訪問介護員
訪問介護員(ほうもんかいごいん)は、介護保険法において訪問介護を行う者のこと。通称ホームヘルパーまたはヘルパー。
目次
概要
訪問介護員は、都道府県知事の指定する『訪問介護員養成研修』の課程を修了した者をいう。介護保険法第8条第2項において介護福祉士と共に、介護行為を許された『その他政令(介護保険法施行令)で定める者』。かつては家庭奉仕員と呼ばれ、現在は一般にホームヘルパーと呼ばれている。ホームヘルパーは講習を受け修了した者に与えられる認定である。国家資格ではない。実際の修了書は、講習施行者により発行される。
厚生労働省は2005年、介護に携わる者の資格を介護福祉士に一本化する方向を打ち出したが、2011年12月現在も需要に対し供給が追いついておらず、2級以上のホームヘルパーの需要は依然として高い。介護業務に従事している介護福祉士の数に対し、潜在的有資格者と呼ばれる介護福祉士のほうが多いと言われており、ホームヘルパーを含め介護職に対する賃金の引き上げが求められている。ホームヘルパーの上位資格として、国家資格の介護福祉士があり、現在、介護福祉士の上位資格として『認定介護福祉士』制度が日本介護福祉士会で検討されるなど、介護職員のキャリアパスが順次形成されている過程にある。2007年から介護職員基礎研修が開始されたことに伴い、1級課程は2012年をめどに『介護職員基礎研修』への統合が予定されている。
尚、厚生労働省は、介護職員の研修体系見直しとして予定していた『訪問介護員2級養成研修』に代わる『介護職員初任者研修』について、2013年度からスタートさせることを決めた。また、2006年度から始まった『介護職員基礎研修』も2012年度末までで廃止し、改正社会福祉士及び介護福祉士法で導入する『実務者研修』に一本化する。これにより、2013年度より『訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修(1級・2級)』および『介護職員基礎研修』は実施されなくなる(但し、資格そのものはひきつづき存続することとなる)。
資格取得
研修概要
ホームヘルパーは講習を受け修了した者に与えられる認定である。国家資格ではない。講習課程には1級と2級がある。
一般に2級課程から取得する者が多い。これは、2級取得者の需要が多いため。
ホームヘルパーは、厚生労働省が認定した講習事業者が講習を行い、事業者から修了証が渡される。よって、良い面でも悪い面でも、その事業者に影響をうける。
都道府県によっては2級・1級資格取得のための『達成度測定』といわれる復習テストが行われる場合がある。
業務の内容
- 2級取得者…訪問介護において身体介護・家事援助ができる。取得後実務経験3年以上(1級養成講習受講資格および介護福祉士受験資格付与)でサービス提供責任者もできるが、介護報酬は1割減算となる。また、老人施設においても、身体介護が出来る。
- 1級取得者…訪問介護事業所においてサービス提供責任者として、後輩の育成指導、利用者とヘルパーとのコーディネート等ができる。
2級以上の資格者は自動的に福祉用具専門相談員となる他、ガイドヘルパー(知的障害者専門)の資格も付与される(視覚障害者、全身性身体障害者のガイドヘルプは別途講習受講が必要。全ての障害者について認める地域もあり、自治体毎の方針により異なる)。
課程 | 研修内容 | 受講対象者 | 時間 |
---|---|---|---|
3級課程(2009年に廃止) | ホームヘルプサービス事業従事者の入門研修 | 勤務時間の少ない非常勤ヘルパー、福祉公社の協力会員、登録ヘルパー等としてホームヘルプサービス事業に従事する者又はその予定者 | 50時間 |
2級課程 | ホームヘルプサービス事業従事者の基本研修 | ホームヘルプサービス事業に従事する者又はその予定者 | 130時間 |
1級課程 | チーム運営方式の主任ヘルパー等の基幹的ヘルパーの養成研修 | 2級課程修了者で、業務経歴の規定等を満たしている者(研修機関の属する地方自治体により規定される) | 230時間 |
継続養成研修 | 1級課程修了者の資質の維持・向上に必要な研修 | 1級課程修了者 |
- 養成研修の特例
- 通常、訪問介護員(ホームヘルパー)1級養成課程を受講しようとする場合は、訪問介護員2級資格を持った上で社会福祉法人などで運営される老人施設で実務経験を規定年数分積んでから受講しなければならないという制約があるが、一部自治体では特例で訪問介護員2級資格を持っていれば実務経験の有無に関わらず、自治体で行われる訪問介護員1級養成課程を受講する事が出来る。
研修科目
- 2級
- 講義
- 福祉サービスの基本視点、社会福祉の制度とサービス、ホームヘルプサービスに関する知識、サービス利用者の理解、介護に関する知識と方法、家事援助に関する知識と方法、相談援助とケア計画の方法等
- 実技
- 共感的理解と基本的態度の形成、基本介護技術、ケア計画の作成と記録・報告の技術等
- 校外実習
- 介護実習、ホームヘルプサービス同行訪問、在宅サービス提供現場見学
- 1級
- 講義
- 社会福祉関連制度とサービス、介護方法と技術、チームケアとチームワーク等
- 実技
- ケアマネージメント技術、指導技術と介護技術の向上等
- 校外実習
- 痴呆性高齢者等処遇困難事例対応実習、デイサービスセンター実習、チーム運営方式業務実習、訪問看護同行訪問、在宅介護支援センター職員との同行訪問等
低賃金、慢性的な人手不足、重労働…離職が止まらない介護スタッフ、職場の惨状
介護スタッフの人手不足が深刻になっている。現場からは「仕事がきつい割に賃金が低い」「時間に追われるばかりで利用者と向き合えない」といった不満の声が上がる。
担い手を増やし、離職率を下げる秘策はあるのか。
「食べていくのがやっと」自問自答の毎日
週5日勤務で、月に4日は夕方から翌朝9時までの夜勤をこなす。月給は手取りで20万円程度。
「30代の正規職員の月給も私と大差ない。パートで働く妻と2人で食べていくのがやっとで、子どもなんて考えられない。働き続けるべきか、自問自答する毎日」という。
介護労働安定センター(東京・荒川)の「平成23年度介護労働実態調査」では、介護従事者全体の平均勤続年数は4.4年。施設などで働く介護職員と訪問介護職員の年間離職率は16.1%で、全産業の14.4%より高い。
高齢化を背景に介護サービスを提供する事業者や施設は増えている。だが「きつい仕事の割に低賃金」と敬遠する人は多く、現場は慢性的に人手不足だ。
就職難でも人気薄。福祉介護面接中止(2012年9月)
景気低迷を受けて厳しい就職難が続く中、県が2012年9月、和歌山市などで開催を予定していた福祉・介護分野の合同就職面接会が、参加者不足で相次いで中止に追い込まれた。一方で、老人ホームなどを運営する事業所側は、慢性的な人材不足に頭を悩ませており、県は来月からPRのため「はじめよう!福祉の仕事」と題した大型キャンペーンに乗り出す。
中止したのは、7日に和歌山市内、19日に紀の川市内で行う予定だった「福祉・介護の仕事 合同面接会」。和歌山会場は社会福祉法人など48団体が相談ブースを設け、100人以上の求人を予定していたが、申し込みがあったのは7人のみ。8団体が予定していた紀の川会場も1人だった。
県によると、面接会は2010年度から毎年開いているが中止は初めて。昨年も田辺、新宮両市で開いたが、計18団体・61人分の求人に対して来場者は合計30人にとどまり、求人数を大幅に下回る状態が続いていた。
老人ホームで働く介護士を3人程度、募集予定だった社会福祉法人「寿敬会」(和歌山市)の採用担当者は
「業界内での引き抜きが激しい。志高く、仕事を続けてくれる人材を常に求めているが、慢性的に人手不足で、良い人材を求められる場がもっとほしい」と行政の働きかけに期待する。
そうした現状を受け、県の担当者も「仕事がきついというイメージから若者は敬遠している」と分析。今後、面接会の募集方法などの見直しを検討する一方、キャンペーンを行うことで、業界のイメージアップにも力を入れることにした。
現在、福祉の現場で働く人の笑顔の写真とメッセージを募集しており、テレビCMやイベントで紹介する予定。10月から和歌山市内を走る路線バス3台の車体に広告を載せるほか、11月からは、福祉施設の送迎用車両など約3000台にもPRシールを貼ってもらうなどする予定だ。
資格が必要ない仕事もあり、県の担当者は「本格的なキャンペーンは初めてで効果は未知数だが、まずは業界に前向きな興味を持ってほしい。就職難と人手不足のミスマッチを解消したい」と意気込んでいる。
関連項目
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 介護支援専門員
- 福祉用具専門相談員
- 精神障害者ホームヘルパー
- 介護保険法
- 厚生労働省
- ガイドヘルパー
- 社会福祉
- 訪問看護
- 在宅介護支援センター
- 社会福祉士及び介護福祉士法
- 看護師
- 准看護師