シンガポール
シンガポール(英語:Singapore)は、マレー半島南端に位置する都市国家。2016年現在、総面積716平方キロメートルに人口約570万人が居住している。20世紀後半から高い経済成長を続け、2014年現在の1人あたり国民所得は55,150米ドルに達する。2012年現在の主な産業はサービス業、鉱工業、卸売・小売業、運輸・通信業などで、特に金融サービス業では東南アジアの金融センターとしての役割を担っている。また2014年現在で1,186万人の観光客が訪問する観光都市でもある。政治体制は1965年にマレーシアから分離独立して以来、与党・人民行動党が議会で圧倒的多数を占めてきた。1824年に英国の植民地となって以来、自由貿易港として発展し、太平洋戦争時の日本軍による占領を経て英国から独立した経緯があり、現在でも英連邦内の共和国である。2010年現在、華人が総人口の70%を占めるほか、マレー人(13.4%)、インド人(9.2%)などからなる多民族国家で、マレー語、華語、タミル語および英語が公用語となっている。宗教は仏教、キリスト教、イスラム教、道教、ヒンドゥー教で、祝祭日も各宗教の祝祭日がある。
目次
地勢
マレー半島の南端に位置し、シンガポール島およびその周辺の55の小島からなる都市国家[1][2]。高度差のない標高が低い国土で、水源に乏しい[3]。マレーシアと国境を接し、同国のジョホール・バルとの間は、コーズウェイで結ばれている[1][4]。
総面積
気候
赤道直下のアジアモンスーン地帯に位置し、年間を通して高温多湿[1]。熱帯雨林気候[3]、熱帯モンスーン気候[7]。
リブロ (2014 13)は、10月-3月が雨季にあたる、としている。二宮書店 (2017 197-198)は、明瞭な雨季・乾季の区別はないが、降雨は11-3月に多い、としている。
月別の平均気温は1月26.6℃、7月27.9℃。年平均気温は27.6℃。年降水量2,199mm。[1]
人口
総人口
- 1986年末 260万人[2]
- 1990年頃 267万人[5]
- 1990年 301.6万人[8]
- 2000年 391.8万人[8]
- 2010年 507.9万人[8]
- 2011年 520万人[3]
- 2012年 530.3万人[8]
- 2013年 541.2万人[6][7][8]
- 2016年 569.6万人[1]
人口密度
動態統計
出生率
死亡率
乳児死亡率
合計特殊出生率
- 2014年 1.3‰[1]
平均寿命
- 2014年 82.6歳(男80.5、女84.9)[1]
年齢別人口
- 0-14歳 2012年6月30日 16.4%[10]
- 0-14歳 2016年 12.9%[1]
- 15-64歳 2012年6月30日 73.7%[10]
- 15-64歳 2016年 77.8%[1]
- 65歳- 2012年6月30日 9.9%[10]
- 65歳- 2016年 9.2%[1]
労働人口
- 第1次産業 1990年頃 0.4%[5]
- 第1次産業 2014年 0.0%[1]
- 第2次産業 1990年頃 28.9%[5]
- 第2次産業 2014年 28.3%[1]
- 第3次産業 2014年 70.6%[1]
所得水準
GNI
GDP
- 1970年 19億ドル[13]
- 1980年 120億ドル[13]
- 1990年 388億ドル[13]
- 2000年 943億ドル[13]
- 2010年 2,317億ドル[13]
- 2012年 2,765億ドル[13][7]
1人あたり
産業
輸出依存度が高い経済構造[1]
主な産業
産業活動別GDP
- 2012年、億ドル[16]
- 農林水産業 1
- 鉱工業 580
- 建設業 114
- 卸売・小売業 507
- 運輸・通信業 300
- サービス業 1,095
- 産業計 2,597
- GDP(再掲) 2,765
貿易額
輸出額
輸入額
貿易依存度
- 2015年 輸出118.4%、輸入101.4%[1]
通貨
為替レート
外貨準備高
- 2014年3月 2,716.89億ドル[7]
政治
政治体制
大統領
議会
- 1院制[7]
政権
1990年まで31年間、リー・クアンユー首相の下で、人民行動党が議会で圧倒的多数を占め、長期政権を維持してきた。同年、リー首相が引退し、ゴー・チョクトン首相就任。2004年8月にリー・クアンユー元首相の長男・リー・シェンロンが首相に就任した。[1]
歴史
14世紀まで
古来から現代に至るまでヨーロッパと東南アジアを結ぶ主要航路の中継地点にあり、13-14世紀に交易拠点として繁栄した[3]。
1400年頃、現在のシンガポール含む地域にマラッカ王国建国[1]。
英植民地時代
1819年にイギリス東インド会社のラッフルズ がシンガポール島に上陸し、ジョホール王国から許可を受けて商館を建設、東南アジア貿易の拠点として再建を進めた[3][1]。
1824年の英蘭協定でシンガポール・ペナン・ムラカ(マラッカ)は英国植民地であることが確認された[3][1]。シンガポールは関税を課さない自由貿易港として開放され、華人など多くの移民が移住して、自由貿易港として急速に発展した。[3][2]
日本による占領
1941年12月に太平洋戦争が開戦すると日本は英領マラヤへ侵攻し、1942年2月にシンガポールを占領し、「昭南島」と改称して軍政を敷いた[3]。
英国の復帰
1945年に再び英国の植民地となったが、1957年に英領マラヤがマラヤ連邦として独立した後、1959年にシンガポールも自治権を獲得、自治政府が組織された[1][3]。
分離独立
1963年9月にマラヤ連邦に加わりマレーシア連邦内の1州として独立したが、1965年8月にマレーシアから分離独立することになり、イギリス連邦内の共和国となった。[1][3][17][18]
経済成長
独立後、政府によって外資を導入した輸出志向の工業化政策が推進された。著しい経済発展によって、1980年代には、1人当たりの国民所得が、石油産出国を除くアジアで日本に次いで弟2位となり、韓国、台湾、香港とともに、アジアNICs (Newly lndustrializing Countries) の一つに数えられるようになった。[18]
近況
ASEAN諸国との友好関係を基軸とした地域協力に努力。アメリカの政治・安全保障・経済への関与を重視。中国とは1990年に国交を樹立。[1]
言語
公用語は、マレー語、華語(標準語、Mandarin)、タミル語および英語[1][3][19][7]。
国名
「シンガポール」はサンスクリット語で「ライオンの都」を意味する[3]。
国旗
民族
華人、マレー人、インド人などから成る多民族国家。1830年代中頃に華人がマレー人を抜いて最大の民族集団となった。20世紀以降、1988年に至るまで、華人の人口はシンガポールの総人口の70%以上を占めている。[20]
華人の移住者の大部分は、福建省・広東省などの華南地方の出身者であった。[21]
2010年の主な民族の人口割合は、中国系74.1%、マレー系13.4%、インド系9.2%[1]。
華人方言集団
シンガポールの華人はその多くが中国・華南地方の出身者かその子孫であるが、出身地の方言間の差異が大きく、このため華人は使用する方言別の集団に分類されることがある[21]。
- 福建人 Hokkiens
- 福建省南部の方言(福建語、閩南語)を用いる。シンガポール開港以来、1988年に至るまで、最大の華人方言集団となっている。[22]
- 潮州人 Teochews
- 広東省東部、旧潮州府出身者とその子孫から成り、潮州語を用いる。[23]
- 広東人 Cantonese
- 広府人とも呼ばれる、広東省の珠江下流地域の出身者とその子孫。広東語を用いる。[24]
- 海南人 Hainanese
- 広東省の海南島出身者とその子孫。海南語を用いる。[24]
- 客家人 Hakkas
- 中国南部各地(シンガポールの場合、主に広東省東部と福建省南部のそれぞれの内陸部)出身者とその子孫。客家語を用いる。[24]
- 福州人 Foochows
- 福建省の沿海地域・福州地方の出身者とその子孫。福州語を用いる。[25]
- 三江人 Samkians
- 本来は、上海を中心とする長江下流地域(江蘇、浙江、江西の三省)の出身者を指し、上海人 Shanghainseとも呼ばれるが、シンガポールでは福建・広東・広西の各省以外の地方出身者を一般に三江人と呼ぶ。[25]
- 興化人 Henghuas
- 福建省の沿海地域、莆田・仙游地方の出身者とその子孫。興化語を用いる。[25]
- 福清人 Hokchias
- 興化人とよく似た方言を用い、しばしば興化人と同一グループとみなされる。1911年から1975年まで、国勢調査に分類が設けられていた。[25]
- 広西人 Kwongsais
- (解説なし)
- 海峡植民地生まれの華人 Strait-born Chinese
- 1911年の国勢調査まで存在した分類で、マラッカから移ってきた、福建省南部の漳州・泉州地方出身者とその子孫が大部分を占めていた。[26]
シンガポールの華人社会には、地縁や血縁に基づく様々な自衛組織や相互扶助組織が存在し、それらは同郷会館、同姓会館、同業会館(行会)などの会館 huiguanや、廟miaoを媒介とするが、これらの組織も同一の方言集団に属する場合が多い。[27]
宗教
仏教、イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教[3][5]。道教[7][3]。イスラム教はスンナ派、キリスト教はプロテスタントが多数[3]。
2010年の主な宗教の人口割合は、仏教33.3%、キリスト教18.3%、イスラム教14.7%、道教10.9%、ヒンドゥー教5.1%[1]。
識字率
祝祭日
月日 | 祝祭日 | 意味 |
---|---|---|
1月1日 | 新年 | 新暦の元旦 |
1月 | ポンガル | インドの収穫祭 |
1月 | タイプ-サム | ヒンドゥー教のお祭り |
1-2月 | 中国正月 | 旧暦の正月、春節 |
3-4月 | 聖金曜日 | キリストの没日 |
5月1日 | メーデー(勤労感謝の日) | |
5月 | ベサック・デイ | 釈迦の誕生、成道、入滅を記念する日 |
6-7月 | ハリ・ラヤ・プアサ | ラマダン明けのお祝い |
8月9日 | ナショナル・デー(独立記念日) | |
8月 | ハリ・ラヤ・ハジ(犠牲祭) | イスラム教の祭日 |
10-11月 | ディーパバリ | ヒンドゥー教の祭日 |
12月25日 | クリスマス | キリスト教の祭日 |
資料:シンガポール観光局 2018 、リブロ 2014 73
詳しい日付は、ジェトロ > アジア > シンガポール > 祝祭日 を参照。
日本との関係
特徴
- 外貨準備高の多い国 2013年 第10位(2,716.89億ドル)[28]
外部リンク
- ジェトロ(日本貿易振興機構) > アジア > シンガポール 2018年12月16日閲覧
付録
脚注
- ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 1.13 1.14 1.15 1.16 1.17 1.18 1.19 1.20 1.21 1.22 1.23 1.24 1.25 1.26 1.27 1.28 1.29 1.30 1.31 1.32 1.33 1.34 1.35 1.36 1.37 1.38 1.39 二宮書店 2017 197-198
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 山下 1988 31-32
- ↑ 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 3.14 3.15 3.16 3.17 3.18 3.19 3.20 3.21 3.22 ハンドブック 2013 30
- ↑ 山下 1988 32
- ↑ 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 5.11 5.12 5.13 竹内 1993 37
- ↑ 6.0 6.1 6.2 矢野恒太記念会 2014 26
- ↑ 7.00 7.01 7.02 7.03 7.04 7.05 7.06 7.07 7.08 7.09 7.10 7.11 7.12 7.13 7.14 7.15 7.16 7.17 リブロ 2014 13
- ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 8.4 矢野恒太記念会 2014 54
- ↑ 9.0 9.1 矢野恒太記念会 2014 62
- ↑ 10.0 10.1 10.2 矢野恒太記念会 2014 70
- ↑ 11.0 11.1 矢野恒太記念会 2014 125
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 27,125
- ↑ 13.0 13.1 13.2 13.3 13.4 13.5 矢野恒太記念会 2014 116-117
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 117
- ↑ 15.0 15.1 15.2 矢野恒太記念会 2014 27
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 143
- ↑ 竹内 1993 36
- ↑ 18.0 18.1 山下 1988 31-32,91
- ↑ 山下 1988 108
- ↑ 山下 1988 31-32,42-43
- ↑ 21.0 21.1 山下 1988 42-43
- ↑ 山下 1988 45
- ↑ 山下 1988 45-46
- ↑ 24.0 24.1 24.2 山下 1988 46
- ↑ 25.0 25.1 25.2 25.3 山下 1988 47-48
- ↑ 山下 1988 43
- ↑ 山下 1988 48-49
- ↑ リブロ 2014 72
参考文献
- シンガポール観光局 (2018) Singapore Tourism Boardトップ > お祭り&イベント 2018年12月16日閲覧
- 二宮書店 (2017) 二宮書店編集部『データブック オブ・ザ・ワールド 2017年版』二宮書店、2017年、ISBN 978-4817604118
- リブロ (2014) リブロ『世界の国情報2014』リブロ、2014年、ISBN 978-4903611587
- 矢野恒太記念会 (2014) 矢野恒太記念会『世界国勢図絵2014/15年版』矢野恒太記念会、2014年、ISBN 978-4875494485
- ハンドブック (2013) 「世界各国ハンドブック」編集委員会『ニュースがわかる 世界各国ハンドブック』山川出版社、2013年、ISBN 978-4634640641
- 竹内 (1993) 竹内啓一『新版データブック世界各国地理』岩波書店、1993年、ISBN 4005002188
- 山下 (1988) 山下清海『シンガポールの華人社会』大明堂、1988年、ISBN 4470430226