーションや待合室の掲示にパンダの絵が用いられている。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構は、医薬品の副作用又は生物由来製品を介した感染等による健康被害の迅速な救済を図り、並びに医薬品等の品質、有効性及び安全性の向上に資する審査等の業務を行い、もって国民保健の向上に資することを目的とする。(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第三条)
医薬品の副作用などによる健康被害救済業務[1][2]、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づく医薬品・医療機器などの審査関連業務[1][3]、医薬品や医療機器などの品質を確保する安全対策業務[1][4]及び情報提供業務(添付文書情報等提供)[5]を行っており、日本独自のセーフティトライアングルと呼ばれている。
概要[編集]
- 所在:東京都千代田区霞ヶ関3-3-2 新霞が関ビル6階~14階
- 初代理事長は宮島彰(元厚生労働省医薬局長。
- 第2代理事長:近藤達也(前国立国際医療センター病院長、理事長は前身時代を含め、これまで行政官OBが占めていたが、初の行政官以外からの登用となる。2008年4月1日~)
理念[編集]
近藤理事長の強いイニシアチブのもと、以下のような理念が制定された。これは構内にも掲示されている。
わたしたちは、以下の行動理念のもと、医薬品、医療機器等の審査及び安全対策、並びに健康被害救済の三業務を公正に遂行し、国民の健康・安全の向上に積極的に貢献します。
- 国民の命と健康を守るという絶対的な使命感に基づき、医療の進歩を目指して、判断の遅滞なく、高い透明性の下で業務を遂行します。
- より有効で、より安全な医薬品・医療機器をより早く医療現場に届けることにより、患者にとっての希望の架け橋となるよう努めます。
- 最新の専門知識と叡智をもった人材を育みながら、その力を結集して、有効性、安全性について科学的視点で的確な判断を行います。
- 国際調和を推進し、積極的に世界に向かって期待される役割を果たします。
- 過去の多くの教訓を生かし、社会に信頼される事業運営を行います。
沿革[編集]
- 2004年4月1日 - 国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構、医療機器センターの一部が組織統合し発足。
- 2005年4月1日 - 研究振興業務を独立行政法人医薬基盤研究所に移管。
レギュラトリーサイエンス[編集]
レギュラトリーサイエンスは、国立衛生試験所(現在の国立医薬品食品衛生研究所)元所長の内山充により日本に紹介された学問分野で、科学技術と人間生活の調和・調整のための科学である。近藤理事長の強いイニシアチブのもと、2009年にレギュラトリーサイエンス推進部が設立され、2010年からの医学部、薬学部との連携大学院の設置、レギュラトリーサイエンス学会の設立協力など、「レギュラトリーサイエンスの梁山泊」を目指した活動が進行中である。しかしながら、連携大学院は、医学部については、医師の資格を持つ審査員を派遣するという当初の目的を達しているものの、薬学部に関しては、いわゆる新設薬科大学を含め、必ずしもレギュラトリーサイエンス関連研究が活発に行われていないところにも設置されており、その多くが医薬品医療機器総合機構や厚生労働省の薬系技官OBを教授として採用しているところから、その選定基準が不明確であり、天下りに利用されているのではないかとの批判もある。また、レギュラトリーサイエンス学会についても、現職の医薬品医療機器総合機構職員が、ほぼ毎月のペースで、新医薬品の審査報告書の解説のための講演会に協力していること、学術大会参加費が同種の学会に比して非常に高額であることなどの問題があり、特定の学会の活動に研究を主たる設立目的としていない独立行政法人が深く関与することについての批判もある。なお、特に大学やベンチャー企業における医薬品・医療機器開発の促進のため、2011年度より薬事戦略相談制度が創設された。
国際活動[編集]
従来より、ICH等の活動を行ってきたが、近藤理事長の強いイニシアチブのもと、2009年に国際部が設置され、また、米国及び欧州に部長級の職員を常駐させる体制となった。これらの職員からの定期報告書はwebsiteにて公開されている。また、欧米以外にも、中国、韓国との薬事分野での協力、関係シンポジウムの開催など、関係強化が図られている。
現役出向問題[編集]
職員の約2割、部長以上の幹部の約8割が、厚生労働省からの現役出向者で占められており、職員アンケートでも「厚生労働省の植民地」との批判がなされている。特に、2009年に新設された組織運営マネジメント役は、理事でないにもかかわらず、強大な権限を有していると指摘されており、事業仕分けの際にも問題視された。今後、10年間をかけ、現役出向者ポストを徐々に削減することとされているが、依然として部長以上へのプロパー職員の登用が進まず、厚生労働省出向者の指定席となっている。なお、事業仕分けの際に問題となった組織運営マネジメント役は、2011年に、理事(技監)とともに、降格ともいえる人事異動で、国立医薬品食品衛生研究所に異動となっている。