デスマーチ
デスマーチ とは、プロジェクトにおいて過酷な労働状況をいう。特に納期などが破綻寸前で関係者の負荷が膨大になったプロジェクトの状況を表現するのに使われる。死の行進、死の行軍等とも言う。また、ソフトウェア産業に限らずコンピュータが関係する一般的なプロジェクト全般で使われるようになってきた。
概要
デスマーチとは、長時間の残業や徹夜・休日出勤の常態化といったプロジェクトメンバーに極端な負荷を強い、しかも通常の勤務状態では成功の可能性がとても低いプロジェクト、そしてこれに参加させられている状況を主に指す。
プロジェクトが死に向かう過酷な状況でメンバーが行進する、という意味で「デスマーチ」と呼ばれる。メンバーは心身ともに極めて重い負担を強いられるため、急激な体調不良、離職、開発の破棄ともとれる中途半端な状態での強引な納品、場合によっては過労死や過労自殺に至る。その発生要因はプロジェクトに対するマネジメント(プロジェクトマネジメント)が不適切であることとされている。
「デスマーチ」という言葉を広めたのは、エドワード・ヨードンであると言われている。ヨードンは、その著書『デスマーチ:なぜソフトウエア・プロジェクトは混乱するのか』で、デスマーチの定義を「プロジェクトのパラメータが正常値を50%以上超過したもの」もしくは「公正かつ客観的にプロジェクトのリスク分析(技術的要因の分析、人員の解析、法的分析、政治的要因の分析を含む)をした場合、失敗する確率が50%を超えるもの」としており、具体的には以下のいずれかに該当するものと定めている。
- 与えられた期間が、常識的な期間の半分以下である
- エンジニアが通常必要な人数の半分以下である
- 予算やその他のリソースが必要分に対して半分である
- 機能や性能などの要求が倍以上である
デスマーチ状態の解消には困難を極める事が多く、予算や設定納期などプロジェクト内部のメンバー以外の要因も多く絡むため、メンバーのみの努力での解消もほぼ不可能といえる。そのため、長時間残業が常態化することによってデスマーチを当たり前のように感じ、デスマーチに甘んじる負の循環が生まれる。さらに、極度な長時間労働それ自体がプロジェクトメンバーの「努力している」「労働している」という自負心を励起するため、あたかも奴隷が自分に繋がれた足かせの重りを自慢するかのように過酷な残業を自慢する傾向が見られる場合がある。
ソフトウェア産業におけるデスマーチは、「デスマ」という略語が存在し広く通じる程にある意味では普遍的なものであり、プロジェクトがデスマーチの状況に陥ることを「デスマる」と称することもある。
参考文献
- エドワード・ヨードン著 / 松原友夫・山浦恒央訳, デスマーチ―なぜソフトウエア・プロジェクトは混乱するのか, シイエム・シイ(2001) ISBN 4-901280-37-6
- エドワード・ヨードン著 / 松原友夫・山浦恒央訳, デスマーチ第2版ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか,日経BP社 (2006) ISBN 4-8222-8271-6