竹の森遠く
『竹の森遠く』 (So Far from the Bamboo Grove) は、日系米国人作家のヨーコ・カワシマ・ワトキンズによる自伝的小説。1986年にアメリカで出版された。2005年に韓国でも『ヨーコ物語、ヨーコの話』として訳出されている(後に発売中止)。日本語版は出版されていない。
作者のヨーコ自身が11歳だった第二次世界大戦の終戦時に体験した朝鮮半島北部の羅南からソウル、釜山を経て日本へ帰国する際の、日本人が韓国人に虐待されたり、女性が強姦されたりする悲惨な状況を描いている。また帰国後の、悲惨な状況を描いている。戦争の悲惨さを訴える資料として、アメリカでは優良図書に選ばれ中学校用の教材として多くの学校で使用されている。
著者について
本書の著者ヨーコ・カワシマ・ワトキンズは、1934年満州生まれ。父親が日本の公務員として働いていた朝鮮・咸鏡北道で11歳まで過ごす。1945年日本の敗戦が濃厚になると、母親と姉とともに避難を開始し、ソウルを経由して日本へ逃れる。離れ離れになった兄とも後に再会を果たす。1976年になってヨーコは当時の逃避の詳細を兄に問い、その様子を1986年に本書にまとめた。この物語の続編に「My Brother, My Sister, and I」がある。
韓国人・韓国系アメリカ人による反発
この本の記述に、終戦直後朝鮮人が日本人の女性や子供を迫害し、性的暴行を行っていたという部分が含まれることから韓国人・韓国系アメリカ人が反発、2007年現在ではこの本の教材使用禁止運動も行われており、活発なロビー活動が行われた。韓国領事館も米教育当局へ嘆願書を提出。これらの圧力を受けて、一部の地域では教材から取り除くなどの対応が行われている。
またこの抗議活動の過程で、作中にて父親の職業が「満洲で働く高級官僚」であり、後の本で「6年間という長期のシベリア抑留を受けていた」とされていることを根拠に、731部隊の幹部であったという根も葉もない疑惑をもちかけている(作者自身は、父親は満鉄社員であったと証言している)。
ただし韓国国内にも、(作品の後半部分は日本帰国後の苦しみを記述していることもあり)戦争の悲惨さを訴えている作品であり、あえて朝鮮人を悪く言っているわけではない、という声も一部見られる。
一部の韓国紙や韓国人団体は感情的にこの本が嘘だらけだと批判したが、根拠は提示されていない。著者は記者会見などでこの物語が真実であると証言している。