埼玉高速鉄道線
埼玉高速鉄道線(さいたまこうそくてつどうせん)は、東京都北区の赤羽岩淵駅から埼玉県川口市を通りさいたま市緑区の浦和美園駅までを結ぶ埼玉高速鉄道の鉄道路線。両端の駅以外、全て川口市の駅となっている。
路線の愛称は「彩の国スタジアム線」。
目次
概要
本路線は、1972年(昭和47年)の都市交通審議会答申第15号において、東京7号線の埼玉方面への延伸区間として「川口市中央部…浦和市東部間」が定められたのが始まりである。その後1985年(昭和60年)の運輸政策審議会答申第7号では、埼玉県内は「鳩ヶ谷市中央経由で東川口から浦和市東部」へと変更された。1992年(平成4年)に埼玉県、沿線3市および帝都高速度交通営団(現在の東京地下鉄〈東京メトロ〉)等により第三セクター「埼玉高速鉄道株式会社」が設立され、1995年(平成7年)に着工、2001年(平成13年)3月28日に赤羽岩淵 - 浦和美園間が開業した。建設費用は2561億円、1kmあたり175億円である。
東京メトロ南北線を埼玉県に延長する形で地下を進み、終点・浦和美園駅の手前で地上に出る路線である。JR京浜東北線と東武伊勢崎線・日暮里・舎人ライナーに挟まれた地域と都心を結ぶ路線としての役割を担っている。特に、本路線の開業まで鉄道が通っていなかった、当時の鳩ヶ谷市は沿線開発が進んだ。また、2002 FIFAワールドカップ開催の際には、試合会場の一つである埼玉スタジアム2002への主要な交通手段として利用された。
なお本路線は荒川を横断する鉄道で唯一地下を抜けている(赤羽岩淵 - 川口元郷間の国道122号新荒川大橋すぐ西側)。
本路線のトンネルの下部には、環境用水の導水管が荒川北岸(川口元郷駅付近)から12kmにわたって併設されており、水質の悪い綾瀬川や芝川など4つの河川に荒川の水を引き込み水質改善の試みが行われている。
路線愛称の「彩の国スタジアム線」は、車内や駅構内の案内放送ではまったく呼称されていない上に利用客にも定着しておらず、埼玉高速鉄道側からも「埼玉高速鉄道線」での案内となっている。なお、直通先の南北線や東急目黒線からの連絡乗車券などは、東京メトロ東西線の直通先を「東葉高速線」と表示するのに倣い「埼玉高速線」と案内および表示されている。ただし、東葉高速線はそれ自体が正式名称であるのに対して、本路線は「埼玉高速鉄道線」が正式名称である。
東京地下鉄管理の赤羽岩淵駅をのぞき、各駅にレインボーカラーを使用したステーションカラーを採用し、それをホームドアなどに配色している。また、ベンチにも工夫を凝らしている。
開業以来6両編成で運転しているが、将来は8両編成で運転できるように見据えている。そのため全駅のホームが8両分確保されている(臨時ホームの浦和美園駅3番線をのぞく)が、現時点では6両編成のため不要な2両分のホームは柵で仕切られて立入りできないようになっている。
検討段階だが、浦和美園駅からさらに北進し、東武野田線岩槻駅を経てJR宇都宮線(東北本線)蓮田駅に至る路線延伸や神奈川東部方面線への乗り入れも計画されている(「今後の予定」の節参照)。
路線データ
- 路線距離(営業キロ):14.6km うち地上部0.4km
- 軌間:1067mm
- 駅数:8駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500V・架空電車線方式)
- 地上区間:浦和美園駅付近
- 閉塞方式:CS-ATC
- 車両基地:浦和美園車両基地(場所は浦和美園駅北側)
- 最高速度:80km/h
歴史
- 1992年(平成4年)
- 1994年(平成6年)
- 4月 : 埼玉県内の都市計画決定。
- 8月 : 東京都内の都市計画決定。
- 1995年(平成7年)
- 5月 : 建設省より工事施工認可。
- 7月 : 起工式。
- 1999年(平成11年)
- 9月 : 駅名決定。
- 11月 : シールドトンネル貫通。
- 2000年(平成12年)11月 : 試運転列車入線。
- 2001年(平成13年)3月28日 : 赤羽岩淵 - 浦和美園間開業。営団(現:東京地下鉄)南北線、東急目黒線武蔵小杉までの直通運転開始。
- 2008年(平成20年)6月22日 : 直通運転区間を日吉まで延伸。
- 2009年(平成21年)6月6日 : ダイヤ改正。鳩ヶ谷 - 浦和美園間の日中の本数が1時間あたり6本から5本に減便され、12分間隔となる。
- 2011年(平成23年)3月11日 : 東日本大震災が発生し、全区間で一時運休。21:20頃に運転再開。埼玉県東部の鉄道路線において、東日本大震災当日に運転を再開したのは当路線のみであった。
- 2012年(平成24年)3月17日 : ダイヤ改正。平日の夕夜間帯に増発。下り終電を2分繰り下げ、赤羽岩淵0:15発とする。
- 2013年(平成25年)
- 2014年(平成26年)
- 3月15日:ダイヤ改正。平日ダイヤにおいて鳩ヶ谷行きの終電を新設し、赤羽岩淵0:30発とする。併せて浦和美園行きの終電を4分繰り下げ、赤羽岩淵0:19発とする。平日ダイヤの上り終電を11分繰り下げ、浦和美園0:06発とする。
運行形態
定期列車ではすべての列車が東京メトロ南北線と相互乗り入れを行い、一部の列車は東急目黒線とも直通運転を行っている。また、臨時列車「みなとみらい号」が日吉駅から先の東急東横線を介して横浜高速鉄道みなとみらい線の元町・中華街駅まで直通運転を行っている。
乗り入れ先である東急目黒線では急行列車の運転が行われており、赤羽岩淵方面行きの一部の列車が急行の種別表示で運転されているが、埼玉高速鉄道線内および東京メトロ南北線内は各駅に停車する。また、浦和美園方面行きの列車は種別表示を行わない。
日中は浦和美園発着の列車が毎時5本(各駅停車が4本、急行が1本)、鳩ヶ谷発着の列車が毎時5本(各駅停車が4本、急行が1本)運転される。
埼玉スタジアム2002での試合開催日には臨時ダイヤが組まれ、列車が増発される。また試合終了後、浦和美園方面からは鳩ヶ谷行や市ケ谷行など、通常ダイヤでは運行されない行先の臨時列車も運行される。
全線でATOによる自動運転およびワンマン運転を実施している。車内放送は東京メトロと同じく日本語は森谷真弓、英語はクリステル・チアリが担当している。
車両
自社車両
乗り入れ車両
当路線の開業により、東急の車両が営業運転として初めて埼玉県内でも見られるようになった。
列車番号と車両運用
各列車の車両の所属は、『MY LINE 東京時刻表』(交通新聞社)の列車番号欄で判別でき、列車番号末尾アルファベットの「M」が埼玉高速鉄道の車両、「K」が東急の車両、「S」が東京地下鉄の車両となっている。
また、5桁の数字で表記されている東急方式の列車番号では、上2桁が運用番号を表し、01 - 29が東急の車両、30 - 78の偶数番号が東京地下鉄の車両、80以降の偶数番号が埼玉高速鉄道の車両となっている。(31以降の奇数番号は都交通局の車両)
なお、東急車の運用は三田線運用と南北線・埼玉高速線運用とで別々に組まれ、奇数番号が三田線運用、偶数番号が南北線・埼玉高速線運用となっている。また各社局間の走行距離調整の関係上、東急車は目黒線に乗り入れない列車(白金高輪折り返しなど)にも使用されている。
利用状況
輸送人員は沿線人口の増加や駅機能の強化等を背景として、2008年度までは着実に増加してきた。その後、2011年度までは景気低迷の影響などにより横ばい傾向であったが、2012年度から再度増加傾向にある。
開業以降の輸送実績を下表に記す。
年度 | 年間 輸送人員 (人/日) |
1日平均 輸送人員 (人/日) |
最混雑区間 乗車率 (%) |
特記事項 |
---|---|---|---|---|
2000年(平成12年) | 2001年3月28日、赤羽岩淵駅 - 浦和美園駅間開業 | |||
2001年(平成13年) | 17,133,000 | 47,000 | 45 | |
2002年(平成14年) | 19,766,000 | 54,200 | 89 | |
2003年(平成15年) | 21,646,000 | 59,200 | 79 | |
2004年(平成16年) | 23,682,000 | 64,900 | 93 | |
2005年(平成17年) | 25,035,000 | 68,600 | 94 | |
2006年(平成18年) | 27,431,000 | 75,200 | 118 | |
2007年(平成19年) | 29,419,000 | 80,400 | 117 | |
2008年(平成20年) | 30,588,000 | 83,800 | 121 | |
2009年(平成21年) | 30,564,000 | 83,700 | 126 | |
2010年(平成22年) | 31,051,000 | 85,072 | 118 | |
2011年(平成23年) | 30,983,000 | 84,654 | 103 | |
2012年(平成24年) | 32,094,000 | 87,928 | 118 | |
2013年(平成25年) | 33,754,000 | 92,478 |
駅一覧
駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
赤羽岩淵駅[* 1] | - | 0.0 | 東京地下鉄:南北線 (N-19) (目黒駅経由東京急行電鉄目黒線日吉駅まで直通運転) |
東京都北区 | |
川口元郷駅 | 2.4 | 2.4 | 埼玉県 | 川口市 | |
南鳩ヶ谷駅 | 1.9 | 4.3 | |||
鳩ヶ谷駅 | 1.6 | 5.9 | |||
新井宿駅 | 1.6 | 7.5 | |||
戸塚安行駅 | 2.5 | 10.0 | |||
東川口駅 | 2.2 | 12.2 | 東日本旅客鉄道:武蔵野線 | ||
浦和美園駅 | 2.4 | 14.6 | さいたま市緑区 |
- ↑ 他社接続の共同使用駅であるが、東京地下鉄の管轄駅である。
ICカードについて
埼玉高速鉄道#IC定期券 を参照
今後の予定
2000年(平成12年)の運輸政策審議会答申第18号において、「2015年までの開業が適当な路線」として浦和美園 - 岩槻 - 蓮田の延伸(約13km)が挙げられている。この審議会の答申は中央政界や官公庁に大きな影響力を有していた当時の土屋義彦埼玉県知事の手腕が発揮されたとされる。しかし、決定直後に延伸先の蓮田市にて開かれた「(知事後援会の会合)延伸感謝の会」に200人しか集まらないことに知事が激怒、後に別の会合にて「蓮田市は知事のありがたみが分かっていない。蓮田に持っていかずに(岩槻で)止めてもいい」と発言し、埼玉新聞などに掲載される騒ぎとなったことがある。
なお、蓮田駅から先をさらに白岡市、久喜市、加須市を経由して羽生市まで延伸する計画がある[1]。
2005年(平成17年)9月には、「埼玉高速鉄道延伸検討委員会」が岩槻駅で東武野田線への直通運転も検討することとなり、大宮ルートと春日部ルートの2方向の案が検討されたが、東武野田線の設備等の構造により直接の乗り入れは不可能であり、東武野田線岩槻駅地下部に駅舎を建設する方向でまとまった。その後の延伸事業などについては資金の目処がついてからという最終答申が出ている。
その他、利用者の利便性向上などの理由で、埼玉高速鉄道線内で優等列車の運転を実施するかどうかを「埼玉高速鉄道延伸検討委員会」などにおいて検討を行ってきた[2]が、2012年(平成24年)3月13日に「地下鉄7号線延伸検討委員会」は延伸の可否自体について「一般的な目安に到達していない」とし、現時点では時期尚早との判断を下した[3]。ただし、検討委員会は同時に「沿線地域の活性化・開発を進めることで、プロジェクトの評価を高めることは可能」とし[3]、最終的な判断は埼玉県とさいたま市に委ねられることになった。これを受けてさいたま市は同年4月23日、市役所に「地下鉄7号線延伸実現方策検討会」を設置し、延伸実現に向けた課題の整理を開始した。10月1日、清水勇人さいたま市長は2012年度内としていた岩槻駅までの延伸事業着手の延期を表明、沿線のまちづくりを進めて5年後の着手を目指すこととなった[4]。
なお、延伸計画区間のうち、浦和美園駅 - 埼玉スタジアム2002間に関しては、埼玉スタジアム2002が2020年に開催される予定の東京オリンピックにおいて、サッカーの予選会場となっていることから、オリンピックまでに早期延伸を要望する声がある[5]。
脚注
- ↑ 白岡町 議会だより 第170号 14ページ
- ↑ 埼玉高速鉄道延伸検討委員会
- ↑ 3.0 3.1 地下鉄7号線延伸検討委員会
- ↑ 地下鉄7号線延伸、事業着手5年後に延期 さいたま市発表 - 2012年10月2日 日本経済新聞
- ↑ 埼スタまで埼玉高速鉄道延伸を サッカー県議連、知事に要望 - 埼玉新聞、2013年10月4日、2013年10月22日閲覧。
注釈