ドングリ

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ドングリ(団栗)はブナ科クヌギカシナラカシワなどの果実(正確には種子ではない)の総称で、狭義にはクヌギの果実を指す。内部の種子の大部分を占める子葉デンプン質に富む。

小動物の食料や、日本の古典的な玩具の材料になる。

ドングリは樹種により多様な形状があるが、一つの種類に属しているドングリ複数個を並べて比較した場合、いずれの樹種であっても形状はほぼ同一である。このことから、抜きん出たものが存在しない集団を指して、「団栗の背比べ」と言う。

「団」は「まるい」という意味を持ち、団栗は「丸い栗」という意味になる。

餌としてのドングリ

ドングリを作るブナ科植物は、暖帯から温帯にかけての森林では、どこでも主要な構成樹種である。暖帯では常緑のシイカシ類が照葉樹林の主要構成樹種であり、温帯ではブナミズナラなどが落葉広葉樹林の中で占める割合が大きい。人工的な撹乱がある場所では、クヌギコナラなどが出現する。 彼らの果実生産量は大きいもので、個々の果実も大きく、肥大した子葉に大量のデンプンを蓄えている事から、特に哺乳類にとって、秋の重要な食料である。ドングリの出来不出来は、彼らの秋から冬の生存に大きな影響をもたらす。2004年は、秋に北陸で多数のツキノワグマが人里に出没した事で話題をよんだが、この年の落葉樹林のドングリは不作だったとされている。 ドングリを餌として家畜を育てると、非常に良質な植物性タンパク質を摂取することにより、美味かつ不飽和脂肪酸の豊富な健康食品になることで注目されている。

種子散布システムとしてのドングリ

果実としてのドングリは特に目立った種子散布器官を持たないように見えるため、古くは種子散布の形式を重力散布とみなされた。つまり、童謡にあるように「ころころ」と単純に転がることで種子散布を図っているとされたのである。しかし、今日では上述の動物の餌としての重要性がこの仲間の種子散布に大きな役割を果たしているとされている。

ドングリを秋から冬にかけての重要な食料としている動物の中に、ネズミ類、リス類、カケス類のように林床に少数ずつ分散して埋蔵貯食するものがある。こうした動物が埋めたドングリは、大半が越冬時の食料として消費されるが、春までに一部が余って食べ残される。これが親植物から離れた地点で発芽して新世代の植物となるのである。

また、ドングリは乾燥に弱く、単に林床に落ちただけでは乾燥によって速やかに発芽能力を失うことが多い。ネズミ等による貯食は、この乾燥から免れる効果もあるとされている。

利用

食品

  • ドングリは渋み(主にタンニン)が非常に強く、一般に人間がそのまま食用とするには適さないが、スダジイマテバシイハシバミカバノキ科だが形はドングリに類似)など一部の種では渋みがなく食べられる。また、縄文時代においては渋抜きをして食用にしていたと考えられている。その後も飢饉太平洋戦争直後の食糧難時代によく利用されたのみならず、米の栽培困難な東北山村などいくつかの地域では、大正期あたりまで主食格の食品として重要であった。
  • ドングリの渋抜きの方法としては、流水に数日さらす方法と、煮沸による方法がある。特に煮沸の場合、木灰汁を用いることがある。日本においては、前者は主に西日本から広がる照葉樹林帯の地域で、後者は東北地方信州に広がる落葉広葉樹林帯で認められる。また、渋みの少ない種の場合は、から煎りでもあく抜きになる。
  • 北上山地山村では、ナラ(ミズナラ)の実を粉砕して皮を除き、湯、木灰汁などを用いて渋抜きした「シタミ粉」と呼ばれるものが作られていた。シタミ粉は通常湯で戻し、状にして食べた。
  • 熊本では、カシ類(イチイガシ)の実から採取したデンプンで作る、「イチゴンニャク」や「カシノキドーフ」、あるいはシイの実を用いた「シイゴンニャク」といった葛餅状の食品が知られている。
  • 韓国でも、ドングリ(韓国語で「ドトリ(도토리)」)から採取したデンプンを、「ムク()」と呼ばれる葛餅ないし外郎状の食べ物にする。元々は食料が不足していた時代や、飢饉の年に食べられた救荒食料だが、一部の地方で受け継がれ、最近では健康食品として見直されたことにより、大量生産されて市場に流通している。大衆食堂で副食として出されることが多いが、最近ではクッパのようにと一緒にスープに入れた「ドトリムク・パプ(도토리묵 밥=ドトリムク飯の意)」が一品料理にもなっている。
    また、以前は、皮を剥いてから、水さらしと加熱によって渋抜きをしたドングリの実を用い、米と炊いたドングリ飯、また粉を用いたドングリ、ドングリ、ドングリうどん、ドングリ水団なども作られていたようである。

その他

玩具や工芸品の材料として用いられる。例えば、軸を付けてヤジロベエ独楽(コマ)などの玩具とする。

関連項目

外部リンク

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