神戸市男子高校生刺殺事件

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神戸市北区の路上で平成22年10月、男に刺殺された堤将太さん

神戸市男子高校生刺殺事件とは、2010年10月4日に私立神戸弘陵高校2年の堤将太さん(当時16歳)が刺殺された事件。2021年8月4日兵庫県警察本部は当時17歳で現在愛知県に住む、パート従業員の元少年(28)を、殺人の疑いで逮捕した。

将太さんは当時交際していた中学3年生の彼女をかばって死亡。その彼女が将太さん殺害の翌日にブログにアップしたことでも有名となった。

事件経緯

「あの人、なんか気持ち悪いわ」

2010年10月4日夜、神戸市北区筑紫が丘に広がる住宅街の路上。不安そうに漏らした交際相手の中学3年の女子生徒に、将太さんは「ほんまやな」と答えた。

自動販売機の横に座っていた2人が警戒したのは、約10メートル離れた支柱から若い男が眺めていたからだった。ただ、2人がこう言葉を交わした矢先に、男が小型ナイフを手に無言で近づいてきた。

「逃げろ」。叫ぶ将太さんに促されるように、女子生徒は必死に走った。数分後、女子生徒が戻ると、将太さんは自販機から約70メートル離れた交差点で血まみれで倒れていた。

事件翌日の女子中学生のブログ

いつもの風景。 
いつもの…違う… 
将太がおらへん。 
将太だけが、おらへん… 

これが現実なんやって思ったら 
また涙が出そうになってもうた。 

教室に入った。
みんな一斉に、うちを見た。
空気が重くなるのが分かった。

その時やった… 
明日、今日よりも好きになれる 溢れる想いが止まらない~
今もこんなに好きでいるのに 言葉に出来ない~♪ 

うちの好きなGReeeeNの『キセキ』やった。
クラスメイトみんなが歌ってくれた。
うちも泣きながら歌った。
アリガトウや Ah

愛してるじゃまだ足りないけど
せめて言わせて 「幸せです」と~♪ 

そうや…将太が助けてくれたんやもん。
将太、あのな 
うち…幸せやで

捜査

兵庫県警神戸北署捜査本部は、これまで現場周辺などで延べ約1万4千人に聞き込み捜査を行ってきた。女子生徒の証言によると、男は20代後半~30歳ぐらいで身長160~170センチ。小太りで濃い眉毛や細い目、外側にはねたくせ毛などの特徴がある。しかし犯行後の目撃情報は一切なく、いまだに有力な手がかりは得られていない。

将太さんは上半身を執拗に刺されていた。遺体の状況などから、座った状態で首を刺され、その後、頭部など首周りから上を刺された。

自販機周辺には血痕や足跡が残っていた。近隣住民は将太さんが発したとみられる「いったー」「助けてくれ」という声を聞いている。

凶器の小型ナイフは約1週間後、現場近くの側溝で見つかった。2013年現在、26人態勢で捜査を続けている。有力情報の提供者に上限300万円を支払う捜査特別報奨金制度の対象。情報提供は神戸北署捜査本部(電話番号 078-594-0110)。

遺族

将太さんは姉、兄の下の末っ子。敏さんは「リビングで家族に何でもおしゃべりする。ひょうきんで周囲を楽しませる子だった」と振り返り、「将太がいなくなり、家から灯が消えたようになった」と話す。

深夜に起きた事件だったにもかかわらず、翌朝には堤さんの名前や写真が新聞やテレビで報じられた。悲報に沈む自宅には大勢の報道陣が押し寄せた。悲しみが癒えないなか、「今のお気持ちを一言」と突撃されたこともあった。

事件翌日、将太さんに最後の別れを告げようと、自宅に300人以上の同級生らが訪れ、長蛇の列を作った。敏さんに思い出話を語ってくれる友人もいた。

けんかを仲裁した話や公園の木に登った話。携帯電話で友人が撮影した動画も残っていた。友人たちの心の中で生きる息子の姿に、敏さんは慰められた。

将太さんのブログも幾度となく読んだという。

「息子が一番辛かったはずの殺されたときのことを知らない。せめて生きていたときのことは、親に見せなかった面も含めて全部知っておいてやりたい」と思ったからだ。

敏さんは、「何か事件解決の手がかりがあるかも」との思いから、時間を見つけてはネットの大型掲示板に目を通す。時がたつにつれて大きくなる犯人への怒りと憎しみの感情。それに突き動かされるように、自らも解決への手がかりを得ようと将太さんの同級生らの協力を得て、情報提供を求める自作のチラシを現場周辺で配り続けてきた。

事件から3年が過ぎた今も同級生らが自宅に集まり、手伝ってくれる。費用のカンパもしてくれる。ただ、ふとした瞬間に、大学生に成長している同級生の姿を見て、「将太が生きていたらどんな感じだったのだろう」と辛くなるときがあるという。

将太さんも迎えるはずだった成人式が来年1月に開かれる。敏さんは亡き息子のためにスーツを買い、同級生が向かう会場に持っていきたいと思っている。「ただ、20歳の将太の身長が思い浮かばなくてね」。遺影の前で敏さんは寂しそうにうつむいた。

関連項目