大宮風俗店火災
大宮風俗店火災(おおみやふうぞくてんかさい)とは、2017年12月17日に埼玉県さいたま市にて発生した、火災である。
従業員の後藤 舞さん(29)、日向 祐希さん(25)、客として来店していた小岩 昭裕さん(42)ら4人が死亡、8人が負傷した。
「間口が狭く、階段を下りて逃げるのは無理」。大宮・風俗店の火事で近所の住民が証言
日曜の昼下がり、県内一の繁華街を抱える大宮駅の周辺に煙が立ちこめ、騒然となった。
さいたま市大宮区宮町4丁目で17日午後、風俗店が入る3階建てビルが焼けた火災。店内にいた計4人の死亡が確認され、8人が負傷する惨事となった。
現場は、大宮駅東口から約500メートル北にあるソープランド「Kawaii大宮」。
道路の幅は車が1台通れるほどで、3~4階建てのビルがひしめき合い、風俗店のネオンや看板が目立つ一角だ。発生直後は、近くの建物内にも煙が立ちこめた。
「最初、煙がすごかった。周辺では過去にぼやはあったが、70年ぐらい住んでいて、この規模の火災は初めてだ」。
近くに住む70代の女性は驚いた様子で話した。女性によると、店は早朝から開いていたという。
近くの70代男性が煙に気付いて現場に近づくと、30~40代の客とみられる男性が店の方から出てきて、苦しそうな様子で道路にしゃがみ込んだ。男性が「大丈夫?」と声をかけたが特に反応がなく、しばらくして駆け付けた救急隊員に搬送されたという。
近くに住む40代の男性会社員は、現場の店について「間口が狭く、建物が古くて階段も急なので、階段を下りて逃げるのは無理ではないか。年末は大宮かいわいはにぎわうので、女の子も多くいたのかもしれない」と話した。
大宮ソープ「築90年」でも現役だった理由。弁護士「新たに開いたり、建て替えることは法律上不可能
男女4人がCO(一酸化炭素)中毒などで死亡したさいたま市大宮区のソープランド「Kawaii大宮」の火災で、現場の建物は登記上は「築90年」だったことが分かった。古い建物を改修しながら使っているソープはほかにも多いのが実情で、専門家は、法律の影響などで新築できない事情があると解説する。
消防や関係者によると、建物は3階建てで、屋内の南北2カ所に階段があるが、客が利用する北側の階段は傾斜がきつく、人がすれ違えないほど狭かったという。窓が少なく、火災で停電していたとみられることが逃げ遅れにつながった可能性もある。
出火した「Kawaii大宮」について風俗関係者は「マットのない簡易的なサービスながら、10代後半や20代など、若い“素人”の女性と遊べることを売りにした、最近、流行している営業形態だった」と話す。
店がトレンドに敏感でも、建築物は非常に古い。閉鎖登記簿をさかのぼると、コンクリート・鉄骨造の3階建ての建物は1927(昭和2)年8月の新築と記載されていた。これが事実なら、築年数は実に90年ということになる。
建物の登記が初めて行われたのは1967年で、1969年には根抵当権が設定されている。実際に建てられたのはこのころとみられるが、それでも50年が経過している。その後も改修は行われたはずだが、登記上は建て直しされていないことになる。
なぜ、このような古い建物が“現役”で使用されているのだろうか。弁護士の高橋裕樹氏は「ソープランドは1966年に風俗営業法の規制対象になり、学校や病院から一定の距離を置かなければならないなどのルールが作られた。現在ではソープランドを新たに開いたり、店を建て替えたりすることは事実上、不可能となっている」とした上で、こう続ける。
「1966年以前から営業している店については、後から近くに病院や学校ができるなど違法な状態になったとしても、さかのぼって営業許可を取り消すことはできないので存続しているというグレーな状況が続いてきた」
自治体の条例の縛りもあり、各地のソープランドは古い店舗の改装を重ねて使用しているのが現状なのだという。
前出の風俗関係者は「火災があった店は格安店で知られる。薄利多売で稼ごうと部屋をたくさん用意したために、廊下が狭くなるなどの弊害があったのかもしれない」と話す。同じように昭和初期の建物を使っている店はほかにいくらでもあると証言する。
「高級店では万一の際の避難経路を店内で地図にして明確化していたり、スプリンクラーを設置しているところもある。風俗店を利用するなら安全面も考慮して遊ぶべきだと、今回の火災はあらためて知らしめた」(同)
東京・吉原を例に取れば総額6万円以上の価格設定の店舗にはこうした設備がみられるところがあるという。足を運ぶ前には、事前に店側に防火態勢の確認も必要かもしれない。