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(シュレーディンガーの猫が指摘した物)
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'''シュレーディンガーの猫'''(シュレーディンガーのねこ)とは、[[物理学者]]の[[エルヴィン・シュレーディンガー]]が提唱した[[思考実験]]である<ref name="Spaper">E. Schrödinger, "Die gegenwärtige Situation in der Quantenmechanik" Naturwissenschaften, 23(1935) pp.807-812 [http://www.springerlink.com/content/l50v426520375016/], pp. 823-828 [http://www.springerlink.com/content/hl6541202ukn4741/], pp. 844-849 [http://www.springerlink.com/content/m489741169604131],
'''シュレーディンガーの猫'''(シュレーディンガーのねこ)とは、[[物理学者]]の[[エルヴィン・シュレーディンガー]]が文献<ref name="Spaper">E. Schrödinger, "Die gegenwärtige Situation in der Quantenmechanik" Naturwissenschaften, 23(1935) pp.807-812 [http://www.springerlink.com/content/l50v426520375016/], pp. 823-828 [http://www.springerlink.com/content/hl6541202ukn4741/], pp. 844-849 [http://www.springerlink.com/content/m489741169604131],
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英訳 Proceedings of American Philosophical Society 124 (1980) pp. 323-338 [http://links.jstor.org/sici?sici=0003-049X%2819801010%29124%3A5%3C323%3ATPSIQM%3E2.0.CO%3B2-4] [http://www.tu-harburg.de/rzt/rzt/it/QM/cat.html]
 
英訳 Proceedings of American Philosophical Society 124 (1980) pp. 323-338 [http://links.jstor.org/sici?sici=0003-049X%2819801010%29124%3A5%3C323%3ATPSIQM%3E2.0.CO%3B2-4] [http://www.tu-harburg.de/rzt/rzt/it/QM/cat.html]
</ref>で提唱した[[量子論]]に関する[[思考実験]]である。この思考実験は、かつて、<!--主体的観測者の「自我」が測ったと意識したときに波動関数が収縮して測定が完成するとした-->[[ジョン・フォン・ノイマン|ノイマン]]-[[ユージン・ウィグナー|ウィグナー]]理論に対する批判としてシュレーディンガーによって提出されたパラドックス<ref>並木美喜雄(1992)「量子力学入門」岩波新書 120頁</ref>であり、量子力学の統計的解釈が問題を引き起こすことを指摘した<!--[[矛盾]]を示す物であった-->。
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</ref>。
 
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この思考実験は、[[観測問題]]を示すパラドックスである。
<!--なお、この思考実験によって、[[人間]]の[[意識]]が[[量子力学]]的作用を及ぼすことが証明されるわけではない。--><!--と思っている人が見うけられる{{要出典}}が、それは誤解であり、--><!--この思考実験は、そうした説に対して肯定も否定もしない。(とりあえず出典がないのでコメントアウト)-->
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また、これはあくまで思考実験であって、実際の実験ではない。量子物理学者が量子力学の謎を解くために実際に猫を何匹も殺しているわけではないので、[[動物愛護]]の点でも問題はないし、物理学者が特に残酷なわけでもない。
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[[画像:Schrodingerscat.jpg|350px|right]]
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== 思考実験の内容 ==
 
== 思考実験の内容 ==
まず、蓋のある箱を用意する。この中に[[猫]]を一匹入れる。箱の中には他に、放射性物質の[[ラジウム]]、粒子検出器、[[シアン化水素|青酸]]ガスの発生装置を入れておく。
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まず、外部との干渉が起きない頑丈な箱を用意し、その中に[[猫]]を入れる。他に、箱の中には、放射性物質と放射線粒子の検出器に連動した毒ガスの発生装置を入れておく。
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ここで、箱の中にある放射性物質がラジウムが[[アルファ粒子]]を放出すると、それを粒子検出器が感知し、毒ガス発生装置を起動して、猫を死に至らしめる。
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しかし、アルファ粒子が放出されなければ、粒子検出器が粒子を感知せず、毒ガス発生装置が起動しないので、猫は死なない。
  
もし箱の中にあるラジウムが[[アルファ粒子]]を出すと、これを検出器が感知し、その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、猫は死ぬ。しかし、アルファ粒子が出なければ検出器は作動せず、猫は生き残る。
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この実験において、アルファ粒子発生の有無は、量子力学的な確率で決まるとされる。
 
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仮にアルファ粒子が出る確率が50%となるような時間だけ猫を箱に閉じ込めたとして、その後、蓋を開けたとき、猫の生死はどうなっているだろうか。
この実験において、ある時間内にラジウムがアルファ粒子を出すかどうかは完全に確率の問題である。仮に1時間でアルファ粒子が出る確率が50%だとして、この箱の蓋を閉めて1時間放置したとする。1時間後、猫は生きているだろうか。それとも死んでいるだろうか。蓋を開ける前は、生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせなのだろうか。
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これは、アルファ粒子を放出するかどうかという量子力学的な現象を、猫の生死に反映させる思考実験である。
 
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== 歴史 ==
すなわち、ラジウムがアルファ粒子を出したかどうかという量子的な問題が、猫が生きているかどうかという通常の世界に投影されたわけである。
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1932年、[[ジョン・フォン・ノイマン]]は、今日の量子力学の数学的理論の元になる書籍を発行した<ref>『量子力学の数学的基礎』 井上健・広重徹・恒藤敏彦訳、みすず書房、1957年。</ref>。フォン・ノイマンは、この中で、[[隠れた変数理論]]が実現しないことを証明したとされる。
 
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これに反発したアルベルト・アインシュタインらは俗にERP論文と呼ばれる論文を発表し<ref>Einstein, A., Podolsky, B. and Rosen, N. (1935) [http://prola.aps.org/abstract/PR/v47/i10/p777_1 Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality Be Considered Complete?], ''Phys.  Rev.'' '''47''', 777-780</ref>[[エルヴィン・シュレーディンガー]][[シュレーディンガーの猫]]と呼ばれる思考実験を発表した<ref>E. Schrödinger, "Die gegenwärtige Situation in der Quantenmechanik" Naturwissenschaften, 23(1935) pp.807-812 [http://www.springerlink.com/content/l50v426520375016/], pp. 823-828 [http://www.springerlink.com/content/hl6541202ukn4741/], pp. 844-849 [http://www.springerlink.com/content/m489741169604131],
== 背景 ==
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英訳 Proceedings of American Philosophical Society 124 (1980) pp. 323-338 [http://links.jstor.org/sici?sici=0003-049X%2819801010%29124%3A5%3C323%3ATPSIQM%3E2.0.CO%3B2-4] [http://www.tu-harburg.de/rzt/rzt/it/QM/cat.html]
[[フォン・ノイマン]]によって完成させられた、量子力学の統計的方法は多くの科学者から、その実用的な側面で受け入れられたが、一方でこの方法は量子の単一過程(たとえば、一つの原子がいつ光を輻射するか)については確率的にしかわからない。このことはこの方法の”不完全さ”を指摘されることとなる<ref>ここで"不完全さ"に"..."が付いている一因は、より完全な記述法がそもそも無いならば古典力学的な観点から不完全と呼ぶことに量子力学的には意味がなくなることにもある。記述の完全さを数値であらわして実験で測定に掛ける事が出来る事が後の研究で知られている。[[ベルの不等式]]などを参照。</ref>。そのような代表的な例としては[[アインシュタイン=ポドルスキー=ローゼンのパラドックス]](EPRパラドックス)が挙げられる。以下[[マックス・ヤンマー|M.ヤンマー]]の解釈に従って解説する。
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</ref>。しかし、これらの論文では、フォン・ノイマンの数学的証明を覆すには至らなかった。
 
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== 問題点 ==
M.ヤンマーはこのEPRパラドックスがシュレーディンガーが猫のパラドックスを発表する背景にあった事をその著書<ref>マックス・ヤンマー著/井上健訳「量子力学の哲学」p.p.245~260</ref>の中に記している。シュレーディンガーはその論文<ref name="Spaper"/>の初めの部分にこのEPRパラドックスの結果を再確認し、それを量子力学の深刻な欠陥の一つの表れと見なした。
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[[画像:Double_cat.png|right]]
さらに、シュレーディンガーはこの論文でEPRパラドックスとは違った、量子力学の"欠陥"についての指摘を行った。それがシュレーディンガーの猫のパラドックスである。
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フォン・ノイマンの数学的理論では、隠れた変数理論は成り立たず(後に、[[デヴィッド・ボーム]]がノイマンの証明を覆す)、[[可観測量]]を決定するためには観測行為が必要となる(射影仮説)<ref>[http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/MathSci469(2002).pdf 清水明「量子測定の原理とその問題点」]</ref><!--<ref>I.プリゴジン著/小出昭一郎・安孫子誠訳「存在から発展へ」p.p.76~78</ref>-->
 
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よって、観測前にはアルファ粒子の放出の有無は確定していないことになる。
== シュレーディンガーの猫が指摘した物 ==
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それでは、アルファ粒子の放出の有無を確定せしめる「観測」は何時の段階で行なわれるのか。
フォン・ノイマンの統計的方法の示すところは、[[隠れた変数理論]]は成り立たず(後に、[[デヴィッド・ボーム]]がノイマンの証明を覆す)、「可観測量を決定するためには観測行為が必要となる(射影仮説)」というものである。<ref>[http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/MathSci469(2002).pdf 清水明「量子測定の原理とその問題点」]</ref><!--<ref>I.プリゴジン著/小出昭一郎・安孫子誠訳「存在から発展へ」p.p.76~78</ref>-->つまり、量子的な系と観測装置まで含めた全系の状態は観測されない限り、もつれ合ったままの関数によって記述される。そうであるならば、観測装置自体を箱で囲い、観測されないようにしてしまえばどうなるであろうか。
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当時の物理学の知見では、何が「観測」となるのか、明確に定義することは出来ない。
 
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この思考実験の過程における各種現象は、量子力学的には全て対等であり、特別扱いする根拠のある現象は1つもない。
今、量子的な系で知られるある放射性原子を考えると、原子の状態を表す関数は
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よって、いずれかの現象が状態を確定させるとすると、全ての現象が状態を確定させることになり、量子は波動性を持ち得ない。
: |原子の状態&gt;=|放射線を放出する&gt;+|放射線を放出しない&gt;
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清水明は「この世界の全てが量子論のユニタリー時間発展に従うと考える」と「どちらか定まらないものから,どちらか一方だけを選び取る」のに必要な「常に定まった値をとるダイナミックスに従うもの」がなくなる<ref>[http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/MathSci469(2002).pdf 清水明「量子測定の原理とその問題点」]</ref>として、状態を確定させる要因がないことを説明している。
という二つの状態の重ね合わせによって表される。この放射性原子を上に示したような装置と猫とともに箱の中にしまった場合、上の主張が正しいならば、
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しかし、いずれの現象でも状態が確定しないとすると、量子の粒子性と合致しない(右図は[[二重スリット実験]]の例)。
: |箱の中の状態&gt;=|放射線が放出され猫が死んでいる&gt;+|放射線が放出されず猫は生きている&gt;
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このように、可観測量がどのような過程において決定されるか分からず、「観測」が何を示すのか定義できないことを[[観測問題]]と呼ぶ。
という重ね合わせの状態になっているはずである。つまり、箱の中では、箱を開けてそれを確認するまで、猫が死んでいるのと生きているのとが重ね合った状態になっているというのである。もし、これが現実であるとするならば、「マクロスコピックな観測をすれば別々の物とはっきり認める事が出来るはずのマクロスコピックな系の諸状態は観測されていようといまいと区別される」という”状態見分けの原理”と矛盾し、<ref>[[マックス・ヤンマー]]著/井上健訳『量子力学の哲学』p.251</ref>(要は、現実と照らし合わせて受け入れがたく)量子力学的記述が完成されていない事を示している。
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このような重ね合わせの不思議さは、シュレーディンガー以前から考えられていたことであるが、M.ヤンマーはこの例が他の例と違うところは、観測という過程によって行き着く先が猫の生と死という相互に排他的でかつ相矛盾する性質を持った二つの間の選択になっているということである、と指摘している。
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== 実用的な解決 ==
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しかし、このような不完全さは実用的には問題ない事も述べられている。M.ヤンマーはH.Puttnamの言葉を引用している。要約すると、「たいていの物理学者はマクロスコピックな観測はつねにはっきりした値を保持していることを受け入れている。猫の例でいえば、マクロな観測とは猫が電気的に殺されるとするならばそれ自体がマクロな観測であり、猫がその電気を感じるか感じないかというそのときなのである。」
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しかし、一方でH.Puttnamこのようにも述べている:
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「しかし、シュレーディンガーの猫の持つ知的な意義は、そうした事によって損なわれるわけではない。マクロスコピックな観測がいついかなる時もはっきりとした値を保持するという原理は量子力学という基礎から導きだされるのではなく、むしろそれは付加的な仮定として引き入れられている、ということである。」
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<!--この後、[[デコヒーレンス]]の理論が発達する事で、マクロな系においては外からの陽動により、常に状態が収束し、マクロ観測ははっきりとした値を保持する事が、数式として示される事となり、シュレーディンガーの猫のパラドックスは実用的にはほぼ解決したといわれるようになるが、それは[[観測問題]]の本質(つまりは単一仮定をどのようにとらえるか、波束の収束とは何かといった問題)がかいけつしたわけではない。{{要出典}}-->
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== 観測問題 ==
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Puttnamが指摘したように、マクロスコピックな観測がいつもはっきりした値であるという原理は、経験的に得られた仮定でしかない。可観測量がどのような過程において決定されるかは明らかになっていない。現在の物理学の知見では、可観測量を決定する物理現象を特定できず、「観測」が何を示すのか定義できない。つまり、実用的な問題は無いにしてもシュレーディンガーが示した量子力学の不完全性が克服されたわけではない。このことは、EPRパラドックスなどと併せて[[観測問題]]と呼ばれる。この観測問題は物質の認識や実在性と関わり科学・哲学の分野において未だ議論の続いている問題として残っている。
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また、シュレーディンガーの猫を変形したものに、ウィグナーの友人のパラドックス<ref>並木美喜雄(1992)「量子力学入門」岩波新書 167頁</ref>がある。これは、ガスの発生装置をランプに、猫をウィグナーの友人に置き換えたものである。この場合、箱の外の観測者が箱の中の友人に観測結果を尋ねることが観測であるのか、それとも箱の中の友人がすでに観測を終えているのかという問題が生じる。
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== 様々な解釈 ==
 
== 様々な解釈 ==
{{節stub}}
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=== コペンハーゲン解釈 ===
=== コペンハーゲン派の解釈 ===
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[[コペンハーゲン解釈]]で採用される[[射影仮説]]では、観測問題に全く踏み込んでいない。
{{main|コペンハーゲン解釈}}
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コペンハーゲン解釈では、実験結果を重視し背後にある実在は考えないものとしているので、観測問題の解決策は示さない。
<!--観測者が箱を開けて観測を行った瞬間、その猫の状態群が一つの状態に収束する('''波動関数の収縮''')、というもの。--><!--これで良くないですか?文系も読むこと考えると。--><!--
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=== 人間原理 ===
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人間原理的立場を取り、観測者の意識が状態を確定させると解釈する人もいるが、物理学者の中では少数派である。
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=== 隠れた変数理論 ===
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隠れた変数理論では、アルファ粒子の発生の有無が最初から確定しているので、猫の生死も確定している。
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しかし、現在は、コッヘン・シュペッカーの定理<ref>S.Kochen and E.P. Specker, "The problem of hidden variables in quantum mechanics", ''Journal of Mathematics and Mechanics'' '''17''', 59-87 (1967).</ref>によって隠れた変数理論は否定されている。
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=== GRW ===
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GRWでは、システム全体の粒子の数が[[波動関数]]の収縮速度を決めるため、ミクロ系だけでは収縮が殆ど進まないのに対して、マクロ系と相互作用すると瞬時に収縮が起きる<ref>Colin Bruce著/和田純夫訳「量子力学の解釈問題―実験が示唆する『多世界』の実在」P.255-256</ref>。シュレーディンガーの猫では、検出器や発生装置や青酸ガス等との相互作用により、波動関数が瞬時に収縮し、猫の生死の重ねあわせは生じない。
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=== 量子デコヒーレンス理論 ===
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[[量子デコヒーレンス理論]]では、相互作用を及ぼす相手の大きさによって波動関数の収縮速度が変化する<ref>Colin Bruce著/和田純夫訳「量子力学の解釈問題―実験が示唆する『多世界』の実在」P.131-138,167,168</ref>。
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観測問題を解決できる理由はGRWとほぼ同じ。
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=== エヴェレット解釈 ===
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エヴェレット解釈では、猫は何時まで経っても生死の重ねあわせ状態である。
 +
ただし、観測者と猫が量子もつれになることで、生きた(死んだ)猫の観測者と生きた(死んだ)猫が一対一で対応するよう、観測者視点における猫の生死が確定するとする。
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しかし、実験結果と整合させるために必須<ref>[http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/MathSci469(2002).pdf 清水明「量子測定の原理とその問題点」]</ref>の射影仮説がないため、厳しく批判されている<ref>[http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/handai2009.pdf 清水明"Modern Theory of Quantum Measurement and its Applications"]</ref>。
  
''コペンハーゲン派''は基本的に収縮を認める立場であるが、収縮を道具(実用的な利用価値だけを認め、解釈には触れない)と見做す道具主義的である''現代コペンハーゲン派''の立場と、収束の詳細を積極的に解釈すべきであるという立場に分かれる。
+
=== 多世界解釈 ===
 
+
[[多世界解釈]]では、量子デコヒーレンス理論を採用することで観測問題の解決を図っている。
また、解釈の前提として観測者を特別視しているため、どのような存在であれば観測者とみなせるか、収束を起こすことが可能となる十分条件とは何か、という点がよく議論の対象となる(リンク:[[デコヒーレンス]])。
+
尚、量子デコヒーレンス理論は、多世界解釈特有の理論ではない。
 
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[[ロジャー・ペンローズ|ペンローズ]]は、観測者は意識を持った存在でなければならないとする立場に立っているが、そもそも意識についての物理学上の合意は存在しないため(さらに言えば、哲学上の合意も存在しないため)、今のところ検証不能である。
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+
例えば、猫を人間に置き換え、「猫の生死を観測する」という部分を「その人間が実験の意味を知らずに結果だけを研究者に知らせる」と書き直してみる。そうすると観測するのは誰か?あるいは誰が意識を持っているのか?という問題に突き当たる。この形を'''ウィグナーの友人'''という。-->
+
 
+
=== エヴェレット解釈(多世界解釈) ===
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{{main|多世界解釈}}
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<!--''観測者を特別視せず、観測者も記述の中に含めよう''という考え方から生まれた解釈である。
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'''[[パラレルワールド|並行世界]]説'''という通俗的なイメージは誤解である。
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+
エヴェレット解釈では、箱の中に存在する猫の重ね合せ状態は、観測を行う前も後も変わらない。観測によって、'''生きている猫を観測した観測者'''と'''死んでいる猫を観測した観測者'''の[[重ね合わせ]]状態に分岐する(宇宙全体が並行に分岐するわけではない点で、並行世界の概念とは大きく異なる)。分岐した後には'''生きている猫を観測した観測者'''または'''死んでいる猫を観測した観測者'''の一方しか残らないため、矛盾は存在しない、という考え方である。
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+
エヴェレット解釈の利点は、コペンハーゲン派が主張する収縮の概念を用いないことである。
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--><!--
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しかし観測者を含むマクロな系で波動関数を導くことは、量子力学の方程式の前提(ミクロ世界であること)に反するという、根本的な難点もある。
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-->
+
<!--↑の最後の文。「解釈」は理論ではありません。科学的に実証できるものは理論、実証できないものが解釈と呼ばれます。解釈は「どれも正しく、どれも実証できません」。ただ、より直感に近いものが支持されているというだけです。-->
+
 
+
<!--エヴェレット解釈の前提は、量子力学はミクロの世界だけでなくマクロの世界も記述できる、ということである。これは「観測者も記述の中に含める」という冒頭の考え方に由来する。しかしながら、それが成立するという合意は、一般的には得られていない。-->
+
<!--↑これは量子力学全体の前提ですので、ここに書くのはエヴェレット解釈に対する負の誤解を与えてしまう可能性がありそうです。コメント化しました。-->
+
<!--コペンハーゲン解釈も、エヴェレット解釈も、観測結果を矛盾なく説明できるという点で、理論上は間違いだとは言えないが、日常の感覚とかけ離れているし、物理学的な難点も多く含むため、現在でも量子力学における話題となっている。-->
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<!--
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+
=== ファインマンの解釈 ===
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コペンハーゲン解釈でもエヴェレット解釈でもない解釈として、[[リチャード・P・ファインマン|ファインマン]]の解釈がある。この解釈では、「二つの状態の重ね合わせ」という発想を取らず、「無数の状況の総和」という発想を取る。
+
 
+
シュレーディンガーの猫に即して言えば、時刻 T<sub>1</sub> と T<sub>2</sub> の間に微小な時間幅''Δ''Tを考え、その''Δ''Tにおける猫(砕かれた ''Δ''猫とも言うべきもの)の生死の値を、'''無数の''' ''Δ''Tについて総計する。こうして得られた積分値が、猫の生死の確率的な平均値である。ここでは「無数の」という発想を取るので、無数の猫(''Δ''猫)を考えていることになる。
+
 
+
[[二重スリット実験]]に即して言えば、一つまたは二つの量子が経路をたどるのではなく、無数の量子(砕かれた ''Δ''量子とも言うべきもの)が経路をたどる。ここでは「無数の」という発想を取るので、無数の経路を考えていることになる。
+
 
+
いずれにせよ、「一つの猫」や「一つの粒子」を考えているわけではないので、「一つの猫」や「一つの粒子」について「複数の状態」を考えるコペンハーゲン解釈とは異なる。また、「複数の世界」を考えているわけでもないので、エヴェレット解釈とも異なる。実際、ファインマンの解釈では、観測者は分岐しないで一人のままである。
+
 
+
ファインマンの解釈の根幹は、粒子の「状態」や「世界」が複数になるかわりに、粒子そのものが(計算上で)細かく分割されて複数になることだ。なお、ファインマンの解釈の計算法については、[[経路積分]]の項を参照。
+
 
+
=== 量子デコヒーレンス ===
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[[量子デコヒーレンス]]による解釈もある。該当項目を参照。
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-->
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<!--
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== 二重スリット実験との関連 ==
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シュレーディンガーの猫の問題は、[[二重スリット実験]]とも関連する。実験の詳細は該当項目を見てもらうとして、この実験について、前述の二つの解釈は、次のように説明するだろう。
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コペンハーゲン解釈による説明。「一つの粒子が二つのスリット(スリットAとスリットB)を同時に通る」
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多世界解釈による説明。「一つの粒子が一つのスリット(スリットAまたはスリットB)を通る。そのような世界が二つ生じる(分岐する)」
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ここでは、「スリットA」と「スリットB」が、シュレーディンガーの猫における「生」と「死」に相当する。
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さて。問題は、この両者が干渉して干渉縞を生じる、ということだ。二つの粒子が干渉縞を生じるのならばわかるが、一つの粒子が干渉縞を生じるとはどういうことか?
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+
コペンハーゲン解釈では、粒子は観測されていない時連続的な波として振舞うので、分裂して自身と干渉することも可能と考える。しかし「観測」してしまえば「一つの粒子」に収縮してしまうので、波や分裂そのものを観測することはできないのが難点。またなぜ観測によって収縮が生じるのかも説明できない。
+
 
+
多世界解釈では、「二つの世界が干渉する」という点が難点となる。そも相互作用を起こさないからこそのパラレルワールドであるのに、その間で干渉が生じるというのは考えがたい。観測されるまでは不完全な「分岐」だと考えることもできるが、そうなると「観測」を特別視しているコペンハーゲン解釈と大差なくなる。
+
 
+
こうして、コペンハーゲン解釈もエヴェレット解釈も、二重スリット実験を説明するときに不自然さが生じる(論理的に矛盾するわけではないが)。
+
 
+
[注:ファインマンの解釈では、この問題は生じない。無数の量子(砕かれた''Δ''量子)がたがいに波のように干渉すると見なせるからだ。それはつまり、経路積分の計算をすると干渉縞が生じるような積分値が出る、ということだ。なお、計算によってこういう結果が出るのは、波動関数の由来による。[[シュレーディンガー方程式]]が、[[波動方程式]](波の性質をもつものとして対象を規定する微分方程式)であることに注意]
+
 
+
== 観測と決定 ==
+
シュレーディンガーの猫については、「観測と決定」という問題も話題となっている。これは「観測が現実を決定する」という解釈と関係する。
+
 
+
(1)
+
 
+
コペンハーゲン解釈によると、「観測者が観測した瞬間に、重ね合わせの状態が解除されて、現実が一方に決定される」と考える。個別例では、こうだ。
+
 
+
「シュレーディンガーの猫では、観測以前には猫の生死は重ね合わせの状態にあるが、観測者が観測したことで生死が一方に定まる。観測が現実を決定する。観測のタイミングは恐らくマクロな系と相互作用を生じた時」
+
 
+
「二重スリット実験では、観測以前には粒子は各スリットを通る二つの経路の重ね合わせ状態にあるが、一方のスリットで粒子を観測したときに、どちらの経路を通ったかが決定される。決定されてしまうと波として振舞えなくなるため干渉縞は消える」
+
 
+
(2)
+
 
+
エヴェレット解釈によると、「観測以前も観測以後も重ね合わせは残る。主観的に収縮して見えるのは観測者自身も各可能性に「拡散」するからだ」と考える。個別例では、こうだ。
+
 
+
「シュレーディンガーの猫では、観測以前には猫の二つの可能性(平行世界)が重ねあわされており、観測以後は観測者にまで重ねあわせが拡大し、死んだ猫を見た観測者という可能性と生きている猫を見た観測者という可能性の重ね合わせが生じる。主観的には見える状態は一つだけであるため、収縮したように見える」
+
 
+
「二重スリット実験では、観測以前には粒子は各スリットを通る二つの可能性が存在しており、観測とともに『Aスリットを通った電子をみた観測者』と『Bスリットを通った電子を見た観測者』に観測者自身が分岐する。一度分岐が生じてしまうと「他の観測者が見ている可能性(世界)」とは相互作用が生じなくなるため、干渉縞はなくなる」
+
 
+
(3)
+
 
+
ファインマンの解釈では、観測という概念は現れない。観測とは関係なく事実は決まる。個別例では、こうだ。
+
 
+
「シュレーディンガーの猫では、観測しようが観測しまいが、猫の生死は[[確率]]的に決まる」
+
 
+
「二重スリット実験では、観測しようが観測しまいが、始点と終点との間で無数の経路を取る。スリットにおいて電子が観測された場合には、経路が二つに分断される。〈 始点 <BIG>────</BIG> 終点 〉が〈 始点 <BIG>──</BIG> 途中点 <BIG>──</BIG> 終点 〉というふうに二段階になる。この二通りの場合では、それぞれ別の形で経路積分が計算される。それだけのことだ。観測者が観測したかどうかは関係なく、経路が一段階か二段階かだけが関係する」
+
-->
+
 
+
== 科学以外の分野に与えた影響 ==
+
この思考実験は[[哲学]]や[[文学]]、[[ゲーム]]などの分野にも影響を与えている。
+
 
+
=== 哲学における議論 ===
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この思考実験は[[哲学]]の次の二つの分野でもしばしば議題に上る。ひとつは量子力学の[[解釈問題]]の議論の前提となる科学的定義に関する[[科学哲学]]においてである<ref>高林武彦 著、保江邦夫 編 『量子力学 観測と解釈問題』 海鳴社 2001年 ISBN 4-87525-204-8</ref>。この場合は、量子力学の理論的枠組みが、従来の科学哲学に基づいた定義にそぐわないことを指摘する上で、この思考実験が引用される。そしてもうひとつは[[心の哲学]]において心の因果作用(→[[因果的閉鎖性|物理領域の因果的閉鎖性]]の項を参照)を議論するにあたって、[[量子力学]]の確率過程が問題となってくる場合においてである。<ref>『デイヴィッド・チャーマーズ著, 林 一訳 「意識する心」2001 ISBN 4-8269-0106-2』の407-435頁。「量子力学の解釈」</ref>。
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=== ゲームへの影響 ===
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[[ローグライクゲーム]]の[[NetHack]]では、登場する敵の量子[[物理学者]]はときどき大きな箱を落とす。その中にはシュレーディンガーの猫と名付けられた家猫が入っていて、ゲームのコード上では箱をプレーヤーが開けた際に50%の確率で猫の生死が確定する<ref>[http://nethack.wikia.com/wiki/Quantum_mechanic Wikihackの記事], [http://www.hackaholic.net/pukiwiki/index.php?%CE%CC%BB%D2%CA%AA%CD%FD%B3%D8%BC%D4 hackaholic の記事]。</ref>。
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== 参考文献 ==
 
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== 関連項目 ==
 
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* [[量子力学]]
 
* [[観測問題]]
 
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*[[wiki:シュレーディンガーの猫]]
 

2010年2月6日 (土) 23:09時点における最新版

シュレーディンガーの猫(シュレーディンガーのねこ)とは、物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが提唱した思考実験である[1]。 この思考実験は、観測問題を示すパラドックスである。

思考実験の内容[編集]

まず、外部との干渉が起きない頑丈な箱を用意し、その中にを入れる。他に、箱の中には、放射性物質と放射線粒子の検出器に連動した毒ガスの発生装置を入れておく。 ここで、箱の中にある放射性物質がラジウムがアルファ粒子を放出すると、それを粒子検出器が感知し、毒ガス発生装置を起動して、猫を死に至らしめる。 しかし、アルファ粒子が放出されなければ、粒子検出器が粒子を感知せず、毒ガス発生装置が起動しないので、猫は死なない。

この実験において、アルファ粒子発生の有無は、量子力学的な確率で決まるとされる。 仮にアルファ粒子が出る確率が50%となるような時間だけ猫を箱に閉じ込めたとして、その後、蓋を開けたとき、猫の生死はどうなっているだろうか。 これは、アルファ粒子を放出するかどうかという量子力学的な現象を、猫の生死に反映させる思考実験である。

歴史[編集]

1932年、ジョン・フォン・ノイマンは、今日の量子力学の数学的理論の元になる書籍を発行した[2]。フォン・ノイマンは、この中で、隠れた変数理論が実現しないことを証明したとされる。 これに反発したアルベルト・アインシュタインらは俗にERP論文と呼ばれる論文を発表し[3]エルヴィン・シュレーディンガーシュレーディンガーの猫と呼ばれる思考実験を発表した[4]。しかし、これらの論文では、フォン・ノイマンの数学的証明を覆すには至らなかった。

問題点[編集]

Double cat.png

フォン・ノイマンの数学的理論では、隠れた変数理論は成り立たず(後に、デヴィッド・ボームがノイマンの証明を覆す)、可観測量を決定するためには観測行為が必要となる(射影仮説)[5]。 よって、観測前にはアルファ粒子の放出の有無は確定していないことになる。 それでは、アルファ粒子の放出の有無を確定せしめる「観測」は何時の段階で行なわれるのか。 当時の物理学の知見では、何が「観測」となるのか、明確に定義することは出来ない。 この思考実験の過程における各種現象は、量子力学的には全て対等であり、特別扱いする根拠のある現象は1つもない。 よって、いずれかの現象が状態を確定させるとすると、全ての現象が状態を確定させることになり、量子は波動性を持ち得ない。 清水明は「この世界の全てが量子論のユニタリー時間発展に従うと考える」と「どちらか定まらないものから,どちらか一方だけを選び取る」のに必要な「常に定まった値をとるダイナミックスに従うもの」がなくなる[6]として、状態を確定させる要因がないことを説明している。 しかし、いずれの現象でも状態が確定しないとすると、量子の粒子性と合致しない(右図は二重スリット実験の例)。 このように、可観測量がどのような過程において決定されるか分からず、「観測」が何を示すのか定義できないことを観測問題と呼ぶ。

様々な解釈[編集]

コペンハーゲン解釈[編集]

コペンハーゲン解釈で採用される射影仮説では、観測問題に全く踏み込んでいない。 コペンハーゲン解釈では、実験結果を重視し背後にある実在は考えないものとしているので、観測問題の解決策は示さない。

人間原理[編集]

人間原理的立場を取り、観測者の意識が状態を確定させると解釈する人もいるが、物理学者の中では少数派である。

隠れた変数理論[編集]

隠れた変数理論では、アルファ粒子の発生の有無が最初から確定しているので、猫の生死も確定している。 しかし、現在は、コッヘン・シュペッカーの定理[7]によって隠れた変数理論は否定されている。

GRW[編集]

GRWでは、システム全体の粒子の数が波動関数の収縮速度を決めるため、ミクロ系だけでは収縮が殆ど進まないのに対して、マクロ系と相互作用すると瞬時に収縮が起きる[8]。シュレーディンガーの猫では、検出器や発生装置や青酸ガス等との相互作用により、波動関数が瞬時に収縮し、猫の生死の重ねあわせは生じない。

量子デコヒーレンス理論[編集]

量子デコヒーレンス理論では、相互作用を及ぼす相手の大きさによって波動関数の収縮速度が変化する[9]。 観測問題を解決できる理由はGRWとほぼ同じ。

エヴェレット解釈[編集]

エヴェレット解釈では、猫は何時まで経っても生死の重ねあわせ状態である。 ただし、観測者と猫が量子もつれになることで、生きた(死んだ)猫の観測者と生きた(死んだ)猫が一対一で対応するよう、観測者視点における猫の生死が確定するとする。 しかし、実験結果と整合させるために必須[10]の射影仮説がないため、厳しく批判されている[11]

多世界解釈[編集]

多世界解釈では、量子デコヒーレンス理論を採用することで観測問題の解決を図っている。 尚、量子デコヒーレンス理論は、多世界解釈特有の理論ではない。

参考文献[編集]

  1. E. Schrödinger, "Die gegenwärtige Situation in der Quantenmechanik" Naturwissenschaften, 23(1935) pp.807-812 [1], pp. 823-828 [2], pp. 844-849 [3], 英訳 Proceedings of American Philosophical Society 124 (1980) pp. 323-338 [4] [5]
  2. 『量子力学の数学的基礎』 井上健・広重徹・恒藤敏彦訳、みすず書房、1957年。
  3. Einstein, A., Podolsky, B. and Rosen, N. (1935) Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality Be Considered Complete?, Phys. Rev. 47, 777-780
  4. E. Schrödinger, "Die gegenwärtige Situation in der Quantenmechanik" Naturwissenschaften, 23(1935) pp.807-812 [6], pp. 823-828 [7], pp. 844-849 [8], 英訳 Proceedings of American Philosophical Society 124 (1980) pp. 323-338 [9] [10]
  5. 清水明「量子測定の原理とその問題点」
  6. 清水明「量子測定の原理とその問題点」
  7. S.Kochen and E.P. Specker, "The problem of hidden variables in quantum mechanics", Journal of Mathematics and Mechanics 17, 59-87 (1967).
  8. Colin Bruce著/和田純夫訳「量子力学の解釈問題―実験が示唆する『多世界』の実在」P.255-256
  9. Colin Bruce著/和田純夫訳「量子力学の解釈問題―実験が示唆する『多世界』の実在」P.131-138,167,168
  10. 清水明「量子測定の原理とその問題点」
  11. 清水明"Modern Theory of Quantum Measurement and its Applications"

関連項目[編集]