全国学力・学習状況調査
全国学力・学習状況調査(ぜんこくがくりょく・がくしゅうじょうきょうちょうさ)とは2007年より日本全国の小中学校の最高学年(小学6年生、中学3年生)全員を対象として行われるテストのことである。実施日は、毎年4月の第3もしくは第4火曜日としている。一般に「全国学力テスト」とも呼ばれるが、学力・学習状況の調査的性格のあるテストである。
目次
概要
全国学力テストは「全国中学校一斉学力調査」として1960年代にも行われた(このときは「学テ」と呼ばれていた)。しかし、学校や地域間の競争が過熱したことにより、1964年をもって全員調査を中止した。だが、近年、学力低下が問題視され、文部科学省は2007年に(小中学校にとっては)43年ぶりに全員調査を復活させた(自治体によっては以前より独自に学力調査を行っているところもある)。
基本的にすべての小中学校が参加するが、2007年は愛知県犬山市教育委員会は、市長や保護者の一部の参加意向を振り切り、「競争原理の導入になる」という理由で市立の全小中学校で参加を見送った。また、私立学校も参加が6割程度に留まった。
テストは以下のような形で行われる。
- 算数・数学と国語の2科目で、それぞれ知識力を問う問題(A)と知識活用力を問う問題(B)の2種類に分かれている。2012年からは理科が加わり3教科の調査を予定している。
- 学力を問う問題だけでなく、児童・生徒の学習・生活環境のアンケート調査も行う。
- 時程は、自治体、学校によって若干ずれる(各校の1時限目開始時刻から始める)が、小学6年生の場合は4時限目まで、中学3年生の場合は5時限目で終了する。
- 2007年には小学6年生は記名式(中学3年生は番号式)だったため、個人情報の把握、漏洩の懸念の声があったため、文科省は急遽、特例で番号式を小6でも認めた。2008年のテストでは小6も番号式に変更された。
歴史
- 1956年 - 全国の小中学生・高校生の一部を対象に始まる。
- 1961年 - 中学2、3年生は全員が対象となる。
- 1962年 - 高校生の学力調査がこの年を最後に中止となる。
- 1965年 - 学校や地域間の競争激化や教職員らの反対闘争によって、この年から中学生の学力調査が全員調査から抽出調査になる。
- 1966年 - 旭川地方裁判所が国による学力調査は違法と認定。これにより学力調査そのものがこの年を最後に中止となる(旭川学テ事件。しかし、その後の最終審(1976年)では、「本件学力調査には、手続上も実質上も違法はない」との認定がなされた)。
- 1982年 - 全国の小中学生の一部を対象に再開する。
- 2002年 - 全国の高校生の一部を対象に再開する。
- 2004年 - 11月4日、中山成彬文部科学大臣(当時)が経済財政諮問会議(第27回会議)に臨時議員として出席し、「子供のころから競い合い、お互いに切磋琢磨するといった意識を涵養する。また、一時はいろいろいわれたが、まさに大学全入の時代であるため、全国学力テストを実施する」と発言した。
- 2005年 - 6月21日、政府は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」を閣議決定し,その中で「児童生徒の学力状況の把握・分析、これに基づく指導方法の改善・向上を図るため、全国的な学力調査の実施など適切な方策について、速やかに検討を進め、実施する」とした。
- 2007年 - 学力低下の批判を受け、全国の小学6年生、中学3年生に全員調査を再開する。
- 2010年 - 約3割の抽出調査に調査方法を変更。抽出されなかった学校でも希望があれば、自主参加できる方式をとっており、約7割の学校が参加した。
- 2011年 - 東日本大震災の影響で、この年の学力調査は中止となった。
意義
- 児童・生徒の学力の状況が客観的に把握できる(抽出調査よりも全員調査の方が当然把握しやすい)。
- 児童・生徒の学力と学習・生活環境の関連が分析できる。
- 成績が上位の自治体・学校の教育方法を他の自治体・学校が参考にしやすくなる。
- 児童・生徒にとっても学習内容の振り返りができる。
- 学校評価の判断基準のひとつになる。
- 学校選択制が広まっており、保護者・児童が学校を選択する判断基準のひとつになる。
- 子どもたちに教える学習内容の傾向が把握できる。
既得権益を固守する教師たち
橋下徹・大阪市長は君が代起立に続きさらなる教育改革を打ち出した。卒業式シーズンが一段落した3月23日、橋下氏率いる大阪維新の会は公約に掲げた「府立高の学区撤廃条例」を成立させた。学区撤廃は高校だけの問題ではない。「高校を受験する中学生」にも大いに関係してくる。大手進学塾の担当者はこう話す。
「学区撤廃と合わせて、橋下さんは府下の公立全中学で学力テストを実施し、成績を公開するように求めた。
それに伴って進路指導の方法も変えようとしている。今までは学内の成績で生徒を『相対評価』して内申書をつけ、学区内の高校を勧める方法でしたが、それを生徒個人がどれだけ成績を上げたかを見極める『絶対評価』に変え、府内全域の公立高校から適切な学校を選ばせる。これは教師にとって負担増になりますから、多くの中学教師が学区撤廃に反対しているのです」
背景には、大阪の義務教育“危機的状況”がある。
文科省の「全国学力・学習状況調査」では、実施開始の2007年以降、実施された過去4回すべてで大阪の中学3年生は45位だった。
大阪周辺には灘(兵庫)や東大寺学園(奈良)など私立の中高一貫校がひしめきあう。進学意識の高い生徒は、そうした私学に流れ、その他の子供たちは競争することなく、学区の高校へ入学する構図ができている。
橋下ブレーンの一人は、「学区制の撤廃により、高校だけでなく中学も含めた学力崩壊を根本から変えることができる」と力説するが、なぜ教師たちは反対するのか。
すでに「格差の助長」や「経済的に困難な家庭のため」という理由は紹介したが、「本音は別のところにある」(前出のブレーン)と見られている。一言でいえば、自分たちの「恵まれた労働環境」を変えたくないからだ。
「子供たちの受験戦争が過熱する」、「子供たちの格差を助長する」――こうした反論の「子供」を「教師」に置き換えると、学区制に守られた“教師天国”の実態が垣間見えてくる。40代の府立高教師が本音を明かす。
「今のままなら生徒の受験対策や成績向上のために教材研究をしなくてもいいし、予習復習もいらないから、授業を工夫する必要もない。たまにやる教師同士の勉強会の実情は、若い教師を組合に勧誘する会になっています」
一回り若い世代の教師も感覚はほとんど変わらない。
「公立は進学校でも底辺校でも給料は同じ。それやったら、底辺校で不良生徒をド突き回していた方が楽やと思う先生が多い。それはそれで大変やけど(苦笑)、少なくとも受験指導で寝る間もない私立高教師の友人を見ると、ホンマに公立でよかったと思う」
そして最大の理由はこの点にある。府立高の副校長がこう語る。
「格差が広がった結果、定員割れが続く学校を橋下さんは潰していく。そうなれば教師余りが起き、職場を失うことになる。それを一番恐れているのです。公立校の教師は今のままなら、相当な不祥事でも起こさない限りはクビにならない。平均年収800万~900万円と恵まれているので、夫婦で教師という家庭なら外車を乗り回したり、春、夏、冬の休暇は海外旅行に出かけたりする。それが私立と競争し、教師が厳しく査定されるようになれば、そんな生活はしていられない。優雅だった労働条件を守りたいというのが本音でしょう」
「子供の学力向上」と「既得権にしがみつく教師の淘汰」を同時に狙う、橋下市長の「破壊的改革」の成否やいかに――。
全国学力テスト 日教組が無能を暴露したくないため骨抜きに
近年の日教組には、若い教員はあまり加入せず、組織率は右肩下がりで、その力は年々衰えている――そんな解説を耳にすることが多いかもしれない。確かに数字だけを見ればそうだ。しかし、日教組はいまだに選挙で集票マシンとしてフル稼働し、その力で政治の意思決定に大きな影響を及ぼすのだ。教育評論家の森口朗氏が解説する。
政権交代が起きた衆院選の翌2010年、民主党の小林千代美前代議士の選対幹部が政治資金規正法違反で逮捕され、小林氏が辞職したことは大きく報じられた。小林氏に違法献金していたのは、日教組傘下の北海道教職員組合(北教組)であり、その委員長代理は小林氏の選対委員長だった。
参院民主党のドンと呼ばれる輿石東・党幹事長は日教組の下部組織でも、特に高い組織率を誇る山梨県教組の執行委員長だったことで知られ、党内には日教組出身者や選挙時に支援を受ける議員は山ほどいる。
日教組そのものは、巷間言われている通り組織率も組合員数も下降の一途を辿っている。私は、現在の教育現場で起きている問題の根本原因が日教組だけにあるとは考えない。むしろ、「子供に競争を強いる学力テスト=悪」といった“日教組的な思想”が、教育委員会を中心に蔓延していることが問題と考える。
しかし、弱体化する日教組が、政策決定への大きな影響力を誇っていることだけは見逃せない。問題を深刻にしたのは、2009年の政権交代によって民主党が政権与党となったことである。
日教組の組合員は30万人を割り込み約27万人となったが、「野党の側の27万人」と「与党の側の27万人」では影響力は全く異なる。約30万人と言えば、かつて自民党を支えた日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会(いわゆる三師会)の合計人数と同程度の規模となる。与党時代の自民党の医療行政に三師会が与えた影響に匹敵する力を、民主党政権下で日教組が握ったわけである。
本業であるはずの教育を捨て置き、政治活動に邁進する日教組が政治家を使って何を目論んでいるのか。それは、政権交代後の民主党政権下で、教育行政がどう変えられてきたのかを見ればわかる。
日教組が実現させた政策の象徴が「全国学力テスト」の“骨抜き”だろう。
「学力低下」に対処すべく、自民党政権は2007年に「全国学力テスト」を復活させた。ところが、当初予定された悉皆調査(全員が受験する調査)は、民主党政権によって、サンプリング調査に変更されてしまった。
全員がテストを受け、自治体ごとや学校別、クラス別の成績データを公表すれば、生徒・保護者の学校選択の多様化、不適格教員の把握に繋がると期待された。しかし、「学力の把握はサンプリングで十分」という日教組の主張に沿うものに政策が歪められてしまった。
学校やクラスごとの成績が明らかになって困るのは、指導力不足を知られたくない教員、学校経営や行政管理を問われたくない校長や教育委員会の役人である。つまり、自分たちの無能を暴露するような政策は許せないのだ。
また、児童生徒の学力低下と同様に喫緊の課題となっている「教員の指導力低下」にも同じことが起きた。2006年に安倍政権が不適格教員の排除を目的に創設を掲げ、その後の自公政権で導入された教員免許更新制度は、政権交代とともに見直しが打ち出され、“お蔵入り”にされる方向だ。
教員から教育委員会までが、日教組的な思想を共有する巨大な一つの利権集団化し、その利権を死守するために政治家に圧力をかけるのが日教組という構図である。
大津市のいじめ自殺問題では、いじめと自殺の因果関係を認めようとしない学校や教育委員会に国民の批判が集中するなか、輿石氏が7月19日の会見で、「学校が悪い、先生が悪い、教育委員会が悪い、親が悪いと言っている場合じゃない」と発言した。「誰の責任も追及しませんよ」というメッセージである。こういった人物が政権中枢にいることも、政治集団としての日教組があげた“成果”の一つだと言えるだろう。
また、日教組の政治力は、組合や教委に批判的な改革を断行しようとする候補にネガティブ・キャンペーンを張る形でも機能する。昨年11月の大阪市長選で改革を掲げた橋下徹氏の対立候補を、袂を分かったはずの日教組と全教(日教組から分裂した共産党系の教員組合)が揃って支援していたのはその典型である。
学テ結果に衝撃の静岡知事「校長名公表したい」
静岡県の川勝平太知事は9月9日の記者会見で、2013年4月に行われた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で小学生の基礎的学力を問う国語Aの平均正答率が同県は全国最下位だったことに関連して、「(成績順に)下から100校か、平均点以下の校長先生の名前を公表したい」と述べた。
同県の小学生の国語Aの平均正答率は57.7%。全国平均の62.7%を5ポイント下回った。川勝知事は「絶望的な気持ちになり、強烈な危機感に襲われた。義務教育の責任は先生が持つ。責任を取るべきだ」と語った。
文部科学省が作成した全国学力テストの実施要領では、都道府県や市町村教委は個別の学校の結果を公表しないとされている。川勝知事の発言について、同省学力調査室の柿沢久美子専門官は、「校長名の公表は校名を明らかにすることにつながる。実施要領に法的拘束力はないが、公表は控えてほしい」と話した。
公表について
調査結果の公表について保護者は賛成が多いが、教育委員会は反対が多く、意識の乖離がみられる。
2009年1月から2月にかけて行った意見調査では、市区の教育委員会の86.7%が「学校間の序列化や過度な競争につながる」「公表しなくても指導方法の改善に役立てることができる」などの理由で公表すべきでないと回答。一方、保護者は67.3%が「学校選択の基本情報」などの理由で公表すべきだとの考えであることが明らかとなった。
都道府県別平均点数
以下のものは、2007年度の結果である。小中とも、A科目は知識力を、B科目は知識活用力を問う出題であった。
調査結果は、文部科学省などで詳細な分析がなされている。
小学校
文部科学省が発表した小学校6年生対象の調査結果(都道府県別正答率)は以下のとおり。
小学国語A
- 86.1 - 秋田
- 85.0 - 青森、福井
- 84.4 - 鳥取
- 83.9 - 岩手、富山、香川
- 83.3 - 山形、石川、広島
- 82.8 - 東京、新潟、静岡、京都、熊本
- 82.2 - 福島、群馬、埼玉、千葉、長野、岐阜、奈良、愛媛、宮崎、鹿児島
- 81.7 - 栃木、山梨、兵庫、高知、福岡、全国平均、公立平均
- 81.1 - 茨城、神奈川、和歌山、島根、佐賀
- 80.6 - 宮城、愛知、三重、滋賀、岡山、山口、徳島、長崎
- 80.0 - 大分
- 79.4 - 北海道、大阪
- 76.7 - 沖縄
小学国語B
- 69.0 - 秋田
- 68.0 - 香川
- 67.0 - 福井
- 66.0 - 青森、岩手、富山、東京、岐阜
- 65.0 - 広島、静岡
- 64.0 - 鳥取、山形、石川、新潟、京都、埼玉、千葉
- 63.0 - 長野、奈良、神奈川、全国平均
- 62.0 - 熊本、福島、群馬、愛媛、鹿児島、山梨、兵庫、島根、愛知、公立平均
- 61.0 - 栃木、茨城、宮城
- 60.0 - 宮崎、高知、福岡、三重、滋賀、岡山、山口
- 59.0 - 和歌山、佐賀、長崎、大分
- 58.0 - 徳島、北海道、大阪
- 53.0 - 沖縄
小学算数A
- 88.4 - 秋田
- 86.8 - 福井
- 85.8 - 青森、富山
- 85.3 - 香川、京都
- 84.7 - 広島
- 84.2 - 鳥取、石川
- 83.7 - 岩手、東京、長野、熊本、宮崎
- 83.2 - 千葉、福島、長崎
- 82.6 - 静岡、山形、奈良、群馬、愛媛、兵庫、愛知、和歌山
- 82.1 - 新潟、埼玉、山梨、島根、佐賀、全国平均、公立平均
- 81.6 - 岐阜、鹿児島、高知、大分、徳島
- 81.1 - 神奈川、栃木、宮城、福岡、三重
- 80.5 - 滋賀、岡山、山口、大阪、
- 80.0 - 茨城
- 76.8 - 北海道
- 76.3 - 沖縄
小学算数B
- 68.6 - 秋田
- 67.9 - 福井
- 67.1 - 香川、山口
- 66.4 - 青森、富山、京都
- 65.7 - 東京
- 65.0 - 鳥取、千葉、愛知
- 64.3 - 石川、長野、奈良、岐阜
- 63.6 - 岩手、熊本、宮崎、静岡、山形、愛媛、兵庫、新潟、埼玉、徳島、神奈川、全国平均、公立平均
- 62.9 - 群馬、和歌山、島根、茨城
- 62.1 - 福島、長崎、山梨、佐賀、栃木、滋賀、岡山
- 61.4 - 広島、鹿児島、宮城、福岡、三重
- 60.7 - 高知、大分、大阪
- 58.6 - 北海道
- 54.3 - 沖縄
中学校
中学校3年生対象の調査結果は以下のとおり。( )内は正答率の都道府県順位。
中学国語A(全国平均82%)
- 上位5県 - 富山(1)、秋田(2)、福井(3)、山形(4)、石川・青森(同率5)
- 下位5県 - 北海道・佐賀(同率42)、和歌山(44)、大阪(45)、高知(46)、沖縄(47)
中学国語B(全国平均72%)
- 上位5県 - 富山・秋田・福井(同率1)、山形・石川・岐阜・静岡(同率4)
- 下位5県 - 滋賀(43)、和歌山(44)、大阪(45)、高知・沖縄(同率46)
中学数学A(全国平均73%)
- 上位5県 - 福井(1)、秋田(2)、富山(3)、徳島(4)、石川・香川(同率5)
- 下位5県 - 大阪(43)、岩手(44)、北海道(45)、高知(46)、沖縄(47)
中学数学B(全国平均61%)
- 上位5県 - 福井(1)、富山(2)、秋田・石川・岐阜(同率3)
- 下位5県 - 岩手(43)、北海道(44)、大阪(45)、高知(46)、沖縄(47)
脚注
関連項目
- 学力検査
- 情報公開
- 教育再生会議
- 全国体力・運動能力、運動習慣等調査(全国学力調査と同じく、対象学年の児童生徒全員が対象になる)
外部リンク
- 公式サイト
- 格差が固定化?2008年全国学力テスト (All About)
- どう読む?文科省の全国学力テストの結果 (All About)