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2015年2月15日 (日) 19:10時点における版

殺害された、府立東舞鶴高校1年の小杉美穂さん(当時15歳)

舞鶴高1女子殺害事件とは2008年5月に京都府舞鶴市で発生した、中勝美(当時59歳)による府立東舞鶴高校1年小杉美穂さん(当時15歳)殺人事件

事件概要

2008年5月6日、15歳の女子高生・小杉美穂さんが夜午後10時以降に自宅を出た後、翌5月7日午前0時50分頃友人に「国道沿いのドラッグストア付近にいる」と携帯電話で話し、その直後に東京に住む兄に携帯メールを送信したのを最後に行方が途絶えた。

同日午前9時頃に小杉さんが家に帰らないため、小杉さんの家族が捜索願を出す。

5月8日午前8時45分頃に雑木林で小杉さんは遺体として発見された。死因失血死死亡時刻は5月7日未明とされる。バールのようなもので小杉さんの顔や頭など数回殴って殺害した上、遺体に土や枯れ葉をかけて隠していた。

発生当初の5月、捜査機関は交友関係を調べれば犯人に結びつくとして、犯人特定に楽観的な見方もあったが、捜査は難航する。小杉さんに周辺とのトラブルは無く、事件の直前に掛けていた携帯電話の通話やメールからも犯人には結びつかなかった。

一方で、5月7日未明に小杉さんと黒い服を着て自転車を押す男が一緒に現場に向かう府道を歩いているのが複数の防犯カメラの記録に残っていた。

聞き込みを続けた結果、8月に現場近くに住む中勝美(事件当時59歳)が容疑者として浮上。中勝美は5月6日夜から7日未明に市内の飲食店二店を自転車で訪れ、帰途のコースと時間帯が女子高生が通過したものと重なり、中勝美は防犯カメラに映った「自転車の男」と体格で同一人物とみて矛盾しないとの鑑定結果も出て、さらに男は当日は黒い服を着ていたことも判明した。

中 勝美を逮捕

中 勝美

11月15日中勝美は7~8月に女性下着1枚と賽銭約2000円を盗んだ窃盗罪逮捕される。11月26日、窃盗罪で家宅捜索が行われた後起訴

11月27日、5月に発生した殺人罪死体遺棄罪容疑で捜索令状を元に2回目の家宅捜索を行おうとした。しかし、中勝美弁護人が捜索令状の取り消しを求める準抗告を申し立てたため、延期。

その後、準抗告が棄却されて2回目の家宅捜索が入ったが、1日遅れで家宅捜索が始まり、弁護人が記録用のビデオカメラで撮影しながら捜索に立ち会うという状態になった(弁護人のビデオ撮影は府警からの申し入れで途中で中止になったが、立会いは最終日まで続けられた)。家宅捜索は12月4日まで6日間続き、約2000点が押収された。

2009年2月26日中勝美は窃盗罪で懲役1年が確定し服役。2009年4月7日中勝美は殺人事件による殺人罪と死体遺棄罪で逮捕。4月29日、殺人罪と強制わいせつ致死罪で起訴された。5月21日から始まる裁判員制度を目前にしての起訴であった。

中は殺人事件直後に事件の日に着ていた黒い服を捨てていたり、所有する複数の自転車の色が事件直後に塗り替えられて、また凶器と見られるバールを数年前から持っていたが事件直後に無くなるなど数々の不可解な点があり、捜査機関はこれらのことを証拠隠滅のためだったという見方をしている。

また36年前の1973年9月に中(当時は25歳)は内縁の妻との別れ話から内縁妻とその兄を殺害した後に住人の女性2人を人質に立て篭もった事件で懲役16年の有罪判決を受け、1991年9月に路上で女性を強制わいせつしようとした強制わいせつ罪や傷害罪で懲役5年の有罪判決を受けた経歴が明らかになった。

裁判

2010年12月21日、23回の公判前整理手続を経た上で、初公判が京都地裁笹野明義裁判長)で開かれた。状況証拠の積み重ねだけで、直接の物証がない事件としても注目が集まった。

10回にわたる公判で以下のことが主な争点となった。

  • 事件直前、中と小杉さんが一緒にいたとする目撃者2人の証言は信用できるか否か
  • 事件直前、防犯カメラに映っていた、自転車を押しながら小杉さんと一緒に歩く男は中 勝美か否か
  • 中 勝美が聴取において他人真犯人説主張の際に行ったとされる小杉さん遺留品の特徴の供述は、事件当時に現場にいたことを示す「秘密の暴露」か警察の誘導か

3月18日に検察側は死刑を求刑、弁護側は無罪を主張した。

2011年5月18日、京都地裁は防犯カメラの画像の検察側の画像鑑定は「単なる印象に基づくものが多い」として証拠能力を否定したが、目撃証言や防犯カメラから死亡直前の小杉さんと一緒にいたことを認定し、未公表の小杉さん遺留品の供述に捜査上の問題はないとして証拠能力を認めて有罪としたが、偶発的な犯罪であることから死刑を回避して無期懲役判決を下した。弁護側は判決を不服として大阪高裁に即日控訴した。

2012年12月12日、大阪高裁(川合昌幸裁判長)は京都地裁の無期懲役判決を破棄し、逆転無罪の判決を言い渡した。状況証拠だけの立証は難しい形が浮き彫りとなり、「疑わしきは罰せず」のルールが重んじられた形となった。

中勝美被告に1審無期懲役判決。京都地裁、笹野明義裁判長

京都府舞鶴市で2008年に府立高校1年の小杉美穂さん(当時15歳)が殺害された事件で、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた中勝美被告(62)に対し、京都地裁は2011年5月18日、無期懲役(求刑・死刑)を言い渡した。

笹野明義裁判長は「被告が被害者の遺留品の特徴を知っていたことから犯人であることが強く推認される」とし、「犯行態様は冷酷残虐だが、周到に計画したり、ことさらに残忍な殺害方法を選択した事案とは異なり、死刑の選択がやむを得ないとまでは言い難い」と量刑理由を述べた。被告側は控訴する。

公判で被告側は一貫して無罪を主張。被告と事件を結びつける直接証拠がない中、防犯ビデオの画像鑑定や目撃証言など、検察側が積み重ねた状況証拠をいかに評価するかが最大の焦点となった。

判決は、現場に至る道路で被告と被害者を見たとする目撃者2人の証言の信用性を認め、道路沿いの3カ所にある防犯ビデオの画像も目撃証言と合わせて検討し、「映っている男は被告であり、犯行現場近くに犯行時刻に近接した時間、被害者と一緒にいた」と認定した。

一方、検察側の画像鑑定は「単なる印象に基づくものが多い」として証拠能力を認めなかった。

続いて被害者の遺留品を詳細に説明した被告の供述について検討。「自発的にされたと認められ、供述を求めた捜査官に違法なものはない」としたうえで、「非公表の特徴と合致する具体的な供述で、知る機会があるのは犯人の他にはほとんど考えられない」と検察側の立証に沿う判断をした。

量刑について笹野裁判長は「経緯、動機に酌むべき点はない」と指弾したが、「同種前科の刑期終了後は暴力的犯罪を行っておらず、偶発的な面もある」などとして死刑回避の理由を述べた。

事件は裁判員制度の施行約1カ月前に起訴され、裁判官3人が審理した。

京都地裁は状況証拠の積み重ねによる立証を認め、無期懲役を言い渡した。和歌山毒物カレー事件(1998年)や仙台・筋弛緩剤混入点滴事件(2000年)と同様、直接証拠がない中で有罪を導いた。

状況証拠による立証について最高裁2010年4月、「犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が必要」との基準を示した。同年12月、鹿児島夫婦殺害事件(2009年)の裁判員裁判はこの基準を踏襲し、現場から被告の指紋が出ていたが無罪(求刑・死刑)を言い渡した。

今回の判決では、防犯ビデオの画像と目撃証言を合わせ、検察側が主張する被告と被害者の事件前の足取りを認定し、被害者の遺留品に関する被告の供述調書も「自発的なもの」と認めた。しかし、ビデオ画像が不鮮明だったことには言及せず、別人物が犯行に及んだ可能性については「想像し難い」と説明しただけで、最高裁基準を厳密に検討した形跡は見られない。

舞鶴高1女子〈小杉美穂さん〉殺害事件。中勝美被告の無罪確定へ(2014年7月)

京都府舞鶴市で2008年、高一少女を殺害したとして、殺人罪などに問われた中勝美被告(65)について、最高裁第一小法廷(横田尤孝(ともゆき)裁判長)は、検察側の上告を棄却する決定をした。

無期懲役とした一審・京都地裁判決を破棄し、逆転無罪とした二審・大阪高裁判決が確定する。決定は8日付で、裁判官五人の全員一致。

中被告は一貫して否認。裁判では、凶器など直接証拠がない中、目撃証言など状況証拠の評価が争点となった。

決定理由で横田裁判長は「事件現場近くで被害者と歩く被告と似た男を目撃したとする男性の証言は、取り調べを重ねるにつれ、年齢や目など被告の特徴と一致するように変遷している」と信用性を否定した。

中被告は捜査段階で「知人が被害者の化粧ポーチや下着を川に捨てるのを見た」と供述。一審は、中被告がポーチの色や形状などを詳細に説明した点を「犯人のほかに考えられない」と判断したが、横田裁判長は「遺留品の特徴について当初はあいまいだったが、長時間の取り調べで具体的になり、信用性に疑問がある」と取調官の誘導を示唆。

「二審の判断に事実誤認があるとは認められない」と結論付けた。

2011年5月の一審判決は検察側の死刑求刑に対し無期懲役、2012年12月の二審判決は無罪とした。中被告は二審判決後に釈放されたが、窃盗罪で実刑判決を受け、大阪拘置所で服役中。弁護士を通じ「無実が証明されてほっとしている。京都府警と検察官に強い憤りを持っている」とコメントした。

京都府舞鶴市の女子高生殺害事件の上告審で、最高裁第1小法廷は捜査機関による供述の示唆や誘導を否定して上告した検察側の主張を退けた。最高裁が証拠の内容を再検討して無罪を維持したことで、状況証拠の積み重ねによる有罪立証の難しさを改めて示す形となった。

状況証拠による立証のあり方について、最高裁は2010年、大阪市の母子殺害放火事件の判決で「被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が含まれることを要する」と述べ、高いハードルを課している。

記録が残る1983年以降、死刑求刑に対する無罪判決が最高裁で確定するのは、広島市の母娘3人殺害事件の上告棄却決定(2012年2月)に続き2例目。異例の事案だけに、小法廷も判例に沿って目撃証言や被告の供述の信用性を精査し、2審判断を「合理的」と結論付けたとみられる。

直接証拠がない事件で、死刑求刑に対して被告が無罪を主張した裁判員裁判では、鹿児島地裁が夫婦殺害事件で2010年に無罪を、さいたま地裁が首都圏連続不審死事件で2012年に死刑を選択している。

舞鶴高1女生徒殺害、逆転無罪確定へ。最高裁、検察の上告棄却

京都府舞鶴市で平成20年5月、府立高校1年の小杉美穂さん=当時15歳=を殺害したとして、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた無職、中勝美被告(65)=別事件で服役中=について、最高裁第1小法廷=横田尤孝(ともゆき)裁判長=は、検察側の上告を棄却する決定をした。

決定は2014年7月8日付。中受刑者を無期懲役とした1審京都地裁判決を破棄し、逆転無罪とした2審大阪高裁判決が確定する。

同小法廷は「被害者の遺留品の特徴に関する受刑者の供述が、捜査機関の示唆や誘導によってなされた可能性があるとした2審の判断は合理的」とした。5人の裁判官全員一致の結論。中受刑者は捜査段階から一貫して無罪を主張。直接証拠はなく、事件前の目撃証言など、状況証拠の評価が焦点だった。

1審が有罪の根拠とした「犯行現場付近で、若い女性と受刑者に似た男を見た」とする目撃証言について、同小法廷は、辺りが暗い時間帯に数秒間目撃したにすぎず、受刑者の特徴に一致するように証言が変遷していったことなどは「証言の信用性を損なう」と指摘した。

中受刑者が捜査段階で、被害者の遺留品の特徴を供述したことについては、当初は曖昧だった供述が長時間の取り調べの中で具体的になっていっており、「取調官の反応を見ながら小刻みに供述した結果、実際の特徴にたどり着いたと見る余地もある」とした。

中受刑者は20年5月7日、雑木林で小杉さんを乱暴しようとして、頭や顔を鈍器で殴るなどして殺害した、として起訴された。

23年5月の1審判決は、目撃証言などから「受刑者が犯人であることが認められる」として、死刑求刑に対し無期懲役を言い渡した。24年12月の2審判決は「受刑者が犯人であることを認定するに足る証拠はない」と1審を破棄した。

「やっぱり」「解決したと思っていたのに」遺体発見現場の住民ら複雑
京都府警幹部「厳粛に受け止める」

京都府舞鶴市で府立高校1年だった小杉美穂さん=当時15歳=が殺害された事件から6年余り。遺体発見から11カ月後に殺人などの容疑で逮捕され、現在は別事件で服役中の中勝美受刑者(65)の無罪が確定する見通しになった。

現場周辺の住民らは2審が無罪だっただけに冷静に受け止める一方、「真相が分からないままでは安心できない」と複雑な表情を見せる人もいた。

小杉さんが通っていた京都府立東舞鶴高校浮島分校(舞鶴市)。土手敏通副校長は毎年命日には必ず事件現場で花を供え、手を合わせてきた。「真相が早く明らかになることを願います。小杉さんの冥福をお祈りします」と言葉少なに語った。

事件は地域社会を不安に陥れただけに、当時、現場近くの朝来区長協議会会長だった堀口和男さん(67)=同市大波下=は防犯活動などに力を入れた。「地元住民の多くは『事件は解決した』という思いだったので、複雑な気持ち。事件の真相は何だったのか。分からないままでは、安心できない」と心境を語った。

事件の捜査は直接証拠がなく難航。「状況証拠の積み重ねだけで重大犯罪を立証するという極めて困難な作業」(当時の捜査幹部)だった。京都地検は「コメントしない」としたが、府警の捜査幹部は「やるべきことは全てやった。結果は厳粛に受け止める」としたものの、その表情には悔しさがにじんだ。

一方、逆転無罪とした2審で中受刑者の主任弁護人を務めた小坂井久弁護士(大阪弁護士会)は2014年7月10日、大阪市内で記者会見し、「刑事裁判の原則にのっとった極めて的確な判断。思ったよりも結果が出るのが早く、検察側の上告が無理筋だったことを表しているのではないか」と述べた。

小坂井弁護士によると、10日午後3時すぎ、大阪拘置所で中受刑者と面会したが、時折笑顔をみせ、「無実が証明されてほっとしている。犯人扱いした警察と検察に強い憤りを感じている」と話したという。

その後

本事件の被告である中 勝美は、2013年5月28日、大阪市西成区内のコンビニにてアダルト雑誌を万引きしたとして窃盗容疑で現行犯逮捕された。

舞鶴高1殺害無罪の男、西成でアダルト雑誌万引き逮捕

京都府舞鶴市で平成20年5月、府立高校1年の小杉美穂さん=当時(15)=が殺害された事件で殺人罪などに問われ、2審・大阪高裁で無罪判決を受けた大阪市西成区梅南、無職、中勝美被告(64)=検察側が上告=が、自宅近くのコンビニでアダルト雑誌1冊を万引したとして、窃盗容疑で現行犯逮捕された。
中容疑者は「家から持ってきた」と否認している。
28日午前7時45分ごろ、大阪市西成区旭の「ファミリーマート花園町店」で、アダルト雑誌1冊(680円相当)を万引した。
中容疑者が成人雑誌コーナーで雑誌を手に取り、シャツの下に隠して店外に出るのを、控室で防犯カメラ映像を見ていたアルバイトの女性店員(34)が発見。店内の男性客とともに店のすぐ近くの路上で中容疑者を取り押さえ、通報で駆けつけた署員に引き渡した。
中容疑者が万引したのは人妻を特集した雑誌だった。
小杉さん殺害事件をめぐっては、大阪高裁が2012年12月、「被告を犯人とするには合理的疑いが残る」として、中容疑者を無期懲役とした1審京都地裁判決を破棄、逆転無罪を言い渡している。

小杉さんの冥福、市民ら祈る。舞鶴・女子高生殺人事件5年(2013年5月)

舞鶴市で平成20年に高校1年の小杉美穂さん=当時15歳=が殺害された事件から5年目となる7日、小杉さんの遺体が見つかった同市朝来中の現場には、数多くの市民らが訪れ、小杉さんの冥福を祈った。

午後には、小杉さんが通っていた府立東舞鶴高校の竹内浩校長らも姿を見せ、献花台に花束を供え手を合わせた。

現場近くに設けられた献花台には、菊など数多くの花束が供えられた。竹内校長は「悲しい事件から5年が経過したが、事件の記憶が風化することのないようお参りをさせてもらった。真相解明を願うとともに、引き続き生徒たちの安全・安心を守っていきたい」と話した。

一方、小杉さんを殺害したとして、殺人などの罪に問われた中勝美(64)の控訴審で、大阪高裁は2012年12月、無罪を言い渡した。同月、大阪高検が上告している。

類似裁判

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