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2007年5月5日 (土) 06:40時点における版

バールのようなものとは、窃盗事件あるいは殺人事件などにおいて使用される器物の形容として、しばしば日本報道で用いられる表現である。

バールについて

ファイル:Clowbar.jpg
本物のバール

ここで言う「バール (crowbar) 」は、多くの場合先がL字型に屈曲した鋼製・棒状の工具、鉄挺(かなてこ)のことである。

曲がった部分を支点として不動点(地面)に押し付けるなどして、てこの原理を利用し、大きな力を出しやすいように作られており、また、切り込みの入った扁平な先を利用し、釘抜きや家屋の解体などにも多用される。詳細についてはバールの項を参照のこと。

バールのようなものについて

バールあるいはそれと同様の機能を持った道具を用いて、ドアをこじ開けるなど建造物が破壊されたり、ATM金庫自動販売機など破壊され荒らされたり、人が傷つけられたりすることがある。

こうした犯罪事件が報道される際、犯人がまだ捕まっていないなどの理由で凶器が不明なケースもある。状況から使用された凶器はバールかもしれないと推定されても、実際に使用されたのがバールであるかバールでないか不明であるから、仮に報道で「凶器はバールであり…」と断定した場合、これは厳密には誤りとなる。犯行にバール以外の道具を用いたという可能性を切り捨てることになるからである。つまりこの文脈で「バールのようなもの」と「バール(そのもの)」とでは意味が違うのであり、報道機関には正確さが求められるゆえに、使用された凶器が不明な段階では「凶器はバールのようなものとみられ…」と曖昧さを持たせて報道することになる。

したがって、その「バールのようなもの」の正体は何かと問うのは無益である。なぜならば、それがバールのようなものである以上のことは、現物が発見されて事実が確認されるようなことがなければわからないことだからである。バラのような香りの正体はバラかもしれないし、単なる芳香剤であるかもしれないのと同じように、「バールのようなもの」の正体はバールそのものであるかもしれない一方で、バール以外の別の物かもしれない。

これは「拳銃のようなもの」などについても同じことが言える。拳銃とおぼしき道具をもって人を脅した事件が起きた場合、確認されていない段階ではそれが実銃かおもちゃの拳銃(→遊戯銃模造銃)か、あるいはまったく関係ない類似する形状の物、ないし目撃者の全くの錯覚による誤認であるかは不明なため、正確を期するためにこのような表現がなされるのである。

しかし、「バールのようなもの」が特徴的であるのは、その言葉に包含される一連の物の代表例として、バールが真にふさわしいものであるかどうかにある。当然の事ながら、バールのようなものという表現が成立するためには、バールと聞いて大多数の国民がすぐにそのものを想起できる必要があるが、その点に疑問が存在するのである。これは「包丁のようなもの」「拳銃のようなもの」という表現と比較したときに明白である。

なお、破壊された物品に残された傷跡から「バールのような物でこじ開けた跡が…」といった報道がされることがあるが、これは「バールでこじ開けた様な跡」とはあまり報道されないようである。

また、警察での記者発表や調書においては「バール様(よう)のもの」と発音・表記される。これが「バールのようなもの」をさらに「ようなもの」たらしめている一因とも言えよう。

実例

関連作品

「バールのようなもの」は1994年に清水義範の短編小説の題材にもなった。文藝春秋から出版された短編集の表題作として、清水義範を代表する作品の一つに数えられる。短編集『バールのようなもの』(ISBN 4163158006)は1995年に単行本として出され、1998年には文春文庫に入れられた。

また立川志の輔はこの作品をもとにした落語を演じている。


関連項目

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