線型性
線型性(せんけいせい、linearity)あるいは線型(せんけい、linear, ラテン語: linearis)は、線のようにまっすぐな図形やそれに似た性質をもつ対象および、そのような性質を保つ変換などに対して用いられる述語である。表記には揺れがあり線形あるいは線状とも記す。また場合により、一次とも称す(ただし、"一次" が "線型" を意味しない場合も多い)。
線型写像
数学において、写像f(x) が線型であるとは、f について以下の 2 つの性質
- 加法性: f(x + y) = f(x) + f(y).
- 斉次性(作用の可換性): f(αx) = αf(x) for all α.
が満たされることである。ここで x は実数や複素数、あるいはベクトルなど一般に環上の加群の元である(α はスカラー倍)。
たとえば、一次関数はそれが原点を通るとき、またそのときに限り線型性を持つ。
線型代数学はこのような線型の変換とそれによって保たれる空間の性質について研究する学問であり、ベクトル、ベクトル空間および行列によって表される線型写像や線型方程式系について扱われる。また関数を関数にうつす写像である作用素の線型性は関数解析学であつかわれる。関数の微分を作用素とみなすことで得られる微分作用素(たとえば∇やラプラス作用素)の概念は線型作用素の重要な例である。
微分方程式
微分方程式が線型である場合は線型代数学の範疇で解を探すことができる。一方で、線型でない(非線型の)場合には、たとえばカオスのような問題があらわれ、解くことが飛躍的に難しくなる。しかしそれゆえに、またパンルヴェ方程式のようにある種の対称性をもち、幾何学的に多様な性質を内包するものが存在するなどの理由により、数学者や物理学者などにとって興味深い対象が数多く存在するのも非線型微分方程式である。
重線型
多変数の写像の線型性として重線型性(多重線型性)がある。2 変数の場合は
- 双線型性
- f(x + y, z) = f(x, z) + f(y, z),
- f(x, y + z) = f(x, y) + f(x, z),
- f(cx, y) = f(x, cy) = cf(x, y)
である。双線型な汎関数(双線型形式)の例としては内積や外積が挙げられる。さらに多変数の場合に
- 多重線型性
- <math> f(x_1, \ldots, x_i + x'_i, \ldots, x_n) =
f(x_1, \ldots, x_i, \ldots, x_n) + f(x_1, \ldots, x'_i, \ldots, x_n)
</math>
- <math> f(x_1, \ldots, c\cdot x_i, \ldots, x_n) =
c\cdot f(x_1, \ldots, x_i, \ldots, x_n)
</math> を考えることができる。例えば行列式は列または行ベクトルに注目すれば多重線型形式である
- テンソル積、テンソル代数