布団
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布団(ふとん)は日本で広く用いられる寝具のひとつ。畳やベッドの上に敷いて、睡眠時に用いる。ベッドと違い収納することができる。主に、人が上に横たわるための敷き布団(しきぶとん)と、人の上に被せる掛け布団(かけぶとん) に分けられる。
人が快適に寝ることを目的に用いる。寝る際に、体温が下がらないように保温し、体重が一点に集中して、痛くなることがないようにする効果がある。このような効果を高めるために、布の袋の中に綿、ポリエステルなどの化学繊維、羽毛、羊毛などが詰められ、中綿が型くずれしないように綴じ糸やキルティングなどで固定されている。
綿や化学繊維は掛け布団にも敷き布団にも用いられるが、羽毛は主に掛け布団、羊毛は主に敷き布団に用いられる。同じ材質であれば一般的に厚みのある方が保温効果が高いが、厚すぎると重くて圧迫されたり、姿勢が曲がったりする弊害もでる。
元々蒲団と書かれ、蒲でできた円い敷物に由来する。この「団」は丸いという意味である。現在は軟らかい材質を用いるようになったため、布団と書かれるのが普通である。
目次
使用[編集]
日本では、敷き布団は畳の上に敷いて用いるのが伝統であったが、現代ではベッドの上に直接敷いたり、マットレスを敷いて、その上にマットレストッパー (mattress topper) の代わりに敷き布団を敷く場合もある。韓国や中国の東北部ではオンドルや床暖房が用いられるので、床に布団を敷くのが伝統的であるが、ベッドを使う場合もある。
寒い季節には、掛け布団をかける前に「肌布団(はだぶとん)」という直接肌にかける軽い布団を併用する場合もある。逆に、暑い季節は厚いものでは暑すぎで寝苦しくなる事が多いので、暑さを和らげるために薄い掛け布団を使うか、代わりにタオルケットを用いることがある。また、中間期では、通常の掛け布団よりも少し薄手の「合い掛け布団(あいがけぶとん)」を用いることがある。
通常、布団は、そのまま用いずに薄い布(木綿やポリエステルなど)でできた布団カバーで包んで使われることが多い。布団カバーは、定期的な洗濯を容易にし、清潔に保つためである。宿泊施設などでは、カバーの代わりに、もしくはカバーの上にさらにシーツを用いることが多い。この場合、敷布団にシーツをかけ毛布を一枚から数枚のせて最後に掛け布団をかぶせる。合宿などで用いる研修所では、衛生のためにシーツを毛布の下にも敷いてシーツに挟まれるようにして寝ることを推奨される。ユースホステルでは袋状のシーツに入ってから布団に入るように規定されている。
手入れと保管[編集]
畳に敷いた布団は、毎日、就寝の前に敷き広げ、起床ののち折り畳んで収納することが慣習化されている。これを布団の上げ下ろしという。上げ下ろしすることで、部屋を広く使うことができると同時に、部屋にほこりが溜まることを防ぐことができる。布団を畳まずに敷いたままであることを、万年床(まんねんどこ)という。万年床は不精で不潔なことの代名詞になっている。
また、布団には夜間、睡眠中に人間から排出される汗のために水分がかなりたまる。そのため、時々、天気の良い日に戸外に干す必要があり、これを布団干し(ふとんぼし)と呼ぶ。このとき、布団が物干し竿から風などで落ちないように「布団ばさみ」を使って抑えておく。ただし、集合住宅では手摺を利用して布団などを干すことを禁じているところが多くなっている(落下による危険防止のため、景観を保つためなど)ため、集合住宅入居者は確認が必要。しかしながら、現代では、部屋の日照や生活時間の問題、景観に関する条例などから布団を干すことができないところも多くあり、そのような場合、代わりに「布団乾燥機」を用いて水分を減らすことが行われている(後述するダニの殺虫にも効果的。日照りであれば黒いシーツで熱を集める手段もある)。
布団は長く使用していると、ダニが発生することが多い。ダニはアレルギー症状を引き起こすアレルゲンとして有名であり、これは特にアトピーや喘息などを持つ人のには深刻な問題である。アレルギーの原因としてダニの糞・死骸などが主なアレルゲンであり、除去方法として布団に掃除機をかけ、洗濯機で丸洗いが効果的とされている。アレルギーを防止するため、最近では、防ダニ加工や、抗菌加工が施されたアレルギー対策布団も販売されている。アレルギー対策布団は、詰め物にポリエステル、布にポリプロピレンなどが使われる。
布団の手入れ方法は最近ではふとんを叩くことは繊維を傷め、ダニを殺す成果もない(反対側に逃げる)ことから、専門家はふとんを叩くことを薦めない。手でやわらかく埃をはたき、布団の上から直接掃除機をかけることが、埃やダニを吸うには効果的であること、もめん綿とポリエステル綿が掃除機をかけて埃とダニの量が1番減ることがNHKの番組で紹介され話題になった[1]。
布団を保管する際や、引越の際には、布団袋(ふとんぶくろ)という大きな袋に布団一式を詰める事が行われている。
来客用の布団や、季節に合わない布団を保管するには、大きなスペースが必要となるが、押し入れに十分な空間がない場合、掃除機で布団内部の空気を吸い出してコンパクトにすることができる、布団圧縮袋(ふとんあっしゅくぶくろ)が用いられる場合もある。
種類[編集]
- 大きさによって、一人用のシングルと二人用のダブル、それらの中間のスモールダブルなどに分類される。寝具ではなく、座る時に用いる座布団(ざぶとん)も布団の一種とされる場合がある。
- こたつにかけて使用されるものは、寝具ではないが、同じような形状であるためこたつ布団と呼ばれる。
- 掛け布団は中に詰めてある中綿の種類により、保温性・保湿性が大きく異なる。
- 布団の生産地表示はあくまでも最終工程をどこで行ったかで表示される。また、どこからが最終工程かの規定はないので製造メーカーが最終工程の判断を各々独自に規定している。例えば、羽毛布団の仕分け作業・洗浄を中国で行って、詰め込み・最終縫製だけ日本で行えばその商品は日本製と表示される。
綿布団[編集]
羽毛布団[編集]
- 水鳥のダウンを中綿に使用している比率が50%以上のものを羽毛布団と呼ぶ。水鳥の胸元から摂れる非常に軽くて保湿性・保温性に富んだ材質であるため、高級羽毛布団として販売されていることが多い。
- 水鳥の種類は主にグース(ガチョウ)とダック(アヒル)に分けられる。グースの方が高級品である。
- また、90%以上の表示は羽毛の仕分けを機械で選別するのに加えて手作業で仕分け(ハンドピック)をしないと表示できないが、少しでも手で選別すれば90%以上の表示になってしまう。
羽根布団[編集]
- 羽毛よりも芯が固い水鳥の羽根(フェザー)を中綿としているものを羽根布団と呼ぶ。この羽根布団は、一般的に羽毛布団よりも保温性でかなり劣る。しかしながら、羽毛と異なり、羽根は大量に採取可能なため、流通する布団の中でもこの羽根布団に限り、価格面で低価格化が進んでいる。
- 最近では、この羽根布団をセットにした格安の布団セットが、布団の通販で多く見かけるようになった。
羊毛布団[編集]
- 羊毛を中綿に重量比で50%以上用いた布団を羊毛布団と呼ぶ。羊毛布団は、羽毛布団や綿布団のようなふわふわ感(柔軟性)に欠けるが羊毛の持つ弾力性・保温性・放湿性は大変優れており、掛け布団として以上に敷布団に優れている布団といえる。
化繊布団[編集]
- 化繊を中綿に重量比で50%以上使用しているものを化繊布団と呼ぶ。低価格布団として人気がある。有名なものに[インビスタ]社のダクロン(R)ホロフィル(R)やダクロン(R)クォロフィル(R)などの綿をつかったものがある。
抗アレルギー布団[編集]
- アレルギーを防止するため、抗アレルゲン、抗ダニ、抗菌加工が施された布団。抗アレルギー布団は、詰め物にポリエステル、布にポリプロピレンなどが使われる。100%化学繊維なので、低価格で洗濯が可能。保温性が高く、軽量、簡単に洗濯できる、安価などの利点を持つ一方で、繊維自体の吸湿性が良くないため、羊毛毛布との重ね合わせによっては摩擦帯電がおきやすいといった短所も持つ。ポリエステル布団に合う毛布はアクリル繊維を用いたアクリル織毛布などで、重ね合わせによっては静電気がおきにくい繊維もある。
形状記憶敷き布団[編集]
- 低反発なポリウレタンを素材とし、主に敷き布団に使われる。肩や腰にかかる負担が少ない。中の素材は洗えない。
エアーマットレス[編集]
掛け布団サイズ[編集]
掛け布団のサイズは、一般的には布団の作られ方や使用される生地のサイズによって異なるため、厳密にサイズが決まっているわけではなく5〜10cm前後する。
- シングル (135cmx200cm)
- ダブル (200cmx200cm)
- キングサイズ(225cmx220cm)
- スーパーキングサイズ (260cmx220cm)
日本工業規格(JIS L 4403:2000)では、掛け布団のサイズとして次の10種類が定められている。
S | M1 | M2 | L1 | L2 | SW | W | B1 | B2 | Su | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
幅 cm | 135 | 150 | 160 | 150 | 160 | 170 | 180 | 88 | 135 | 120 |
長さ cm | 195 | 195 | 195 | 210 | 210 | 210 | 210 | 120 | 160 | 160 |
健康への影響[編集]
羽毛から発生する微粉塵を長期間吸い込んだ場合、羽毛に対するアレルギーが生じ過敏性肺炎や間質性肺炎を発症することがある[3][4]。しかし、自身が鳥関連過敏性の体質であることに気がつかないまま重症化し、「特発性間質性肺炎」や「特発性肺線維症」と診断されるが有効な治療が行えず慢性過敏性肺炎に重症化する例が報告されている[5][6]。
脚注[編集]
- ↑ NHK『あさイチ』2011年10月18日放送回ほか、『名作ホスピタル』など複数の番組で紹介
- ↑ 新潟県立植物園 「NHK新潟ラジオセンター「朝の随想」セレクション ゼンマイ綿と栃尾手まり(11月17日放送)」
- ↑ 過敏性肺炎 MSDマニュアル プロフェッショナル版
- ↑ 稲瀬直彦、過敏性肺炎の最近の動向 日本内科学会雑誌 105巻 (2016) 6号 p.991-996, DOI 10.2169/naika.105.991
- ↑ その難治性肺炎、ダウンジャケットが原因かも 日経メディカルオンライン 記事:2016年10月21日
- ↑ 長坂行雄、「咳嗽の診療」 呼吸と循環 64巻 5号, p.479-484, 2016/5/15, DOI 10.11477/mf.1404205957