援助交際
援助交際(えんじょこうさい)は、女性が金銭等を目的として交際相手を募集し、性行為などを行う売春の一形態。18歳未満の女性が行なっている場合も多く、しばしば児童買春問題として取り上げられる。広義には一時的な交際の対価として金銭の援助を受ける行為そのものを指し、また必ずしも性行為は伴わない。
言葉
かつては日本の若者が使う売春の隠語であった。しかし1996年に刊行された『援助交際 - 女子中高生の危険な放課後』(黒沼克史)がヒット、同年の流行語大賞にも入賞したことから社会的認知が進み、現在では隠語として成立しない。
そのため、現在は別の隠語が存在する。例えば援助交際を「円光」「¥」「サポ」(サポート)「○」(円=援助)などと表現する場合があるほか、「ホ別3」(ホテル代は別で3万円、の意)或いは金額を「ゆきち5」(5万円の意)などの言葉で遠まわしに援助交際を表現する場合がある。なお、女性が金銭を支払う交際の場合は逆援助交際、逆援、逆サポなどと呼ぶ場合がある。また性行為を伴う援助交際を特に「ウリ」(売り、の意)と呼び区別する場合もある。
なお、英語圏ではローマ字の綴りで「Enjo kōsai」としてそのまま紹介されることがあり、意訳の場合は「Compensated dating」などの英単語を用いて、「女子学生から主婦(School girls to Housewives)」までが関わる「児童買春(Child prostitution)」や「売春(Prostitution)」として説明される。
日本の法律
児童が性交の対象となる相手を誘引(もしくは18歳以上が児童に対して性交の相手となるよう誘引)し、児童が金銭と引き換えに性的サービスを提供する行為があった場合には、日本では児童買春・児童ポルノ処罰法によって、児童買春とみなされる。児童との性行為やわいせつな行為は金銭の収受の有無によらず処罰を受け、さらに、成人が13歳未満の性的同意年齢に達していない少年や少女を相手にした性行為は、合意の有無に関わらず強姦罪が適用される。
援助交際の過程で、児童の着用済み下着等(ブルセラ)の販売・購入などが行われる場合がある。また、一時的な交際(カラオケや食事を共にするだけ)という条件で合意し、それに対する金銭の授受が行われることもある。これらは性的行為を伴わないため淫行条例には違反せず、また売春行為にも当たらない。ただし行き過ぎた行為に対しては青少年保護育成条例や児童福祉法が適用された事例がある。
当事者が共に18歳以上である場合は、性行為を伴う援助交際であっても処罰されない。これは売春防止法が売春を禁止しているだけで犯罪ではないからである。ただし、これは刑事処分の対象となるか否かの問題であって、売春そのものは依然として(本番行為なしの場合を除き)違法行為であり、それが公になった場合に社会的非難や制裁を受けうる点に留意する必要がある。
日本における歴史的経緯
ここでは、援助交際が行われる舞台の変遷について記載する。
- 1985年にいわゆるテレクラが登場し、まもなく日本中に広まる。その匿名性の高さから児童による利用も行われはじめ、次第に援助交際の温床となる。
- 1990年代になるとポケットベルや携帯電話が青少年に普及しはじめ、両親や周囲に悟られないコミュニケーションが可能となり、親子関係の希薄化・非行問題との関連が指摘され始める。このことはマスコミも積極的に取り上げ、18歳未満による援助交際が問題提起されるようになる(俗流若者論 も参照)。
- 1994年にはダイヤルQ2を使い「援助交際クラブ」(デートクラブ)と称し、児童を使って売春(組織売春)をしていた業者が摘発されたことがきっかけで、マスコミに初めて援助交際の語が出現するようになる。
- 1997年、大阪府警により「援助交際は売春です。」との内容のポスターが製作される。
- 1999年にはNTTドコモのiモードサービスが始まり、iモード用の匿名掲示板や出会い系サイトが出現し始める。当時はまだ18歳未満の青少年による出会い系サイトの利用は可能であり、社会問題になった。
- 2004年よりSNSが流行する。厳密には出会い系サイトではないが、出会い系サイトと同様に匿名性を持ちうることから児童の利用が問題になる。
- 2006年、新しい業態であるセリクラや出会い喫茶の店舗が拡大する。法規制が明確でない業態であることから、新たな援助交際の温床となる可能性が指摘されている。一部店舗では児童の利用を自主規制することで対応している。
援助交際防止への取り組み
児童による援助交際を防止するために施行される法令は「青少年の保護」および「買春の処罰」の両方の観点から行われる。ただ、現在は児童が見ず知らずの他人と容易に接触できる手段から隔離する為の施策のみが重点的に議論されており、匿名性の高いコミュニケーション手段が創生されるたびに法規制で対応しているのが現状である。
- 1999年11月 - 児童買春・児童ポルノ処罰法が施行
- 2003年9月 - 出会い系サイト規制法が施行、児童も処罰の対象となる
また、児童の持つ携帯電話からインターネットにアクセスする際のフィルタリングの是非や、小中学生に携帯電話を持たせること自体の是非が現在議論されている。
素人売春女を狙う「援デリ業者」が暗躍
都内某所の喫茶店内。終電間際の時間帯に、男女4人が座る席で、異様な会話が繰り広げられていた。男性のうち、1人の手元には4台もの携帯電話が。その一つがメールを着信し、男性がつぶやく。
「お、着いたってよ。行ってきて」。
その声にグループの女性の1人が反応し、店外に出て行った。記者がその後を追うと、彼女は100mほど離れたファストフード店の前に立ちすくんでいる。そこに、「○○さんですか?」と話しかける中年男性が現れ、2人はそのままホテル街のほうへと消えていった……。
「それは『援デリ』と呼ばれる、援助交際を装ったデリヘルの業者です。出会い系サイトの書き込みを使って、素人のふりをして“客”を募るグループ。都内でも特に新宿、池袋、高田馬場近辺にかなり多い」
そう話すのは、自身も以前、同様の業者を運営していたA氏だ。その業態について、こう続ける。
「出会い系サイトへの書き込みや、“客”である男性とのメールのやり取りは男が管理します。ココで書き込んだことは、いちいち女には伝えない。プロフィール写真には田舎のキャバクラや風俗で人気のある女のコのものをアップする。客も後ろめたさがあるから、写真と違ったコが来ても、『ハズレか』くらいにしか思わない。俺のときは、この方法で問題が起きたことはなかったです」
客の男たちが女に支払う報酬は、1回1万5000円~2万円程度が相場だという。では、この働く女性たちはどういった素性なのか?
「女のコは、上京してきたばかりとか、郊外から都心まで遊びに出てきているコが多い。ほとんどが家出少女のようなコたちで、なかには18歳以下を働かせている連中もいますよ。彼女らはだいたい、日給1万円とかで働いていますね。あとは、出会い系サイトで”個人事業主”として援助交際をしている女をスカウトする場合もあります。そのときは、業者の人間が女とアポを取って実際に会い、『1人でやってんの大変だろ? ウチで働きなよ』と、スカウトするんです」
実際にそのスカウトを受けたという女性・エミ(仮名・21歳)の話を聞いた。彼女は18歳から援助交際を始め、今でも週に4,5回、出会い系サイトを通じて客をとっている”個人事業主”だ。
「最初は、『普通のサラリーマンだ』って言われていたけど、Hする前になって『俺らと働かない?』って言われた。仲間に入ったかって? ないない。だって、あいつらと一緒になったら、無理やり必要以上の客をとらされるから。実際、ウチらみたいなコが一番警戒するのって、警察と業者なんだよ。ヤクザの名前使って、脅してくるヤツもいたし」
ちなみにエミは、出会い系サイトや路上で客をとるだけで、「10代の頃は月に40万円くらい稼いでいた」という。「今は5000円くらい値下がりしちゃった。仕方ないよね、不況だし」。売春を繰り返す女と、それを買う男、そして両者を利用する援デリ業者。その攻防戦は今宵も繰り返されている。