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国がどの程度再配分すべきかは、再配分の重要性に関する国民の価値観と、再配分による租税回避効果に対する現状認識とに依存する。 | 国がどの程度再配分すべきかは、再配分の重要性に関する国民の価値観と、再配分による租税回避効果に対する現状認識とに依存する。 |
2014年11月16日 (日) 11:52時点における版
増税問題(ぞうぜいもんだい)とは、政府が国家予算の収支バランスにおいて、歳出の削減を図ることよりも歳入の増加策として増税を取り上げること。また、その手順が批判されること。多くの場合新たな税を課すものか税率を増加させるもので、事後に税収増の効果を確認して課税客体の再構築を行うといった税制上の問題を検証することはない。
目次
租税の機能
政府が他国から独立して国制や租税制度、軍事権や課税権や通商規制権などを維持するためには、国民に愛国心や政府への忠誠心を持たせる必要がある[1][2][3]。企業の目的あるいは経済の効果とは「収入から費用を差し引いた利潤を最大にすること(利潤最大化仮説、⇔効用最大化)[4]」であるが、個人が自ら所有する財や自らの行為に付加価値を付けてモノやサービスを提供する経済活動を国家レベルで捉えると、政府には「国民の負担(税金)を増やすことなくGDPを増やす施策」が求められているといえる。国民の健康の増進を図り労働や出産・育児を求め、国土上あるいは地球上にある有限のモノに対して付加価値を付けさせ、同国民あるいは世界中の人にサービスさせるにあたって、児童や高齢者や障害者や妊婦など労働力としての期待が薄いものがいることも事実であり、それらの人たちの分も壮年者層や健常者等に労働させなければならない。
政治の本質として政府には「仕事の振り分け」「徴税」「税の分配」といった機能が求められるところ、その手段や方策として、教育や競争といった企画等も求められる。政府が信用を保証する「通貨」に国民の欲望を向けさせ、国民のさまざまな労働によってその価値を拡大再生産させ(緩やかなインフレーションが起こっている状態を維持させ)、その一部を税金として納付してもらい、国内外の経済活動に使ってその国の基盤や魅力等を向上させている。中世から近代にかけて、産業革命を果たした西洋で植民地施策が始まり、政府が自らの俸給を維持したまま国民等により多くの労働を求めたことでは内乱や革命が起こり、人やモノなど資源を奪い合うことでは戦争に繋がっていった[5]。
歳入としての根拠
各国の政府が国民に負担を求める「税金」は、国民個人のレベルで見ると「自分たちが公的サービスの費用として政府に支払っているお金」と理解できる。ミクロレベルで考えれば「自分の所得から政府に持っていかれるお金」で、マクロレベルでは「国民全体の所得(国民経済、GDP)から政府に分配されたお金」であり、このことから政府の仕事は「GDPを増やすための施策を考えて支出をすること」であるといえる[6]。
第2次世界対戦の後、ほとんどの国の政府は、法律によって国民に各種の義務を課したり権利の制限を加えると同時に、管理業務や許認可や資格などの制度を設けて仕事を作り出し、数値化や金額化をして国債を発行し、その政府自身の信用の元で貨幣の価値を保証している[7]。なお、赤字国債の累積が「国の借金」や「国民一人当たりの借金」と報道・表現されたりするが、正確には「政府(現政権)が国民に借りているお金」であり「国民一人当たりの資産」である[8]。ここでいわゆるヤクザやマフィアの活動は、そのサイクルを破壊する反社会的行為とみなされる。
歳出の必要十分条件
政府は、集めた税金を、公共の利益のために使う。政府による公共サービスを望む者も、また税金の徴収が不可欠であることを理解する者も、税の自己負担が増加することに抵抗を持つとしている。他人が負担する税金は「良い税金」であり、自分が負担する税金は「悪い税金」となる。
行政の関与は本来は最小限に抑えるべきであり、社会的弱者の排斥が起こることがないように市場の失敗が見られる分野に限るべきだとの見方もある[9][10]。
国がどの程度再配分すべきかは、再配分の重要性に関する国民の価値観と、再配分による租税回避効果に対する現状認識とに依存する。
世界規模の環境対策としての環境税
地球温暖化の防止策として、1997年に各国で合意された京都議定書を踏まえて、2003年8月に環境省は「温暖化対策税(炭素税)」の制度設計案を提示している。日本ではこのような環境税が「増税、税収増」とイメージされるが、欧州においては課税の目的を「二酸化炭素削減効果」「雇用促進」「低所得者への逆進性対策」として、同時に減税部分も企画されており、増税と直接結びつかない「税収中立」のスタンスを取っている。財政赤字に当てられる性質のものではない[11]。
日本の増税問題
日本において、税金の使い方を決めるべき国会議員は、各種の問題を先送りして若年者層に負担を求めるばかりで、家族間や世代間の相互扶助意識の希薄化及び政府への不信感を増大させている。本来は、国会議員が教育問題や民度とあわせて国家の将来像を示すべきところ、国の財政状況に応じた税制の議論はなく、次回選挙を気にして社会保障費の増大に対する抜本的な改善提案から目を逸らしていると指摘される。
年金や生活保護などの支払いは「政府の所得が家計に移転された」に過ぎず、特に生活保護は典型的な所得移転で直接的なGDP拡大効果はゼロである。実質GDPの急収縮や失業率の上昇(GDPデフレーターがマイナスとなるような状態)を防ぐには、政府が負債を増やし投資などの有効需要を創出するしかない。税収あるいは政府の施策によってGDPそのものが減少している時は、たとえば一部の官僚の給与を下げその分で失業者を公務員として雇うことで、マクロ経済的な問題は出ない。障害者や高齢者の医療費の増大など「保健」に係る政府支出の歳出面の改善を図り、有効需要を創出するような失業者対策(生活保護受給者を有期公務員にして被災地へ派遣する等)こそ検討すべきである[12]。
日本の税制の経緯
過去に日本での都市と農村の経済と流通を発展させた政策として織田信長による楽市楽座が挙げられるが、ここでは逆に「免税」を認めることで商工業の一層の振興が図られた。「フロイス日本史」では、その賑わいを、当時の安土城城下が首都となりそこなった町だというほどに記している[13]。
江戸時代までの通貨としては、金本位制及び米等物納による納税制度の元で明から輸入した永楽通宝が使われていたが、やがて藩札や伊勢国の山田羽書といった兌換金券が「紙幣」のように使われた。幕末、坂本龍馬は前福井藩士の由利公正と面会した際、武士という生産性のない遊民を不可とし「国民全員が働き民力を高める方策としての金札(紙幣)による経済活動」を勧められている[14]。そして、龍馬の死後ではあるが、明治時代に幕府(政府)が金山等を天領として管理すること及び物納による納税が改められ、地租改正や新貨条例とあわせて西洋の紙幣・債権制度や職業選択の自由が取り入れられた[14]。
なお、スイスでの国民一人当たりのGDPは日本以上であるが[15]、この勤勉さは私有財産が徹底的に守られるという伝統から来ていると考え、日本の税制の根底には国土の価値を基準とした資産再分配思想が流れている。税金の高い国は経済統制の進んでいる国であって、どれだけ政治改革にエネルギーを注いでも、国民は幸福にはなれない[16]。また、日本では同じ税理士でも国税庁OB以外は役に立たないという話もあり、有能な人材を徴税と脱税に使う国家になってしまう[17]。
国税と地方税との関係
日本は小さな国といわれるが、人口規模では世界有数の大国であり[18]、日本の政令指定都市(要件100万人以上)ともなると小国に相当する人口を抱えている[19]。
国税と地方税の税収のバランスはおよそ6対4であるのに対して、その歳出となると4対6に逆転する[20]。地方交付税として地方に配布する基準の裁量を官僚が保持し、その使用状況についても監査が入るところ、十数兆円という規模でのこのような制度は世界的に例がなく、政令や施行規則を経由させて省庁にきめ細かく裁量を持たせるより、税収バランスを0対10にした完全な地方分権を企図する方が公務員の人員数や業務の効率化を図れるものである。また、中央の省庁は各地方に地方局を持たせているが、これを都道府県あるいはいわゆる道州制での地方公務員化をすることにより、クイックレスポンスで事が早く合理的に進む。また、いわゆる「3ゲン」(権限・人間・財源)を地方に委譲することが地方分権の根本であり、逆に年金制度は日本共通の制度にすべきであり、「歳入庁」などでの収入や資産の把握と適正な社会保障(医療や生活保護などの見直しや一体化)の確保が望まれる[21]。
消費増税
消費増税とは、「消費課税」を増額させること、あるいは消費税の税率を上げることを指す。消費税は付加価値税とも言われ、政府が国民に労働を求めて付加価値をつけさせる行為そのものに税を課すものであり、税収総額に対して他の税収にマイナスの影響を与えることも多い。タバコ税や酒税などは嗜好品や贅沢品であるとして増税対象とされることも多い。
平成元年に消費税が導入された後も常に税収等の不足が議論され、平成9年に税率を「3%」から「5%」に上げる際には「福祉目的税」などといった言葉などで議論されたが、いわゆる普通税であるため予算に反映されることはない。その後保険料方式を採用して平成12年に介護保険制度、平成15年には支援費制度も始まったが、制度を担うべき人手や出生率の向上はなく、やはり公的部門で新たに税金を投入して管理部門や社会保障費を増やし続けることが必要な事態となっている[22]。
消費税は、逆進性が強くコストも懸かるものと考えられている。低所得者には大きな負担となり、適正な把握も難しく滞納になりやすい[23]。消費税は行政の支出や歳出を増やすこととなるため、財政再建の財源として適当ではなく、日本でも歳出増加を抑制させるため地方自治体の税収とするべきである[24]。なお、内閣の内部でも、内閣官房参与を務める静岡県立大学の本田悦朗教授は2013年当時に2014年増税反対と述べており[25]、増税効果や使途での責任の所在などで見解も統一していない。
日本では、輸出品は消費税が還付されるため、輸出企業と政府とで消費増税を推進する傾向が生まれる[26]。政府も消費増税に際して低所得者への逆進性の対応が論点となることを認識しているが[27]、公平性の観点から食料品等一部の品目に対する軽減税率の導入のみでなく水道や電気やガスなどのライフラインでも適用検討されるべきで、品目・対象の決定に際しての非中立性及び事務の煩雑さにおいてある種の利権が生じることも問題となっている。
東日本大震災に対して
2011年3月の東日本大震災に際し、消費増税に反対して2009年7月に与党になった民主党が2012年12月に主張を翻し、2010年代半ばに消費税の税率を10%に上げることを法定化させた。その他、福島第一原子力発電所事故の復興に必要な財源と称して2013年より所得税に復興増税分が上乗せ増額されることとなった[28][29]。
本来、震災による経済活動の萎縮を避けるため普通なら減税を実施するもので、1923年の関東大震災でも国民に対しては減税を実施している[30]。また、原発や放射能汚染における固定資産価値の下落を「消費課税」や「所得課税」に転嫁することでの疑問も多く、生活保護受給者の増加状況とあわせて、消費税増税は、低所得者にとってはさらなる生活苦をもたらすため、「資産課税」の性質を持つ「貯蓄税」を取り上げるべきである[31]。
立法コストそのものの削減
一票の格差問題も付随して自らの既得権益を手放さない国会議員たちが問題視されている[32]。日本にはいろんな業界で「税金の抜け穴」があるがその最たるものは政治家である。議員としての給料(歳費)のほかに得る支持者や関係団体からの寄付金は政治献金と呼ばれ、「税制上の収入」にはならない点を挙げている。また、歳費とは別にもらえる手当を他のことに流用することも多々あり逮捕された事件もみられるとしている。昨今大企業や富裕層はあらゆる方法で政治に圧力をかけて大幅に税金を下げさせ、その一方で、消費税の増税など中間層以下の負担が増す施策が次々と打ち出されているとしている。いわゆる「うるさいものが得をする」状態となっている[33][34]。
「増税・経済成長・歳出削減」の3つの政治課題を一体的に進めないと絶対にダメだという考え方は「消費税増税先送り論者」の戦略となっており、それでも民主主義国家では国民の賛同を得られなければ何事も決められないのも厳然たる事実で、日本では増税するにしても議員定数や公務員総人件費の削減も同時に求められているといえる[35]。国会議員自身の人数や世界一高額な報酬を合理的に見直す「税制問題の解決」が求められているところ、議員は国会法第39条や地方自治法第92条などで兼職禁止が定められているが費用対効果で考えた場合その根拠はない[36]。
極端な話、無報酬で立法業務を担う国民が現れてもよく、町村等の小規模自治体における地方議員報酬の日当制も検討されるべきである[37]。日本維新の会の国会議員は「大阪都構想」で都道府県や市町村の統廃合による地方議員や地方公務員の減少及び予算配分の効率化などを奨めている。
増税や政治に係る格言
- 大国が、私的な浪費や不始末によって貧乏になるようなことはけっしてないが、公的な浪費や不始末によってそうなることはときどきある。(アダム・スミス)
- ある国に多くの大富豪がいたとしても、財産の平等な分配がないなら、その国は貧しい。(フリードリッヒ・リスト)
- 今の支配階級が賢いと思うのは、ほとんどの人間が何の見返りもなくあくせく働いて重税を払うこの社会体制に対し、国民の大多数に疑問を抱かせないところである。(ゴア・ヴィダル)
- 政府は税収を使い切るために肥大化しつづける。(アーサー・ブロック)
- あらゆる政府において、公人は消費するのみで何一つ生産しない。(ルソー)
- 歳入を計るには、人民が供与しうるものによるべきではなく、人民が供与すべきものによるべきである。(モンテスキュー)
脚注
- ↑ 日本国憲法制定時の関係会議録(衆議院)委員会-昭和21年7月・穗積委員
- ↑ 財務総合政策研究所「アジア周縁諸国経済の現状と今後の課題」報告書(財務省)
- ↑ 国際化時代の税務行政(国税庁)
- ↑ 『ゼミナールミクロ経済学入門』pp135-136(岩田規久男、日本経済新聞社)ISBN4-532-13030-1
- ↑ 『私たちはなぜ税金を納めるのか・租税の経済思想史』pp11-56(諸富徹・新潮選書)
- ↑ 『増税のウソ』pp24-25、28(三橋貴明、青春出版社)ISBN978-4-413-04338-0
- ↑ 『池上彰のお金の学校』pp17-26(朝日新聞出版)ISBN978-4-02-273417-4
- ↑ 『増税のウソ』pp49(三橋貴明、青春出版社)
- ↑ 行政関与の在り方に関する基準(行政改革委員会)
- ↑ 技術評価指針に基づく標準的評価項目・評価基準(経済産業省)
- ↑ 足立治郎 『環境税-税財政改革と持続可能な福祉社会』 pp42、pp152、pp192(ISBN4-8067-1291-4)
- ↑ 『増税のウソ』p28、71、156、pp158-159、180(三橋貴明、青春出版社)
- ↑ 「歴史人別冊信長の真実」2012年11月、pp84-85(KKベストセラーズ)
- ↑ 14.0 14.1 「歴史人」2012年7月号、pp26-27(KKベストセラーズ)
- ↑ 3-12OECD加盟国の購買力平価による1人当たり国内総生産(総務省統計局)
- ↑ 『相続税をゼロにせよ!』p33、pp129-134(渡部昇一、講談社)
- ↑ 『税高くして国亡ぶ』pp16-23(渡部昇一、ワック出版)ISBN4-89831-530-5
- ↑ 『大阪維新の真相』p16(高橋洋一、中経出版)
- ↑ 世界経済のネタ帳-世界の人口ランキング
- ↑ 『大阪維新の真相』p70(高橋洋一、中経出版)
- ↑ 『大阪維新の真相』(高橋洋一、中経出版)pp53-55、59、64-68、94-95
- ↑ 給付範囲見直しなどで賛否 日本経済新聞(20130515)
- ↑ 国税庁ホームページ 最近の税務行政の動向(p25)
- ↑ 『大阪維新の真相』(高橋洋一、中経出版)pp71-73
- ↑ 消費税増税実施はデフレ脱却を第一に1%ずつ5年間で引き上げをダイヤモンドオンラインニュース 2013年8月29日
- ↑ 斎藤貴男 『消費増税で日本崩壊』(KKベストセラーズ)
- ↑ 食料品等に対する軽減税率の導入問題(国税庁ホームページ)
- ↑ 復興特別所得税(国税庁ホームページ)
- ↑ 増税ありきで復興財源が語られている(20110511セーフティー・ジャパン・日経BP社)
- ↑ 『増税のウソ』pp110-111(三橋貴明、青春出版社)ISBN978-4-413-04338-0
- ↑ 『消費税か貯蓄税か』pp197-198(白川浩道、朝日新聞出版)ISBN978-4-02-330945-6
- ↑ 増税の前にやるべきことがある!(みんなの党ホームページ)
- ↑ 『税金の抜け穴 国民のほとんどが知らない納税で「得する話」「損する話」』(角川oneテーマ21)p58-62、64、81-82、221-222
- ↑ 米富裕層への増税問題-もし、あの大富豪が日本に住んだら(しんぶん赤旗)
- ↑ 『消費税が日本を救う』(熊谷亮丸、日経プレミアシリーズ) pp6-7、pp201-202。
- ↑ 相次ぐ自治体首長の国政関与(H241201京都新聞)
- ↑ 市町村における議員定数等の適正水準について(甲斐素直<日本大学教授>)
- ↑ 『人生がもっと豊かになる「お金」の格言1000』 pp146-166(宝島社)