ブドウ
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ブドウ(葡萄、学名 Vitis spp.)は、ブドウ科 (Vitaceae) の蔓(つる)性低木である。葉は両側に切れ込みのある15–20cmほどの大きさで、穂状の花をつける。果実は緑または濃紫で、内部は淡緑であり、房状に生る。大きさは2–8cm程度の物が一般的である。ブドウ属の植物は数十種あり、北米、東アジアに多く、インド、中近東、南アフリカにも自生種がある。日本の山野に分布する、ヤマブドウ、エビヅル、ギョウジャノミズもブドウ属の植物である。
現在、ワイン用、干しぶどう用または生食用に栽培されているブドウは、ペルシアやカフカスが原産のヴィニフェラ種(V. vinifera, 英 common grape, vine)と、北アメリカのラブルスカ種(V. labursca, 英 fox grape)である。
日本では中国から輸入されたヨーロッパ・ブドウ系が自生化して、鎌倉時代初期に甲斐国勝沼(現在の山梨県甲州市)で栽培が始められ、明治時代以前は専ら同地近辺のみの特産品として扱われてきた(ヤマブドウは古くから日本に自生していたが別系統にあたる)。
北アメリカ原産のブドウはフィロキセラ(Phylloxera、ブドウネアブラムシ)に対する耐性を持つが、これらの根に寄生し宿主と共にヨーロッパ上陸を果たしたこの小さな虫によって、耐性のないヨーロッパの固有種の殆どが19世紀後半に壊滅的な打撃を受けた。 以後フィロキセラ等による害を防止する等の理由で、ヨーロッパ・ブドウについては、アメリカ種およびそれを起源とする雑種の台木への接ぎ木が頻繁に行われている。
利用
果実は、そのまま生食されるほか、乾燥させてレーズンに、また、ワインやブランデーなどのアルコール飲料、ジュース、ゼリー、缶詰の原料となる。
ワインを製造する地域では、残った種子を搾油の原料としてグレープシードオイルが製造される。また、種子にはプロアントシアニジンという成分が含まれ、健康食品用などに抽出も行われている。
紫色をした皮にはアントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれており、赤ワインやグレープジュースにも多い。絞った後の皮などの滓は、肥料として処理することが多い。
分類
ブドウ属
ブドウ属 (Vitis) には、主に次のような種がある。
- ヨーロッパ・ブドウ(European grape、学名 ヴィティス・ヴィニフェラ Vitis vinifera)
- 中近東が原産であるとされる。ヨーロッパに自生する唯一の種である。乾燥した気候とアルカリ性の土地によく育ち、フィロキセラ耐性が無い。
- アメリカ・ブドウ(Fox grape、学名 ヴィティス・ラブルスカ Vitis labrusca)
- 北アメリカを原産とする種のひとつ。湿った気候でよく育ち、ヨーロッパ種よりも寒さにも強い。この系統の品種は独特の香りを持ち、それに由来する香りのワインを、(特にヨーロッパの)ワインの専門家は「フォクシー (Foxy)」と形容し忌み嫌う。
- ヴィティス・アムレンシス (V. amurensis)
- アジアを原産とする種のひとつで、モンゴルに固有といわれる。寒さに強い。
- ヴィティス・コイネティアエ (V. coignetiae)
- アジアを原産とする種のひとつ。山葡萄は、この一種である(ただしマンシュウ山葡萄は上記アムレンシス)。
以下はヨーロッパ・ブドウの台木に使われるブドウの原種である。全て北米原産でヨーロッパ・ブドウと違ってどれもフィロキセラ耐性を持つ。
- ルペストリス種 (V. rupestris)
- 台木の品種の一番基本になる種。砂地に生えるため比較的乾燥に強く、交雑や繁殖が容易である。
- リパリア種 (V. riparia)
- 川の土手に生える("ripa" とはラテン語で川の土手の意)。そのため湿った土地で良く育つ。酸性土を好む。繁殖は容易。
- Berlandieri 種 (V. berlandieri)
- 石灰岩の丘に生えることから、アルカリ性の土壌を好むとされる。繁殖は難しい。
- Champini 種 (V. champini)
- ルペストリス種と V. mustagenesis の天然の雑種と考えられている。強い (Root-knot) ネマトーダ耐性を有する。繁殖は難しい。
マスカダイン属
ブドウ属に含められる場合もあるが、形態や染色体の数等の違いから、一般に別の属 (Muscadinia) とされる。2–3種が属す。
- マスカダイン(Muscadine、学名 ムスカディニア・ロトゥンディフォリア Muscadinia rotundifolia)
- 北アメリカを原産とする種のひとつで、アメリカ合衆国南部の亜熱帯から熱帯の地域で栽培される。色は、濃い紫色で温暖湿潤な気候と酸性土壌を好む。ヨーロッパ・ブドウと異なりフィロキセラに対する免疫を持ち、他の病害に対しても強い耐性を持つ。しかしヨーロッパ・ブドウと接ぎ木も交雑も困難なことから、ワイン用ブドウの栽培にはほとんど利用されない。アメリカでは通常、房ではなく粒単位で売られる。マスカダインの皮は、普通のぶどうよりも厚みがあり、少々青臭く渋みもある。
スカッパーノン(Scuppernong)
- マスカダインと同じく北アメリカを原産とする種のひとつで、アメリカ合衆国南部の亜熱帯から熱帯の地域で栽培される。色は、緑で温暖湿潤な気候と酸性土壌を好む。大きさは、マスカダインより50%大きく、普通のブドウよりも一粒一粒が丸い。名前の由来は、ノース・カロライナ州にあるScuppernong Riverからきている。17世紀にアメリカ開拓者たちがスカッパーノン川周辺で発見し、その後、栽培促進された。名前の由来をさらに辿ってみるとアメリカ先住民のアルゴンキン族の言葉「アスコポ」からきており、意味は「甘い月桂樹」である。
品種
ブドウ品種の一覧も参照。また、ワイン用品種についてはワイン用葡萄品種の一覧項がある。
- カルディナル
- 甲州
- 巨峰
- 藤みのり(藤稔)
- 紫玉
- ピオーネ
- ナガノパープル
- 高妻
- 紅瑞宝
- 紅伊豆
- 多摩ゆたか
- 安芸クイーン
- 竜宝
- コリント
- コンコード
- ブラックオリンピア
- シャスラ
- トンプソン・シードレス (Thompson Seedless)/サルタナ (Sultana)
- マスカット・オブ・アレキサンドリア (Muscat of Alexandria)
- デラウェア
- キャンベル・アーリー (Campbell Early)
- マスカット・ベーリーA (Muscat Bailey A)
- シャインマスカット
- 瀬戸ジャイアンツ(桃太郎)
- ナイアガラ
- 甲斐路
- ロザリオビアンコ
- ロザリオロッソ
交雑と交配
種を越えての掛け合わせを交雑、同じ種の中で掛け合わせることを交配といい、交雑(種)はハイブリッド (hybrid)、交配(種)はクロッシング (crossing) と呼ばれる。
種無しぶどう
植物ホルモンを利用した方法で、1970年頃からはジベレリン水溶液が使用されているが、近年ではサイトカイニン水溶液が使用されている。果実内部の種を形成させない方法がとられる。小粒のものが主であるが、最近では技術の向上により大粒の物にも種無しが現れている。種が無い為、種有りに比べ脱粒しやすい。
主な産地
関連項目
外部リンク
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