筧千佐子

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筧 千佐子

筧 千佐子(かけい ちさこ、1946年11月28日 - )とは、遺産と保険金目当てに結婚と殺害を繰り返す殺人鬼である。青酸化合物を服用させ6人を殺害した。長崎県長崎市生まれ、福岡県八幡市育ち。福岡県立東筑高等学校卒業。子供2人いる。

類似事件として婚活連続殺人事件がある。

事件発覚

夫を毒殺、67歳女を逮捕。周辺では他にも男性5人が相次ぎ死亡

筧 千佐子周辺の死亡者

京都府向日市で2013年12月、無職・筧勇夫さん=当時(75)=が死亡し遺体から毒物の青酸化合物が検出される事件があり、京都府警は2014年11月19日、筧さんに毒物を飲ませ殺害した疑いが強まったとして、殺人容疑で、事件直前に結婚した妻の千佐子(67)を逮捕した。

事件発覚以降、府警は遺産や保険金目当ての事件とみて捜査していた。府警によると、容疑を否認している。

同容疑者の周辺では他にも、大阪、兵庫、奈良3府県で結婚・交際相手の男性5人が相次ぎ死亡。うち1人から同様に青酸化合物が検出され、大阪府警が調べを進めている。捜査関係者によると、千佐子容疑者は13年12月28日夜、向日市鶏冠井町大極殿の自宅で、筧さんに青酸化合物を飲ませ、殺害した疑いが持たれている。

筧さんはインターネットで株取引をしている最中に容体が急変し、搬送先の病院で死亡。司法解剖の結果、血中から青酸化合物が検出された。当時一緒にいて119番した同容疑者から任意で事情を聴いたところ、「2階に見に行くと冷たくなっていた。毒物は知らない」などと説明した。

2人は結婚相談所を通じて知り合い、同年11月1日に婚姻届を出した。京都府警が同容疑者の婚姻歴などを調べたところ、最初の夫と死別後の2006年以降、相談所を介して知り合った元夫2人と交際相手3人が死亡していたことが判明した。

「私は絶対に殺していません」と容疑を否認している。府警は保険金や遺産目当ての可能性もあるとみて追及する。

千佐子をめぐっては2012年、交際していた大阪府貝塚市の男性(当時71歳)がバイクで転倒した後に死亡し、血液から青酸化合物が検出されており、大阪府警も捜査を進めている。

筧さんらは2013年11月に結婚したばかりだった。京都府警は千佐子が筧さんと結婚する前に大阪や兵庫で3人の男性と結婚を繰り返し、相手がいずれも死亡していることを確認しており、経緯を詳しく調べる。ほかにも接点のあった男性数人の死亡情報がある。

千佐子容疑者は2013年12月28日、自宅にいた筧さんに青酸化合物を飲ませ、急性中毒死させた。府警は千佐子容疑者が筧さんに青酸化合物を飲ませた詳しい経緯は不明としており、捜査本部を設置して青酸化合物の入手ルートや動機などを追及する。

事件当日の夜、千佐子容疑者は「夫の意識がなく体が冷たくなっている」と119番通報。自宅2階の居間であおむけに倒れていた筧さんは京都市内の病院に運ばれ、死亡が確認された。遺体に目立った外傷はなかったが、解剖の結果、胃の内容物と血液から青酸化合物の成分が検出された。

千佐子容疑者は任意の事情聴取に「心当たりがない」と関与を否定したが、府警は青酸化合物を入手した可能性が高いことを突き止めた。一方で、筧さんに生命保険が掛けられていたことや、千佐子容疑者に多額の借金があったことも判明した。

府警は慎重に捜査を続けてきたが、最近になり、千佐子容疑者が周辺に「死にたい」などと自殺をほのめかし、所在が一時不明になったことから、逮捕状を取って行方を追っていた。19日早朝、大阪府熊取町内で千佐子容疑者を見つけ、任意同行した。

妻の関係先から青酸化合物。逮捕の決め手に

京都、大阪府内で死亡した高齢男性の体内から相次いで青酸化合物が検出された連続変死事件で、京都府向日市の無職、筧(かけひ)勇夫さん(当時75歳)を殺害した容疑で逮捕された妻千佐子(ちさこ)(67)の関係先から青酸化合物が見つかり、京都府警に押収されていた。

また、筧さんの体内から、青酸化合物以外に睡眠を促す薬物も検出されていたことも判明。府警は、千佐子が筧さんの意識が薄れている間に青酸化合物を飲ませた可能性もあるとみて、入手ルートの解明を進める。

千佐子の関係先で捨てられた物品から少量の青酸化合物が検出された。府警は管理が厳しい青酸化合物が身辺から見つかったことが逮捕の決め手になると判断した模様だ。

一方、事件前、千佐子に似た小柄な女性が1人で薬局を訪れ、店員に「ミンザイ(睡眠導入剤)ちょうだい」と声をかけていた。店員が「処方箋がないと売れない」と言うと、女性は処方箋が不要な催眠鎮静剤を購入して帰ったという。自宅からはこの薬のレシートが見つかった。

千佐子がこれまで結婚したり交際したりした高齢男性から相続した不動産や保険金などは計数億円分に上ることも分かった。結婚の度に公正証書を作るなど、多額の遺産を相続していた。ただ、不動産などすぐには処分できない財産も多く、知人などから1000万円以上の借金があったという。借りては別の人に返す自転車操業で、府警が千佐子の多数の口座を確認したところ、多額の現金が残っているものはなかった。

殺害されたとされる筧さんにも土地を含めて数千万円相当の遺産があり、千佐子容疑者は死亡直後に遺産相続の手続きを開始。一部は相続したが、今夏、支払いを拒否した地元金融機関を相手取り、相続分の預託金425万円の支払いを求めて京都地裁に提訴し、係争中となっている。

京都男性変死:持病なく散歩趣味 死亡の筧さん

親族らによると、死亡した筧勇夫さん(当時75歳)は京都市内の大手電機会社を定年退職。千佐子とは2013年6月、結婚相談所を通じて出会い、同年11月に結婚した。

筧さんは自宅パソコンでの株価チェックが日課で、家庭菜園や早朝散歩が趣味だったという。小中高の同級生の男性(76)によると、筧さんは海外旅行やゴルフに行き、生活に余裕がある様子で、気さくで快活だったという。

筧さんの親族の女性は、これまでの毎日新聞の取材に「(筧さんは)持病もなく、毎日1時間ほどウオーキングし、『体を大事にしなければいけない』といつも話していた」と突然の死をいぶかり「死後、千佐子は遺産の処分を進めようと再三連絡をよこしてきた」と話していた。逮捕の情報には「真相がわからずじまいだったので、警察に感謝したい」と話した。

千佐子について近所の女性(60)は「筧さんが亡くなった時、香典を渡したら『遺体から毒物が出て自分が犯人扱いされて困っている』と急に言い出したので、変だなと思っていた」と話した。

「根こそぎ調べてよ」千佐子容疑者

千佐子容疑者はこれまで毎日新聞の取材に複数回応じ、事件への関与を否定した。

−−筧勇夫さんが亡くなった時の状況は。

自宅2階でパソコンで株取引をしていた。午後9時過ぎになっても下りてこないので行くと倒れていた。

−−その日は何を食べたのか。

朝から家で夫と餅つきをして餅を食べた。夕食では前日の水炊きの残り物を食べ、特別な物は食べていない。

−−警察に説明は。

2人暮らしの家で毒を入れたとしたら、私が疑われるのは小学生でも分かる。

−−毒物に心当たりはないのか。

ない。根こそぎ調べてよ。逆に手に入れる方法を教えて。夫を殺しても1円の得にもならない。

−−結婚する際に資産を考慮したか。

老後のことを考えて借金だらけの人とは結婚しない。魅力は子供がいなかったこと。

−−交際相手の大阪府貝塚市の男性の血液からも毒物が出たが。

誰かが私をおとしめたいのだろう。私は知らない。

−−あなたの周辺では他にも数人が亡くなっている。

真実は一つしかない。私は人生を楽しく生きたい。人を殺して子供に迷惑かけるほどぼけていない。

高齢孤独男性たちを“籠絡”する手口

逮捕された妻の千佐子(67)は京都府警向日町署捜査本部の調べに「(筧さんは)性格がさわやかで最高の人だった」と供述している。

だが、筧さんの生前から複数の女性とも同時交際するなど、複雑な男女関係を築いていた形跡もうかがえる。千佐子は、どうやって交際範囲を広げたのか。

千佐子は、大阪市や堺市内など何カ所もの結婚相談所に登録。相手探しの拠点にしていた。条件は主に「資産がある」と「子供がいないか、疎遠」の2つ。資産のある孤独な高齢者がターゲットだった。

千佐子は狙いを定めた男性たちと食事の機会を設け、一気に親密な関係を築いた。その中から「持病」のある人を選び、本格的な交際に発展させていた。

携帯電話にはたくさんの男性の電話番号が登録されていた。が、例えば「勇夫」が「勇美」になるように、女性のような名前に変更していた。昨年11月に筧さんと入籍した後も、結婚を隠して別の男性と繰り返し接触。偽名の登録は、交際男性にのぞき見られたときの“偽装工作”だったのだろうか。

千佐子から相手の男性にあてられたメールには、直接的な求愛メッセージが並ぶ。筧さんには「愛する勇夫さん」「あなたに会えて幸せ」といったメッセージが送られた。

2人は昨年6月に出会い、11月に結婚。事件は入籍2カ月後の12月末に起きたが、千佐子はその間“通い妻”として、当時の自宅と向日市の筧さん宅を行き来していた。

捜査関係者は「付かず離れずの距離でやきもきさせたかったのでは」とみる。「自分のペースに巻き込んでいく感じ。筧さんのメールの文面からも気持ちがどんどん動いていく様子がうかがえた」と分析した。

捜査本部の調べには淡々と応じ、冗舌に語ってもいるというが、容疑については「殺してはいない」と一貫して否認を続けている。一方、留置場の布団が「ふかふかだった」と無邪気に喜ぶこともあったといい、留置場の待遇には不満はなさそうだという。

取調官は筧さんと知り合った経緯や2人の関係などを一つ一つ、本人の口から説明させている。捜査幹部は「供述と証拠を丁寧に積み上げることが大事だ」と話した。

とぼけ続ける容疑者

夫の死因「薬を誤飲したのかも」容疑者供述

京都府向日(むこう)市の筧(かけひ)勇夫さん(当時75歳)への殺人容疑で逮捕された妻千佐子(ちさこ)(67)が京都府警の調べに対し、筧さんの死亡原因について「薬を誤飲したのではないか」という趣旨の供述をしていることが、捜査関係者への取材で分かった。千佐子容疑者は逮捕当初から容疑を否認しているが、死亡原因への言及が判明したのは初めて。

千佐子は2013年12月28日午後9時ごろ、自宅で筧さんを青酸中毒で殺害したとして11月19日に逮捕された。取り調べに対し、筧さんが普段から健康に気を使っていたとした上で、「(何らかの)薬を飲んだらそういうの(青酸化合物)が含まれていたのではないか」との供述をしているという。

また、千佐子は筧さんの死について「分からない」とし、「自殺、事故、病気の可能性がないから当時、2人でいた私が疑われるのだろう」とも述べているという。

京都府警は11月20日と21日、筧さん方を家宅捜索。漢方薬や胃腸薬、鎮痛剤など複数の医薬品を押収したが、青酸化合物の成分を含むものは発見されていない。事件当夜、筧さん宅に不審者が侵入した形跡も見当たらないため、府警は千佐子が青酸化合物を飲ませた以外の可能性はないとみて、引き続き詳しい事情を聴く。

容疑の妻、戸籍からバツ消す。京都・青酸殺害、再婚歴隠しか

京都府向日市鶏冠井町の筧勇夫さん=当時75歳=が青酸化合物で殺害されたとされる事件で、京都府警捜査本部(向日町署)に殺人容疑で逮捕された妻の千佐子(67)が、戸籍簿上、再婚した経歴を消した上で、筧さんと結婚していた。

これまでに死別した夫や交際した男性の名前を女性名に変えて携帯電話に登録していたことも判明。捜査本部は、千佐子が過去の結婚や交際を隠すために工作していた可能性が高いとみて調べている。

千佐子は筧さんとの結婚前に3人の男性と結婚し、いずれも死別。通常、妻が夫と死別や離婚をした場合は、妻の戸籍簿には夫の名前に「×」の印が付けられ、死別や離婚の理由が記載される。一方、2013年11月に筧さんと入籍した際、千佐子の戸籍簿では過去に2回再婚した男性の名前は記載されておらず、最初に結婚した大阪府の男性の姓に戻っていた。3度目の結婚の際にも、同様に戸籍簿には直前に再婚した男性名はなく、大阪府の男性の姓だった。

行政関係者によると、本籍地を別の場所に移す転籍の手続きなどをすれば、制度上、新たな戸籍簿に再婚した夫の名前などは記載されず、弁護士司法書士除籍簿などをたどらない限り再婚の履歴は確認できないという。捜査本部は千佐子が再婚歴を隠して筧さんに近づいた可能性があるとみている。

千佐子の携帯電話を調べた際、過去に結婚したり交際したりした男性の名前の漢字一字を変えた女性名で登録され、筧さんも女性の偽名で登録されていた。女性の知人らは実名のままだったといい、捜査本部は男性だけ名前を変えていた目的についても調べる

取得した遺産1億円、使途不明 京都・夫殺害容疑の妻

千佐子が、筧さんと知り合う前に結婚していた3人の亡夫らから得た遺産について、1億円近い使途不明金があることが分かった。過去に相続した遺産をマルチ商法にも費やしていたことも新たに判明。捜査本部は、殺人容疑の動機につながる可能性もあるとみて、千佐子が手にした遺産の使途を調べている。

千佐子は、筧さんとの結婚前に死別した3人の夫や交際中に亡くなった男性らから計数億円の遺産を手に入れ、先物取引や投資目的でマンションを購入するなどしていた。マルチ商法にも手を出し、知人らを勧誘していたという。多くは金融商品への投資で多額の損失を出した。少なくとも1千万円の借金を抱えており、筧さんの資産の一部も借金返済に充てたとみて解明を急いでいる。

一方、捜査本部が千佐子が管理する十数の口座など過去の支出を調べる中で、千佐子が資産として手に入れた金額と、投資やマルチ商法、光熱費などに使った金額との差が1億円近くあることが分かったという。

千佐子は逮捕前の取材に対し、死別した夫らからの遺産について「親族と分けたり税金で払ったりしたので、何千万円とかはもらっていない。昔の商売の借金が2000万円ぐらいあった。長いことかかって返済した」と話していた。

府警によると、千佐子は「絶対に殺していません」と容疑を否認しているという。

毒物を使った主な殺人・変死事件

  • 帝銀事件(1948年) – 1948年1月、東京の帝国銀行支店に東京都職員を装った男が現れ、行員らに青酸化合物を飲ませ12人を殺害
  • 名張毒ぶどう酒事件(1961年) – 1961年3月、三重県名張市の住民懇親会で、農薬が混入したぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状
  • 青酸コーラ事件(1977年) – 1977年1月、東京都内の電話ボックスで青酸化合物入りのコーラを飲んだ男子高校生(当時16歳)と無職男性(当時46歳)が死亡
  • 和歌山・毒物カレー事件(1998年) – 1998年7月、和歌山市内の夏祭りで、カレーライスを食べた住民67人が急性ヒ素中毒を発症、うち4人が死亡
  • 長野・青酸茶事件(1998年) - 長野県内のスーパーで1998年8月、缶入りウーロン茶を飲んだ男性(当時58歳)が青酸中毒で死亡

関連項目