スクールカースト
スクールカーストとは、主に中学校・高等学校における学校およびクラスの中の序列(ヒエラルキー)をさす言葉である。同調圧力が高く、かつ経済力を持たない中高生期においては、閉鎖環境である学校の中の立場というものが絶対をなすことが多く、人によってはその後の人生にまで影響を及ぼしうる。名前の由来はインドのカースト制度から来たもの。クラス序列ともいう。
様相
属性の分化が進んでいない小学生期においては少ない。ただし第2次性徴期が男子より早い女子は一般的に高学年期に早くもスクールカーストを形成し得る。
カースト上位者については、必ずしも成績トップの生徒や運動神経に優れる生徒がなれるものとは限られていない。カースト上位者の特徴は「運動(特に球技)能力が高い」・「外面のよさ(たとえば流行り物に詳しいなど)」・「話していて楽しい(浅く広くの会話ができる)」などである。しかし成り行きで決まる側面もあり絶対ではない。カーストの特徴の例として、次のような物がある。
- 一軍(Aランク)
- サッカー部、バスケットボール部、野球部のどれかに所属している、高校生ならばバンドのメンバーで特にギタリストやドラマー
- 遠足のバス内で最後尾を仲間同士で占領する
- 休み時間はクラスで友達と騒ぐ
- 学級委員等、面倒な仕事を最下位の生徒たちに押し付けることが出来る
- クラスの笑いを誘うネタの研究をしている
- 外見に気を使っている
- 異性とのコミュニケーションが上手く、早くから恋愛経験がある
- 三軍(Cランク)
- 文化部もしくは卓球部に所属
- グループ分けで余り易い
- 休み時間中クラス内に居場所が無い
- 外見にあまり気を使わない
- 寄せ書きは余白が多い
- 異性とのコミュニケーションが取れない
- おたく趣味がある
よってカーストの下層に属してしまうと克服は困難となる。さらに階層が完全に固定化されてしまうといじめ・罵倒の対象ともなりうる。
カーストの名が指すとおり、学校社会生活期を終え外の世界(つまり何らかの形によって労働する・結婚するなど)に出てしまうと、スクールカーストは意味を成しえなくなる。また、学校生活以外に意味を見出そうとする者(たとえば、アルバイト・学校外でのスポーツ・趣味・サークル活動など)はこのカーストを認識しない。
「クラス」で固定化された日本特有の問題と思われがちだが、勉強運動ともに優等生であるジョック(ジョックス)を頂点とした学校内カーストを形成するなどアメリカ合衆国にも同様のものが存在する。
対処法
- 学校・クラス・家族以外のコミュニティに自分の居場所を作る(部活・バイト・サークル活動など)
- 学校のクラスという狭いコミュニティでの人間関係を過度に気にしない
- クラス替え
- 転学・転校(可能なら)
- 担任の教師、カウンセラーなどに相談する(教師などから反感を買わないように、出来るだけ丁寧な態度で)
- 運動部に入り、部活に打ち込む(可能ならメジャーな運動部)
- ちゃんと勉強して出来るだけ良い成績を取る(成績が良ければ軽んじられることはない)
- 文化祭・体育祭などに積極的に取り組む
- 「カースト上位」とされているような学生にも遠慮せずに話しかけたりする
- 自分だけの趣味をもつ(ただ、オタク趣味などに過度に没頭するのは危険)
- ファッションに気を使う
- 流行にもある程度興味を持つ
- 自分の将来の目標を見つける
- とにかく、自分の序列などを気にしてふさぎ込んだりせずに、勉強、運動(部活)、遊び(ファッション・流行)の三つに打ち込むというオーソドックスな学生生活が、有力な対処法である。
今、中学や高校の教室内には、見えない地位の差がある
今、中学や高校の教室内には「見えない地位の差」がある。同学年なのに“上下”のグループ分けが出来上がり、全員がそれを受け入れる。
「スクールカースト」と呼ばれるこの差別的な悪しき文化はどのようなものなのか。
「『下』には騒いだり、廊下で笑ったりする権利が与えられていないんです」
高校時代、自分が下位グループだったという女子学生は、生徒のグループごとに上位・普通・下位のランクがあり、ランクに応じた「権利」が決まっていたと語る。
「下」は「上」の主張に異議を唱えられない。授業中にいきなり先生に話しかけていいのは「上」だけ。行事などの準備が面倒くさければ「上」は帰れるけれど「下」はダメ……。そんな暗黙のルールがあるという。
「下」が廊下で騒いだりすれば「上」から目を付けられ、教室内でお喋りをするなどの「今ある些細な権利」すら奪われかねなかったと、この女子学生は振り返った。
同学年で対等なはずなのに、「あの子たちは『上』で、あの子たちは『下』」という序列を生徒たちが認識・共有する。これを「スクールカースト」と呼ぶ。
2000年代後半に教室内で下位グループだった子供たちがインドのカースト制度になぞらえて鬱積する不満をネット上に書き込んだことで広まった言葉だとされる。
彼らはクラス内でお互いのグループを「1軍、2軍、3軍」「A、B、C」などと呼び合う。スクールカーストの陰湿な点は、地位の差がいわゆる「購買でパン買ってこい!」といったシーンのように露骨に表出しないところにある。
だから教師ら大人には把握しづらい。聞き取り調査では、「下」が「上」の反応を“予期”して行動していることがわかる。
例えば、放課後の掃除は雑巾がけや箒、机移動など分担作業で、教師から見ればそれぞれ自らやっているように映る。しかし、つらい真冬の雑巾がけは、下位グループの生徒が引き受ける。
「お前が雑巾をやれ」と「上」から指示されるわけではなく、あくまで自発的に、自分の役回りであることを予期してやるのだ。
女子高生の場合、化粧する子も少なくないが、「下」は自分が化粧して「上」から目をつけられないかを考え、相応しくないと判断すれば、したくてもやらない。
何か行動を起こす際に不利益になる可能性を予期する人たちがいることによって、強い権力構造が成立する。スクールカーストでは、「上」の顔色を窺い、「下」の生徒はやりたくないことでも進んでやるようになる。“地位”に見合った行動を取るようになるのだ。
努力しても序列の逆転は不可能に近い。クラス替えを契機に「イケてるキャラ」に変わろうとしても学年で情報は共有されていて、すぐバレる。
そもそも、一生懸命努力することはカッコ悪いという意識があり、キャラを変えようと容姿に気を遣って“イメチェン”に必死になる姿は嘲笑の対象とされるのだ。
スクールカーストを題材にした作品
- 白岩玄『野ブタ。をプロデュース』
- 桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
- 三並夏『平成マシンガンズ』
- 深町秋生『ヒステリック・サバイバー』
- 綿矢りさ『蹴りたい背中』
- 木堂椎『りはめより100倍恐ろしい』
- 重松清『ナイフ』
- 大島永遠『女子高生』
- 木地雅映子『悦楽の園』
- 山木一しげる『若者の社会は階級社会』