クーペ
クーペ(仏: coupé)とは、自動車のボディタイプのひとつである。
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概要[編集]
自動車のボディタイプとしての意味においては、フランス語圏以外でもcoupéのようにeの上にアクサンテギュを付けて綴られる例がしばしば見られる。フランス語発音は[kupe](クッペ[1])、イギリス英語発音は[kuːˈpei](クーペイ)、カナダ英語およびアメリカ英語発音は[ˈkuːp](クープ)。
クーペという単語はフランス語で「切られた馬車」を意味するcarrosse coupéより来ている。carrosse coupéは2人用の客室を備えた有蓋馬車で、向かい合った二列の座席がある馬車を途中で切った形をしている。最初は2人乗りで2ドアの自動車のうち、固定された屋根を備える自動車を指す言葉として用いられてきたが、最近ではそれのみならず、スポーティなスタイルを持つ自動車という意味で、4ドア車にも用いられている。
以前はクーペと固定式ハードトップとは「Bピラー」(前から2番目の窓柱)の有無で区別されており、1950年代から1970年代のように両雄が並び立つ時代もあった[2]。ビッグスリーやトヨタのように多数の車種をラインナップするメーカーでは、ひとつの車種、または姉妹車にノッチバックとファストバックのクーペ、あるいはハードトップとクーペの両方を用意する例も見られた[3]。1970年代以降、Bピラーを持つ「ピラードハードトップ」の増加により、クーペとハードトップの定義は曖昧なものとなって行った。
クーペのスタイルには、「Cピラー」[4]の下端とリアデッキとの間に「ノッチ」を持つものと、屋根から車体後端までなだらかな線(面)で繋いだものとに大別できる。前者を「ノッチバック」、後者を「ファストバック」と呼ぶが、これは単に「バック」(背中)の形状を指す用語で、クーペのみに当てはまるものではなく、セダンにも、ファストバックは存在する。
ノッチバッククーペは、ほとんどの場合、独立したトランクリッド(トランクルームのふた)を持つが、ファストバックの中にはトランクリッドを止め、利便性向上のため、さらに開口部の大きなバックドアを持つ「ハッチバック」スタイルとなったものも多い。車室とラゲッジスペースを繋げて利用できる「トランクスルー」構造は、どちらのバック形状にも見られる。
ノッチバックとファストバックの境界線が、以前ほどはっきりしなくなった上に、メーカーによっては、2ボックス型のハッチバックや、サッシレスドアを持つ4ドア車でもクーペを名乗るものが現れ、多様化が進んでいる。
クーペの種類[編集]
ノッチバッククーペ[編集]
ボンネット、車室、トランクルームの3つの箱からなるスリーボックススタイル。落ち着いた印象を与え、高級やフォーマルといったキャラクター付けのために用いられ、オペラウインドウを持ったランドウトップなど、リアピラーに特徴を持たせる場合は特に有効なスタイルとなる。
実用面では、後席のヘッドクリアランスや、トランクリッドの開口面積を確保しやすい。
ファストバッククーペ[編集]
リアウインドウが比較的寝かされ、明確なノッチとリアデッキを持たないスタイル。
独立したトランクリッドを持つものと、開口部の大きなバックドアをもつハッチバックとがある。ハッチの開き方には、跳ね上げ式と横開き式がある。日本車では跳ね上げ式が主流である。
セダンにもファストバックはあり、サーブではコンビクーペ(Combi coupé、この場合のコンビはステーションワゴンの意)、メルセデス・ベンツ CLSクラスは4ドアクーペという商標となっている。
カムテール[編集]
ファストバックの類型で、屋根からのラインが下がりきる前にボディー後端をすっぱりと切り取った形状のものを、特に「カムバック」(Kammback 米語)、「カムテール」(英語)、または「コーダトロンカ」(伊語)などと呼ぶ。
「カム」とは、流体の中を進むもっとも効率の良い形とされる「魚類」のような流線型の物体の場合、その後端を切り落としても抵抗はほとんど増加しない、とされる、カム博士の理論に由来するもので、コーダトロンカは尻(コーダ)切れ(トロンカ)の意味である。
全長の短縮による軽量化と運動性の向上が期待できることから、まずレーシングカーに採用され、量産車の空力競争が始まった1970年代には、空力性能の良さを形でアピールする意味もあり、カムテールを取り入れる市販車が相次いで現れた。
その他の呼称[編集]
- ハーフコンストラクトクーペ
- 4シーターセダンの屋根を抑えて、2シーターまたは2+2シーターにした形状の、スポーティークーペ全般をいう。
- フィクスト(フィックスド)ヘッドクーペ (FHC)
- もともとオープンモデルとして開発された自動車に、固定式の屋根を設けたモデルをいう。これはイギリスが発祥の言葉である。
- ドロップヘッドクーペ (DHC)
- 幌を持つオープンモデルではあるが、ドイツ車でのカブリオ同様、幌が一重ではなく完全な内張りを持っており、屋根を閉じればほぼクーペと同等の居住空間を得ることができるモデルを指す。この言葉もイギリスで生まれた言葉である。
クーペ車種の動向[編集]
アメリカ合衆国[編集]
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日本[編集]
1980年代後半から1990年代初頭のバブル景気とあいまって、非実用的で趣味性の強い車種(スポーツカーやスペシャルティカー)が好まれるようになった。こうした中で、日産・シルビア、トヨタ・セリカ、ホンダ・プレリュード、ホンダ・インテグラなどの2ドアクーペが、若者たちのデートカーとして大きなブームとなった。
しかし、1990年代後半のバブル崩壊以降はスズキ・ワゴンRやホンダ・オデッセイといった、実用性を重視したミニバンやトールワゴンがヒットし、スタイリング重視ゆえ後部座席の居住性や乗降面でこれらに比べ圧倒的に劣るクーペは敬遠されるようになっていった。さらに2000年代以降には原油価格の高騰を受けて経済的な軽自動車やコンパクトカーの売上が高まっていった。[5]
こうした中、依然としてごく一部では根強い人気がある車種もあるものの、全体としては軽自動車やコンパクトカーも含めてクーペ車種は順次モデル廃止・削減・淘汰され、各メーカーの現行ラインナップでは1~2車種しかない状態が続いている。また、三菱のように日本国外向けにはクーペのラインナップがあっても日本のクーペ市場からは撤退している状態のメーカーもある。三菱は2000年のGTO・FTO・ミラージュアスティ生産終了以降クーペ市場から事実上撤退した。レクサスブランドを除くトヨタも、2000年代末にクーペ市場からは一旦撤退。スバルは1996年のアルシオーネSVX生産終了をもってクーペ専用車種を廃止しその後2000年のインプレッサのモデルチェンジをもってクーペ市場から一旦撤退した。こうした中、トヨタとスバルは資本提携の一環としてクーペスタイルのスポーツモデルを共同開発[6]することになり、2012年トヨタ・86/スバル・BRZとして発売されることになったことで、トヨタとスバルでクーペの設定が復活することとなった。ホンダは2006年のインテグラの生産終了を持ってクーペ市場から撤退したが2010年にCR-Zで再参入した。
クーペの例[編集]
日本車
トヨタ
日産
- 日産・エクサ
- 日産・NXクーペ
- 日産・バイオレット・オープンバック / オースター・マルチクーペ
- 日産・シルビア / ガゼール / 日産・180SX
- 日産・レパード
- 日産・スカイラインクーペ
- 日産・フェアレディZ
- 日産・GT-R
ホンダ
マツダ
三菱
その他日本車
外国車
ドイツ車
フランス車
その他欧州車
アメリカ車
- GM
- フォード
- ダッジ・チャージャー(2代目まで)
韓国車
脚注[編集]
- ↑ アポロ仏和辞典(角川書店 ISBN 4-04-012700-5)による発音のカタカナ表記より
- ↑ 当時のハードトップに4ドア車は少なく、主に2ドアか3ドアハッチバックであった。
- ↑ フォード・マスタングやE30系カローラレビンとスプリンター・トレノなど。
- ↑ リアピラー:一番後ろの窓柱。車種によってはA、B二つのピラーしか持たないものもある。
- ↑ 『社団法人 日本自動車販売協会連合会』統計データより
- ↑ コンセプトモデルFT-86