マクロスプラス
『マクロスプラス』(MACROSS PLUS)は1994年から1995年にかけて発売された日本のOVA。全4巻。SFアニメ『超時空要塞マクロス』に続くマクロスシリーズの一作品。1995年には劇場版『マクロスプラス MOVIE EDITION』も公開された。
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OVA[編集]
本作は『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の監督を務めた河森正治を中心に、マクロスの後継作としてテレビアニメ『マクロス7』と並行して企画・制作された。「第三次世界大戦を舞台に、最後の有人戦闘機で一騎打ちを果たす2人のパイロット」という原案を、マクロス世界に移して作品化したものである。
内容は『マクロス7』ほど前作と密接に繋がっておらず、続編というよりはサイドストーリー(或いは完全新作)に近いが、近未来の航空開発史をテーマに、恋愛やメカアクションなどマクロスならではの魅力がちりばめられている。本作で試みられたCGとセルアニメを積極的に融合させる演出は、当時の水準では極めて効果的であり、それまでのアニメにはない精密なビジュアルがファンの度肝を抜いた(ただしこの時点では、基本的にバーチャルアイドルの表現やデータ表示などあくまで「本物もCGで描かれている物をCGで描く」レベルに留まっており、メカ描写などへの本格的なCGの導入は次作『マクロス ゼロ』を待つ事になる)。板野一郎の手がける「板野サーカス」も、この作品のためにアメリカで模擬空中戦を体験したことから、戦闘機パイロットの皮膚感覚を伝えるよりリアルな描写へと進化している。
また、サブテーマとして仮想現実と人の心の関係が問われており、ヴァーチャルシンガー、シャロン・アップルの幻想的な歌唱シーンが印象に残る。これらのサントラを制作した菅野よう子は、本作がアニメ音楽デビュー作であったが、迫力と緊迫感を盛り上げる素晴らしい仕事を認められ、後の活躍への足掛かりとなった。また、本作は渡辺信一郎の監督デビュー作でもあり、河森、菅野、脚本家信本敬子らとのつながりは『カウボーイビバップ』に活かされることになる。
しかし本作が発売された当時のOVA市場は『ああっ女神さま』や『天地無用!』などの、いわゆる「萌えアニメ」が主流であり、本作はそれなりに好セールスだったものの、この2者や前作『超時空要塞マクロスII』より売れなかった(オリコン調べ)。
だがセリフを全て英語に吹き替えたインターナショナルバージョン(日本語字幕つき)が制作された点も、当時としては画期的であった。1990年代に入り北米で日本製アニメが注目され始めていたが、日本側が正規の海外版を企画するのはまだ珍しいケースであった。(しかしOVAに関してはテレビよりも海外展開がしやすいため1980年代ですでに積極的に海外版が制作されていた)。戦争よりも「航空機もの」という作風も手伝い、本作は『AKIRA』『攻殻機動隊』と共に三大日本アニメとして、海外のアニメファンにも浸透する人気作品となった。
なお、OVA第1巻のみに『超時空要塞マクロス』に原画で参加していた庵野秀明が原画で参加している。
MOVIE EDITION[編集]
基本構成はOVA版を踏襲し、シーンを再編集して若干のストーリー変更が行われている。本来はこの劇場版が原型であり、OVAは各巻ごとにエピソードを振り分けた形になっている。約20分の新作カットが加えられたが、とりわけ終盤の展開がボリュームアップされ、劇場版ならではの見所となっている。劇場公開は1995年10月7日、配給は松竹、上映時間115分。『マクロス7 銀河がオレを呼んでいる!』との併映で、「マクロスフェスティバル'95」と銘打たれ公開された。
ストーリー[編集]
2040年、人類の移民惑星エデンにあるニューエドワース基地では、統合宇宙軍の次期主力可変戦闘機の採用コンペティション「スーパー・ノヴァ計画」が行われていた。競合メーカー2社のテストパイロットは、かつて親友同士であったイサム・ダイソンとガルド・ゴア・ボーマン。幼馴染の二人は、7年前のある事件をきっかけに袂を分かっていた。
そして二人は、偶然にも幼なじみの音楽プロデューサー、ミュン・ファン・ローンと再会し、彼女を巡る三角関係でも火花を散らす。しかしミュンは、絶大な人気を誇る人工知能のヴァーチャル・アイドル、「シャロン・アップル」の秘密に深く関わっていた。
スタッフ[編集]
- 企画: 大西良昌、茂木隆、末吉博彦、宮田達夫、浅見勇
- 原作: スタジオぬえ、河森正治
- 総監督: 河森正治
- 監督: 渡辺信一郎
- 脚本: 信本敬子
- メカニックデザイン: 河森正治
- オリジナルキャラクターデザイン: 摩砂雪
- 舞台設定・メカニカル設定: 宮武一貴、河森正治
- 絵コンテ: 河森正治、渡辺信一郎、樋口真嗣(2話、3話、劇場版)
- 作画監督: 摩砂雪(夷倭世名義)(1話)、青野厚司(2話)、森山雄治(3話)、瀬尾康博(4話、劇場版)
- 特技監督: 板野一郎
- メカニック作画監督: 後藤雅巳(4話)
- コンサートシーンアニメーション: 森本晃司
- 美術監督: 針生勝文
- 撮影監督: 高橋明彦(1話)、安津畑隆(2~4話、劇場版)
- 音響監督: 三間雅文
- 色彩設定: 西香代子
- 編集: 掛須秀一
- 設定: 田中精美、佐山善則
- デジタルグラフィックデザイン: 佐山善則
- コンピュータグラフィック: LINKS Corporation
- CG制作協力: ビルドアップ
- 制作: トライアングルスタッフ
- 音楽: 菅野よう子(劇中曲「Information High」のみCMJK)
- 音楽監修: 溝口肇
- プロデューサー: 大西加紋、高梨実、津田義夫、井口亮、神田浩武
- 製作・著作:バンダイビジュアル、ビックウエスト、ヒーロー、毎日放送、小学館
主題歌[編集]
- 主題歌 「VOICES」
- 歌: 新居昭乃 作詞: 覚和歌子 作曲・編曲: 菅野よう子
- 劇場版ではエンディングテーマにも使用。本曲にはアレンジが異なるAcoustic、a cappellaバージョンがある。
- エンディングテーマ 「After, in the dark~Torch song」
- 歌: 山根麻衣、Gabriela Robin 作詞: Gabriela Robin、山根麻衣 作曲・編曲: 菅野よう子
- OVAのエンディングテーマ。
主要キャラクター[編集]
- イサム・ダイソン
- 声 - 山崎たくみ/英 - リー・ストーン
- 主人公。テストパイロットとして新星インダストリー社の新型可変戦闘機YF-19を担当する。ガルドとミュンとは旧知の仲。幼少より大空を飛ぶことに魅せられ、ハイスクール時代のある事件をきっかけに惑星エデンを離れ、統合軍にパイロットとして入隊。腕前は超一流であり、エースパイロットの証「ロイ・フォッカー勲章」を3度授章しているが、自由奔放な性格で軍規違反を繰り返し、前述勲章を3度とも剥奪されるほどの問題児でもある。統合軍内をたらい回しにされ、辺境でゼントラーディ残存兵と戦っていたが、前任者を何人も病院送りにした「じゃじゃ馬」YF-19のテストパイロットとしてエデンへと戻ってきた。フルネームはイサム・アルヴァ・ダイソン。階級は中尉。2015年3月27日生まれの24歳。
- ガルド・ゴア・ボーマン
- 声 - 石塚運昇/英 - リチャード・ジョージ
- ゼネラル・ギャラクシー社の開発主任兼テストパイロット。新型可変戦闘機YF-21を担当する。沈着冷静だが、イサムとは意地を張りあうライバル同士。ゼントラーディ人と地球人の共存により生まれた混血児(いわゆるピースチルドレン)で、遺伝により明晰な頭脳と屈強な肉体を具えている。しかし、成長と共に巨人族の血の発作的な攻撃衝動に襲われ、密かに抑用薬を服用していたが、これが後々テスト中に重大な事件を引き起こす。25歳。
- ミュン・ファン・ローン
- 声 - 深見梨加、歌 - 新居昭乃/英 - アン・シャーマン、歌 - ミシェル・フリン
- イサムとガルドの幼馴染み。幼少より歌を愛し、歌手になることを志していた。ハイスクールのマドンナ的存在だったが、ある事件をきっかけに地球に渡り、一度は歌を捨てる。7年後にシャロン・アップル・プロジェクトのプロデューサーとしてエデンに戻り、イサムとガルドとの恋の板挟みで苦悩する。23歳。
- シャロン・アップル
- 声 - 兵藤まこ/英 - メローラ・ハート
- 人工知能によって生まれた、銀河系最大の人気を誇るバーチャルアイドル。ファンの声援に呼応して、その容姿は幾重にも変化する。
- ミラード・ジョンソン大佐
- 声 - 内海賢二/英 - ボー・ビリングスリー
- ニューエドワード基地の司令官で「スーパー・ノヴァ」計画の主任でもある。かつてはスカル中隊所属のパイロットで一条輝の部下だった(その様子はドラマCD『超時空要塞マクロス・インサイドストーリー マクロス・クラシック』で描かれている)。テスト中の事故で左足を失い現在は義足を装着している。厳格だが度量のある「空の男」。52歳。
- ヤン・ノイマン
- 声 - 西村智博/英 - ダン・ウォーレン
- YF-19の主任設計者。そばかすが目立つ冴えない少年だが、17歳の若さで次期主力戦闘機の設計主任になった天才。機械への偏った愛情が、乗り手を選ぶYF-19の機体特性に反映されている。プライベートでもシャロンを愛する凄腕のハッカー。
- ルーシー・マクミラン
- 声 - 林原めぐみ/英:バンビ・ダーロ
- YF-19テストチームのオペレーター担当。そばかすが目立つ女性で、イサムに着任早々口説かれるなど、その奔放さに呆れながらも、公私共にサポートする理解者である。21歳。
- マージ・グルドア
- 声 - 速水奨/英 - デヴィッド・ルーカス
- ミュンの補佐役で、シャロン・アップル・システムの開発者。人工知能に偏執的な愛情を注ぎ、統合軍と絡んで暗躍する。23歳。
- レイモンド・マーリー
- 声 - 銀河万丈/英 - ボブ・パーペンブルック
- 芸能会社アップルエージェンシーの社長。コンサートツアーの統括責任者。
- ケイト・マッソー
- 声 - 高乃麗
- イサムやガルド、ミュンの元同級生。開放的で世話好きな二児の母親。
- モーガン・マッソー
- 声 - 屋良有作
- ケイトの夫。ジャーナリスト。イサムやガルド、ミュンの元同級生で、ハイスクール時代からイサムに対し熱狂的ともいえるシンパシーを抱いている。
- ゴメス将軍
- 声 - 北村弘一/英 - リチャード・バーンズ
- スーパーノヴァ計画の監督者だが、有人戦闘機の存続については否定的な見解を持つ。
- ヒギンズ総司令
- 声 - 佐藤正治
- 新統合軍の最高責任者。無人戦闘機計画とシャロン・アップル・プロジェクトを後援する。
登場メカニック[編集]
- 新星インダストリー YF-19
- ゼネラル・ギャラクシー YF-21
- 新星インダストリー VF-11Bサンダーボルト
- 無人戦闘機ゴーストX-9
- VF-1Aバルキリー、ヌージャデル・ガー、デストロイドモンスター (演習の標的機)
- マクロス
リリースリスト[編集]
ビデオ・LD[編集]
バンダイビジュアルより発売。
- 「マクロスプラス Episode1」1994年8月25日発売 本編40分+特典映像「Macross A Space Cronicle」17分
- 「マクロスプラス Episode2」1995年1月1日発売 本編40分
- 「マクロスプラス Episode3」1995年2月21日発売 本編40分
- 「マクロスプラス Episode4」1995年6月25日発売 本編37分
- 「マクロスプラス Movie Edition」1996年2月25日発売 本編115分
インターナショナルバージョン[編集]
バンダイビジュアルより発売。
- 「マクロスプラス Vol.1」 1995年3月25日発売
- 「マクロスプラス Vol.2」 1995年5月25日発売
- 「マクロスプラス Vol.3」 1995年7月25日発売
- 「マクロスプラス Vol.4」 2000年3月31日発売
正規版とは別に、Manga Entertainment社からも英語吹替え版が発売された。
DVD[編集]
バンダイビジュアルより発売中。インターナショナルバージョンの英語吹替えも収録。
- 「マクロスプラス Vol.1」 2001年8月25日発売
- 「マクロスプラス Vol.2」 2001年10月25日発売
- 「マクロスプラス Vol.3」 2001年12月21日発売
- 「マクロスプラス Vol.4」 2002年2月25日発売
- 「マクロスプラス MOVIE EDITION」 2000年7月25日発売
DVDリマスターボックス[編集]
バンダイビジュアルより2007年8月24日発売。映像をHDリマスター化、音声をリニアPCMし、Vol.1~4とMOVIE EDITIONをセットにしたDVD-BOX。
- 「マクロスプラス リマスターボックス」 2007年8月24日発売
関連作品[編集]
小説[編集]
- 信本敬子 『マクロスプラス』 1996年 小学館スーパークエスト文庫 1巻
CD[編集]
発売はビクターエンタテインメント。本作は菅野よう子による最初のアニメサウンドトラックであるが、すでに後の『カウボーイビバップ』、『∀ガンダム』や、『地球少女アルジュナ』に通じる文脈を見ることができる。
- 「MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK」 1994年10月21日発売
- 「MACROSS PLUS - The Cream PUF」 1995年2月22日発売
- 発売禁止となったシャロン・アップルのアルバムから危険な催眠要素を除去して復刻したという設定。菅野よう子の曲のほか、元電気グルーヴのCMJK作曲の「Information High」が含まれている。この「Information High」は当時フロッグマンレコーズでテクノ界を中心に活躍していた佐藤大と渡辺健吾が作詞を担当。佐藤大が本格的にアニメ業界にかかわるきっかけとなったとされている。のちに『カウボーイビバップ』、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で関わった菅野と組み『マクロスF』でも楽曲を手がけている。
- 「MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK 2」 1995年7月21日発売
- 「MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK PLUS - for fans only」 1995年11月22日発売
ゲーム[編集]
- アーケードゲーム 『マクロスプラス』 1996年 バンプレスト (縦スクロール・シューティング)
- PSゲーム 『マクロスプラス Game Edithion』 2000年 タカラ (3Dシューティング)
- PSゲーム 『スーパーロボット大戦α』 2000年 バンプレスト (シミュレーションRPG)
- PSゲーム 『スーパーロボット大戦α外伝』 2001年 バンプレスト (シミュレーションRPG)
- PS2ゲーム 『第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ』 2005年 バンプレスト (シミュレーションRPG)
- PS2ゲーム 『Another Century's Episode THE FINAL』 2007年 バンプレスト/フロム・ソフトウェア (クロス・オーバー・ロボット・アクション)
関連項目[編集]
- 実写映画 『ライトスタッフ』
- アメリカ空軍のテストパイロット達を描いた作品。トム・ウルフ著作の原作小説が本作の着想元となった。
- ATF(Advanced Tactical Fighter:先進戦術戦闘機)
- 特撮映画 『ステルス』
- エイフェックス・ツイン
- まだ日本での一般的な知名度も低かった当時、劇中においてファーストアルバム『Selected Ambient Works 85-92』のジャケットが登場し、マニアの間で話題となった。ちなみに、このジャケットに大きく描かれているロゴをデザインしたポール・ニコルソンは、後に『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で「笑い男」のマークや「個別の11人」のロゴを手がけている。
- ロック岩崎
- 実在の元航空自衛官、アクロバットパイロット。劇中、イサムがテスト飛行中、空に鳥の落書きをするために、掌を機体に見立ててイメージトレーニングする場面は、ロック岩崎のアクロバット飛行前のイメージトレーニングに由来すると思われる。
- 『マクロス7』
- 作品のカラーは異なるものの、世界設定において本作と繋がりのあるTVシリーズ作品。本作でテストされていたYF-19、21の正式採用機が登場する。本作の劇中で使われていた曲を『マクロス7』の登場人物が聴いている場面がいくつか描かれている。また、モブシーンのキャラクターにガルドと同じ容姿のゼントラーディ系民間人が登場している。
- 『マクロスF』
- 本作に登場する惑星エデンよりそこにすむ生物であるヒュドラが移入されている。
外部リンク[編集]
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