エナメル
エナメルとは英語のenamelからきており
- 陶磁器の釉薬のこと。
- 金属表面を1.と同等の材料で加工したもの。琺瑯や七宝焼きを指す。
- エナメル塗料のこと。皮製品などに用い上記と同様の光沢をだす。加工した状態を指すこともある(エナメルの靴など)。
- 歯質の一種、エナメル質(tooth enamel)。
日本語で1.の用途でエナメルの語が使われることは殆どなく、2.の用途も少数である。ここでは2.の一部について詳説する。
エナメル(enamel) とは、金属板などに粉末ガラスを焼き付け、装飾したもの。ガラス粉末と金属粉末を混ぜた釉薬を、金属板にのせて加熱する。その色彩は、釉薬にどんな金属粉末を混ぜるかで決まる。
英語ではエナメル、仏語ではエマイユといい、日本語でいう琺瑯や七宝焼きと原理は同じである。
この項目では、主にヨーロッパのアンティーク・ジュエリーに見られるエナメルの技法について述べる。
目次
エナメルの技法
ペイントエナメル (painted enamel)
あらかじめ単色で焼き付けたエナメルを下地とし、その上に、筆を使ってさらにエナメル画を描き、焼き付ける技法。人物や植物を描いたミニアチュールが例として挙げられる。
ロンドボス (ronde bosse)
金などの立体像の表面全体に、エナメルを施す技法。ルネサンス期のジュエリーなどに多く例を見ることができる。
バスタイユ (basse taille)
エナメルの半透性を生かし、土台の金属に刻まれた彫刻模様(ギヨシェ)を見せる技法。金属に施された彫刻が主眼となるので、使用されるエナメルは単色。ファベルジェの作品に、この技法を使用したものが多い。
シャンルーヴェ (shampleve)
土台の金属を彫りこんで、できたくぼみをエナメルで埋めて装飾する技法。初期の頃は、輪郭線の部分をライン状に彫りこんでいた。技術の発達につれて、逆に、面になる部分を彫りこんでエナメルで装飾し、彫り残した金属部分を輪郭線とするようになった。
クロワゾネ (cloisonne)
土台となる金属の上に、さらに金属線を貼り付けて輪郭線を描き、できた枠内をエナメルで埋めて装飾する技法。シャンルーヴェよりさらに細かい表現が可能になる。日本の有線七宝はここに属する。
プリカジュール (plique a jour)
薄い金属箔の上に、クロワゾネとほぼ同じ工程でエナメルを焼き付け、その後に薬品処理によって箔を取り除く技法。金属枠のみによって支えられたエナメルは光を透過するので、ステンドグラスのような効果を得られる。アールヌーボー期のジュエリーに好んで使用された。美しいが非常に繊細で、衝撃に弱い。映画「タイタニック」の中に登場したヒロインの蝶の櫛には、この技法が使用されていると思われる。