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+ | 元素は原子の種類を表すがそれは原子核の違い、すなわち[[核種]]の違いのうち[[陽子]]の数の違いによる分類である。原子核を構成する陽子および[[中性子]]の総数により[[質量数]]が異なり、陽子の数により[[原子番号]]が異なる。したがって、原子番号が1の[[軽水素]]原子、[[重水素]]原子、[[三重水素]]原子はいずれも同じ元素である[[水素]]に属するが質量数が異なる[[同位体]]と呼ばれるグループを形成する。 | ||
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+ | 分かりやすく言うと、元素は[[周期表]]の枠である。各枠には[[原子番号]]に対応する元素が一つずつあてはめられていて、安定な同位体の存在確率に基づく原子量が記載されている。安定な核種がない場合には代表的な核種の質量数が記載されている。すなわち、[[周期表]]は『元素の周期表』であって、決して原子の周期表や単体の周期表ではない。 | ||
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+ | 元素の歴史は万物の性質の根源を探究する歴史であり、古代の哲学者らは様々な物性が少数の基本的性質の混合により多様性を発現していると考察した。[[デモクリトス]]の説を別にすれば、原子や分子など物質の構造に関する探究はそれらよりも遅れて近世以降に発生・発展してきた。 | ||
+ | === 古代ギリシア === | ||
+ | 元素という言葉は後年に作られた為、ギリシア時代には存在しないが、ギリシャ哲学では万物の変化・流転は1大命題として扱われ、多くの哲学者により万物の構成要素として元素の概念が論ぜられた。 | ||
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+ | [[タレス]]は万物の根源に[[アルケー]]という呼名を与え[[水]]であるとした。その他、[[空気]]であると考えた人、[[火]]であると考えた人、[[土]]だと考えた人がおり、それぞれがアルケーであるという立場を採った。[[エンペドクレス]]はアルケーが、火・空気([[風]]とも)・水・土の4つの[[リゾーマタ]]からなるとする後世にいう四元素説を唱えた。[[プラトン]]はこれに[[階層]]的な概念を導入し、土が[[正六面体]]でもっとも重く、他のリゾーマタは[[三角形]]からなる[[正多面体]]で、火が最も軽いリゾーマタであり、これら[[四大元素]]はそれぞれの重さに応じて運動し互いに入り混じると考えた。なおプラトンの作かどうか疑問視されている著書では、四つのリゾーマタに加え、天の上層を構成するとしてアイテールが導入されている。[[紀元前4世紀|紀元前350年]]ごろ、[[アリストテレス]]は四元素説を継承した上で、四つのリゾーマタは相互に変換できるものと考え、また天上にのみ存在するアイテールを四つのリゾーマタの上位リゾーマタとして立てた。[[アイテル]]を語源とするアイテールは、のちの自然学における第五元素([[ラテン語]]のquinta essentia。なお英語のquintessence真髄の意の語源でもある)とされ、宇宙を満たす媒質[[エーテル]]の構想へとつながっていく。アリストテレスと同時代の[[デモクリトス]]は、無から発生し、再び消滅する究極微粒子(アトム)から万物が構築され、その構造的変化が物性の変化となると論じたが、彼の[[原子論#ギリシャ哲学のアトム論|アトム論]]は発展を見ることは無く、ヨーロッパにおいては四元素説が[[スコラ哲学]]へと継承されてゆくことになる<ref>四大、『世界大百科事典』、CD-ROM版、平凡社</ref>。 | ||
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+ | === 古代インド === | ||
+ | 古代インドの[[哲学]]者・思想家[[アジタ・ケーサカムバリン]]([[パーリ語]]読みの人名。仏典の中に仏教より劣る思想家・哲学者として紹介されているものとしてしか名前が残ってないので正確な言い方・発音は不明)は「『存在』を構成するものは、地・水・火・風の四大であり、この四大以外にはない」という論を主張した。また、[[パクダ・カッチャーヤナ]]は「人間のからだは[[地]]・水・火・風・[[苦]]・[[楽]]・[[霊魂]]の7つから構成されている」、[[マッカリ・ゴーサーラ]]は「生きているものは、地・水・火・風・苦・楽・霊魂・[[虚空]]・[[得]]・[[失]]・[[生]]・[[死]]の12の要素から構成される」と主張した。 | ||
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+ | === 古代中国 === | ||
+ | 世の中は「[[陰]]」と「[[陽]]」(つまり「[[闇]]」と「[[光]]」)から成り立っていて([[陰陽思想]])、更に「木」「火」「土」「金」「水」の5要素([[五行思想|五行]])に分かれていると考えた([[陰陽五行思想|陰陽五行説]])。[[インド哲学]]の諸論争や[[古代]][[中国]]の[[陰陽五行説]]をみてわかる通り「物質を構成する基本的な成分がある」、という考え方は「『世界』というものに対する人間の一つの哲学的・思想的・宗教的態度」でもある([[西洋科学]]の実験の積み重ねを否定するものではない。ようするに実験の積み重ねが不十分な時点での西洋科学の「元素」説は「事実」より「哲学」や「思想」、「世界論・宇宙論・世界観」に近いと言う事)。 | ||
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+ | === 密教 === | ||
+ | 古代インドから伝わった仏教・密教でも万物の構成要素として、四大(「地」・「水」・「火」・「風」)、[[五大]](マウアラカキヤ)は四大に「[[空 (仏教)|空]](くう)」が加えられ、六大は五大に「[[識]]」が加わる。 | ||
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+ | === 近世 === | ||
+ | * [[1662年]]、[[ロバート・ボイル]]は[[実験]]によってそれ以上分割できない物質が元素であると[[定義]]した。[[硫黄]]・[[水銀]]・[[銅]]・[[銀]]などが元素と考えられた。 | ||
+ | * [[1774年]]、[[アントワーヌ・ラヴォアジエ]]が[[ペリカン]]と称するガラス容器中に封じた水を101日間加熱し続けて、水は土になり得ないことを証明した。これにより、アリストテレス以来の元素変換の考えが打ち破られた。 | ||
+ | * [[1789年]]、[[ラヴォアジエ]]が当時知られていた33種の[[単体]]を分類して元素とし、具体的な元素概念を確立した。約30種類の元素が知られるようになった。 | ||
+ | * [[1813年]]、[[イェンス・ベルセリウス]]が[[元素記号]]を考案した。 | ||
+ | * [[1869年]]、[[ドミトリ・メンデレーエフ]]により[[周期表]]が発表された。 | ||
+ | * [[1875年]]、メンデレーエフが[[ガリウム]]、[[ゲルマニウム]]、[[スカンジウム]]の存在とその性質を予言。 | ||
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+ | === 元素発見の推移 === | ||
+ | [[化学元素発見の年表]] | ||
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+ | * [[1766年]] - [[水素]]([[ヘンリー・キャヴェンディッシュ|キャヴェンディッシュ]]) | ||
+ | * [[1772年]] - [[酸素]]([[カール・ウィルヘルム・シューレ|シューレ]]) | ||
+ | * [[1774年]] - [[塩素]]、[[バリウム]]、[[マンガン]](シューレ) | ||
+ | * [[1778年]] - [[モリブデン]](シューレ) | ||
+ | * [[1781年]] - [[タングステン]](シューレ) | ||
+ | * [[1782年]] - [[テルル]](E.J.ミュラー) | ||
+ | * [[1817年]] - [[セレン]](イェンス・ベルセリウス) | ||
+ | * [[1824年]] - [[ジルコニウム]](ベルセリウス) | ||
+ | * [[1828年]] - [[タンタル]](ベルセリウス) | ||
+ | * [[1860年]] - [[セシウム]]([[ローベルト・ブンゼン|ブンゼン]]) | ||
+ | * [[1861年]] - [[ルビジウム]](ブンゼン) | ||
+ | * [[1894年]] - [[アルゴン]]([[ジョン・ウィリアム・ストラット|レイリー卿]]と[[ウィリアム・ラムゼー|ラムゼー]]) | ||
+ | * [[1898年]] - [[ネオン]]、[[クリプトン]]、[[キセノン]](ラムゼーと[[モーリス・トラヴァース|トラヴァース]]) | ||
+ | * [[1898年]] - [[ラジウム]]、[[ポロニウム]]([[マリ・キュリー]]と[[ピエール・キュリー]]) | ||
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+ | === 現在 === | ||
+ | 約118種類の元素が知られている。[[元素の番号順一覧]]、[[周期表]]を参照のこと。 | ||
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+ | == 表記 == | ||
+ | element(エレメント)は[[ラテン語]]のelementumに由来しており、13世紀には「世の中の根元をなす物」といった元素とほぼ同義で用いられていた。elementumの由来は、諸説あるがはっきりとしていない。 | ||
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+ | 元素を表すには[[元素記号]]が使われる。これは原子を表すためにも使われる。例えば、[[水]]を構成する元素は[[酸素]]Oと水素Hである。 | ||
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+ | 元素の性質は[[最外殻電子]](価電子)に大きく影響される為、同様な性質を持つ元素は[[元素の族]](元素群)は[[周期表]]においても、族(周期表の列)や系列として纏められている。 | ||
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+ | [[有機化学]]においては、[[水素]]と[[炭素]]以外の元素を'''ヘテロ元素'''('''ヘテロ原子''')と呼ぶ。水素と炭素とが特別に扱われるのは、炭素は任意の長さに鎖構造を伸ばすことが出来、任意の場所で分岐や環構造を形成することも可能な性質を持つので、[[有機化合物]]は[[炭化水素]]を分子構造の基本骨格として扱う為である。 | ||
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+ | === 日本語表記 === | ||
+ | 元素名の日本語表記については[[学術用語集]]化学編に定められている。原則としてIUPAC名を「化合物名日本語表記の原則」の「化合物名の字訳標準表」の規則に従いアルファベットの綴り字を機械的にカタカナと置き換えて日本語化する(訳字)。それ故、必ずしも発音に忠実なカタカナ表記にはならない。また、学術用語集の初版制定時にすでに日本語化しているものと、すでに英語以外の言語を基に訳字された用語はそのまま固定するように定めたので、英語以外の言語を語源とする日本語表記も存在する。次に示す。 | ||
+ | * [[水素]] - すでに日本語化、Hydrogen (英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ホウ素]] - すでに日本語化、Boron (英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[炭素]] - すでに日本語化、Carbon (英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[窒素]] - すでに日本語化、Nitrogen(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[酸素]] - すでに日本語化、Oxygen(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[フッ素]] - すでに日本語化、Fluorine(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ケイ素]] - すでに日本語化、Sillicon(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[リン]] - すでに日本語化、Phosphorus(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[硫黄]] -すでに日本語化、 Sulfur(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[塩素]] - すでに日本語化、Chlorine(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ナトリウム]] - Natrium(ドイツ語), Sodium(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[カリウム]] - Kalium(ドイツ語), Potassium(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[チタン]] - Titan(ドイツ語), Titanium(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[クロム]] - Chrom(ドイツ語), Chromium(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[マンガン]] - Mangan(ドイツ語), Manganese(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[鉄]] - すでに日本語化、Iron(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[銅]] - すでに日本語化、Copper(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[亜鉛]] - すでに日本語化、Zinc(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ヒ素]] - すでに日本語化、Arsenic(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[セレン]] - Selen(ドイツ語), Selenium(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[臭素]] - すでに日本語化、Bromine(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ニオブ]] - Niob(ドイツ語), Niobium(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[モリブデン]] - Molybdän(ドイツ語)、Molybdenum(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[銀]] - すでに日本語化、Silver(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[スズ]] - すでに日本語化、 Tin(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[アンチモン]] - Antimon(ドイツ語)、Antimony(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[テルル]] - Tellur(ドイツ語)、Tellurium(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ヨウ素]] - すでに日本語化、Iodine(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ランタン]] - Lanthan(ドイツ語)、Lanthanum(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ネオジム]] - Neodym(ドイツ語)、Neodymium(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[タンタル]] - Tantal(ドイツ語)、Tantalum(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[白金]] - すでに日本語化、Platinum(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[金]] - すでに日本語化、Gold(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[水銀]] - すでに日本語化、Mercury(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[鉛]] - 元来日本語、Lead(英語、IUPAC名) | ||
+ | * [[ウラン]] - Uran(ドイツ語), Uranium(英語、IUPAC名) | ||
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+ | == 元素の分布・存在比 == | ||
+ | 元素の分布には偏りがあり、その存在比は範囲によって大きく異なる。 | ||
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+ | === 地球での元素の分布・存在比 === | ||
+ | [[地球化学]]においては、[[地殻]]を構成する主たる元素を主要元素(しゅようげんそ)、それ以外の元素を[[微量元素]]と呼ぶ。古典的な研究成果として[[クラーク数]]が広く知られているが、最近の研究ではクラーク以外の研究成果が利用される場合が多い。 | ||
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+ | 比較的[[比重]]が小さい化合物を形成する元素は[[地殻]]あるいは[[大気|大気圏]]や[[水圏]]に分布する。地球の内部では岩石成分(ケイ酸塩)を主とする[[マントル]]と[[鉄]]を主成分とする核とから構成されるので比重の大きい元素は地球内部に多く含まれると推定されている。[[地球]]内部ではマントル対流が存在する為、核付近の成分の一部は対流作用により地殻付近まで輸送されるので、中心核付近に多い元素では、全体のごく一部は火山噴出物や鉱脈として地表付近にも分布することになる。 | ||
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+ | === 宇宙での元素の存在比 === | ||
+ | {{main|宇宙の元素合成}} | ||
+ | [[宇宙]]の元素の存在量とその比率は、[[宇宙論]]により推定され、天文学的観測により裏付られている。[[ビッグバン]]で始まった原初の宇宙で生成されたのは、ほとんど[[水素]]と[[ヘリウム]]だけであった。それ以外の元素のうち、鉄までの軽い元素は[[恒星]]が輝く際の[[原子核融合|核融合]]で生成され、鉄より重い元素は主に[[超新星爆発]]の際に生成された。 | ||
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+ | == 元素変換 == | ||
+ | 超重元素の場合には、原子核が不安定であり自己崩壊して安定な元素に変化する。また核反応、核融合などにより変換が起こることが知られている。 | ||
+ | <!-- 特許の出願と審査は別であり、パラジウム電極上での常温核融合は今ただ中性子の発生が確認されていないため割愛する--><!--またパラジウム多層膜に重水素通す手法によりCs([[セシウム]]、133)が、Pr([[プラセオジム]]、141)に、またSr([[ストロンチウム]]、88)がMo([[モリブデン]]、96)に変わることが三菱工業により[[2002年]]、報告されている。--> | ||
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+ | == 元素鉱物 == | ||
+ | [[鉱物学]]において、単一の元素あるいは合金からなる[[鉱物]]のことを'''元素鉱物'''(げんそこうぶつ、elemental mineral)という。元素名と区別するため、「自然」(native)を付けて自然金(native gold)、自然蒼鉛(native bismuth)などと呼ぶ。 | ||
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+ | == 出典 == | ||
+ | <references /> | ||
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+ | == 関連項目 == | ||
+ | {{Wiktionarypar|元素}} | ||
+ | {{ウィキポータルリンク|化学|[[Image:Nuvola apps edu science.png|32px|ウィキポータル 化学]]}} | ||
+ | * [[化学]] | ||
+ | * [[物理学]] | ||
+ | * [[人工放射性元素]] | ||
+ | * [[元素の番号順一覧]] | ||
+ | * [[未発見元素の一覧]] | ||
+ | * [[架空の物質一覧]] | ||
+ | * [[周期表]] | ||
+ | * [[鉱物学]]、[[鉱物]]、[[鉱物の一覧]] | ||
+ | |||
+ | [[Category:元素|*]] | ||
+ | [[Category:化学|けんそ]] | ||
+ | [[Category:科学史|けんそ]] | ||
+ | [[Category:地球科学|けんそ]] | ||
+ | [[Category:アリストテレス|けんそ]] | ||
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+ | [[af:Chemiese element]] | ||
+ | [[als:Chemisches Element]] | ||
+ | [[ar:عنصر كيميائي]] | ||
+ | [[ast:Elementu químicu]] | ||
+ | [[bg:Химичен елемент]] | ||
+ | [[bn:মৌলিক পদার্থ]] | ||
+ | [[br:Elfenn gimiek]] | ||
+ | [[bs:Hemijski element]] | ||
+ | [[ca:Element químic]] | ||
+ | [[cs:Chemický prvek]] | ||
+ | [[cv:Хими элеменчĕсем]] | ||
+ | [[cy:Elfen gemegol]] | ||
+ | [[da:Grundstof]] | ||
+ | [[de:Chemisches Element]] | ||
+ | [[el:Χημικό στοιχείο]] | ||
+ | [[en:Chemical element]] | ||
+ | [[eo:Kemia elemento]] | ||
+ | [[es:Elemento químico]] | ||
+ | [[et:Keemiline element]] | ||
+ | [[eu:Elementu kimiko]] | ||
+ | [[fa:عنصر شیمیایی]] | ||
+ | [[fi:Alkuaine]] | ||
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+ | [[ia:Elemento chimic]] | ||
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+ | [[ka:ქიმიური ელემენტი]] | ||
+ | [[ko:화학 원소]] | ||
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+ | [[lv:Ķīmiskais elements]] | ||
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+ | [[ml:മൂലകം]] | ||
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+ | [[nds:Cheemsch Element]] | ||
+ | [[nl:Chemisch element]] | ||
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+ | [[pt:Elemento químico]] | ||
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+ | [[ro:Element chimic]] | ||
+ | [[ru:Химический элемент]] | ||
+ | [[sco:Element]] | ||
+ | [[sh:Kemijski element]] | ||
+ | [[simple:Chemical element]] | ||
+ | [[sk:Chemický prvok]] | ||
+ | [[sl:Kemični element]] | ||
+ | [[sr:Хемијски елемент]] | ||
+ | [[su:Unsur kimia]] | ||
+ | [[sv:Grundämne]] | ||
+ | [[ta:தனிமம்]] | ||
+ | [[th:ธาตุเคมี]] | ||
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+ | [[tr:Element]] | ||
+ | [[uk:Хімічні елементи]] | ||
+ | [[uz:Kimyoviy unsur]] | ||
+ | [[vi:Nguyên tố hóa học]] | ||
+ | [[yo:Àpilẹ̀sẹ̀]] | ||
+ | [[zh:元素]] | ||
+ | [[zh-min-nan:Hoà-ha̍k goân-sò͘]] | ||
+ | [[zh-yue:元素]] |
2007年8月24日 (金) 20:32時点における版
元素(げんそ、element)とは化学物質を構成する基礎的な成分(要素)である。
目次
元素と原子の違い
酸素と窒素とはいずれも原子核と電子とが形成する構造である原子から成り立っている。一方、等しく原子核と電子とから構成されるもののその性質は異なるることから酸素と窒素とは異なる元素として識別される。言い換えるならば、原子は構造的な概念であるのに対して元素は特性の違いを示す概念である。
元素は原子の種類を表すがそれは原子核の違い、すなわち核種の違いのうち陽子の数の違いによる分類である。原子核を構成する陽子および中性子の総数により質量数が異なり、陽子の数により原子番号が異なる。したがって、原子番号が1の軽水素原子、重水素原子、三重水素原子はいずれも同じ元素である水素に属するが質量数が異なる同位体と呼ばれるグループを形成する。
分かりやすく言うと、元素は周期表の枠である。各枠には原子番号に対応する元素が一つずつあてはめられていて、安定な同位体の存在確率に基づく原子量が記載されている。安定な核種がない場合には代表的な核種の質量数が記載されている。すなわち、周期表は『元素の周期表』であって、決して原子の周期表や単体の周期表ではない。
歴史
元素の歴史は万物の性質の根源を探究する歴史であり、古代の哲学者らは様々な物性が少数の基本的性質の混合により多様性を発現していると考察した。デモクリトスの説を別にすれば、原子や分子など物質の構造に関する探究はそれらよりも遅れて近世以降に発生・発展してきた。
古代ギリシア
元素という言葉は後年に作られた為、ギリシア時代には存在しないが、ギリシャ哲学では万物の変化・流転は1大命題として扱われ、多くの哲学者により万物の構成要素として元素の概念が論ぜられた。
タレスは万物の根源にアルケーという呼名を与え水であるとした。その他、空気であると考えた人、火であると考えた人、土だと考えた人がおり、それぞれがアルケーであるという立場を採った。エンペドクレスはアルケーが、火・空気(風とも)・水・土の4つのリゾーマタからなるとする後世にいう四元素説を唱えた。プラトンはこれに階層的な概念を導入し、土が正六面体でもっとも重く、他のリゾーマタは三角形からなる正多面体で、火が最も軽いリゾーマタであり、これら四大元素はそれぞれの重さに応じて運動し互いに入り混じると考えた。なおプラトンの作かどうか疑問視されている著書では、四つのリゾーマタに加え、天の上層を構成するとしてアイテールが導入されている。紀元前350年ごろ、アリストテレスは四元素説を継承した上で、四つのリゾーマタは相互に変換できるものと考え、また天上にのみ存在するアイテールを四つのリゾーマタの上位リゾーマタとして立てた。アイテルを語源とするアイテールは、のちの自然学における第五元素(ラテン語のquinta essentia。なお英語のquintessence真髄の意の語源でもある)とされ、宇宙を満たす媒質エーテルの構想へとつながっていく。アリストテレスと同時代のデモクリトスは、無から発生し、再び消滅する究極微粒子(アトム)から万物が構築され、その構造的変化が物性の変化となると論じたが、彼のアトム論は発展を見ることは無く、ヨーロッパにおいては四元素説がスコラ哲学へと継承されてゆくことになる[1]。
古代インド
古代インドの哲学者・思想家アジタ・ケーサカムバリン(パーリ語読みの人名。仏典の中に仏教より劣る思想家・哲学者として紹介されているものとしてしか名前が残ってないので正確な言い方・発音は不明)は「『存在』を構成するものは、地・水・火・風の四大であり、この四大以外にはない」という論を主張した。また、パクダ・カッチャーヤナは「人間のからだは地・水・火・風・苦・楽・霊魂の7つから構成されている」、マッカリ・ゴーサーラは「生きているものは、地・水・火・風・苦・楽・霊魂・虚空・得・失・生・死の12の要素から構成される」と主張した。
古代中国
世の中は「陰」と「陽」(つまり「闇」と「光」)から成り立っていて(陰陽思想)、更に「木」「火」「土」「金」「水」の5要素(五行)に分かれていると考えた(陰陽五行説)。インド哲学の諸論争や古代中国の陰陽五行説をみてわかる通り「物質を構成する基本的な成分がある」、という考え方は「『世界』というものに対する人間の一つの哲学的・思想的・宗教的態度」でもある(西洋科学の実験の積み重ねを否定するものではない。ようするに実験の積み重ねが不十分な時点での西洋科学の「元素」説は「事実」より「哲学」や「思想」、「世界論・宇宙論・世界観」に近いと言う事)。
密教
古代インドから伝わった仏教・密教でも万物の構成要素として、四大(「地」・「水」・「火」・「風」)、五大(マウアラカキヤ)は四大に「空(くう)」が加えられ、六大は五大に「識」が加わる。
近世
- 1662年、ロバート・ボイルは実験によってそれ以上分割できない物質が元素であると定義した。硫黄・水銀・銅・銀などが元素と考えられた。
- 1774年、アントワーヌ・ラヴォアジエがペリカンと称するガラス容器中に封じた水を101日間加熱し続けて、水は土になり得ないことを証明した。これにより、アリストテレス以来の元素変換の考えが打ち破られた。
- 1789年、ラヴォアジエが当時知られていた33種の単体を分類して元素とし、具体的な元素概念を確立した。約30種類の元素が知られるようになった。
- 1813年、イェンス・ベルセリウスが元素記号を考案した。
- 1869年、ドミトリ・メンデレーエフにより周期表が発表された。
- 1875年、メンデレーエフがガリウム、ゲルマニウム、スカンジウムの存在とその性質を予言。
元素発見の推移
- 1766年 - 水素(キャヴェンディッシュ)
- 1772年 - 酸素(シューレ)
- 1774年 - 塩素、バリウム、マンガン(シューレ)
- 1778年 - モリブデン(シューレ)
- 1781年 - タングステン(シューレ)
- 1782年 - テルル(E.J.ミュラー)
- 1817年 - セレン(イェンス・ベルセリウス)
- 1824年 - ジルコニウム(ベルセリウス)
- 1828年 - タンタル(ベルセリウス)
- 1860年 - セシウム(ブンゼン)
- 1861年 - ルビジウム(ブンゼン)
- 1894年 - アルゴン(レイリー卿とラムゼー)
- 1898年 - ネオン、クリプトン、キセノン(ラムゼーとトラヴァース)
- 1898年 - ラジウム、ポロニウム(マリ・キュリーとピエール・キュリー)
現在
約118種類の元素が知られている。元素の番号順一覧、周期表を参照のこと。
表記
element(エレメント)はラテン語のelementumに由来しており、13世紀には「世の中の根元をなす物」といった元素とほぼ同義で用いられていた。elementumの由来は、諸説あるがはっきりとしていない。
元素を表すには元素記号が使われる。これは原子を表すためにも使われる。例えば、水を構成する元素は酸素Oと水素Hである。
元素の性質は最外殻電子(価電子)に大きく影響される為、同様な性質を持つ元素は元素の族(元素群)は周期表においても、族(周期表の列)や系列として纏められている。
有機化学においては、水素と炭素以外の元素をヘテロ元素(ヘテロ原子)と呼ぶ。水素と炭素とが特別に扱われるのは、炭素は任意の長さに鎖構造を伸ばすことが出来、任意の場所で分岐や環構造を形成することも可能な性質を持つので、有機化合物は炭化水素を分子構造の基本骨格として扱う為である。
日本語表記
元素名の日本語表記については学術用語集化学編に定められている。原則としてIUPAC名を「化合物名日本語表記の原則」の「化合物名の字訳標準表」の規則に従いアルファベットの綴り字を機械的にカタカナと置き換えて日本語化する(訳字)。それ故、必ずしも発音に忠実なカタカナ表記にはならない。また、学術用語集の初版制定時にすでに日本語化しているものと、すでに英語以外の言語を基に訳字された用語はそのまま固定するように定めたので、英語以外の言語を語源とする日本語表記も存在する。次に示す。
- 水素 - すでに日本語化、Hydrogen (英語、IUPAC名)
- ホウ素 - すでに日本語化、Boron (英語、IUPAC名)
- 炭素 - すでに日本語化、Carbon (英語、IUPAC名)
- 窒素 - すでに日本語化、Nitrogen(英語、IUPAC名)
- 酸素 - すでに日本語化、Oxygen(英語、IUPAC名)
- フッ素 - すでに日本語化、Fluorine(英語、IUPAC名)
- ケイ素 - すでに日本語化、Sillicon(英語、IUPAC名)
- リン - すでに日本語化、Phosphorus(英語、IUPAC名)
- 硫黄 -すでに日本語化、 Sulfur(英語、IUPAC名)
- 塩素 - すでに日本語化、Chlorine(英語、IUPAC名)
- ナトリウム - Natrium(ドイツ語), Sodium(英語、IUPAC名)
- カリウム - Kalium(ドイツ語), Potassium(英語、IUPAC名)
- チタン - Titan(ドイツ語), Titanium(英語、IUPAC名)
- クロム - Chrom(ドイツ語), Chromium(英語、IUPAC名)
- マンガン - Mangan(ドイツ語), Manganese(英語、IUPAC名)
- 鉄 - すでに日本語化、Iron(英語、IUPAC名)
- 銅 - すでに日本語化、Copper(英語、IUPAC名)
- 亜鉛 - すでに日本語化、Zinc(英語、IUPAC名)
- ヒ素 - すでに日本語化、Arsenic(英語、IUPAC名)
- セレン - Selen(ドイツ語), Selenium(英語、IUPAC名)
- 臭素 - すでに日本語化、Bromine(英語、IUPAC名)
- ニオブ - Niob(ドイツ語), Niobium(英語、IUPAC名)
- モリブデン - Molybdän(ドイツ語)、Molybdenum(英語、IUPAC名)
- 銀 - すでに日本語化、Silver(英語、IUPAC名)
- スズ - すでに日本語化、 Tin(英語、IUPAC名)
- アンチモン - Antimon(ドイツ語)、Antimony(英語、IUPAC名)
- テルル - Tellur(ドイツ語)、Tellurium(英語、IUPAC名)
- ヨウ素 - すでに日本語化、Iodine(英語、IUPAC名)
- ランタン - Lanthan(ドイツ語)、Lanthanum(英語、IUPAC名)
- ネオジム - Neodym(ドイツ語)、Neodymium(英語、IUPAC名)
- タンタル - Tantal(ドイツ語)、Tantalum(英語、IUPAC名)
- 白金 - すでに日本語化、Platinum(英語、IUPAC名)
- 金 - すでに日本語化、Gold(英語、IUPAC名)
- 水銀 - すでに日本語化、Mercury(英語、IUPAC名)
- 鉛 - 元来日本語、Lead(英語、IUPAC名)
- ウラン - Uran(ドイツ語), Uranium(英語、IUPAC名)
元素の分布・存在比
元素の分布には偏りがあり、その存在比は範囲によって大きく異なる。
地球での元素の分布・存在比
地球化学においては、地殻を構成する主たる元素を主要元素(しゅようげんそ)、それ以外の元素を微量元素と呼ぶ。古典的な研究成果としてクラーク数が広く知られているが、最近の研究ではクラーク以外の研究成果が利用される場合が多い。
比較的比重が小さい化合物を形成する元素は地殻あるいは大気圏や水圏に分布する。地球の内部では岩石成分(ケイ酸塩)を主とするマントルと鉄を主成分とする核とから構成されるので比重の大きい元素は地球内部に多く含まれると推定されている。地球内部ではマントル対流が存在する為、核付近の成分の一部は対流作用により地殻付近まで輸送されるので、中心核付近に多い元素では、全体のごく一部は火山噴出物や鉱脈として地表付近にも分布することになる。
宇宙での元素の存在比
宇宙の元素の存在量とその比率は、宇宙論により推定され、天文学的観測により裏付られている。ビッグバンで始まった原初の宇宙で生成されたのは、ほとんど水素とヘリウムだけであった。それ以外の元素のうち、鉄までの軽い元素は恒星が輝く際の核融合で生成され、鉄より重い元素は主に超新星爆発の際に生成された。
元素変換
超重元素の場合には、原子核が不安定であり自己崩壊して安定な元素に変化する。また核反応、核融合などにより変換が起こることが知られている。
元素鉱物
鉱物学において、単一の元素あるいは合金からなる鉱物のことを元素鉱物(げんそこうぶつ、elemental mineral)という。元素名と区別するため、「自然」(native)を付けて自然金(native gold)、自然蒼鉛(native bismuth)などと呼ぶ。
出典
- ↑ 四大、『世界大百科事典』、CD-ROM版、平凡社
関連項目
als:Chemisches Element ar:عنصر كيميائي ast:Elementu químicu bg:Химичен елемент bn:মৌলিক পদার্থ br:Elfenn gimiek bs:Hemijski element ca:Element químic cs:Chemický prvek cv:Хими элеменчĕсем cy:Elfen gemegol da:Grundstof de:Chemisches Element el:Χημικό στοιχείοeo:Kemia elemento es:Elemento químico et:Keemiline element eu:Elementu kimiko fa:عنصر شیمیایی fi:Alkuaine fo:Frumevni fr:Élément chimique fur:Element chimic ga:Dúil cheimiceach gl:Elemento químico he:יסוד כימי hr:Kemijski element ht:Eleman chimik hu:Kémiai elem ia:Elemento chimic id:Unsur kimia io:Kemia elemento is:Frumefni it:Elemento chimico jbo:selratni ka:ქიმიური ელემენტი ko:화학 원소 la:Elementum lmo:Elemeent chímich lt:Cheminis elementas lv:Ķīmiskais elements mk:Хемиски елемент ml:മൂലകം ms:Unsur kimia nds:Cheemsch Element nl:Chemisch element nn:Grunnstoff no:Grunnstoff nov:Elemente nrm:Êlément pl:Pierwiastek chemiczny pt:Elemento químico qu:Qallawa ro:Element chimic ru:Химический элемент sco:Element sh:Kemijski element simple:Chemical element sk:Chemický prvok sl:Kemični element sr:Хемијски елемент su:Unsur kimia sv:Grundämne ta:தனிமம் th:ธาตุเคมี tl:Elementong kimikal tr:Element uk:Хімічні елементи uz:Kimyoviy unsur vi:Nguyên tố hóa học yo:Àpilẹ̀sẹ̀ zh:元素 zh-min-nan:Hoà-ha̍k goân-sò͘ zh-yue:元素