ワーキングプア
ワーキングプア(working poor)とは、貧困線以下で労働する人々のこと。直訳では「働く貧者」だが、働く貧困層と解釈される。
これまで貧困はよく失業と関連づけられてきたが、しかし雇用に付きながらという新しい種類の貧困として米国・カナダ、さらにイタリア・スペイン・アイルランドなどの先進国で見られると論じられるようになった。
日本では国民貧困線が公式設定されていないため、「正社員並み、あるいは正社員としてフルタイムで働いてもギリギリの生活さえ維持が困難、もしくは生活保護の水準にも満たない収入しか得られない就労者の社会層」と解釈される事が多い。
目次
概念[編集]
米国において、ワーキングプアに関する議論が初めて社会に知られるようになったのは、進歩主義時代(1890 - 1920)の頃である。進歩主義時代の思想家、Robert Hunter、ジェーン・アダムズ、W・E・B・デュボイスらは貧困・ワーキングプアの根底にあるのは社会的機会の不平等構造であるとしたが、しかしその一方で、貧困と労働者個人のモラルにも関連するとした。W・E・B・デュボイスはフィラディルフィアにおけるアフリカ系アメリカ人人口研究において、貧困から抜け出せない貧困層の実体を記しており、その理由はひとつは人種差別、もうひとつは彼らの怠惰・忍耐力欠如などのモラル欠如であるとしている。その後、ワーキングプアに関する議論はより二極化していき、自由主義思想家らは構造的な理由を、保守主義思想家はモラル的な理由を論じるようになった。
このようにワーキングプアは、その最も基本的な定義(貧困線を満たす収入を得られていない労働者)では思想家らが見解を同じくしているが、用語の意味や定義については未だに論争のあるテーマである。
年収300万円台の低所得者に共通の行動[編集]
実際に低所得者(年収300万円台以下)のサラリーマン200人に話を聞き、彼らに共通するダメ習慣とは何か探ってみた。
消費行動編
低所得者の消費行動を調査 その共通点とは?庶民の消費感覚が肌に染みついており、“新作”や“流行”というキーワードにはすこぶる弱い。企業にしてみれば顧客ターゲットにしやすい層で、
「はやりモノは片っ端から手をつけるタチです。例えば、自慢するためだけに中華まんの初音ミクまんやスライムまんを買いにコンビニに行ったり(苦笑)」(37歳・運送)
「友達が持っているLINEの有料スタンプが欲しくなります。古いものはすぐ飽きちゃって、17個も購入」(28歳・講師)
などはその典型だ。そのほか、
「カネはないけどハゲたくないから1本5000円のスカルプシャンプーを使ってます。効果は知りません」(44歳・自動車)
と、本人すら半信半疑なものに高いお金を払う傾向も。でも、そういう人ほど1円単位でこだわり、
「牛丼屋の紅しょうがやスーパーに置いてある牛脂は持って帰ります。タダというのが魅力的!」(29歳・広告)
のように妙にセコかったりするものだ。そして、
「宝くじはたまに買います。これが時々当たるんですよ!」(29歳・医療)とほとんどの人が一獲千金を夢見るのに、「株はリスクを伴うので興味ありません」(33歳・問屋)とアベノミクス相場に興味を示す人は少ないのも特徴的だ。
堅実ともいえるが、パチンコや競馬などのギャンブルと投資を同一視している人も多かった。お金に対する考えを根本から直さないと、低所得から抜け出すのはかなり難しそうだ。
サラリーマン200人に聞いたYESの割合
- 宝くじは買わなきゃ当たらない 89%
- LINEスタンプは10個以上所持 77%
- コンビニで3000円以上買い物する 64%
月収13万円、37歳女性を苦しめる「官製貧困」[編集]
都内の閑静な住宅街、真夏の陽が痛い。アスファルトからは湯気のように気体が立ち昇る。門構えが立派な高級住宅が建ち並ぶ中に、公営の図書館がある。公園が隣接し、放課後に遊ぶ小学生や小さな子どもたちの声が聞こえた。
谷村綾子さん(37歳、仮名)は、この図書館に勤める図書館司書だ。館内に入ると神聖とも言える静かな雰囲気、司書たちはカウンターで貸し出し返却業務、カートを押して本の整理、カウンター奥の事務スペースでは黙々と事務作業をする。館内は広く、週刊誌や文庫本から専門書、地域の資料まで幅広い本がそろう。谷村さんの終業時間は17時15分。隣の公園で待つと、17時20分にはやって来た。黒髪、清楚で堅いイメージ、おだやかでまじめそうな女性だった。
「市の嘱託職員になります。図書館で働く司書の7割くらいは非正規雇用で、給与は安いです。未婚、ひとり暮らしなので正直、毎日不安と焦りばかりです……」
役所、義務教育機関、福祉施設の運営、公園管理、文化観光、清掃、防犯防災などなど、市区町村の仕事は幅広い。膨大な業務があり、とても正規採用された職員だけではこなせない。それぞれの公共機関で多くの非正規職員を雇用して、業務を回して運営している。
駅近くの喫茶店で話を聞くことにした。駅に向かって歩きながら、給与明細を見せてもらう。支給総額は17万円。所得税、住民税、社会保険料を引かれて、手取り金額は13万3442円。賞与はなく、年収204万円である。非正規職員の平均賃金は205万1000円(平成27年賃金構造基本調査統計)、谷村さんは平均的な非正規労働者と言える。
年収204万円、手取り13万3442円で、家賃5万円のアパートでひとり暮らし。手取り給与から家賃を差し引くと、月8万3000円しか残らない。貧困では「相対的貧困」という概念が使われる。「相対的貧困」は国民1人当たりの可処分所得の平均の、さらに半分に満たない状態を言うが、家賃を引いた可処分所得が99万6000円の谷村さんは、実質的にはこの水準に近いといえるだろう。行政機関で通常の常勤職員として働き、非正規雇用の平均給与を稼ぐひとり暮らしの女性が「相対的貧困」に足を突っ込みかねない時代に突入している。
「その日暮らしは十分できます。もっと経済的に厳しい人がいるのも十分承知はしています。けど、ずっとギリギリの生活で、何のぜいたくもしていないのに貯金すらできない。嘱託は1年契約、更新は最長5年と決まっていて、今は4年目です。来年はすごく頑張っても、仕事で成果を出しても確実にクビになります。低賃金なので蓄えはないし、年齢ばかり重ね、私はいったいどうなってしまうのだろうって」
家賃5万円。自宅は最寄り駅から15分と遠く、都内ではかなり安い。仕事はシフトによって、終業は17時15分か20時15分。谷村さんはいつも仕事帰りに駅前のスーパーマーケットで割り引かれた食材や総菜を買い、帰宅する。部屋にはテレビもパソコンもない。調べものはスマートフォンでする。夕飯を食べて家事をして、休日や空いた時間は自宅で勉強をしている。
悩んだ末に2016年4月から学芸員の資格を取得しようと、通信制大学の科目履修生になった。給与が安いので外食や交遊、買い物はほとんどしない。仕事、家事、勉強を繰り返す孤独で単調な生活で、毎日職場や自宅で何度か「私、これからどうなっちゃうの」と、不安になる日々という。
「図書館司書は専門職です。私は子どもたちのための児童書や児童文学に詳しくて、たまに自分が企画してフェアみたいな企画をやっています。でも役所は誰でもできるって考えているし、いくらでも交換ができる部品くらいにしか思われていません。だから、非正規なのでしょう。私は司書の仕事をどうしても続けたくて、今ここが2カ所目です。前は他県の図書館で働いて、満期5年で契約が切れてしまったので都内に引っ越しました。また、あと1年半しか仕事ができないって考えると不安で、たまに眠れなくなることもあります」
嘱託職員は最長5年と、労働する期間が定められる雇用だ。勤務先の公営図書館は嘱託職員が中心となって運営している。必要な人材であっても毎年、誰かが契約切れで辞めていく。非正規採用の職員が無期雇用となる道はなく、司書の仕事を継続したいなら、別の自治体が運営する図書館に非正規として再雇用されるしかない。
「5年の契約が切れるとき、私は39歳です。すごく司書の仕事は好きで続けたいけど、またギリギリの生活から抜けられない覚悟をして、同じような非正規を渡り歩くか、またはほかに能力ないけど、もう少しまともな生活ができるような仕事をなんとか見つけるか。年齢もあるし、本当は将来がないなら今すぐちゃんとした仕事を探したほうがいい気もするし。悩みばかりです」
彼女はメールで応募してくれた女性だ。応募理由はどうやらまじめに働いても抜け道のない生活に悩み、取材というより、誰かに相談をしたくて応募をしたようだった。同じ司書の同僚は地方公務員だったり、非正規ならば親元で暮らしていたり、配偶者がいたり、ひとり暮らしという同僚はいない。
図書館などの公共サービスは、自治体が民間の指定管理会社に運営を委託する流れがある。将来的に賃金上昇や雇用改善が期待できない業種だ。私は「年収200万円は非正規の平均で決して珍しい例ではなく、むしろ一般的。40歳で異業種に転職しても、おそらく賃金は似たり寄ったり」「学芸員の資格を取得しても雇用は少ない。貧困から抜け出すキッカケにはならない可能性が高いのでは?」と伝えた。谷村さんは“やっぱり”という表情になってため息をつく。
「悩んでしまうのは、あと何年でクビという不安から逃れたいから。ひとり暮らしで貯金がゼロなので、働き続けないとホームレスになっちゃいます。だから、本当に、働ける期限があるのは怖い。やっぱり正社員として働きたいって思う。きっと、自分にもそういう働き方ができるというかすかな希望を持っています。あとは世の中にはボーナスがあると聞きます。もし、ボーナスをもらえるような職に就けたら、もっと人間らしい生活ができるのかなとか」
どうして、ただただまじめに勤労する女性が苦しむのか。単身で暮らす20~64歳の女性の3人に1人(32%)が貧困状態にある(国立社会保障・人口問題研究所)。さらに65歳以上の単身女性になると47%と過半数に迫る勢いとなっている。
さらに公共機関で働く彼女は、残酷なほどの正規非正規格差の渦中にいる。全産業での正規職員の平均賃金は321万1000円(平成27年賃金構造基本調査統計)と比べると約6割の収入しかない。さらに職場の同僚にいる正規の地方公務員と比べると、正規は平均年収669万6464円(平成26年地方公務員給与実態調査)と好待遇で、非正規の賃金は正規の3分の1にも満たない。
努力や自身の成長、仕事の成果ではどうにもならない絵に描いたような官製貧困、官製格差だ。貧困から抜けて、普通の生活をするためには学芸員の資格取得ではなく、ダブルワークをして長時間労働によって差額を埋めていくしかない。実際に同じような官製貧困に悩む、介護職の女性たちのダブルワークは常識で、その一部は性風俗に流れている。
低賃金や格差の現実で精神的に追い詰められ、悩み、身動きが取れなくなるのは谷村さんのような、よりまじめな一般女性たちだ。いったい、どうしてそうなってしまったのか。
両親と妹は父親のリストラを機に地元の北海道に帰り、谷村さんは社会人1年目からひとり暮らしを始めた。中堅大学の文学部を卒業して、IT系の中小企業に就職する。
「新卒入社の会社は5年間ほど勤めました。残業は月100時間ぐらいあったけど、残業代は出ました。なので、手取り25万円は超えていました。実は、お酒飲むのが好きで、その時代はよく友達と飲みに行ったりした。すごく忙しかったけど、自分のこれまでを振り返ると、いろいろ友達もいたし、当時がいちばん普通の生活だったなって。そのような普通の生活ができたのは、当時だけ。結局、残業代はたくさんもらっていたけど、長時間労働の過労で倒れて体調を崩しました。精神科では抗うつ神経症って診断されて、働けなくなりました。両親のいる実家に帰って、しばらく休んでから大学時代に取った図書館司書の資格を生かそうと図書館に勤めた。今と同じ嘱託職員で、手取りは12万円程度でした」
実家から図書館に勤めていた頃は、手取り12万円の貧乏だった。貧乏ながら好きな本を買う、買い物する、友達と遊ぶ、休日に問題意識のある障害者分野のボランティアに行く、ということはできた。貧乏の領域を超えて、貧困になったのは図書館勤務を継続したいと、都内に引っ越してひとり暮らしを始めてから。最低限の衣食住で可処分所得は消え、一切の遊びや余暇活動ができなくなった。昔のように友達と会うこともなくなり、自宅で独り悩む時間が増えた。
学生時代から“まじめな普通の子”だった。恋愛は誰かが教えてくれるわけではない。気づいたら出遅れていた。初めて男性を好きになったのは20代半ば、現在の図書館勤めになってから出会いはないし、どこかに出かけるおカネすらない。
「25歳くらいのとき、飲み屋さんで、好きな人ができたことはありました。北海道のときに30歳手前、初めて男性とお付き合いしました。そのときの相手は好意を持ってくれるけど、なんとなくちょっと引っかかるみたいな。クセがある人でした。精神年齢が低いというか、自己中心な性格でたまに激高しちゃうみたいな。今まで誰かと付き合ったことがなくて、好きな人ができないままより、一度ぐらい誰かと付き合ったら、いい部分も見えてくるかもみたいな意識でしたが、さすがに結婚まではいきませんでした。男性経験みたいなものは、それだけです」
高度経済成長以降の日本は、結婚前提、企業を通じて妻や子どもに再分配される制度設計だった。労働者派遣法改正による非正規化の影響によって、多くの労働者は収入が下がり、世帯主の収入だけでは生活を支えられなくなったのが現在だ。そして女性の単身世帯は3人に1人が貧困という、壮絶な貧困社会に突入した。
「結婚すれば、生活が変わるみたいなことはよく言われていますが、非正規で低収入な自分にまったく自信がないし、誰かが見初めてくれるとはとても思えない。やっぱり結婚とか出産は、普通以上の収入がある人の特権というか、自分にかかわることとはとても思えないです」
うつむきながら、悲観的なことを語り出した。
「うちの図書館、一緒に働く3~4割くらいが正規の公務員の方々です。正規の方々が職場で話していることって買い物とか旅行とか、子どもの教育とか、そういう話。正規でちゃんとしたお給料があって、家族で暮らしている人たちは、子どもにたくさん習い事をさせて、年に何度か海外旅行に行くんだ……って。何か別世界というか。私は飛行機代がなくて、今の職場で働き出してから一度も実家には帰れていないのに。この差って、何なのでしょう? 仕事をまじめにやっているだけではダメなのでしょうか。正直、ずっとすごく苦しいです」
谷村さんは貧困状態の現状維持すら否定される中で、かすかな希望をもって今日も学芸員の資格取得の勉強をする。
統計[編集]
一般にワーキングプアの定義について「労働力人口のうち貧困線以下の者」とされている。 途上国の例では、国際労働機関が「労働力人口のうち一日の可処分所得が1US$以下の者」としている。
- アメリカ合衆国の連邦労働省労働統計局は、ワーキングプアを「16歳以上で1年間のうち少なくとも27週間以上(約6ヶ月強)職に就いているか、職を探すかしているにもかかわらず、公的な貧困線を下回る所得しか得られない者」と定義し、1987年から調査を行っている。2007年9月の報告書では、2005年のアメリカの貧困率は12.6%(3,700万人)で、このうち770万人がワーキングプアであると述べている。
- 韓国では1997年の経済危機をきっかけに非正規化が一気に進み、韓国の非正規社員率は55%で、日本の過去最高である34%を超えている。
- 台湾では、2007年時点で人口の約1%にあたる22万人がワーキングプアとなっており、その数は増加傾向にあるという。増加の要因は、派遣労働の増加にある。
- イスラエルでも急速にワーキングプアが増加していることが労働党党首シェリー・ヤヒモビッチにより指摘されており、また、2011年には貧富の格差是正、最低賃金引き上げなどを求めて数十万人規模の抗議デモが行われた。イスラエルはベンヤミン・ネタニヤフ首相の新自由主義政策により貧富の差が激しい国である。
リスク要因[編集]
個人がワーキングプアに転落するリスク要因には、主要なものに以下の五つがあるとされている。それは「産業セクター」「人口統計」「経済」「労働市場の制度」「福祉の配分状況」である。
ワーキングプアは幅広い人々に関連する現象であるが、とくに雇用要因・人口グループ・政治的要因・経済的要因がとりわけ重要な要因であるとされる。産業的・人口的な要因は、何故ある国の人々は他の国よりもワーキングプアになりやすいか論じる助けとなる。政治的・経済的要因は、なぜ国ごとにワーキングプアの割合が異なるのか論じる助けとなる。
産業的要因[編集]
ワーキングプアは産業間で等しく分布してはいない。サービス業は最もワーキングプアの割合が高い。実際に米国においては、2009年のサービス業従事者の13.3%が貧困線以下であった。低賃金サービス業の例には、ファーストフード業従事者・ホームヘルパー・ウエイターとウェイトレス・非労組の小売業従事者などがある。
最も割合が高い産業はサービス業だが、他にも高いのは製造業・農業・建築業のブルーカラー労働者である。多くの製造業では賃金や福利厚生が少なめであり、かつ製造業の雇用期間は一年を超える事は少ない。今日において、多くの米国の製造業は勤労権上、労働者が労働組合を作るのは困難であるとされる。
労働市場制度[編集]
労働市場は効率性・平等性などの点で中間に位置する。 Brady, Fullerton, and Cross (2010) によると「効率のよい労働市場は、柔軟であり、失業率が低く、経済成長が高く、労働者が迅速に雇用および解雇できるものである。皆に望まれる労働市場とは、堅固な労働市場制度をもち、高賃金、高セキュリティなものである(p562)」とされている。
解決への取り組み[編集]
ワーキングプアは日本だけの問題ではなく、他の先進国でもすでに同様の問題が引き起こされている。韓国では派遣社員(非正社員)の増加を規制する法案として、「非正規保護法」を成立させた。
これは「2年以上勤めた非正社員を、正社員化させなければならない」とするものであり、違反した企業には最高1000万円の罰金という厳しい規制を課しているが、現実には「非正社員が2年以内の期間雇用とした上で、再雇用しない」という手法で正社員化を阻止する事例が増えており、非正規雇用の長期継続化が避けられる反面、雇用の継続自体を困難とする事態となっており、企業側にとって有利な抜け道と不備があるざる法であり、実質的にはあまり効果が出ていない。
アメリカでは州立大学に企業の講師を招き、最先端バイオテクノロジーに関する授業を格安で低所得者に学ばせ、地域の安定した労働者に育て上げる取り組みがなされている。イギリスでは若者に職業訓練を受けさせ、その期間中は生活費を支払い就職できるまで見守る取り組みが国を挙げてなされている。
日本ではワーキングプアに陥りやすい母子家庭の自立支援策として高等技能訓練促進費(養成期間の後半三分の一に一定額の給付を行う)という資格補助制度が導入されている。しかし実態に即していないなどの批判があり、予算の執行割合も低い。
日本におけるワーキングプア[編集]
日本では、1990年代以降のグローバリゼーションの流れに対応して、政府・企業の主導のもと、労働市場の規制緩和・自由化がすすめられた。派遣労働の段階的解禁はその表れだが、その他パートや契約社員も含め非正規雇用の全労働者に占める割合は、90年代後半以降一貫して増え続けている。これら非正規雇用は企業にとっては社会保障負担の軽減や、雇用の調整弁や単純業務のための安価な労働力としての活用という点で、人件費を大幅に削減することを可能にする。
したがって、労働者から見ると多様な就業形態を可能にするが、雇用の継続は1ヶ月~最長でも1年程度の短期しかない不安定な状態で、キャリアアップの機会に乏しいうえ、雇用保険や社会保険といった社会保障も正社員に比較して不十分であることが少なくなかった。
さらに、ほとんどの企業が賃金の支払い日を(労働基準法第24条第2項の規定により)「月1回払いのみ」としており、なおかつ「締め日~支払日までの日数が長い」ため、「既往の労働に対する賃金」を速やかに受け取ることができず、所得と貯蓄の低下に拍車をかけている(賃金を速やかに受け取れないことは、生存権の侵害のみならず、就労意欲(モチベーション)を低下させる要因にもなりうる)。
他方、1990年代の日本経済は長期停滞にあえぎ、リストラなどで職を失う労働者が続出した上、「就職氷河期」と呼ばれる世代は就職活動において正規雇用として職を得ることが困難となり、非正規の不安定な形で職に就くことが少なくなかった。日本の雇用慣行では新卒として正社員の職を得られなかった場合、その後に安定した職業に就くチャンスが少ないため、氷河期世代にはその後も長らく非正規雇用として働き続けている者も多い。
こうして、労働市場の流動化と経済の長期停滞といった要因が複合的に絡み合い、ワーキングプアに代表される低賃金労働者が増えていったと考えられる。
このような流れは少しずつ進行したが、大きく注目されたきっかけはNHKによるドキュメンタリー番組(NHKスペシャル『ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない』〈2006年7月23日〉)の放送である。
規模[編集]
ワーキングプアにあたる所得の世帯数は2007年現在、日本全国で約675万世帯ほどと推定され、2006年以降は社会問題として採り上げられるようになった。推計根拠は総務省の就業構造基本調査。これに基づいて試算すると、ワーキングプアの規模は次のとおりといわれている。
人件費削減[編集]
ワーキングプアが大量に発生した要因として、企業の人件費削減の流れが指摘されている。
企業は
- 安価な労働力確保を目的とした国外への進出
- 賃金の高い正社員の新規採用の削減
- 人件費が安価で売上等状況に応じて雇用調整を行いやすいアルバイトやパート、契約社員、派遣社員といった非正社員を増やすなどにより、総人件費の抑制を図った。企業が労働者に支払った給与の総額は1999年には217兆円であったが、2009年には192兆円にまで減少している。なお非正社員への置き換えについては、製造現場への派遣行為を禁じていた「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(労働者派遣法)旧規程が2006年に緩和されたことによる、大企業の製造現場における偽装請負といった法令違反も発覚した。
- 賃金水準の抑制
- 労働者の賃金水準は、低下傾向にある。1999年には労働者の平均年収は461万円であったが、2009年には406万円に減少している。
- 賃金の高い正社員の新規採用を減らす
- 新規採用の減少については、リクルートワークス研究所の公表資料を参照。
- 正社員の採用については新卒が主流なため、新卒で就職できなかったりあるいはいったん正社員となっても自発的な離職、倒産やリストラなどの非自発的離職で職を失うと、「特別な技能や国家資格などがある」か、「即戦力となれるだけの経験・技量がある」(と求人先に認められた)場合を除き、定職に就くのは厳しく、特にホワイトカラーでの就職はほぼ不可能であり、ブルーカラー全般の職種しか残されていない。また派遣・アルバイト等の経験がどれだけあっても責任ある仕事を任されないためキャリアとして認めない傾向が強く、正社員への道は極めて狭い。
- 非正社員を増やす
- 2000年には労働者の74.0%が正規雇用であったが、2010年には65.6%にまで減少している。非正社員の増加は、企業収益に関わらず、コスト削減等の競争力を維持したい企業は非正社員でまかなえる業務は非正社員でまかなおうとする傾向があるため、構造的なものと言える。例えば、コンビニエンスストアにみられるように企業間のサービス競争の中で24時間体制(の深夜労働または年中無休)での労働になり、なおかつ最低賃金(+深夜の割増賃金)でしか雇用しないなど過酷な勤務も増えた。
政府の見解[編集]
2007年10月4日の第168回通常国会本会議で、当時の内閣総理大臣福田康夫は
「いわゆるワーキングプアについては、その範囲、定義に関してさまざまな議論があり、現在のところ、我が国では確立した概念はないものと承知している。これまでに、いわゆるワーキングプアと指摘された方々は、フリーター等の非正規雇用、母子世帯、生活保護世帯等であって、このような方々の状況については、既存の統計等によってその把握に努めるとともに、働く人全体の所得や生活水準を引き上げつつ、格差の固定化を防ぐために成長力底上げ戦略に取り組むなど、対応を図っているところである」
と答えた。
厚生労働省の中央最低賃金審議会では、勤労者生活課長が「目安に関する小委員会議事録」において、「ワーキングプアということ自体の確立した定義がないので、どこがワーキングプアとは統計的にはなかなか言えない>」と述べている。
食べ物は全部中国産[編集]
早くカリフォルニア米とか安く買えるようにならないかな
さといも12個。宮崎県産だと598円、中国産の冷凍だと148円。にんにくだって青森県産だと1個198円もするのに、中国産だと3個で88円 お金がないと日本人なのに日本産の食べ物が食べられない。
ハイアール(中国メーカー)の冷凍庫には100g19円で買ってきた中国産の鶏むね肉が常備。ブラジル産すら手が出せない・・・
たまにイトーヨーカドーとかイオンとか、一般人が買い物するスーパーに行くけど、「茨城県産 有機米を食べて育ったとりむね肉 100g118円」なんてのを見ると、「鶏むね肉が118円wwwwwwwwwww」って気持ちになって悲しさを通り越して笑えてくる。
救急部&循環器外科の混合病棟で看護師やってる。手取りで13万。そこから奨学金返済で3万円吹っ飛ぶ。家賃は23,000円の築40年アパート。携帯電話は1,166円のメールホーダイプラン。
自治体から借りたひも付き奨学金だから8年間はここの病院やめられない。
地方公務員の給料いいってヤツ、大卒・看護職で基本初任給173,000円だぞ・・・。定期昇給も8年間凍結中(北海道)。医師ですら5年目の基本給が約24万円なんだぞ・・・・・・。もう公立病院叩きはやめてくれ・・・・・・
トップバリュすら買えなくなった。10kg2,500円の国産米は遠いあこがれになった。一丁27円の豆腐、一玉19円のうどん、一袋10円のもやし、こんなモンばかり食って生きてる。
新潟県産の新米で炊いたごはん。国産の大豆からつくられたお味噌に国産のおねぎをいっぱい入れた味噌汁。北海道産の脂がたっぷりのったさんま。国産のみずみずしいほうれん草のおひたし。いつの日か、こんな食事がとれるような生活がしたい。
どうせ結婚できないし、救急やってる人は定年前に死ぬ人多いし、人生なんだったんだろうね・・・・・・
業務スーパー行くとさ、500g入りのみじんぎり玉ねぎとかにんじんとかほうれんそうなんかが98円なんだよ・・・・・・。もちろん中国産なんだけどさ。
ほうれん草のおひたし500gって国産のでつくると5把はいるから500円はとんじゃう。おひたしフェチの俺にとって中国産ほうれん草は必需品。
OECDの対日勧告[編集]
経済協力開発機構(OECD)は、日本の労働市場における正規雇用と非正規雇用の二重構造を問題点として挙げている。日本では、企業が労働コストの節約をするために社会保険料の企業負担が少ない非正規労働者を多く雇用しており、非正規雇用者比率は1990年の20%から2008年の38%に上昇した。正規雇用者に比べて非正規雇用者の賃金は低いため、非正規雇用者の増加は平均賃金と民間消費を低下させている。企業の非正規雇用者に対する訓練の投資は少ないため、長期的な生産性にも悪影響を与えている。経済協力開発機構(OECD)は日本に対して以下の包括的な方法により労働市場を改善していくことを求めている。
- 社会保障制度の非正規雇用に対する適用範囲の拡大
- 正規労働者の雇用保護を引き下げる
- 非正規雇用者の就業機会を増やすよう職業訓練をする
- 女性によるフルタイム就業を阻害する制度の廃止
- 育児支援施設の量的、質的改善
2009年の雇用見通しのなかで、日本では現在の景気低迷以前から、ワーキングプア(働く貧困層)が、貧困層の80%以上を占めていたと指摘した。OECD加盟国の平均は63%であり、これを大きく上回っている。また、日本では職に就いている人が最低1人以上いる家計に属する人の11%が貧困だと指摘した。これはOECD加盟国のなかでトルコ、メキシコ、ポーランド、アメリカに次いで5番目の高さとなっている。そして、日本の税と所得再分配制度は、「労働者の貧困緩和にはほとんど効果をあげていない」と述べている。これは所得移転が、ほぼ高齢者へ割り当てられ、低所得の若年層への補償がないことを意味している。
関連文献[編集]
ドキュメンタリー[編集]
- NHKスペシャル
- 「ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない 」(2006年7月23日)
- 「ワーキングプアII 努力すれば抜け出せますか」(2006年12月10日)
- 上記2本が連続で2007年12月10日(本放送からちょうど1年経過)に再放送された。
- 「ワーキングプアIII 解決への道」(2007年12月16日)
- 「セーフティネット・クライシス 日本の社会保障が危ない」(2008年5月11日)
- 「セーフティネット・クライシスII 非正規労働者を守れるか」(2008年12月15日)
- モーガン・スパーロックの30デイズ 第1話:最低賃金で30日間(WOWOW 2006年3月19日)
- 地球特派員2006「アメリカ 格差社会の底辺で〜ワーキングプアの現実〜」(2006年11月19日 NHK BShi、12月3日 NHK BS1)
- BS世界のドキュメンタリー「貧困へのスパイラル」▽アメリカ格差社会の実態 前後編(NHKBS1、2005年11月5日 アメリカ、パブリックポリシープロダクションズ/en:WGBH制作)
- このドキュメンタリーは3年以上にわたり、4つの家族に密着して取材している。
文献[編集]
- バーバラ・エーレンライク 曽田和子:訳『ニッケル・アンド・ダイムド ― アメリカ下流社会の現実』(2006年7月 東洋経済新報社)ISBN 4-492-22273-1
- ポリー・トインビー 椋田直子:訳『ハードワーク ― 低賃金で働くということ』 (2005年6月、東洋経済新報社)ISBN 4-492-22264-2
- 原著:Polly Toynbee, Hard Work: Life in Low-pay Britain, January 2003
- デイヴィッド・K・シプラー 森岡孝二:訳『ワーキング・プア ― アメリカの下層社会』(2007年2月、岩波書店)ISBN 978-4-00-025759-6
- 原著:David Shipler, The Working Poor: Invisible in America, February 2004
- 門倉貴史『ワーキングプア ― いくら働いても報われない時代が来る』(2006年11月、宝島社)ISBN 4-7966-5533-6
- NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班『ワーキングプア ― 日本を蝕む病』(2007年6月、ポプラ社)ISBN 978-4-591-09827-1
- 湯浅誠『貧困襲来』(2007年7月、 山吹書店〈人文社会科学書流通センター扱い〉)ISBN 978-4-903295-10-7
- 布施哲也『官製ワーキングプア―自治体の非正規雇用と民間委託』(2008年6月、七つ森書館)ISBN 978-4-8228-0870-9
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 「働けど貧困」(アサヒコムニュース特集)
- キーワード「格差社会/ワーキングプア」(しんぶん赤旗)
- 地盤沈下の労働市場で始まったワーキングプアの「静かなる逆襲」(ダイヤモンドオンライン)