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2020年1月12日 (日) 22:05時点における最新版

中学校(ちゅうがっこう)は日本の学校の区分の一つ。 義務教育6・3制における3年間に該当する。小学校の教育を基礎とし、小学校の課程を修了した生徒に心身の発達に応じて、普通教育を施すことを目的とする、前期中等教育段階の学校である。

日本以外の国でも、前期中等教育を行う学校があり、それらの学校を中学校と呼ぶことがある。 ただし、日本とは入学年齢や年数が異なる場合も多い。

英語表記では「中学校」は"Junior High School"と訳されることが多い。 これは米国の古い方式による名称であり、文部科学省では Lower Secondary School(前期中等学校)という表記を用いている。

なお、日本の学制改革以前の中学校については旧制中学校を、中等教育機関については高等小学校国民学校旧制中等教育学校を参照。

概要[編集]

日本では、中学校は小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする(学校教育法第45条)。ISCED-3レベルに位置づけられる[1]

小学校を卒業した者、または特別支援学校の小学部を修了した者が入学し、修業年限は3年間である。同等学校に中等教育学校の前期課程、特別支援学校の中学部がある。

小学校では、基本的に1人の学級担任教員がほぼ全部の教科を担当するが、中学校では、各教科ごとに専門の教員が存在する。

多くの学校では定期考査があり(定期考査を行わずに単元別の試験などを行う学校もある)、その成績と日常における学習の様子などが進学時の調査書(内申書)に反映される。中学校を卒業した人は、高等学校高校)・中等教育学校の後期課程・専修学校高等課程(いわゆる高等専修学校)など後期中等教育を行う学校や、5年制の高等教育機関である高等専門学校高専)に入学することが出来る。通例、これらの各学校による入学者選抜に合格することによって各学校から個別に入学が許可される。また、中学校を卒業しなかった人のために、文部科学省による中学校卒業程度認定試験(中認)などが存在する。

私立中学校国立中学校の大部分と、一部の公立中学校(主に中高一貫校)には、入学試験をはじめとする入学者選抜がある(中学受験)。

現在の中学校制度は、1947年(昭和22年)4月に開始された。開始時から3学年の生徒が揃ったが、1947年当初、区市町村立中学校で該当学齢児童の就学が義務付けられたのは1年生のみで、2年生は当時就学義務のなかった小学校高等科1年生からの進級者、3年生は小学校高等科修了者のうちの希望者の編入で、該当学齢児童が義務就学するようになったのは、2年後の1949年である。
この意味で、現在の中学校制度に相当する学校は、旧制(戦前戦中)の学校制度には存在しなかったことになる。

1947年の開始時点では、校舎・敷地は小学校のもの(特に旧高等科の教室)をそのまま用いていたり、旧青年学校の校舎・校地を転用したことも多かったようである。また戦災を受けた都市の場合は当初は焼け跡で授業が行われ、その後戦災復興計画の中で校舎・敷地を得た例もある。さらに、軍用地・軍需工場などが転用されたケースも存在した。なお、現在の公立中学校設立にあたっては、校舎の建設などに地元の人たちの多大な協力を得た例も多い。
また、これらとは別に、私立校や国立校で旧制中等教育学校だった学校で、1947年に現行制度の中学校を新たに設置した学校も少なくない。

服装はほとんどの場合、学校指定の制服体操着があり、それを着用して登下校したり学校生活を送る。さらに地域や学校によっては名札を着用するところもある。その制服には、あまりデザイン性や機能性などは求められない。この意味で、同じ義務教育であっても一部の地域や学校でしか制服制度のない小学校や、義務教育でないが、同じく中等教育機関に位置しているが、制服制度を持たない学校も少なからず存在し、また存在する場合は制服にデザイン性や機能性などを求める傾向の強い高等学校とは違いがみられる。

年齢・学齢[編集]

  • 中学1年生 12歳から13歳
  • 中学2年生 13歳から14歳
  • 中学3年生 14歳から15歳

学校数・生徒数[編集]

2017年5月1日現在で学校教育法に基づく中学校は10,325校あり、そのうち、国立71校、公立9,478校、私立775校。在校生は総数3,333,317人男子1,704,137人、女子1,629,180人である[2][3][4]

なお、私立学校のうち、構造改革特別区域法による認定を受け、株式会社立の朝日塾中学校岡山県岡山市)が2004年に設置されたが、2011年3月をもって同校は中等教育学校に改組され、発展的廃止された。2011年現在までに、株式会社による中学校が設置された例は、この朝日塾中学校の1校のみである。

教員数[編集]

2017年5月1日時点で250,061人[3][4]

教育の目標[編集]

中学校における教育は、学校教育法(昭和22年法律第26号)の第46条により、義務教育として行われる普通教育の目標(学校教育法第21条各号に掲げる目標)を達成するように行われるものとされている。

平成19年法律第98号(2008年〔平成20年〕4月1日施行)による学校教育法の改正前は、同法の第36条に、中学校における教育の目標が次のように規定されていた。

  1. 小学校における教育の目標をなお充分に達成して、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
  2. 社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
  3. 学校内外における社会的活動を促進し、その感情を正しく導き、公正判断力を養うこと。

改正前の中学校における教育の目標は、高等学校における教育の目標と連携関係にあった。

教育課程[編集]

学校教育法施行規則に基づき、中学校の教育課程は、必修教科、選択教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間によって編成されている。私立学校では、道徳に代えて宗教を設けることもできる。

以前には職業という教科もあったが、徐々に技術・家庭に統合されていった。
以前は、外国語として履修させる言語として、英語以外の外国語を扱っても良いことになっていたが、新しい学習指導要領では、原則として英語を扱うものとしている。なお、選択教科については、英語以外の言語を扱うことも認められている。

学級[編集]

通常の学級と特別支援学級[編集]

通常の学級とは、障害のない生徒を主として編成される学級のことであり、特別支援学級とは、障害のある生徒のために編成される学級のことである。多くの生徒は、通常の学級に所属するが、知的障害発達障害などの障害がある生徒は、特殊学級に所属することもある(詳しくは、「特別支援学級」を参照のこと)。

単式学級と複式学級[編集]

単式学級とは、一つの学年だけが所属する学級であり、複式学級とは、二学年以上が所属する学級である。大多数の学級は単式学級だが、過疎地などでは複式学級もよく見られる。

その他の学級[編集]

一部の中学校では、主に帰国生徒などを対象に国際学級帰国者学級帰国生徒学級などの名称の学級で語学力に配慮した授業を行なっている。

夜間学級については下記を参照。

教育形態[編集]

通常の授業[編集]

一般的な中学校では、月曜日から金曜日または土曜日に、朝から午後まで5~7時間の授業が行われ、ほぼすべての学齢期の中学生は、この時間帯に学習活動を行う。一般的な特徴としては、制服の学校が多い、若年の生徒が多い、就労している生徒がほとんどいないなどの点があげられる。高等学校の用語でいえば、全日制の課程に相当する。

しかし、学齢超過者(4月1日時点で15歳以上の人)については、このような一般的な教育を受けることが困難であることが多く、学齢期の生徒が在学する一般的な中学校に新入学編入学しようとしても拒否される場合もある(詳しくは、「学齢」「過年度生」を参照のこと)。

二部授業(夜間授業など)[編集]

二部授業とは、学校に在学する生徒を複数の組に分けて、別々の時間帯で授業を行うことである。学校教育法施行令(昭和28年政令第340号)の第25条(市町村立小中学校等の設置廃止等についての届出)の第5号を根拠としている。校舎などの学校施設が、在学する生徒数に対して極端に不足している場合などに行われることもあるが、現代社会においては、昼間に通学して学習することが困難である人のために、夜間にも授業を行うことを指すことが多い。

中学校における夜間の授業は、各学校において「夜間部」「夜間学級」などと名称が定められ、夜間中学校(やかんちゅうがっこう)などとも通称されることが多い。夜間の授業は、夕方5時30分頃から授業が開始され、夜9時頃に終わる、4時限の課程である。基本的には、学齢超過者だけが在籍する。なお、夜間の授業は、二部授業(時間帯別に生徒を分けた授業)として認可されているため、夜間に授業を行う中学校は、通例、昼間にも授業を行っている。

夜間の授業を受けている人には、日本国籍を有していない人や同和地区の出身者など、ほとんど文字の読み書きができない成年の生徒も多く、そういった学齢超過者は、日本の現在の受け入れ態勢のもとでは小学校に入学することが困難であるため、中学校における夜間の授業は、日本語教室日本語学校識字教室、小学校の代替としての役割も果たさざるを得ないといわれている。また、授業時間は、昼間の授業よりも少ないことが多く、授業は、「中学校学習指導要領」(文部科学省告示)を完全に模倣することが難しい。そのため、国語数学のように、日常生活の基本となる教科が重視され、それ以外の教科や実技教科(保健体育など)に割り当てられる時間数は少ない。生まれて初めて鉛筆を持つ人から、中学校に途中まで在学した人までの幅広い生徒が在籍し、生徒間の学力の差が大きいため、習熟度別授業を行っている事が多い。また、制服はない場合が多い。夜間の授業を受ける場合は、一般的に年間を通して随時入学できる。

夜間の授業を受けるための入学資格を定めた法令等は存在しないものの、義務教育修了していない人であり、かつ学齢を超過している人(満15歳に達した日以後に4月1日を迎えている人)である事が、実質的な夜間の授業を受ける要件とされていたが、2015年の文部科学省の通知により、ほとんど出席せず卒業した者も個別に判断して夜中に入ることに柔軟に対応するようになった。外国人の入学者が増えている自治体もある。

2017の時点で、夜間の授業を行う学校の数は30校、生徒数は1532人である[4]が、夜間の授業に積極的な設置者(教育委員会学校法人など)が、東京圏大阪圏に集中しているため、やむなく、中学校の正規の授業として認可を受けていない「自主夜間中学」が日本全国の20校ほどの中学校と有志で運営されている。中学校における夜間の授業は、ほとんど知られていなかったが、1993年に上映されて話題となった山田洋次監督映画学校』で有名になった。

二部授業(夜間授業など)の歴史[編集]

元々、中学校における夜間の授業は、第二次世界大戦降伏後の混乱期の中で、生活困窮などの理由から昼間に就労または家事手伝いなどを余儀なくされた学齢者が多くいたことから、それらの人に教育の機会を提供する事を目的として中学校で行われたものである。当時は、「夕間学級」などとも呼ばれた。高等学校の「定時制の課程」とは異なり、夜間に授業を行うための特別の「課程」の制度はない。
なお、旧制中学校にも夜間の課程は存在していたが、これは現在の夜間中学とは系統が異なり、新制高校の定時制課程の起源として見られることが多い。戦前の旧制学校のうち、現在の中学夜間学級に近い例としては、板橋区に存在した板橋尋常夜学校等の夜間小学校が挙げられる。

1947年学制改革の直後、大阪市生野区で長期欠席生徒向けの夕方の補習授業「夕間学級」が開始された。また東京都の戦後初めての夜間学級は、1951年足立区立第四中学校で開設されたものである。同校の伊藤泰治校長らは、足立区周辺に広がるスラム街のうち、学校に近い所を回って夜間学級を宣伝し、当初はわずかな人数しか集まらなかったものの、やがて300人程度の生徒を抱えるようになった。未就学児を学校に行かせる事は、その家庭にとっての労働力を失う等、スラム街の貧困状況を物語る背景が大きくあった。当時の文部省は夜間中学設立に対して阻止の圧力をかけるなど、夜間中学設立に関しては伊藤泰治校長らの相当な苦労と熱意が無ければ成しえなかったであろう。夜間学級の設置校のピークは1954年の87校であり、生徒数のピークは1955年の5208人である。大阪では1969年に最初の夜間学級が大阪市立天王寺中学校に開設された。

そのあと一時期は、「夜間の授業はあくまで臨時の措置であり、学校教育法そのものが想定しているものではない」「学齢超過者は学校教育ではなく社会教育で学ぶべきである」という趣旨で、教育行政において縮小・廃止の検討がされ、1968年には校数21校・生徒数416人に減少した。これに対し夜間中学卒業生の高野雅夫などの教育活動家が、廃止反対・設置要求の運動や、証言映画の上映をするなどの熱心な支援をしたため、夜間中学校は息を吹き返し、現在までも存続している。近年は、日本国籍を有していない生徒や、元不登校の生徒も増えてきている。第二次世界大戦降伏後しばらく、特に1955年から10年間ほどは、学齢期の生徒も多く通学していたが、学齢期のこどもの不正な労働の防止を目的として、現在では、学齢超過者のみに通学が制限されている。

中学校の通信教育[編集]

中学校も一定の条件下で、「通信による教育」(通信教育)を行うことができる。中学校の通信教育は、「中学校通信制」や「通信制中学校」と呼ばれることもある。中学校の通信教育は、「尋常小学校の卒業者もしくは国民学校初等科(現在の小学校にあたる)の卒業者であり、かつ、義務教育を修了していない者」でないと受けることができないというのが建前であり、現代では、基本的に学齢超過者のみが在籍している。

日本では、第二次世界大戦降伏後、義務教育年限が従来の6年間から9年間に延長されたが、これに伴い昭和時代前期までに義務教育だけを修了した人は、新制度においては義務教育未修了となり新制高等学校に入学する資格がない。中学校通信教育は、そのいわば救済措置として設けられたものである。法的な根拠は、学校教育法の附則第8条(旧第105条)であり、「中学校は、当分の間、尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者に対して、通信による教育を行うことができる。」とされている。この規定に基づいて中学校通信教育規程(昭和22年文部省令第25号)が定められている。夜間の授業と違い、法律によって定められているのが特徴である。

通信教育を行なっていた中学校は、以前は80校ほどあったが、現在の行なっている学校は2校のみである。夜間の授業以上に一般的に知られておらず、学校教員でも知っていない場合が多い。なお、八洲学園(やしまがくえん)が、不登校生徒が主対象の、学齢期でも通学できる中学校通信教育の認可を求めているが、難航している。

通信教育を行なっている中学校[編集]

  • 千代田区立神田一橋中学校 [1] 通信教育課程案内 (PDF)
    通信教育ではあるものの、通信教育課程の設置者東京都である関係で東京都内在住者・都内勤務者しか入学することができない。国語、社会、数学、理科、英語、音楽、美術、保健体育、技術・家庭の9教科を教育し、隔週の日曜日または土曜日に面接指導(スクーリング)がある。全課程を修了すると、卒業証書が発行される。通信教育の専任教員が1人しかいないなど、かなり厳しい状況といわれている。通信教育の募集定員は、約40人である。通信教育課程の設置者東京都だが、学校事務は千代田区に委託されている。2005年3月までの校名は「千代田区立一橋中学校」だった。
  • 大阪市立天王寺中学校通信教育部
    日本全国から入学できる。国語、社会、数学、理科、英語の5教科を教育し、毎月1回、日曜日に面接指導(スクーリング)があり、3時間程度の授業を受ける。美術、音楽、体育、技術・家庭という実技教科を開講していないため、全課程を修了しても卒業証書は授与されない模様である。募集定員は、約30人とされている。

進路[編集]

上級学校への進学者が大多数である。1980年代以降は常に進学者が90%を超えているが、2016年現在においても非進学者は数%存在する。

以下のように国立・私立中学校では就職者が極めて少ない。

卒業者 高校などへの進学者 就職者
合計 116万0267人 114万9673人 2952人
国立 1万0280人 1万0245人 1人
公立 106万9995人 105万9747人 2944人
私立 7万9992人 7万9681人 7人

2016年度卒業時の学校基本調査。高校以外への進学者などの詳細は省いた。[5][6]

各国の事情[編集]

  • アメリカ合衆国では、小学校5年・中学校3年・高校4年とするのが普通であり、この場合中学校は Middle School と呼ばれる。
  • イタリアでは、 Scuola secondaria di primo grado という3年課程の前期中等教育機関が存在し、11歳で入学し義務教育である[7]。修了時にはNQFレベル1(Lower secondary school-leaving diploma)に認定される[8]
  • フランスでは、コレージュという4年課程の第一サイクル中等教育機関が存在し、11歳で入学し義務教育である[9]
  • ポーランドにおいてはギムナジウム(Gimnazjum)が存在し、3年課程の前期中等教育機関であり、13歳で入学し義務教育である[10]
  • ポルトガルでは基礎教育第3サイクルに相当し、3年課程であり義務教育である[11]。修了時にはNQFレベル2に認定される[12]
  • 台湾では国民中学が存在し、12-14歳を対象とした課程である。

脚注[編集]

関連項目[編集]