ハンドルネーム

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ハンドルネーム(handle, screen name)とは、インターネットをはじめとしたネットワーク上で活動するときに用いられる別名のことである。HNと略されることがある。本来ハンドルのみでも名前という意味を含んでおり、「ハンドルネーム」は和製英語であるともされるが、現状英語圏のコミュニティでもhandle nameという語も使われている。どのようにしてハンドルという語のこのような用法が伝わったのか、ハンドルネームという語は独立に発生したものか、そういった点はあきらかでない。

由来

ハンドルの由来・語源としては複数の説がある。

赤毛のアンのハンドル

1908年発表のL・M・モンゴメリによる小説『赤毛のアン』において、主人公アン・シャーリーが作中「ハンドル(handle)」を自分のニックネームの意味で使っている。

アメリカの市民ラジオのハンドル

英語版ウィキペディア市民ラジオ(CB)の項目(en:Citizens' band radio#Growing popularity in the 1970s )に、「invented their own nicknames (known as "handles").」(ニックネームを持つことを考えた(「ハンドル」ともいう))とある。

運転のハンドル

長距離トラック運転者の無線通信で使われていた、ニックネームよりもたらされたとする説。

  1. 米国で1960年代に登場した無線システムである市民ラジオが長距離トラックの運転者を中心にブームとなった。この無線では、運転中の退屈しのぎに交信する際「くだけた雰囲気の中で親近感を抱かせるため」「道路上の取締り情報を交換するならば互いの身元を隠す必要があったため」に、おのおのが「トラック(のハンドル=ステアリング・ホイール)をハンドリング(操縦・運転)しているなにがし」としてニックネームを用いるようになった。
  2. やがて、モールス通信を行なう際に用いる電鍵のグリップ部分にひっかけ、アマチュア無線家の間でもコールサインと併せてニックネームとして用いられるようになった。これには、モールス符号でフルスペルを打電すると時間がかかって仕方がないため(たとえばミシシッピ州や“石井”さんは短点だらけであるため)に、より扱いやすい呼び名を必要とした事情がある。英語圏では人名の短縮形が多用される。
  3. また、アマチュア無線以前にはテレックス文化というものがあった。

これらから転用されて、英語圏では「ハンドル」がネットワーク上での名前を意味するようになった、というものである。「ハンドル」が一般化する以前には「スクリーンネーム」との呼び名が一般的だったという。

操舵装置とハンドルネーム

日本でも当初は「ハンドル」と呼ばれていたが、英語圏のような背景を持たない日本語圏では「ハンドル」が「自動車操舵装置(正式には "Steering wheel" )」もしくは「手渡し(handle)」の意味に取られやすいため、明確に区別する目的で「ペンネーム」「ラジオネーム」などの語から類推しやすい「ハンドルネーム」という和製英語が使われるようになった、との説がある。

プログラミングのハンドル

パソコン通信においては、参加者中に、プログラマなどコンピュータ技術者などの割合が多かったこともあり、コンピュータ用語からの転用が見られた。たとえば、書き込みをしない人のことをRead Only MemoryになぞらえてRead Only Member、略してROMとする、などである。

プログラミング技術用語に、なにかを間接的に指し示すもの、を指すハンドルがある(ハンドルを参照)。

この「ハンドル」から転じて、ハンドル、やがてハンドルネームになった、という説がある。

使用目的

一般に、ネットワーク上において実名で発言することは特に禁じられてはいないし、また実際に実名のみで活動しハンドルネームを持たない者も少なくない。しかし、遊び心から・また「実名を秘匿することで、現実世界においての人身攻撃を防ぐ」といった実利的な面から、ネットワーク上に参加する者がなんらかのハンドルネームを持つことは、昨今では広く普及している。

一般的なハンドルネームは、本人自身が案出し、他者に対して名乗ることで認知される。この点において、ハンドルネームはいわゆる芸名・筆名などと同質であり、他者から贈られる愛称とは命名主体が異なる。

一つのハンドルネームを複数のネットワークやコミュニティ(Webサイト・ブログ・チャット・掲示板・メーリングリストなど)にわたって広範に用いた場合、それは個人の同一性のアピールとみなされる(このようなハンドルネームは特に「固定ハンドル(略してコテハン)」と呼び、後述の「捨てハン」と対義語となる)。その人のプライバシーや実社会での地位などの秘匿は可能だが、個人の同定が不可能ではなくなり、活動履歴や他者からの評価が蓄積されるという意味では芸能人の芸名や作家のペンネームに近い。

互いをハンドルネームで認識することが多いネットワーカーにとっては、ハンドルネームが実名と同等のアイデンティティ確認手段に発展する可能性もある。例えば、ネットワーク伝いに知り合った者同士は、電子メールでやりとりするときにハンドルネームで呼び合い、またネット外で現実に会う際(オフ会)でも実名を明かさず(仮になんらかの機会によって相手の実名を知ったとしても)、ハンドルネームで呼び合うことが多い。

価値・有効性

ハンドルネームは個人を識別する目安となるが、有効な期間・場などにより実際の意義は大きく異なる。あるコミュニティでは永久的・公的な意味を持ち、また別のコミュニティではほとんど重視されない、といった差異が生じる。

通常、ひとりの人間がいろいろな場面に応じて複数のハンドルネーム(名義や人格)を使いわけることは、それほど珍しい事とは言えない。しかし、ある場において複数のハンドルネームを使い分け、複数の人間が活動しているかのように見せかける行為は、それが偏った目的のため(特定の個人やネットワーカーへの中傷や攻撃、特定の商品や人物などへの賞賛・いわゆる『やらせ』行為など)である事が判明した場合は自作自演と呼ばれ、他のネットワーカーらからは激しく非難されるのが通例である。また、ある人物が故意に他者と同じハンドルネームを名乗る行為や、複数人物がひとつのハンドルネームを名乗る行為も、マナーを逸脱した振る舞いであるとして非難の対象になることがある。

また、たまたま訪れた掲示板で一度かぎりの書き込みをする際など、一時的に使い捨てられる(継続して使用する事を前提としない)ハンドルネームは、捨てハンドルネーム捨てハン,ステハン)と呼ばれる。日本においては、捨てハンドルネームであることを明示している表記として、代表的なものに「名無し」「通りすがり」「匿名希望」がある。場に捨てハンドルネームだと明示せず複数のハンドルネームを名乗った場合、それは自作自演と同様の行為として非難される。また、匿名掲示板では、匿名で書き込んだのちに同一人物であるとを示す必要が出たとき、発言番号などの投稿情報が暗黙的な捨てハンドルネームとして認知されることもあり(23番の書き込みを行った者が「23さん」と呼ばれる、19時30分の発言者が「19:30さん」と呼ばれる、など)、稀なケースではあるがこの捨てハンドルネームがそのまま本格的なハンドルネームとして定着してしまう事例もある(例として、Winny開発者の金子勇とされる「47氏」などが挙げられる)。

関連項目

外部リンク