中国製品の安全性問題

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中国製品の安全性問題(ちゅうごくせいひんのあんぜんせいもんだい)は、中華人民共和国で製造された食物あるいは工業製品に対してその安全性に疑問が呈されている問題。

概要[編集]

ここ数年、日本やアメリカ等で中国産の食品の安全性について問題とする報道が多数見られている。 食の安全性についての報道は日本国内の企業でもしばしば問題になっており、アメリカでも同様であるが、中国に特有な問題としては

  • 農作物、家畜を生育する水源・土壌の汚染(中国の環境問題も参照)
  • 家畜の飼育基準の不徹底(不潔な生育環境、家畜育成用抗生物質の乱用など。トリインフルエンザSARSの項目も参照)
  • 農作物を育てる際の不適切な農薬の使用(他国では既に使用禁止されている農薬の使用・不適切な使用量)
  • 製造・加工過程での衛生基準の遵守違反
  • 食品添加物・内容物の偽装

などが挙げられている。

である。このような問題は中国政府も認識しており、果物については、中国当局は「輸出果物の検査検疫監督管理方法」を2007年2月1日に施行。管理強化を図り、果物の国際競争力の強化を目指している[1]が、実効性に関しては疑問視されている。 また、食料品以外でも中国製日用品、玩具でなどの有害物質が使われていることが問題となったが、これらについては中国企業特有の問題というより、製品を発注するアメリカ等の企業の問題が多いことも明らかになっている。

問題となった実例[編集]

食品[編集]

  • 中国がペットフード原料として輸出した小麦粉プラスチックの原材料であるメラミンとシアヌル酸の化学反応による物質が原因でぺットフードを食べた犬猫が腎不全で4000匹が死亡。販売元のカナダのペットフード販売大手、メニュー・フーズ社が6千万缶以上の缶詰を回収した事例[2]や、制作過程で毒性排水が混入した中国製のインスタントラーメンによって、モンゴルで学生2名が死亡した事例[3]などがある。
  • 韓国に輸入された中国産ウナギから発癌性物質マラカイトグリーンが検出され、後に日本に輸入されたウナギからも同物質が検出された[4]。マラカイトグリーンは主に抗菌剤染料として使われている物質であり、日本では食品衛生法により合成抗菌剤として食品中から検出してはならないとされている。また、米食品医薬品局(FDA)は2007年6月、中国産のウナギ、エビなど5種類の養殖魚介類について、米国で使用が禁止されている抗菌剤の検出が相次いだため広範な輸入規制に乗り出すと発表した。これらの抗菌剤が含まれていないことが証明されない限り、今後は輸入を認めないとした[5]


工業製品[編集]

  • 2006年9月よりパナマで原因不明の病気にかかり387人が死亡するといった事件が発生。アメリカより調査団が派遣され、調査の結果、パナマ政府が2006年5月に中国から輸入した風邪シロップであることが判明した。その風邪シロップは、中国の上海近郊の工場で作られた、毒性の強いジエチレングリコールという化学物質を中国の業者が「グリセリン」と偽って販売し、スペインなどの中間業者が「風邪シロップ」としてパナマ政府に販売していた、というルートが判明した[6]ジエチレングリコールの項目も参照)。
  • 北海道市内において、中国製の土鍋から鉛が溶け出したとの報告があった。苦情を受けた量販店が検査したところ、基準値を下回る量とのことであったが、報告者によると加熱調理中に蓋と鍋との間から銀色の液体が流れ出たとのこと。この液体が鉛であれば、少なくとも報告者の鍋に関しては、基準値2.5 ppm以下かどうかは疑問である。なお、輸入業者は鍋を自主回収したとのこと[7]
  • 2007年6月、アメリカ国家道路交通安全局(NHTSA)は、フォーリン・タイヤ・セールズ社が輸入販売していた文登三峰輪胎有限公司製のタイヤについて、耐久性上の問題があるとして使用を禁止した。当該タイヤは、一般になじみの薄いコンテナトレーラー用のタイヤであり、大きな社会問題となるまでには至らなかったものの、45万本ものタイヤがリコールの対象となった[8]
  • 2007年8月ニュージーランドの放送局TV3の消費者監視番組「Target」で中国製の子供服に発ガン性のあるホルムアルデヒドがWHOが定める人体の安全レベルを大きく超える900倍で検出されたとする放送を受けて、ニュージーランド消費者問題省(ministry of consumer affairs)が調査に入った[9]
  • 2007年8月米国で危険なレベルのを含む中国製きかんしゃトーマスコマや、バケツスポンジ・ボブアドレス帳と、日記自主回収された。[10]
  • 2007年8月米国オハイオ州の玩具販売店「Jo-Ann Stores of Hudson(ジョアン・ストアズ・オブ・ハドソン)」は、中国製の水遊び用の子供用玩具の連邦法の基準を超える鉛が塗料から検出されたことを受けて、商品名「Robbie Ducky(ロビーダッキー)」(アヒルの玩具)およそ6000個をリコールした[11]
  • 2007年9月日産自動車は、「タンブラーにアイスコーヒーを入れて飲んだところ、気分が悪くなった」という顧客の訴えを受け、試乗者に無料配布した中国製タンブラー容器を検査したところ、国が定める食品衛生法の基準値を超える鉛が検出されたとして、14万2523個の回収を行うと発表した[12]
  • 2007年9月カリフォルニア州当局は、州当局が低所得者向けの健康増進運動で配布した中国製の弁当袋30万袋から、高水準の鉛が検出されたとして廃棄するよう呼びかけた[13]
  • 2007年9月、米消費者製品安全委員会は、中国製ベットを使用した乳児少なくとも2人が死亡した他、60件以上の事故が発生したとして、中国製幼児用ベッド100万台以上をリコールするよう命令した。[14]

中国政府の対応[編集]

2007年7月10日の記者会見では見解が分かれた。

  • 国家食品薬品監督管理局政策法規司の顔江瑛副司長は「食品や医薬品の安全性を監督するメカニズムは少しずつ整備されているが、まだ完全とは言えず、楽観できない」と述べた。
  • 国家品質監督検験検疫総局輸出入食品安全局の林偉副局長は「輸出される中国産食品の安全性は高く、合格率は99%以上だ。 このところ食の安全が問題になっているが、中国政府としては楽観している」と述べた[15]

また、中国国家食品薬品監督管理局の元局長は1998-2006年に8社から650万人民元の賄賂を受け取り偽薬を認可したとして、2007年5月29日に1審で死刑判決を言い渡された。1審も初公判から2週間で判決という異例の早さであったが、控訴審も1ヶ月で終了し死刑確定、2007年7月10日には死刑が執行と中央政府閣僚に対し異例の早さで終結した[16]中国国家質量監督検験検疫総局李長江局長は、一連の騒動を受けて、「(中国製の基準に満たない製品の)リコールは必要だが、全ての中国製品が品質基準を満たしていないと決め付けることは、不当である。」と述べた。[17]

関連する報道[編集]

アメリカ人の82%が中国製品の購入に関して懸念[編集]

  • 2007年8月7日に発表された、著名なアメリカの世論調査機関であるゾグビー社 (zogby) とロイター通信が共同で行った世論調査によると、アメリカ人の82%が中国製品の購入に関して懸念があると回答。63%が中国製品のボイコットに賛成する。61%がチャイナ・フリーのラベルのある商品を選択する。と回答している。一方で、86%の回答が、商品を選択する際には価格で選ぶとしており、53%が、普及度と価格を考慮すると、中国製の製品を購買せず一週間を過ごすことは難しいと回答している。[18]

「中国食品の「毒」は日本から来た」[編集]

  • 中国共産党機関紙である人民日報と人民網は、2007年8月28日付の中国食品の「毒」は日本から来たと題する記事で、朝日新聞社の発行する週刊誌AERA(アエラ)の記事を引用する形で、もともと中国製の食品は安全であったが、中国の食品が農薬抗生物質を含むようになったのは、中国に抗生物質を持ち込み、中国で品質を無視して買い叩く日本人が原因である。日本は中国の食品安全問題に対して逃れようのない責任があり、日本人が悪いのになぜ日本人はあれこれ騒いでいるのだと、日本の食品安全に対する姿勢を非難している。
  • ただし、中国生産品への安全性に対する日本企業の姿勢については、朝鮮日報2007年8月19日付の中国産食品:品質重視の日本、価格重視の韓国 上同 下と題する記事において、価格のみでなく品質・安全性も重視して中国での生産行程を管理していることが報道されてもいる。

「中国の食品は、先進国の食品より安全」[編集]

  • 中国国際放送局(CRI)の日本週刊誌、輸入食品の基準超過率で中国は23位と発表 と題する報道によると、中国国家品質監督検査検疫総局は、朝日新聞社の発行している週刊誌AERA(アエラ)の記事を引用する形で、中国産食品の安全性に対して、中国大陸の基準超過率は0.58%で、23位であり、アメリカ、オランダ、イタリア、オーストラリアなど先進国の食品よりははるかに安全であると主張している。

中国製玩具回収、米マテル社が謝罪[編集]

  • 中国製のおもちゃが大量に自主回収となっていた問題で、2007年9月21日、アメリカの玩具大手・マテル社の幹部が、マテル社が回収したおもちゃの多くは「中国の製造の問題ではなく、設計上の欠陥」だったと謝罪した、と報道されている。[1]

日本製品への注目[編集]

  • 中国製品の不安製が世界中で報道されて以降、安全性に関して日本製について注目され、日本に製造を委託したり食品に関しても安全面から日本製を頼るといった報道があった。2007年、香港では日本製ミルクが流行し日本に来日してミルクを購入する母親が存在したり、また2007年より初めて中国に輸出された日本米が裕福層を中心に飛ぶように売れるといった事態も発生している。


関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 2007年1月29日付配信 サーチナ中国情報局ニュース
  2. 2007年5月9日AFP/2007年5月10日朝鮮日報/2007年5月2日日経新聞
  3. 2007年05月11日ソウル新聞
  4. 2005年9月15日厚生労働省発表
  5. 2007年6月29日読売新聞>
  6. 中国産毒性物質、風邪薬として売られていた朝鮮日報、2007年5月7日。
  7. 2007年5月25日北海道新聞
  8. 2007年6月27日日本経済新聞
  9. 2007年8月20日ワシントンポスト
  10. New recall of Chinese toys in US
  11. 2007年8月28日フォーブズ
  12. 2007年9月7日中日新聞
  13. 2007年9月22日朝日新聞
  14. 米当局、中国製幼児用ベッド100万台をリコール
  15. 中国網2007年7月10日
  16. 新華社通信2007年7月10日
  17. NZ probes China clothing scare
  18. 82% concerned about buying goods from China

外部リンク[編集]

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