扇動

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扇動(せんどう)とは、社会や集団のなかで一部の少数の者が大多数のものに対して巧みな演説や論説などを駆使することによって群集心理を操作し、大多数の者を自分たちにとって都合のよい状態に置き換えるという行為のことである。英語のアジテーション(agitation)を略して『アジ』と言うこともある。

歴史

国によっては扇動を行うことそのものが犯罪行為に該当する場合があり、ドイツには民衆扇動罪という罪が存在する。歴史上では、極めて大きな異質な団体などが出現したのは、一人の特質なカリスマ性を持った指導者が大衆を扇動したことが最大の原因であったという例がしばしば存在する。

「徴兵制」「軍事大国」「若者が前線に」分かりやすく目立つ言葉で釣る、煽動とセンセーショナリズムの手法

最近ちまた、特にインターネット界隈で「集団的自衛権」に関連する形にて、「徴兵制」「軍事大国」、召集令状に該当する「赤紙」、挙句の果てには第二次大戦の軍事的独裁者「ヒトラー」の名前を持ち出し、さらには「若者が前線に」とまで断じ、大きな声を挙げてヒステリックに論調を展開するのが流行の気配を見せている。それらは概して注目を集め、読まれている感がある。

しかしその内容については、多分にセンセーショナリズム的な手法によるもの、さらにいえば煽動主義、イエロージャーナリズム的なものと評せざるを得ない。

「集団的自衛権」そのものに関しては、一次ソースにあたる内閣官房の公式ページ中の「安全保障法制の整備について」の全文、さらには「「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答」を読めば、常識レベルで読解力を持つ人ならば、一部で騒がれ、注目されている論調の内容が、誤解、さらには意図的な誤認・誤解釈を含めた拡大解釈に過ぎないことが理解できる。中には「拡大解釈をするな」という論調そのものが拡大解釈をしているのだから、支離滅裂ですらある。

ではなぜ、冷静に判断すればゴミ箱行き的な内容でしかない、これらの論調が注目を集めているのか。それは分かりやすく、目立ち、そして危機感を覚える言葉で飾られているからに他ならない。広告論的な手法を悪用している、イエロージャーナリズム、雰囲気で煽り立てる手法ともいえる。

ネガティブな方向を持ち印象深い言葉を使い、該当する事象に目を向けさせ、さらに同意を得させたい。精査すれば論理的に破たんしている内容でも構わない。雰囲気的にそれとなく同意を得られれば良く、雰囲気的に同意できる人だけでも誘導できれば勝ちなのだから。

その観点ではある意味、「集団的自衛権」から一連の煽りを成して、軍事大国や徴兵制に飛躍する論理を展開している事例では、その語り手は聞き手をも馬鹿にしてることになる。「どのみち論理的に破たんしてても、騒いで伝えれば信じ込んでしまうだろう」という思惑が見えてくるからだ(本当に心底その内容を信じているのなら、読解力の鍛練と一次ソースの繰り返しての音読をお薦めする)。

なぜネガティブなものを選ぶのか。人は生存本能の上で、ネガティブな情報にはより敏感に反応するからに他ならない。自分にとって生死に関わりうる情報に敏感で無ければ、命を失いかねないからだ。いわば本能のようなものだろう。この辺りの感覚は、震災以降多くの人が実体験して理解しているはずだ。

事あるたびに用いられる言葉としても有名な「徴兵制」一つを挙げても、第二次大戦当時まで、あるいは一部新興国での戦いならばともかく、近代国家においては、それが無意味で、非論理的な仕組みでしかないことはすでに明らか、というよりは事実でしかない。軍事関連をかじった者ならば、現状で日本において「徴兵制」を掲げることがいかに愚であるかはすぐに理解できる。

軍事力拡大というイメージを肉付けし、恐怖感を煽るために「徴兵制」という言葉を持ち出す。その時点で、前世紀的な発想でしかないこと、あるいは精査をせずに語っている事実を露呈しているようなもの。またはそれこそ「ゲーム感覚」なのかもしれない。

ではなぜ、何度も何度も「徴兵制」という言葉が悪用されるのか。それはひとえに「言葉のインパクト」「イメージしやすさ」をその言葉が有しているからに他ならない。また、シニア層で実体験した人が多いのも一因といえる。連想ゲームのように、パッと聞きで分かりやすそうな言葉を並べ、「なんだか軍事的な感じの言葉だな、集団的自衛権って」「軍事大国化するっぽいっていってるからそうなのも」「軍事大国っていうと徴兵制だよな」「徴兵制? 学徒出陣のように若者が前線に」という具合である。記憶術の一つとして物事を連想付けて覚える手法があるが、あれと似たような論理で、連想によって印象付けられた内容は得てして記憶に刻まれやすい。それが正しいのか否かを問わずに、である。今件事例でも、まさにそれを悪用している。

この「正しいか否かは二の次」「連想しやすい」「分かりやすい」言葉で攻め立てる方法は、「分かりやすい」イコール「正しい」ではない。分かりやすい内容だから、連想しやすい内容だからといって、それが正しいものである保証はない。むしろ間違っている内容を広めるために、あえて分かりやすく、イメージさせやすくしている事例も多々あるのが現実である。

「良く知られている」「恐怖感をあおる」「関連性がありそうな」言葉を使って人を恐怖させ、煽動する。「集団的自衛権」に絡んだ昨今の動きは、非常に分かりやすい事例に他ならない。SF商法や悪質な新興宗教では日常茶飯事的に行われている切り口ではあるが、それだけに、あまりにも典型的すぎるパターンの繰り返しで、はじめからタネが分かった状態で手品を見せられているような気分ですらある。しかしそれでもなお、その手品を信じて疑わず、内容にほれ込んでしまう人は少なくない。

「集団的自衛権」関連の話では、こんな例えがある。

「集団的自衛権を認めたら戦争が起こせる」ってのは「共学に行ったら彼女ができる」並に発想が短絡的、っていう例えの適切さヤバい。

「徴兵制」「軍事大国」「ヒトラー」「赤紙」「若者が前線に」などと連鎖的に語り危機感をあおる論評ならば、それこそ、

このアクセサリをつけたら彼女が出来て宝くじが当たって筋肉マッチョになって一万円札のお風呂に入浴出来て東大にストレートで>合格して上級公務員試験に一発合格して声優と結婚できて悟りを開いて大統一場理論を確立して永遠の命を得て異次元支配に>乗り出せる

ぐらいの短絡的ヤバさといえよう。

関連項目