「鹿児島大生夜行バス横転事件」の版間の差分
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2012年4月29日 (日) 02:03時点における版
鹿児島大生夜行バス横転事件とは、2011年に鹿児島大学農学部3年の楫田優希が、就職活動で追い詰められ、広島県山陽自動車道で夜行バスを横転させた事件である。
目次
事件概要
2011年2月25日午後11時55分ごろ、広島県東広島市の山陽自動車道下り線で、南国交通(鹿児島市)の大阪発鹿児島行き高速バスが横転した。
東広島署は26日未明、運転手からハンドルを奪って事故を引き起こし乗客らを殺そうとしたとして、殺人未遂の疑いで乗客の鹿児島大3年、楫田(かじた)優希容疑者(22)=鹿児島市=を現行犯逮捕した。同容疑者は就職活動中で「自殺したかった」と供述している。
「これで誰も降りられない。みんな死ぬんだ。殺してくれ」。横転したバスの車内に、楫田容疑者の叫び声が響いた。
東広島署によると、高速バスが休憩で立ち寄ったサービスエリアを出発後、楫田容疑者が後方の座席から立ち上がり車内を徘徊。運転手(35)に「降ろせ」と要求し、ハンドルを奪って左に切った。運転手が一度は元に戻したが、交代要員として同乗していた別の運転手(43)が制止するのも振り切って再び左に切り、バスは路肩に乗り上げて横転した。
当時バスは時速100キロ近くで走行。他の乗客9人と、乗員2人は大阪、兵庫、鹿児島3府県の14~70歳の男女でいずれも軽傷。楫田容疑者も軽いケガ。事故後の車内で乗客が取り押さえ、警察官に引き渡した。
前方2列目の席にいた大学院生佐藤誠一郎さん(25)=鹿児島市=は就職活動の帰り道で、目を覚ました時、楫田容疑者の声を聞いた。
「降ろせ!」と乗降用ドアを蹴り始め、声はやがて叫びに変わった。運転手は「突然ハンドルを横からつかまれ、奪われまいと必死に握り締めたが駄目だった。説得しようとしたが…」と横転する直前の状況を振り返った。
大学入試の帰りだった出水徹さん(19)=鹿児島市=は、うつぶせの状態で取り押さえられた楫田容疑者が「みんな死ぬんだ!」と叫ぶのを目撃。やがて静まり、うめきが漏れていたという。
楫田容疑者は「他の客がいるのは知っていたが、死のうと思ってハンドルを切った」などと供述。上下スーツ姿でネクタイを着用し、黒い手提げかばんの中には会社説明のパンフレットが入っていた。同署は就職活動の帰りだったとみて動機や足取りを調べているが、26日午後からの取り調べでは黙秘を続けている。
楫田容疑者とみられる人物は、インターネットの複数の交流サイトに就職活動に関する悩みを書き込んでいた。今月16日にはミクシィで落胆ぶりを吐露。フェイスブックには、1月5日に英語で「春までに仕事を見つけなければ。少し神経質になっていて忙しい」と焦りをつづっていた。
ネットに「ES終わらない」
夜行バスが横転した事件で、インターネット上の複数の交流サイトには、ひらがなやアルファベットで楫田容疑者と同じ名の登録があり、同容疑者らしき人物が今月まで書き込みをしていた。
公開している経歴によると、鹿児島県出身で県立高を卒業し、鹿児島大に入学。オーストラリアの語学学校への留学を経て、大学に復学した。残されたメッセージからは、留学生活が充実していたことがうかがえる。昨年5月に「英語検定試験に合格した!」と記載。同6月に帰国し、7月に「来週大阪に行ってきます!」との書き込みもあった。友達の問いかけには、「インターンシップの面接に行く」と答えていた。
しかし今年1月初旬には「この春には仕事を見つけないと。だから少しナーバスになっていて忙しい」。最後の書き込みは2月16日。日本語で「ES(就職活動で企業側に出す応募用のエントリーシート)が終わらないorz(落胆・失意を示す記号)」と焦りをにじませていた。
バス横転させ「自殺したかった」
会社案内所持、調べには黙秘、
広島県東広島市の山陽自動車道の高速バス横転事件で、殺人未遂容疑で逮捕された鹿児島大3年楫田優希容疑者(22)=鹿児島市荒田=が、かばんの中に会社説明のパンフレットを持っていたことが26日、東広島署の調べで分かった。
同署は、就職活動の帰りだったとみて動機や足取りを調べているが、同日午後からの取り調べでは黙秘を続けている。
同署によると、楫田容疑者は上下スーツ姿でネクタイを着用。黒い手提げかばんを持っていた。
また事件当時、楫田容疑者が左に切ったハンドルをバスの運転手(35)が一度は元に戻したが、同乗の別の運転手(43)が制止するのを振り切って楫田容疑者が再びハンドルを左に切り、バスが横転したことが新たに判明。同署は強い犯行の意思があったとみている。
事件直前までバスは時速100キロ近くで走行。楫田容疑者が「降ろせ」などと要求、横転約5分前の25日午後11時50分ごろに、運転手が仮眠室にいた別の運転手を車内のインターホンで呼び出していた。
バス乗客の様子
広島県東広島市の山陽自動車道下り線で、25日深夜、高速バスのハンドルを切って、バスを横転させ、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された鹿児島市荒田、鹿児島大3年楫田優希容疑者(22)。 深夜の高速バスで起きた突然の出来事に、搬送先の病院で取材に応じた乗客らは恐怖を隠しきれない様子だった。
前から3列目に座っていた大阪府守口市、大工福迫大司さん(38)は、後方から運転席に向かうスーツ姿の楫田容疑者を目撃。
消灯されて真っ暗な車内で、「降ろしてほしい」という声が聞こえた。やがて楫田容疑者は「殺してくれ、俺は殺される」などと叫んでドアをけり始めた。同乗していた別の運転手(43)が制止しようとすると、楫田容疑者はハンドルをつかみ、事故を起こしたという。福迫さんは別の男性(70)と一緒に後方に戻ろうとする楫田容疑者を取り押さえたといい、「一瞬のことで、何が起きたのかすぐにはわからなかった」と話した。 大学受験の帰りだった鹿児島市の出水(いずみ)徹さん(19)は、「これでみんな死ぬんだ」と楫田容疑者が叫ぶのを聞いた。
「刃物を持っているのでは」と怖くなり、割れたフロントガラスから車外に逃げた。
就活に熱心な逮捕学生・悔やむ父親「あそこでちゃんと話ができていれば…」
殺人未遂容疑で逮捕された楫田優希容疑者(22)の父親(55)によると、楫田容疑者は鹿児島県内の高校を卒業後、鹿児島大に入学。休学してオーストラリアに留学し、現在は就職活動中だった。
鹿児島市内で1人暮らしをしており、ことしの正月に実家に帰ったときは「朝から晩まで一生懸命仕事をしたい」と話していた。福岡など県外の企業説明会にも積極的に参加。特に悩んでいる様子はなかったという。
25日夜には、母親の携帯電話に2度連絡があった。午後6時ごろの電話では、代わりに出た妹に「明日か明後日には実家に帰る」と話し、妹が「ほかに何かある」と聞くと「何もない」と答えたという。
バスが大阪を出発する直前とみられる午後8時前にも電話があったが、通話状況が悪く、内容のある会話はできなかった。
父親は「被害者の方には申し訳ない。あそこでちゃんと話ができていれば、こんなことは起こさなかったかもしれない」と悔やんだ。
「成績優秀、悩み聞いてない」在籍の鹿児島大学長が謝罪(2011年2月27日)
広島県東広島市の山陽自動車道の高速バス横転事件で、殺人未遂の疑いで逮捕された楫田(かじた)優希容疑者(22)が在籍する鹿児島大学(鹿児島市)の吉田浩己学長は27日、同大学で記者会見し「学生が重大な事件を起こし深くおわびします」と謝罪。「成績は優秀で大きな悩みも聞いておらず信じられない」と話した。
大学側の説明では、楫田容疑者は農学部生物環境学科の3年生。2009年10月から1年間、休学しオーストラリア留学していた。
「心神喪失状態」大学生を不起訴(2011年5月17日)
広島地検が行った精神鑑定で、学生が事件当時、物事の是非・善悪を識別することのできない「心神喪失」の状態だったとする鑑定結果が出た。勾留期限は17日。責任能力がなく刑事責任を問えないことから、地検は同日までに、学生を不起訴処分とした。
当初、「就職活動で悩みがあった。自殺しようと思った」などと供述した。しかし、事件直前に車内で「降ろせ」とわめくなど不可解な言動があったことから、地検は3月から約2カ月間、本格的な精神鑑定を実施していた。