「イタイイタイ病」の版間の差分

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2018年12月17日 (月) 14:56時点における最新版

イタイイタイ病(イタイイタイびょう)とは岐阜県三井金属鉱業神岡事業所(神岡鉱山)による鉱山製錬に伴う未処理廃水により発生した鉱害四大公害病のひとつである。神通川下流域である富山県婦中町(現・富山市)において、主に大正時代から昭和40年代にかけて多発した。

症状[編集]

が脆くなりほんの少しの身体の動きでも骨折し、患者が「痛い、痛い(いたい、いたい)」と泣き叫んだ事から地元の開業医である萩野昇により「イタイイタイ病」と名づけられた。被害者は主に出産経験のある中高年の女性であり、男性の被害者も見られた。ほぼ全員が稲作などの農作業に長期に渡って従事していた農家(自分で生産したカドミウム米を食した)であった。このような症状を持つ病は世界にもほとんど例がなく、発見当初、原因は全く不明であった。風土病あるいは業病と呼ばれ、患者を含む婦中町の町民が差別されることもあったとされている。

体内に吸収されたカドミウムは骨の主成分であるカルシウムなどを体外に排出させ、結果として骨粗鬆症に類似した症状が生じる。重症者においては骨の強度が極度に弱くなり、少しでも身体を動かしたりくしゃみ、医師が脈を取るために腕を持ち上げるだけで骨折。その段階では身体を動かすことが出来ず寝たきりとなる。骨の強度を上げる効果のあるビタミンDの大量投与によりある程度症状は和らぐとされるが金銭的余裕のある患者は少なく、結果として彼らの多くが死亡した。

原因[編集]

裁判の過程で、神通川上流の高原川三井金属鉱業神岡鉱山亜鉛精錬所から鉱廃水に含まれて排出されたカドミウム(Cd)が原因と断定された。神岡鉱山から産出する亜鉛鉱石は閃亜鉛鉱という鉱物で、不純物として1%程度のカドミウムを含んでいる(閃亜鉛鉱は現在の亜鉛鉱山におけるもっとも主要な鉱物であり、天然に産するものであれば大なり小なりカドミウムを含む)。

神岡鉱山は開山から長きに渡り鉱廃水を無処理で神通川へ排出していた。この影響で大正期に下流域において亜鉛による作物の生育阻害が発生したため、鉱山は廃水中に混じる尾鉱を取り除くために沈殿池を設置した。しかしながら、この沈殿池ではカドミウムのように水に溶け込んでいる成分は取り除くことができないため、カドミウムは無処理のまま神通川へ流れ込むこととなった。

神通川以外に取水元のない婦中町(当時)ではカドミウムの溶出した水を農業用水(灌漑用水)として使用しており、またカドミウムには農作物に蓄積される性質があるためカドミウムを多量に含む米が収穫され続けた。この米を常食としていた農民たちは体内にカドミウムを蓄積することとなり、このカドミウムの有害性によりイタイイタイ病の症状を引き起こした。カドミウムは自然界にも一定の割合で存在し、人体にも少量は含まれているものの神通川流域で生産された米に含まれたカドミウムは非常に高かったため、被害者の体内に蓄積されたカドミウム濃度は数十倍から数千倍に達していた。

カドミウムの毒性については長い間よくわかっておらず、また公害の発生当時、カドミウムとイタイイタイ病に特有な症状との関連もはっきりとしていなかったため神岡鉱山側の対策が遅れ、公害を拡大させることとなった。なお、公害病認定後もしばらくの間、武内重五郎東京医科歯科大学名誉教授)ら「ビタミンD不足説」を主張するグループが一定の勢力を有していた。

認定をめぐる問題[編集]

いまだに行政の救済を受けれずに苦しんでいる人たちが残っている。現代での問題点は原因分析ではなく、患者認定・要観察判定の具体的な基準に移っている。行政側である県認定審査会は厳しい基準を課して却下する事例が多い。具体的には、イタイイタイ病の認定の4要件の1つとなる骨軟化症の判定をおこなっている。骨軟化症においては、類骨の増加という特徴が見られる。そのため、いわゆる吉木法に基づいて骨を染色し、類骨の濃染部分を観察する事により調査できる。そして、類骨の濃染部分が十分であると骨軟化症に認めることになっている。しかし、腸骨のみを基準としたりするなど厳しい判定をしがちである。また、不服審査の問題点として県認定審査会の厳しい判断による却下に基づいて、被害者の多くは公健法に基づいて環境省に設置された不服審査委員会に審査請求を行っている。しかし、行政不服審査は一般的に行政に有利とされる。なぜなら、行政不服審査法のもとでは審査を行うのが第三者機関ではなく、上級行政庁だからである。

法制度[編集]

1970年に成立した農用地の土壌の汚染防止等に関する法律で、カドミウム等により土壌汚染が発生した地域を「農用地土壌汚染対策地域」として設定。同地域において汚染防止、汚染源除去などの対策を取るよう定められた。

命名の経緯[編集]

1955年、地元『富山新聞』の八田清信記者が取材に訪れた際、看護婦が患者を「イタイイタイさん」と呼んでいると聞き、「そのままいただいて"イタイイタイ病"としては?」と提案した。萩野医師もこれに同意し、同年8月4日の同紙社会面で初めて病名として報じられた。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

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