特定秘密の保護に関する法律
特定秘密の保護に関する法律(とくていひみつのほごにかんするほうりつ)(通称:特定秘密保護法(とくていひみつほごほう))とは、日本の安全保障に関する情報のうち「特に秘匿することが必要であるもの」を「特定秘密」として指定し、取扱者の適正評価の実施や漏洩した場合の罰則などを定めた法律である。秘密保護法、秘密法とも。
2013年10月25日、第2次安倍内閣はこの法案を安全保障会議の了承を経たうえで閣議決定して第185回国会に提出し、同年12月6日に成立、同年12月13日に公布された。公布から1年以内に施行されることになっている(同法附則第1条)。
目次
法律の内容
この法律は、日本の安全保障に関する事項のうち「特に秘匿を要するもの」について行政機関における「特定秘密の指定」、「特定秘密の取扱いの業務を行う者」に対する「適性評価の実施」、「特定秘密の提供」が可能な場合の規定、「特定秘密の漏えい等に対する罰則」等について定め、それにより「その漏えいの防止」を図り、「国及び国民の安全の確保に資する」趣旨であるとされる。
特定秘密の管理に関する措置
特定秘密の指定
「特定秘密として指定」し得る情報および「特定秘密の有効期間(上限5年で更新可能)」を規定する。指定期間が30年を超える延長には内閣の承認が必要である。
- 特定秘密の指定対象となりうる情報
イ 自衛隊の運用又はこれに関する見積もり若しくは計画若しくは研究
ロ 防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報
ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ 防衛力の整備に関する見積もり若しくは計画又は研究
ホ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物の種類又は数量
ヘ 防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法
ト 防衛の用に供する暗号
チ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能又は使用方法
リ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理又は試験の方法
ヌ 防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途
- 第2号 - 外交に関する事項
イ 外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの
ロ 安全保障のために我が国が実施する貨物の輸出若しくは輸入の禁止その他の措置又はその方針
ハ 安全保障に関し収集した条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報その他の重要な情報
ニ ハに掲げる情報の収集整理又はその能力
ホ 外務省本省と在外公館との間の通信その他の外交の用に供する暗号
- 第3号 - 外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項(国会に提出された案では「特定有害活動の防止に関する事項」)
イ 特定有害活動の防止のための措置又はこれに関する計画若しくは研究
ロ 特定有害活動の防止に関し収集した国際機関又は外国の行政機関からの情報その他の重要な情報
ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ 特定有害活動の防止の用に供する暗号
- 第4号 - テロ活動防止に関する事項
イ テロリズムの防止のための措置又はこれに関する計画若しくは研究
ロ テロリズムの防止に関し収集した国際機関又は外国の行政機関からの情報その他の重要な情報
ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ テロリズムの防止の用に供する暗号
適性評価の実施
「特定秘密の取扱いの業務を行うことができる者」は、「適性評価により特定秘密を漏らすおそれがないと認められた職員等」に限定される。
- 適正評価の対象事項
- テロ活動等との関係
- 犯罪・懲戒の経歴
- 情報の取扱いについての非違歴
- 薬物の濫用・影響
- 精神疾患
- 飲酒についての節度
- 経済的な状況
特定秘密の提供
どのような場合に特定秘密を提供できるかを規定。
1. 安全保障上の必要による他の行政機関への特定秘密の提供
- 特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲その他特定秘密の保護に関し必要な事項について協議。
- 安全保障上の必要により特定秘密を提供。
- B省の長は、特定秘密の保護に関し必要な措置を講じ、職員に特定秘密の取扱いの業務を行わせる。
※ 警察庁長官が都道府県警察に特定秘密を提供する場合には、特定秘密の保護に関し必要な事項について、警察庁長官が都道府県警察に指示。
2. 安全保障上の特段の必要による契約業者への特定秘密の提供
- 特定秘密の取扱いの業務を行わせる役職員の範囲その他特定秘密の保護に関し必要な事項を契約に定める。
- 安全保障上の特段の必要により特定秘密を提供。
- 契約業者は、特定秘密の保護に関し必要な措置を講じ、役職員に特定秘密の取扱いの業務を行わせる。
3. その他公益上の必要による特定秘密の提供
上記のほか、行政機関の長は、次の場合に特定秘密を提供することができる。
- 各議院等が行う審査・調査で公開されないもの、刑事事件の捜査その他公益上特に必要があると認められる業務において 使用する場合であって、特定秘密の保護に関し必要な措置を講じ、かつ、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき
- 民事訴訟法第223条第6項又は情報公開・個人情報保護審査会設置法第9条第1項の規定により、裁判所又は審査会に提示する場合(いわゆるインカメラ審査で提示する場合)
漏えいと取得行為に対する罰則
「特定秘密を取り扱うことを業務とする者」と「公益上の必要により特定秘密の提供を受け、これを知得した者」による漏えいだけでなく、特定の「取得行為」およびその未遂、共謀、教唆、煽動をも処罰対象とする。
- 処罰の対象となる取得行為
- 人を欺き、人に暴行を加え、又は脅迫する行為
- 財物の窃取
- 施設への侵入
- 不正アクセス行為
- 2、3、4以外の特定秘密の保有者の管理を侵害する行為
- 上記の取得行為の未遂、共謀、教唆、煽動
その他(基本的人権への言及あり)
パブリックコメントでは「その他」として「本法を拡張解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」と規定していた。
国会提出された案では「取材の自由に十分に配慮しなければならない」という文言が追加されている。
特定秘密の保護に関する法律の構成
- 目次
- 第一章 総則(第一条・第二条)
- (目的)
- (定義)
- 第二章 特定秘密の指定等(第三条―第五条)
- (特定秘密の指定)
- (指定の有効期間及び解除)
- (特定秘密の保護措置)
- 第三章 特定秘密の提供(第六条―第十条)
- (我が国の安全保障上の必要による特定秘密の提供)
- (その他公益上の必要による特定秘密の提供)
- 第四章 特定秘密の取扱者の制限(第十一条)
- 第五章 適性評価(第十二条―第十七条)
- (行政機関の長による適性評価の実施)
- (適性評価の結果等の通知)
- (行政機関の長に対する苦情の申出等)
- (警察本部長による適性評価の実施等)
- (適性評価に関する個人情報の利用及び提供の制限)
- (権限又は事務の委任)
- 第六章 雑則(第十八条―第二十一条)
- (特定秘密の指定等の運用基準)
- (関係行政機関の協力)
- (政令への委任)
- (この法律の解釈適用)
- 第七章 罰則(第二十二条―第二十六条)
- 附則
- (施行期日)
- (経過措置)
- (自衛隊法の一部改正)
- (自衛隊法の一部改正に伴う経過措置)
- (内閣法の一部改正)
- (政令への委任)
- 別表(第三条、第五条―第九条関係)
- 理由
経過
プロジェクトチーム
安倍内閣は、2013年8月27日、同法案の概要を自民党「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」(座長町村信孝)に提示し、パブリックコメントについて了承を得た。
パブリックコメント
内閣官房では、2013年9月3日から2013年9月17日までの15日間、パブリックコメント「特定秘密の保護に関する法律案の概要」を受け付けた。これは内閣官房内閣情報調査室による任意の意見募集であった。パブリックコメントは誰でも何回でもコメントを提出可能。募集の結果は2013年10月4日に公開された。意見件数90,480件。内訳は、意見提出フォーム・電子メール88,603件、郵送484件、FAX1,393件。意見内容は、賛成側の意見が11,632件、反対側の意見が69,579件、その他の意見が9,269件。
閣議決定と国会提出
自民党は特定秘密保護法案の閣議決定に先立ち、国家安全保障会議(日本版NSC)創設の為の法案を2013年秋の国会に提出、10月25日に衆議院本会議で審議入した。10月25日、政府は「特定秘密保護法案」を閣議決定。同日夜の記者会見で、内閣官房長官の菅義偉は、今国会で成立を目指すと述べた。
国会における審議
11月7日から衆議院で審議に入った。民主党が19日に対案を提出。与党は日本維新の会、みんなの党と修正協議し、最終的に合意。26日に自民・公明・みんなの賛成多数で可決し(4名が造反、維新は採決欠席)、衆議院を通過。翌27日に参議院で審議入り。12月5日、参院国家安全保障特別委員会において、与党が質疑を打ち切って採決。与党の賛成多数で可決された。民主党は同日、「厚労委員長の解任決議案」「厚労相の問責決議案」「特別委員長の問責決議案」を提出、翌6日に内閣不信任決議案を提出して法案の成立を遅らせようと対抗したが、6日夜、参議院本会議で与党の賛成多数で可決・成立した。審議時間は衆院で約46時間、参院で22時間の合計約68時間であり、過去の重要法案の審議時間と比較して短かった。
国家秘密に関連するこれまでの日本の法案
1954年の日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法(通称「MSA秘密保護法」)では、「特別防衛秘密」について「保護上必要な措置」を講じることに加えて「特別防衛秘密を探知や収集をした者」および「特別防衛秘密を他人に漏らした者」に対しての刑事罰が規定されている。
1985年には、国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案 (通称「スパイ防止法」)が第102回国会で議員立法として提出されたが、第103回国会で審議未了で廃案となった。
2011年にも、国家秘密の管理体制強化を目指す「秘密保全法」が検討されたが、この時は法案の国会提出は見送られている。
日本国内の反応
国内の世論調査
- 毎日新聞が2013年11月9日・10日に実施した電話による世論調査では、反対が59%、賛成は29%であった。
- 産経新聞とFNNが2013年11月16・17日に実施した合同世論調査では、「必要だと思う」が59.2%に対し、「必要ではない」は27.9%となった。「今国会で成立させるべき」は12.8%、「今国会での成立は見送るべき」は82.5%となった。
- 共同通信が2013年10月26・27日に電話を用いて行った世論調査では、賛成意見35.9%に対し、反対意見は50.8%となった。ほぼ一ヶ月後、11月24日に発表した世論調査では、賛成意見45.9%に対し、反対意見は41.1%となった。法案成立直後の12月8・9日に行なわれた緊急調査では「修正すべき」が54.1%、「廃止すべき」が28.2%で反対は8割を越え、「このまま施行すべき」は1割に満たなかった。第2次安倍内閣に対する支持率は成立後初めて5割を切った。
- 朝日新聞が2013年11月30日~12月1日に実施した電話調査(有効回答1001人)では、「今国会で成立させるべき」とした人が14%だったのに対し、「継続審議にするべき」が51%、「廃案にするべき」が22%であった。
- 日本経済新聞が2013年11月22〜24日に実施した世論調査の結果は、賛成26%、反対50%であった。
- テレビ朝日の報道ステーションが2013年11月30日・12月1日に実施した世論調査では、「支持する」が28%、「支持しない」が41%となった。
一方、ネット環境にあれば誰でも何度でも回答に参加できるネットアンケートでは以下の結果となった。
- ドワンゴとニワンゴが2013年11月28日にニコニコ動画上で行ったネットアンケート(回答者数12万3686人)では、「今国会で成立させる」が36.6%と最多を占め、「今国会を延長してでも審議を尽くす」が30.7%、「廃案」が17.6%であった。
- 日本経済新聞は2013年11月27日、日経新聞電子版の読者を対象に行ったネットンケート(回答者数2086人)の結果、「必要だ」が57.4%、「不要だ」が42.6%であったと報じた。
- J-CASTニュースが2013年12月2~5日に実施したネットアンケートでは、6269票のうち「今国会で成立」が55%、「慎重審議」13%、「廃案」は29%であった。
各党の反応
与党
- なお自民党内では、1987年に「スパイ防止法」に反対する意見書に連署した12人の一人である村上誠一郎が、今回も基本的人権の根幹に関わる問題とし反対している。一方、当時同様に反対した谷垣禎一は今回反対していない。また幹事長・石破茂は自身の2013年11月29日のブログエントリで、国会議事堂周辺で行なわれている反対デモ(後述)を「単なる絶叫戦術のテロ行為」と批判した。外交部会会長の城内実は国際連合人権高等弁務官の表明した、人権が制限されることへの懸念(#日本国外の反応参照)について「なぜこのような事実誤認の発言をしたのか、調べて回答させるべきだ。場合によっては謝罪や罷免(の要求)、分担金の凍結ぐらいやってもいい」と発言したという。
- 公明党:公明党の特定秘密保護法案に関する検討プロジェクトチーム(座長大口善徳、初会合2013年9月17日)は「知る権利」「報道の自由」への配慮などの修正を求めていたが、政府の一定の譲歩を受けて、10月18日に法案の最終案を了承した。
野党
- 賛成、修正協議で合意
日本維新の会、みんなの党。両党の中には反対している議員もいる。
- 対案を提出
民主党:政府の原案、および与党と日本維新の会、みんなの党の修正案に反対しており、保護すべき対象を外交と国際テロ防止に関する情報に限ることを柱とした対案を提出している。民主党幹事長の大畠章宏は東京・銀座での街頭演説で「マスコミもこぞって、特定秘密保護法案については反対しよう、という声を上げている。あとは、国民のみなさんの声をあげてください」と述べている。
- 反対姿勢
- 日本共産党は、2013年12月2日のしんぶん赤旗の記事で「(特定秘密保護法案)推進の陣容を見てみると、日本の侵略戦争で戦犯容疑者となった政治家や特高(特別高等警察)官僚の息子や孫、娘婿が目立つ」「安倍晋三首相の祖父は、太平洋戦争開戦時の東条英機内閣で商工大臣を務め、東京裁判でA級戦犯容疑者とされた岸信介氏」「日本への核兵器持ち込みを認めた日米核密約の当事者である祖父を安倍首相は、秘密保護法の闇に隠そうとしている」「戦犯・特高人脈は、「秘密保護法案」の源流を象徴している」と述べ、特定秘密保護法案を推進する安倍晋三・町村信孝・中川雅治らの出自を問題視した。また、その前日の記事で、国防保安法と特定秘密保護法にはいくつかの共通点があると主張している。
- 参議院議員の山本太郎(無所属)は、2013年12月3日夜に国会議事堂前で「(採決阻止のためには)採決の日に、議員を国会に入れなきゃいいんですよ」、「議員会館や国会に議員が入れないくらい人が集まれば、阻止できる可能性がありますよね? 1000人と言わず、1万人と言わず、10万人と言わず、100万人ぐらいの人が国会周辺に集まりましょう」と特定秘密法案廃案を訴えるデモ隊に対してスピーチし、市民で国会を「包囲」し採決自体を物理的に「阻止」する案を提案した。
各界の反応
賛成意見
- 憲法学者で東京大学教授の長谷部恭男は、2013年11月12日に開かれた衆議院国家安全保障に関する特別委員会に与党側の参考人として出席し、「特別な保護に値する秘密をみだりに漏えい等が起こらないように対処しようとすることは、高度の緊要性が認められるし、それに必要な制度を整備するのは、十分に合理的なことでありえる」と述べ、法案に賛意を示した。
- 経済学者の池田信夫はBLOGOSに寄稿し、「この法案の最大の目的は米軍が持っている軍事機密の提供である」とし(MSA秘密保護法、GSOMIA)、「法案が提出された以上は、成立させるしかない。ここで必要以上にもめるのは、中国に誤ったシグナルを送る結果になる」と述べた。また朝日新聞の『異議あり 特定秘密保護法案』を、「朝日が大はしゃぎだが、日本のメディアは国家権力と闘って来たのか、沖縄密約事件も暴いたのは一記者だ」と日本ビジネスプレスで揶揄した。
- 危機管理評論家の佐々淳行は、軍事小国である日本は、情報の迅速、正確な収集を進める必要があるものの、秘密保護が不徹底で情報が漏れやすい。そのため、他国からの情報提供が拒まれるため、秘密保護法は必要悪だと述べている。事実、アメリカの元国務長官ヘンリー・キッシンジャーは、「日本では秘密が守られないので、重要な機密情報は伝えられない」と述べたことがある。
- 統一教会、幸福の科学等の新興宗教団体が賛成を表明した。
- 元陸上自衛官(システム防護隊隊長、1等陸佐)で株式会社ラックの「サイバーセキュリティ研究所」所長・伊東寛は、「法案は必要だと思うし、むしろ遅すぎたと思う」と語り、「外国政府が、日本の安全に関わると思ったとしても、『秘密を守れない』と見られれば、秘密を渡してくれるのかという疑問を持ってしかるべきだ」としている。また、罰則について、懲役10年以下では軽すぎるとも語っている。
中立意見
- 2004年から2006年まで内閣法制局長官を務めた弁護士の阪田雅裕は、反対意見の1つである「漏洩した秘密の内容が明らかにされないまま被疑者が裁かれる可能性がある」との懸念について、「そもそも罪刑法定主義の大前提から考えて、漏洩した秘密の中身が知らされないまま被疑者が訴追されるようなことはあり得ない」とし、特定秘密保護法案に法律としての構造的な問題はないとの見方を示した。
反対意見
特定秘密保護法案反対運動も参照
- 法廷メモ訴訟で知られる明治大学特任教授のローレンス・レペタは「特定秘密保護法は、政府の下半身を隠すものだ」と題する意見を「週刊金曜日」に発表した。
- 元外交官の佐藤優は、週刊金曜日の福島瑞穂とのインタビューの中で『今回の特定秘密保護法案は多くの公務員の「配偶者や家族が外国人かどうか」を調べる。実際は、特定の国の人と結婚している人はバツ。いまの日本の政治体制からすると、中国人や韓国人、ロシア人、イラン人などと結婚している外務省員は全員、特定秘密保護法案が定める適性評価に引っかかる。特定秘密保護法案は人種差別条項』と批判している。
- 女優の藤原紀香は懸念と法案への反対を表明し、パブリックコメントを提出した。
- 現役の某中央省庁官僚であり小説『原発ホワイトアウト』を上梓した若杉冽は、「いずれ特定秘密だらけになり、国民の知らない間にあらゆる物事が決まる社会になってしまう」と主張。“知る権利や報道の自由への「配慮」”、“第三者機関の設置「検討」”という文言について「典型的霞ヶ関用語。本気でやるなら“義務”と書く。官僚たちは始めからそんな気はない」と批判している。若杉によれば法案は首相の「ペットマター」(その人がペットのように大切にしている案件)だという。
- 福島県で行われた公聴会では、全ての参考人が反対または再考を求めた。この翌日に衆議院の、10日後には参議院の特別委員会で強行採決が行われた。
- 革労協とみられる「革命軍」と名乗る団体は2013年11月28日に発生した横田基地ゲリラ事件(爆発テロ)、声明内で特定秘密保護法案制定に反対している事が報じられている。
- 元検察官の郷原信郎は、「法案自体に問題があるとは言えないが、現行の刑事司法の運用の下で濫用された場合に、司法がそれを抑制することは期待できない」として反対している。
142名の憲法学者・メディア法学者が、法案への反対声明を発表した。
- 樋口陽一(東京大学名誉教授、日本学士院会員)
- 小林直樹(東京大学名誉教授、総合人間学会会長)
- 奥平康弘(東京大学名誉教授)
- 杉原泰雄(一橋大学名誉教授)
- 山内敏弘(世話人、一橋大学名誉教授)
- 浦田一郎(一橋大学名誉教授)
- 渡辺治(一橋大学名誉教授)
- 阪口正二郎(一橋大学教授)
- 山元一(慶應義塾大学教授)
- 水島朝穂(早稲田大学教授)
- 川岸令和(早稲田大学教授)
- 西原博史(早稲田大学教授)
- 戸波江二(早稲田大学教授)
- 今関源成(早稲田大学教授)
- 浦田賢治(早稲田大学名誉教授)
- 田島泰彦(世話人、上智大学教授)
- 高見勝利(上智大学教授)
- 中村睦男(北海道大学元総長)
- 深瀬忠一(北海道大学名誉教授)
- 岡田信弘(北海道大学教授)
- 森英樹(名古屋大学元副総長・教授)
- 愛敬浩二(名古屋大学教授)
- 横田耕一(九州大学名誉教授)
- 浦部法穂(神戸大学元副学長・教授)
- 渡邊賢(大阪市立大学教授)
- 井口秀作(愛媛大学教授)
- 吉田善明(明治大学教授、学校法人明治大学理事)
- 野中俊彦(法政大学名誉教授)
- 永井憲一(法政大学名誉教授)
- 清水睦(中央大学名誉教授)
- 稲正樹(国際基督教大学教授)
- 横山宏章(元明治学院大学教授)
- 大津浩(成城大学教授)
- 市川正人(立命館大学教授)
- 高作正博(関西大学教授)
- 古川純(専修大学名誉教授、元学校法人専修大学理事)
- 隅野隆徳(専修大学名誉教授)
- 石村修(専修大学教授)
- 古関彰一(獨協大学教授)
- 加藤一彦(東京経済大学教授)
- 上脇博之(神戸学院大学教授)
- 上田勝美(龍谷大学元副学長・教授)
- 小沢隆一(東京慈恵会医科大学教授)
- 他。
- 刑事法研究者
120名を超える刑事法学者が、法案への反対声明を発表した。
- 村井敏邦(代表、一橋大学名誉教授、元日本刑法学会理事長)
- 後藤昭(一橋大学教授)
- 森本益之(大阪大学名誉教授)
- 水谷規男(大阪大学教授)
- 島岡まな(大阪大学教授)
- 白取祐司(北海道大学教授)
- 斉藤豊治(元東北大学教授)
- 平川宗信(名古屋大学名誉教授)
- 田淵浩二(九州大学教授)
- 浅田和茂(元大阪市立大学副学長・教授)
- 光藤景皎(大阪市立大学名誉教授)
- 上野達彦(三重大学元副学長・教授)
- 新倉修(青山学院大学教授)
- 酒井安行(青山学院大学教授)
- 前野育三(関西学院大学名誉教授)
- 川崎英明(関西学院大学教授)
- 生田勝義(立命館大学名誉教授)
- 松宮孝明(立命館大学教授)
- 上田寛(立命館大学教授)
- 前田朗(東京造形大学教授)
- 吉村真性(九州国際大学准教授)
- 守屋克彦(元仙台高等裁判所判事)
- 海渡雄一(日本弁護士連合会元事務総長、秘密保全法制対策本部副本部長)
- 他。
歴史学者9名が反対声明を発表し、2500人以上がこの声明に賛同の署名をおこなった。
- 久保亨(歴史学研究会委員長)
- 藤井譲治( 日本史研究会代表委員)
- 糟谷憲一 (歴史科学協議会代表理事)
- 塚田孝(歴史科学協議会代表理事)
- 山田朗(歴史教育者協議会代表理事)
- 吉田裕 (同時代史学会代表)
- 中嶋久人(東京歴史科学研究会代表)
- 荒井信一(日本の戦争責任資料センター共同代表)
- 宮地正人(国立歴史民俗博物館前館長)
プライバシーの侵害や、行政機関の都合で秘密としたい事(在日米軍基地問題、自衛隊海外派遣、TPP、原子力発電所の安全性や被曝)を「特別秘密」に指定し隠蔽する事など、法案には問題点があると反対している。
- 反対訴え。
- 反対。
- 会長「短期間での制定は危険」。
- パブリックコメントにも反対の意見書を出している。
- 「知る権利侵害のおそれ」。
- 「国民の知る権利」が損なわれる恐れがあると強い危惧を表明している。
- 『「秘密保護法」大集会実行委員会』主催のもと、2013年11月21日に日比谷野外音楽堂で反対集会が開かれ、約1万人(主催者発表)が集まった。12月6日にも日比谷野外音楽堂で反対集会が開かれ、約1万5000人(主催者発表)が参加した。
- 革命的共産主義者同盟(革共同)・日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(革マル派)は、2013年11月26日に「さようなら原発集会」に結集した市民らと共に国会・首相官邸前で10時間ほど反対デモを行った。
- 革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)は、2013年11月21日・22日に反対デモと集会を行った。
- 2013年12月6日には国際基督教大学で、「秘密保護法を考える全国学生緊急大集会」が開催され、約300人の学生が参加した。
- この他にも、反原発集結と同様に国会議事堂前に集まって即時廃案を求める動きも行なわれている。
マスコミの抵抗
【東京新聞】平田オリザ氏「サンタがプレゼントを配るため(特定秘密を知る)政府高官の家に入るのは罪か」
人間というのは弱い生き物であり、特定秘密保護法はその弱さにつけ込むものだ。官僚にも志の高い人はいる。国民のために政府の秘密を暴こうと思うこともあるだろう。でも彼らには家族も友人もいる。懲役十年が頭にちらつけば、周りへの迷惑を恐れて行動が鈍ってしまう。周囲の雰囲気にも流される。官僚に無言の圧力をかけるのが怖い。
この法律は市民を監視する公安警察の権力を拡大する作りにもなっている。私は軍事独裁政権時代の韓国に留学していたとき、デモ隊の横を歩いただけで警察官に呼び止められ、有無を言わせず身分証明書を要求された。恐怖を肌で感じた。日本もそうなっていくのではないか。
即座に生活に影響は出なくても、無言の圧力によって、気づかないうちにゆっくりと物が言いにくくなっていく。われわれ表現者が最初に苦しくなる。表現のための下調べにさえ応じてもらえなくなったり、自ら規制をかけてしまったりするかもしれない。
社会がどうなるかを先読みし、人々に分かりやすく示すのが表現者だ。主宰する劇団では毎年この時期、サンタの存在や仕事を面白おかしく議論する劇を公演しているが、秘密保護法の要素を入れることも考えている。例えば、サンタがプレゼントを配るため(特定秘密を知る)政府高官の家に入るのは罪か。権力の問題を命懸けでちゃかすのが使命だ。
日本国外の反応
アメリカ合衆国国務省のハーフ副報道官は、2013年12月6日の記者会見で、日本で特定秘密保護法案が成立したことについて「情報の保護は同盟における協力関係で重要な役割があり、機密情報の保護に関する政策などの強化が前進することを歓迎する」と述べた。
AP通信は「中国の軍事力増強に対抗するために強い日本を望む米国は、法案可決を歓迎している」と報じた。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、駐日アメリカ大使館首席公使のカート・トン(en:Kurt Tong)が、法案成立により日本が「より強力な同盟国」となると本国は評価していると報じた。
ニューヨーク・タイムズは「Japan's Illiberal Secrecy Law」(日本の反自由主義的秘密法)と社説にて批判した。
ワシントン・ポストは「Japan secrecy law stirs fear of limits on freedoms」(日本の秘密法は自由が制限される不安をかき立てる)とする記事を掲載。
しんぶん赤旗は、ブルームバーグ(電子版)が12月2日付けのコラムで「日本の秘密保護法はジャーナリストをテロリストに変える」と、石破茂の「大音声のデモはテロ同然」発言も引きながら第2次安倍内閣を批判。執筆子は「もし私が官僚とビールを飲みながら不適切な質問をすれば、手錠をかけられてしまうのか」と、治安維持法や米国愛国者法に共通する要素があると見ている。その上で「安倍政権を止めるのはテロリスト……失礼、ずばりと意見を述べる国民次第だ」と結んでいる、と報じた。
韓国の新聞ハンギョレは“自民党が暴走した、スパイ防止法案の1980年代から30年、明らかに日本は右傾化している”と東京発の特派員電で論評した。
シュピーゲル電子版は「日本で、内部告発者を弾圧する、異論の多い立法が成立した」と報じた。
フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングは「日本が報道の自由を制限 我々はフクシマの原発事故を報道することが許されるのであろうか?」と題する解説記事を文芸面に掲載した。
国際連合人権理事会は表現の自由担当特別報告者フランク・ウィリアム・ラ・ルー、健康への権利担当特別報告者アナンド・グローバーが「法案は透明性を脅かす」とする声明を発表。国際連合人権高等弁務官のナバネセム・ピレーも、法案にはいくつかの懸念が十分明確になっておらず、成立を急ぐべきではないと表明した。ロンドンに本部をおく国際人権団体ARTICLE19は「秘密保護法案を否決するよう、日本の国会に強く求める」声明を発表した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが「秘密指定の権限や情報漏洩の処罰が広範囲過ぎ」、「公益を守るため見直しが必須」と声明を発出。アムネスティ・インターナショナル日本支部も「法案を見直すべき」と声明を出した。なお、東京新聞は第2次安倍内閣は国連や国際人権団体のこれら勧告・声明を重視せず、国際人権B規約の文章を一部だけ改憲草案に取り入れていると批判している。 日本外国特派員協会は「報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法であり、撤回、または大幅修正を勧告する」声明を発表した。
国際ペンは会長ジョン・ラルストン・ソウル、副会長ユージン・ショルギン、獄中作家委員会委員長マリアン・ボツフォード・フレイザーの名で「公益を守るものではなく保全ヒステリーにかられ過剰に秘密を作り自由を弱体化させたい政治家と官僚の企みだ」「この企みを阻止しようとする日本ペンクラブを全面的に支持する」とする声明を発表した。
元アメリカ国防次官補・モートン・ハルペリンは共同通信のインタビューに応え、「知る権利と秘密保護のバランスを定めた国際基準を逸脱している」「過剰な秘密指定はかえって秘密の管理が困難になる」と法案を批判した。また、ハルペリンが上級顧問をつとめ、ツワネ原則作成にも携わったオープンソサエティ財団(ソロス財団。ジョージ・ソロスが創設に関与)は、「法案は国家の安全保障に対する知る権利を厳しく規制するもので、秘密保護法制に関する国際的な基準を大きく下回っている」という声明を発表した。ハルペリンも「法案は21世紀の民主国家が考えたなかでも最も悪い部類に入るものだ」とする発言を財団声明に寄せている。
関連項目
- 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
- 国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案
- 国家安全保障会議#日本 - 安全保障会議
- 報道の自由 / 表現の自由
- 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)
- 公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)
- 西山事件
- 治安維持法
- 守秘義務
- ツワネ原則
- 軍機保護法
外部リンク
- 提出時法律案 衆議院ウェブサイト
- 修正案1 衆議院ウェブサイト
- 特定秘密保護法案に関するトピックス 朝日新聞
- 「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集について(案件番号060130903) 政府インターネットサイト
- 秘密保護法に反対(秘密保全法制対策本部) 日本弁護士連合会
- 特定秘密保護法(秘密保全法)資料 News for the People in Japan
- 秘密保護法案の「適性評価制度」 一般国民の「プライバシー」を侵害するか? 弁護士ドットコム
- 「秘密保護法」対象の罪と罰 Yahoo!JAPAN
- 情報公開市民センター
- 「秘密保護法」廃案へ!実行委員会 公式HP